著者
和田 謙一郎
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学大学院研究論集 (ISSN:18836364)
巻号頁・発行日
no.11, pp.53-79, 2016

この国で類を見ない人権侵害を継続し続けたハンセン病(らい)問題については、司法判断までの経緯や当事者(ハンセン病回復者)らの考え方について、似た分類に入る他の訴訟との相違点を感じる部分が多い。この素朴な疑問を解決するためには、戦後の現行憲法下のらい法制と、当初から強制隔離の対象となった療養所入所者の生活状況、そして、らい法制を含むわが国の国民の生活保障を担う社会保障法制について、一連のらい法制を旧来の保護と考えるか、侵害法制と考えるか、あるいは給付法制と考えるか、それら各法制を時代別相互に確認する必要がある。同時に、戦後に再形成されるハンセン病患者らへの社会的排除と、社会保障法制下の制度的排除が生じる原因の解明も必要となる。本稿は、戦後の時代背景を捉え、らい法制と社会保障法制の変遷も確認し、行政・立法、そしてハンセン病患者らが、戦後のらい法制を、その時代、その時代にどのように捉えていたかを司法判断を参考にし先の疑問の解明を試みる。
著者
苅谷 愛彦 松永 祐 宮澤 洋介 石井 正樹 小森 次郎 富田 国良
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.113, 2008

<BR><B>はじめに</B><BR>長野県白馬村白馬尻と白馬岳山頂を結ぶ白馬大雪渓ルートは北アルプスの代表的な人気登山路である.しかし大雪渓の谷底や谷壁では融雪期~根雪開始期を中心に様々な地形・雪氷の変化が生じ,それに因する登山事故が例年起きている1).特に,広い意味での落石 ―― 岩壁や未固結堆積物から剥離・落下・転動した岩屑が谷底の雪渓まで達し,それらが雪面で停止せず,またはいったん停止しても再転動して≧1 km滑走する現象 ―― は時間や天候を問わずに発生しているとみられ,危険性が高い.大雪渓のように通過者の多い登山路では,落石の発生機構や登山者の動態などを解明することが事故抑止のためにも重要である.本研究では,大雪渓に静止画像データロガー(IDL)を設置し,地形や雪氷,気象の状態および通過者の行動を観察・解析した.<BR><BR><B>方法・機器</B><BR><U>IDL</U>:KADEC21 EYE II(カラーCCD,画素数2M).<U>IDL設置点</U>:大雪渓左岸谷壁(標高1730 m).方位角約240度,仰角約5度.<U>記録仕様</U>:2007年6月10日~8月7日の毎日.0330~1900JSTの毎時00/30分に記録(6月10日10時開始).<U>画像解析</U>:肉眼による静止画と疑似動画の解析(落石,通過者数,融雪,気象など).<U>関連野外調査</U>:5月上旬~10月下旬に地温観測や落石位置のGPS測量などを複数回実施.<BR><BR><B>結 果</B><BR><U>IDLの作動</U>:設置直後から正常作動していたが,8月8日以降停止し,無記録となった(浸水による回路損傷).<U>撮像状態</U>:レンズへの着水による画像の乱れや濃霧により,谷を全く見通せない状態が全記録(1767画像)の約21%あった.<U>融雪</U>:反復測量に基づく日平均雪面低下量は5月上旬~6月上旬に約14 cm,6月上旬~7月上旬に約12 cm,7月上旬~8月上旬に約17 cm,8月上旬~9月上旬に約24 cmだった.この傾向は画像解析でも確認された.登山者の増加する7月~8月に融雪が加速したが,主谷はU字型断面をもつため雪渓表面積の減少は著しくなかった.<U>気象</U>:上記のように,全画像の約1/5に降雨や濃霧の影響が認められた.しかし大雪渓下部での降雨や濃霧が大雪渓上部でも同時発生していたのか否かは不明である.一方,大雪渓上部のみでの霧や雪面での移流霧の発生が多かった.<U>落石</U>:画像の前後比較により,雪渓上に落下し,停止した礫が確認された.また,それらの一部には融雪の進行による姿勢変化や再転動が認められ,撮像範囲外に移動したものもあった.さらに,雪渓上に達したナダレや土石流堆積物に含まれていた礫の一部にも姿勢変化や転動が認められた.なお,滑走する礫が雪面に残す白い軌跡は画像では確認できなかった(現地観察によれば,明確な軌跡を残すような巨礫の滑走は5月上旬~10月下旬に生じなかった可能性がある).<U>その他の地形変化</U>:大雪渓上部の珪長岩分布域では落石が定常的に発生しているが,画像では確認できなかった.<U>通過者</U>:7月20日(金)まで日通過者は≦40名(画像不鮮明などによる解析誤差あり)だったが,21日(土)に61名となった.これ以降増加し,27日(金)に292名,28日(土)に253名を記録した.時間帯別累計では,6時以降に増えて8時30分~10時30分に最多となり,11時以降減少することが判明した.<BR><BR><B>主たる結論</B><BR>(1)雪渓には谷壁や支谷から礫が到達し,雪面を滑走するほか,雪面に停止した礫の再転動も生じる.(2)記録期間における大雪渓下部の視界不良率は約20%である.(3)遠隔山岳地における地形,融雪,気象および登山者のモニタリングにIDLは有効である.(4)定量解析のためにIDL画素数の増量のほか,新たに動画記録も望まれる. <BR>--------------------<BR>参考文献:1)小森2006(岳人),2)苅谷ほか2006(地質ニュース),3)苅谷2007(地学雑),4)Kawasaki et al. 2006(EOS Trans. 87(52) AGU 06Fall Mtg. Abst).<BR> ◆本研究は,東京地学協会平成19年度研究調査助成対象.
著者
俵 国
出版者
一般社団法人 日本鉄鋼協会
雑誌
鐵と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.400-408, 1919-04-25 (Released:2009-07-09)
被引用文献数
1 1
出版者
日経BP社
雑誌
日経ホームビルダー (ISSN:1344901X)
巻号頁・発行日
no.217, pp.28-31, 2017-07

羽子板ボルトを接合部に上下2本ずつ取り付ける仕様なのに、1本しか取り付けていない施工ミスが見つかったのは、北関東にある中小住宅会社の現場だ〔写真5〕。住宅会社が依頼した第三者の検査員が発見した。 この施工ミスは、住宅会社の年間の建設棟数が10棟…

1 0 0 0 OA 盆の月

著者
其徳
出版者
巻号頁・発行日
1830
著者
齋藤 克幸 坂本 英雄 七条 武志 小川 良雄 吉田 英機
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.141-148, 2007-04-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
21

精漿inhibin Bと造精機能の関係を評価し, 精漿inhibin Bが造精機能の有用な指標であるか検討した.対象は不妊症患者81名 (平均年齢36.4歳) で, 精液検査で13名は無精子症33名は乏精子症, 35名は精子濃度が正常であった.血清inhibin B, LH, FSH, testosterone, 精漿inhibin B, transferrin濃度を測定し, 精液検査を行い総精子数精子濃度を検討に用いた.精漿inhibin B濃度は1111±1665pg/ml, 血清inhibin B濃度は149.4±83.42pg/ml, 精漿transferirn濃度は86.88±99.87ng/mlであった.無精子症群, 乏精子症群, 正常精子群の3群間の比較で血清inhibin B濃度, 精漿inhibin B濃度transferrin濃度に有意差 (p<0.001) を認めた.血清inhibin Bは総精子数 (r=0.33) , 精子濃度 (r=0.451) , 血清LH (r=-0.434) , 血清FSH (r=-0.580) , 精漿transferrin (r=0.370) と有意な相関を認めた.精漿inhibin Bは精子濃度 (r=0.395) , 血清FSH (r=-0.259) , 精漿transferrin (r=0.647) と有意な相関を認め, 精漿inhibin Bは造精機能の指標と考えられた.しかし, 精漿inhibin Bは血清inhibin Bより精漿transferrinと強い相関を示していたが, 血清inhibin Bに比べ血清FSHと精子濃度との相関は弱く, 血清inhibin Bに比し造精機能を評価する上で有用性に欠けると考えられた.
著者
窪田 規一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.296, 2016

<p>  移植医療の成功率を飛躍的に増大させたサイクロスポリンは通常のペプチドとは異なりD-アミノ酸やN-メチルアミノ酸が組み込まれた構造をもった特殊ペプチドであった.特殊ペプチドはその物理的特性から,多岐にわたるターゲットタンパクへのアクセスが可能であり,新しい創薬開発の可能性を示唆させるものであるが,今まで特殊ペプチドを体系的に創薬システムに組み込むことは困難であった.我々はフレキシザイム(Flexizyme)という人口リボザイムを開発する事により無細胞翻訳合成系による特殊ペプチドの大規模ライブラリー創製を可能とした.さらに独自のディスプレイシステムを組み合わせることにより世界で初めて,唯一の特殊ペプチド創薬開発プラットフォームシステム「PDPS(Peptide Discovery Platform System)」を完成させた.PDPSにより創出される特殊ペプチドは分子量1,500程度でありながら抗体に匹敵する特異性と結合力を持っており,細胞内を含めタンパク-タンパク相互作用(PPI)阻害剤などの機能を有することができる.今後,開発が進むことにより多くの次世代医薬品が提供できると確信している.本シンポジウムではPD-1/PDL-1特殊ペプチドなどの実例を踏まえ,特殊ペプチド創薬の可能性に関してその片鱗を紹介できればと考えている.</p>
著者
南山 泰之
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.16-23, 2016-03-04 (Released:2017-09-29)

近年,オープンサイエンスに関する議論を契機として,組織的な研究データ管理の必要性が高まりつつある。本稿では,国内外の研究データ管理の動向を概観しつつ,研究データ管理は大学図書館が取り組むべき課題であることを指摘する。続いて,研究データリポジトリ運営に向けた検討を加え,国内における研究データ管理・支援に向けた課題や取り組みを紹介しつつ,保存・整理の専門家として大学図書館員に今後求められる能力やサービスを考察する。
著者
清水 俊幸 安島 雄一郎 吉田 利雄 安里 彰 志田 直之 三浦 健一 住元 真司 長屋 忠男 三吉 郁夫 青木 正樹 原口 正寿 山中 栄次 宮崎 博行 草野 義博 新庄 直樹 追永 勇次 宇野 篤也 黒川 原佳 塚本 俊之 村井 均 庄司 文由 井上 俊介 黒田 明義 寺井 優晃 長谷川 幸弘 南 一生 横川 三津夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.10, pp.2118-2129, 2013-10

スーパーコンピュータ「京」の構成と評価について述べる.「京」はスパコンの広範な分野での利活用を目指した10PFLOPS級のスパコンである.我々は,デザインコンセプトとして,(1)汎用的なCPUアーキテクチャの採用と高いCPU単体性能の実現,(2)高いスケーラビリティのインターコネクトの専用開発,(3)並列度の爆発に抗する技術の導入,(4)高い信頼性,柔軟な運用性,省電力性の実現を掲げ,2011年にそのシステムを完成させた.HPC向けCPU,SPARC64 VIIIfxと,スケーラビリティの高いTofuインターコネクトを専用に開発し,並列度の爆発に抗する技術としてVISIMPACTを実装した.冷却やジョブマネージャ等により,高い信頼性,柔軟な運用性,省電力性を実現した.「京」は2011年6月と11月にTOP500で世界一となった.また,複数のアプリケーションで高い実行効率と性能を確認し,スパコンとしての高い実用性を示した.

1 0 0 0 OA 虫譜図説 12巻

著者
飯室庄左衛門
出版者
巻号頁・発行日
vol.[6],
著者
林 薫 三舟 求真人 七条 明久 鈴木 博 松尾 幸子 牧野 芳大 明石 光伸 和田 義人 小田 力 茂木 幹義 森 章夫
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.p129-142, 1975-12

1973年2月3日から18日の間,新生成虫が検出されない時期に野外で捕集した冬期のコガタアカイエカ1083個体,8プールから4株のウイルスを分離し,日本脳炎(日脳)ウイルスと同定された.この事実は,越年蚊体内でウイルスが持ち越されたものと考えられる.そして1973年には年間を通じて,蚊一豚の感染環が証明され,奄美大島,瀬戸内地域における日脳ウイルスの特異な撒布状況が観察された.この所見は我国で初めてのことである.しかしながら,1974年では,コガタアカイエカから7月上旬にはじめてウイルスが分離されると共に,これと平行して豚の新感染も同時に証明された.この事は蚊一豚の感染環,特に蚊によるウイルスの越年が中絶したことを意味すると共に,奄美大島の調査地域へのウイルスの持込みがあったに違いないことを物語るものであろう.換言すれば,奄美大島の調査地域では環境条件さえよければウイルスの土着が可能であるが,条件が悪いと蚊によるウイルスの越年は中絶し,流行期に再びウイルスの持込みが行われるであろうことを推定してよいと思われる.1973年7月24日夜半から25日未明にかけて奄美大島名瀬港及び鹿児島港の中間の海上で,船のマスト上にとりつけられたライトトラップ採集でコガタアカイエカ数個体を捕集した.この事実はコガタアカイエカが洋上を移動していることを意味しているものと考えられる.1975年7月下旬,奄美大島から鹿児島(九州南域)に向け,標色コガタアカイエカの分散実験を試みたが,遇然に実験地域を通過した台風2号で阻止され不成功に終った.しかし,分散実験日の約10日前にフイリッピンからの迷蝶が鹿児島南端に到達していることから気流によるコガタアカイエカの移動は決して否定出来ない.Characteristics of the ecology of Japanese encephalitis (JE) virus dissemination were investigated in Amami island located between the southern part of Kyushu and the main island of Okinawa. Four strains identified as JE virus were isolated from 8 pools of 1083 hibernated female mosquitoes of Culex tritaeniorhynchus caught in the field from 3rd to 18th February, 1973, before the appearance of newly emerged vector mosquitoes. This finding suggested the overwintering of the virus in the vector mosquitoes in survey areas. The virus dissemination in the survey area in 1973 was observed through the year in connection with the cycle of vector mosquitoes and pigs infection. In 1974, however, the virus isolation from vector mosquitoes was performed in July. This evidence indicated the interruption of the persistence of the virus in vector mosquitoes and the virus might be carried into the survey area in Amami island. These findings were of great significance in connection with the problems on the overwintering of JE virus in Japan. In the midnight on 24th to the very early morning on 25th July, 1973, mosquitoes of Culex tritaeniorhynchus were captured with the light traps set up on the ship sailing between the south part of Kyushu (Kagoshima) and Amami island. This finding suggest that vector mosquitoes might be transported with the wind over the ocean. In accordance with these evidence, the attempt to disperse mosquitoes of Culex tritaeniorhynchus experimentally labeled with dyes from Amami island to the southern part of Kyushu (Kagoshima) was made under the selected condition of the weather in the end part of July, 1975. It was, however, unsuccessful with hindering of occassionally happened typhoon.
巻号頁・発行日
vol.第21冊, 1000

寺社奉行の取り扱った一事件を一冊ごとにその始末を記したもので、各冊の内容は別記のとおりである。34冊(現在45冊に分冊)。