著者
長濱 澄 名取 優太 岩附 直登 川島 一朔 森田 裕介 百瀬 桂子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S42026, (Released:2018-09-26)
参考文献数
9

本研究では,映像コンテンツの高速提示により生じた認知負荷に関する客観的な評価指標として,振動プローブ刺激に対するP300振幅を活用することの有用性を検討し,映像コンテンツの視聴速度と注意配分量の関連性を明らかにした.実験では,被験者21名に対して,等質性が確認された2種類の映像コンテンツをランダム順に等倍速条件と2倍速条件で提示した.また,映像コンテンツ視聴中に振動プローブ刺激を与え,標的刺激に対するキー押し課題を課し,ワイヤレス生体計測器を用いて課題中脳波を記録した.P300振幅の分析の結果,2倍速条件におけるP300振幅は,他の条件に比べて有意に小さく,映像コンテンツを2倍速で視聴する場合,等倍速で視聴する場合に比べて,注意配分量が大きくなる可能性が示唆された.
著者
松岡 完
出版者
一般財団法人 日本国際政治学会
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.130, pp.160-174,L15, 2002

The Vietnam War had hardly ended when intensive efforts to &ldquo;correct&rdquo; the war narratives were commenced within the United States. The challenge to the once seemingly established fact that the United States had suffered a humiliating defeat came to its peak in the middle of the 1980s. Revisionists such as the former and incumbent Presidents Richard Nixon and Ronald Reagan aimed to cure the Americans of the Vietnam syndrome, and to help them regain their self-confidence and a sense of national integrity.<br>The withdrawal of American troops, the revisionists insisted, should never be portrayed as a surrender, instead merely as an American unilateral decision to leave Vietnam. The defeated, if any, were the South Vietnamese, not the Americans. The United States was actually a winner there, for it helped the anti-Communist regime in South Vietnam survive for two decades so that other nations in Southeast Asia could develop their economic and political strength. Moreover, American soldiers were always victorious in any encounter with the Communist guerrilla or regular forces.<br>The revisionists believed that the United States could have won at an earlier stage if only it had used its military power in an overwhelming way. The United States was on the verge of triumph by the end of 1972, almost forcing the leaders in Hanoi to accept American terms in peace talks through its massive bombing attacks in central North Vietnam. Then, suddenly, the revisionists argue, the U. S. Congress, intimidated by an unjustified fear of United States inability to win the war, threw in the towel.<br>Political leaders in Washington came under the attack of the revisionists. The United States lost this war for several reasons, namely because the government was unable to offer the American people a definite war objective, placed exceedingly unnecessary restrictions upon the military, failed to demonstrate sufficient will to win, and was unsuccessful in fully mobilizing the public behind the war effort.<br>American mass media, including television, was another target. The correspondents were criticized for being too young and too inexperienced to grasp the reality of battleground and sometimes too naive to shelter themselves from the influence of the Communists' propaganda. Hence, their reporting across the Pacific contributed to serious increases in anti-war sentiment back home, which in turn caused extreme damage to the American war strategy.<br>The majority of the American people were, however, far from being persuaded by such revisionist arguments. They knew that they had never fulfilled their objective of building a strong and viable anti-Communist regime in Vietnam, that they had been responsible for the South Vietnamese deficiencies, that winning in a shooting war had been irrelevant to the political future of the country, that the results of truce negotiations could hardly have been American triumph, and that blaming politicians and reporters merely was a means to protect the military from further criticism. That is why, to the regret of the revisionists, the memory of defeat in Vietnam still haunts the American people.
著者
一瀬 太良
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.26-30_1, 1960-03-30 (Released:2009-02-12)
参考文献数
7

タマナギンウワバさなぎの体重と,幼虫およびさなぎの期間中の死亡率とに及ぼす温度の影響を検討し,また幼虫およびさなぎの色と温度との関係を調べた。飼育は25°Cおよび30°Cの恒温と,種々の室温下で行ない,20頭前後の集合飼育と単独飼育とを併用した。1) さなぎの体重は供試した2種の食飼植物,キャベツ,アブラナによって大差なく,またそれぞれ雌雄間において有意差をみとめえなかった(第1表)。2) さなぎの平均体重は温度の相違によってほとんど変わらないが,高温30°Cにおいて非常に小さい個体が得られ,体重の減少する傾向がみられた(第1表)。3) 集合飼育区の平均さなぎ体重は単独飼育区のそれに比べてわずかに小さな数字を示したが有意差は認められなかった(第2表)。4) 一般に30°Cでは死亡率がより高くなり,特によう期に死ぬ個体が多い。25°Cでは,その他の条件のよいときはきわめて羽化率が高かった(第3表)。5) 本種では,幼虫の表皮に見られる色の変異すなわち黒化の程度は,温度や飼育密度に対し特にめいりょうな関係を示さない。6) さなぎの色は表皮の黒化の程度によってきまり,幼虫期の温度に支配される。高温30°Cで全部黄かっ色となり,低温20°C以下で全部黒色,25°Cで中間的色調となる(第4表,第1図)。
著者
一瀬 太良 渋谷 成美
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.157-163, 1959-09-30 (Released:2009-02-12)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

蔬菜害虫タマナギンウワバの各態を25°Cおよび30°Cの恒温と種々の室温下で飼育して,卵,幼虫およびさなぎの発育と成虫の寿命に及ぼす温度の影響を調べ,あわせて東京都府中付近における発生経過を考察した。飼育法は20頭前後の集合飼育と単独飼育とを併用した。1) ゴボウ葉供試,集合飼育の場合,本種の有効積算温度はそれぞれ卵期66.7日度,全幼虫期223.6日度,よう期101.8日度であって,理論発育零点は卵8.0°C,幼虫8.0∼9.6°C,さなぎ12.2°Cである。各態,各令の発育期間と温度との関係を第1, 2表に示した。2) ゴボウ葉供試区は発育が良好であって雌雄の発育速度には差が認められなかった(第4表)。またこの区では集合,単独両飼育条件の間において令の発育速度に若干の相違がみられたが,全幼虫期,あるいは幼虫とさなぎの全生育期を通じると両飼育条件間に有意差を認めることができなかった(第5表)。3) 本幼虫の令数は普通5令であるが,しばしば6令型幼虫を生ずる。高温において6令型幼虫の増加する傾向がみられたが,温度がこの現象を支配する有力な因子であるとは考えられない。4) 飼育による成虫の寿命は22°C付近で17日前後,28°C付近で9日前後であり,雌雄間に差を認めえなかった。5) 本種は通常各態とも決して休眠することがなく,積算温度の法則より,東京府中地方では年間最大5回発生しうるように推定される。
著者
一瀬 太良
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.99-106_1, 1959-06-30 (Released:2009-02-12)
参考文献数
29
被引用文献数
1 3

タマナギンウワバ(オオワイキンモンウワバ)Plusia nigrisigna WALKERは本邦において最も普通の蔬菜害虫であるが,この種名は従来誤ってガマギンウワバP. (≠Phytometra) gamma L.として取り扱われてきたようである。この混同のいきさつや原因などを考察し,種名(属名を含む)の取り扱い方を論じた。タマナギンウワバについては従来あまり詳しい報告がない。よってその形態を述べ,あわせてガマギンウワバその他の近似種との比較を行った。
著者
大場 茂
出版者
The Crystallographic Society of Japan
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.201-207, 1996-06-30 (Released:2010-09-30)

Several cautions concerning the assignment of Bravais lattice and space group are presented for beginners in X-ray crystal structure analysis.
著者
Yuichi Fukui Seigo Ohkawa Hisashi Inokuma
出版者
National Institute of Infectious Diseases, Japanese Journal of Infectious Diseases Editorial Committee
雑誌
Japanese Journal of Infectious Diseases (ISSN:13446304)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.302-305, 2018-07-31 (Released:2018-07-24)
参考文献数
15
被引用文献数
7

Anaplasma phagocytophilum DNA was detected from a dog with canine granulocytic anaplasmosis (CGA) in Japan. Phylogenetic analysis of the DNA using 16S rRNA, gltA, and groEL sequences revealed that the strain was nearly identical to A. phagocytophilum detected from Apodemus agrarius (black-striped field mouse) in China and Korea. To our knowledge, this is the first report of molecular detection and phylogenetic analysis of A. phagocytophilum from a clinical case of CGA in Japan.
著者
村田 正幸 小南 大智 荒川 伸一 津留 三良
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、まずSDI環境において適応性を向上するゆらぎ型VN制御手法を開発した。次に、生物学実験結果にもとづき、SDI 環境における進化可能性を高める物理NW基盤設計手法を確立した。SDI 環境における進化可能性とは、ゆらぎ型VN制御手法で用いる制御行列が、その変異を伴って新しいVN配置を発見できる能力である。これにより、ある時刻にゆらぎ型制御手法が有する制御行列では適応困難な環境変動が生じた際にも、制御行列の再構成によって新たな環境に適した制御行列への進化が可能となる。評価により、資源増強によりVN 候補の多様性が増し、より多様な環境変動への適応可能性を持つことを明らかにした。
著者
野村 昌史
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

各地の農業試験場等にアンケート調査を行ったところ、キャベツ等にキンウワバ類の被害が多いという回答を得られたが、イラクサギンウワバの発生が見られるという回答は少なく、本種の認識がなされていない可能性が示唆された。そこで特にキャベツほ場等を中心にキンウワバ類の幼虫採集を行った。その結果、多くの地域での本種の発生が確認された。主として6月および10月に行ったが発生するキンウワバ類には違いが見られた。すなわち6月の時期にはどの地域でもタマナギンウワバが優占種であり、イラクサギンウワバの発生は少ないものであった。ところが10月の時期に採集を行うと、西日本では優占種が交代し、ほとんどのほ場ではイラクサギンウワバしか発生がみられなかった。千葉県では優占種はタマナギンウワバで変わらなかったが、イラクサギンウワバの比率が増加していた。さらに12月に入った調査ではイラクサギンウワバの個体数は急激に減少し,タマナギンウワバより早く野外で見られなくなった。その要因のひとつとして,イラクサギンウワバは低温に弱く,冬の早い段階でほとんどが死滅するためと考えられたため室内実験を行い、各ステージの低温耐性を求めた。各ステージを5℃条件下に長時間さらしてその死亡率などを求めた。その結果、幼虫ではイラクサギンウワバの死亡率がタマナギンウワバよりも高く、イラクサギンウワバは低温耐性が低いことが判明した。冬の寒い時期でも発生が見られ,翌年春先から再び出現し始めるタマナギンウワバに比べ,冬にほとんどが死滅してしまうイラクサギンウワバは,翌年の発生が遅くなると考えられた.イラクサギンウワバの発生源調査は今回のデータだけでは明らかにできなかったが、室内実験ではキンウワバトビコバチというキンウワバに特異的な寄生蜂に日本産のイラクサギンウワバは寄生されなかった。北米個体群では寄生されることが分かっており、実験にも用いられるほどであるから、北米個体群が日本に入り込んでいる可能性は低いと考えられた。
著者
林 友直 市川 満 関口 豊 鎌田 幸男 豊留 法文 山田 三男
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.173-184, 1991-06

M-3SII型ロケット(1&acd;3号機)打上げに用いたレーダ系の構成は, 基本的には地上装置及び搭載機器共に従来のM-3S型ロケットと同様であるが, レーダ搭載機器の性能改善, 小型軽量, 簡素化等信頼性向上の観点から見直しを行ない次のような変更を打なった。(1) 1.6GHz帯レーダトランスポンダ(1.6RT)アンテナの送受共用化(2) 5.6GHz帯コマンドデコーダ(5.6DEC)の更新(3)レーダトランスポンダ電源電圧の18V系への変更レーダ地上装置系(1.6GHz帯4mφレコーダ及び3.6mφレーダ, 5.6GHz帯精測レーダ)はロケット第二段計器部に搭載された各々のレーダトランスポンダからの電波を自動追跡し, 実時間におけるロケットの飛翔経路標定を打なった。さらに, 精測レーダからは飛翔中のロケットに対し電波誘導コマンドコードの送出を行ない, 総べて正常に作動した。しかし, このM-3SII型ロケットでは第二段ロケットエンジンの燃焼ガスによる電波減衰が従来のM型ロケットに比べて大きく生じた。本文では, これらのロケット追跡に用いた地上装置と, 今回変更したレーダ搭載機器の概要と追跡結果並びにデータ処理により得られたロケットの速度・加速度の大きさ及びそれらの方向等について報告する。
著者
久木元 美琴 西山 弘泰 小泉 諒 久保 倫子 川口 太郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.23, 2011

近年,大都市都心部での多様な世帯を対象としたマンション開発にともない,子育て世帯の都心居住や都心部での保育所待機児童問題が注目を集めている.都心居住は職住近接を可能にするため,女性の就業継続における時空間的制約を軽減する一方で,都心部では急増した保育ニーズへの対応が追い付いていない.そこで,本研究は,都心湾岸部に居住する子育て世帯の就業・保育の実態とそれを可能にする地域的条件を明らかにする.発表者はこれまで,豊洲地区における民間保育サービスの参入実態を明らかにしてきた.本発表では,共働き子育て世帯の属性や就業状況,保育サービス利用の実態を検討する.<BR>調査方法としては,豊洲地区の保育所に子どもを預ける保護者を対象に,2010年11月にアンケート調査を実施した.豊洲地区に立地する13保育所のうち,協力を得た7保育所(認可5施設,認証2施設)において,施設を通じて配布し郵送にて回収した.総配布数659,総回答数207(31.4%),有効回答数203(30.8%)であった.このうち,豊洲1~5丁目在住の170世帯を抽出し分析対象とした.<BR> 結果は以下のとおりである.全体の9割が2005年以降に現住居に入居した集合住宅(持家)の核家族世帯で,親族世帯は4世帯と少ない.世帯年収1000万円以上,夫の勤務先の従業員規模500人以上が7割程度と,世帯階層は総じて高い.また,夫婦ともに企業等の常勤や公務員といった比較的安定した雇用形態で(70.0%),ホワイトカラー職に就く世帯が全体の過半数を占める.さらに,夫婦の勤務先は都心3区が最も多く,それ以外の世帯の多くも山手線沿線の30分圏内と,職住近接を実現している.<BR> ただし,帰宅時間には夫婦で差がある.普段の妻の帰宅時間は19時以前が147回答中141で,残業時でも20時以前に帰宅する者が多い.他方,夫は残業時に20時以前に帰宅する者は少数で,23時以降が最も多い.残業頻度が週3日以上の妻は約2割である一方で,夫は半数近くが週3日以上の残業をしている.<BR>また,回答者の約6割が待機期間を経て現在の保育所に入所している.待機中の保育を両親等の親族サポートに頼った者は4世帯に過ぎず,妻の育児休業延長や,地域内外の認可外保育所や認証保育所などの民間サービスによって対応していた.予備的に行った聞き取り調査では「確実に認可保育所に入れるために,民間の保育所に入園した実績を作っておく」という共働き妻の「戦略」も聞かれた.さらに,妻の9割近くが育児休業を,約8割が短時間勤務を利用している.妻の過半数は従業員500人以上の企業に勤務しており,育児休業取得可能期間が長く短時間勤務の利用頻度も高い傾向にあるなど,充実した子育て支援制度の恩恵を享受している.<BR>以上のように,本調査対象の子育て世帯は,夫婦共に大企業に勤務するホワイトカラー正規職が多く,職住近接を実現している.特に,充実した子育て支援制度や,民間保育所を利用し認可保育所に確実に入所させるといった戦略によって,就業継続を可能にしている.ただし,妻の働き方は必ずしもキャリア志向ではないことが特徴的である.<BR>また,回答者の過半数が現在の保育所に入所する前に待機期間を経験し,待機期間には妻の育児休業の延期や民間サービスの利用で対応している.この背景には,当該地区における豊富なニーズを見越した民間サービスの参入があると同時に,これらの子育て世帯が認可保育所に比較して一般に高額な民間保育所の保育料を支払うことのできる高階層の世帯であることが示されている.