著者
石井 拓男 加藤 一夫 榊原 悠紀田郎
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.78-102, 1982 (Released:2010-10-27)
参考文献数
333
被引用文献数
2

日本における歯牙フッ素症の疫学調査に関する文献338件を収集し, その中から歯牙フッ素症のフィールド調査に関する248件の報告について考察を行った。我国において, 歯牙フッ素症の調査報告は, 宮城県以外の46都道府県でみとめられたが, 長期間連続的に調査された地区は22県内の36地区であり, そのうち同一調査者, 研究機関によって追跡調査されたところは12県内15地区であった。さらに水質の改善から, 歯牙フッ素症の減少, 消滅まで追跡し報告のされた地区は, 熊本県阿蘇地区, 山口県船木地区, 岡山県笠岡地区, 愛知県池野地区の4地区のみであった。飲料水中のフッ素濃度の測定が一般的になったのは1950年頃からで, それ以前の報告52件中, 実際にフッ素の確認のあった7件以外はフッ素の裏づけの無いものであったが, 追跡調査及び結果の内容から歯牙フッ素症と認められるものが31件あった。1950年以降でフッ素濃度の記載のないもの20件とフッ濃度0.3ppm以下で歯牙フッ素症の発症を報告しているもの11件計31件のうち, 迫跡調査が無く, その結果の内容からも歯牙フッ素症との確認がむつかしいものが11件あった。今回収録した文献の中で, 最も高濃度のフッ素の報告は美濃口ら ('56) による滋賀県雄琴での23pgmであった。このほか10PPm以上の報告が3件あった。日本の歯牙フッ素症の報告は1925年福井によって発表されて以来およそ60年の歴史があるが, 1950年から1960年の10年間に, 全体の報告数の55%が発表されており, 1つの流行現象のあったことが認められた。またその調査報告は, 単に歯科領城に留まらず, 医科及びその他の研究機関で幅広く実施されていたことも認められた。
著者
杉林 堅次
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.241-245, 2007-12-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
17

化粧品には, その目的により, 有効成分を角層中に浸透させたり, 表皮細胞層や真皮細胞層に吸収させるべく設計されたものがある一方で, 有効成分を皮膚に浸透させずに皮膚をカバーすることによって目的を達成できるものがある。また, 有効成分を皮膚の実質層ではなく毛髪や毛嚢にのみに集中的に移行させることを企図した化粧品もある。したがって, 化粧品の有効性を高める場合には, その化粧品の目的にあった有効成分の浸透・吸収性を示すことが望まれる。ここでは, 有効成分の皮膚への浸透・分配性, また皮膚透過性の実験・評価方法, さらには, 皮膚浸透・分配性や皮膚透過性の制御や改善 (促進) 技術について主にQ/A形式で紹介する。
著者
藤堂 浩明
出版者
日本香粧品学会
雑誌
日本香粧品学会誌 (ISSN:18802532)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.106-111, 2021-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
9

The skin concentration of topically applied cosmetic active ingredients is very important for evaluating cosmetics. However, the direct measurement of drug concentration in the membrane has several problems. Generally, controlling the removal of the drug formulation from the membrane surface is very difficult. Hard cleaning of the membrane surface decreases the membrane concentration, whereas inadequate cleaning may leave the drug formulation on the membrane. In the present paper, relationship between skin permeation and skin concentration is shown and research results with verification result for utilization to dose setting method guideline for human long-duration trials (Safety) is also introduced. I hope this paper will be helpful to ensure the efficacy and safety of cosmetic products.
著者
及川 良彦 山本 孝司
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.8, no.11, pp.1-26, 2001-05-18 (Released:2009-02-16)
参考文献数
102

縄文土器の製作についての研究は,考古学的手法,理化学的手法,民族学的手法,実験考古学的手法などの長い研究史がある。しかし,主に製作技法や器形,施文技法や胎土からのアプローチがはかられてきたが,土器の母材となる粘土の採掘場所や採掘方法,土器作りの場所やそのムラ,粘土採掘場とムラの関係についての研究は,民族調査の一部を除き,あまり進展されずに今日に至っている。多摩ニュータウンNo.248遺跡は,縄文時代中期から後期にかけて連綿と粘土採掘が行われ,推定面積で5,500m2に及ぶ全国最大規模の粘土採掘場であることが明らかとなった。隣接する同時期の集落であるNo.245遺跡では,粘土塊,焼成粘土塊,未焼成土器の出土から集落内で土器作りを行っていたことが明らかとなった。しかも,両遺跡間で浅鉢形土器と打製石斧という異なる素材の遺物がそれぞれ接合した。これは,土器作りのムラの人々が粘土採掘場を行き来していることを考古学的に証明したものである。土器作りの根拠となる遺構・遺物の提示と粘土採掘坑の認定方法の提示から,両遺跡は今後の土器作り研究の一つのモデルケースとなることを示した。さらに,粘土採掘坑から採掘された粘土の量を試算し,これを土器に換算し,住居軒数や採掘期間等様々なケースを想定した。その結果,No.248遺跡の粘土は最低でも,No.248遺跡を中心とした5~10km程の範囲における,中期から後期にかけての1,000年間に及ぶ境川上流域の集落の土器量を十分賄うものであり,最低限この範囲が粘土の消費範囲と考えた。さらにNo.245遺跡は土器作りのムラであるだけでなく,粘土採掘を管理したムラであることを予察し,今後の土器生産や消費モデルの復元へのステップとした。以上は多摩ニュータウン遺跡群研究の一つの成果である。
著者
岡本 弘
出版者
一般社団法人 日本ゴム協会
雑誌
日本ゴム協会誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.623-635, 1975 (Released:2008-04-16)
参考文献数
89
被引用文献数
5 1
著者
安藤 俊幸
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第20回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.43-48, 2023 (Released:2023-06-28)

近年、知財業務で機械学習をベースにした人工知能(AI)使用して、特許調査の効率化や洞察力を加味する取り組みが始まっている。既に複数のAI利用特許調査ツールが商用利用されている。最近、世界的にもChatGPTをはじめとした対話型AI(生成系AI)がポジティブ・ネガティブ両面で大変注目を集めている。インフォプロにもこれらの新しいAIツールへの対応が求められる。最初に特許調査の分野においてBERTとGPTの共通点と相違点、対話型AIの問題点等に関して具体的に事例を示す。次に商用のAI利用特許調査ツールと比較しながらBERT、GPTによる特許調査の効率化検討を行った。より具体的には特許文書の類似文書検索、分類、俯瞰可視化を検討した。調査目的に応じてBERT、GPT等の特徴を理解して使いこなすことが重要である。
著者
永井 聖剛
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.23-35, 2018-06-10 (Released:2023-07-01)

一般に、田山花袋文学におけるニーチェ思想の影響は、「美的生活論」(高山樗牛)を経由した「本能の満足」の主題化として認識されている。本稿が考察するのは、ニーチェの同時代読者としての花袋が、その弱者道徳批判(ルサンチマン)の思想をどう摂取し、小説作品に取り込んできたかである。そこで明らかになったのは、花袋がニーチェ思想を明らかに誤読し、そればかりか、〈自然〉の名のもとに、弱者を救済する反ニーチェ的な思想を構築していたことである。ただしそれは、花袋のオリジナルの思想というよりは、樗牛、蘆花らの同時代テクストとの相互関連性のなかで育まれたものであった。
著者
佐藤 隆夫 松嵜 直幸
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 24.35 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.47-51, 2000-06-14 (Released:2017-06-23)

Human performance in gaze perception was examined by using natural and low-pass filtered images presented at various viewing distances. The results indicated that there is little effect of viewing distance and cut-off frequency of the low-pass filtering. These results indicate that human gaze perception is not based on detailed information such as absolute position of pupil edge. Rather, the results suggest that gaze perception is based on position of low-frequency components relative to eye-width.
著者
山口 あゆみ 大西 一禎 栗山 健一
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.118-126, 2010-06-20 (Released:2012-06-25)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3

男性顔面上で「ギラつき」と表現される現象は,一般的に皮脂量の多さに関係すると考えられている。しかし,加齢に伴い皮脂量は徐々に減少することに反し,ギラつきは中高年男性に顕著である。そこで男性顔面の前額部において,ギラつきとさまざまな皮膚特性との相関を解析した。ギラつきに対する重回帰分析を行ったところ,皮脂量で0.490,キメ細かさで—0.370,皮膚色の明度で—0.314の標準偏回帰係数が得られた。皮脂量の要因が最大であったが,他ニ者もギラつきに関与する重要な因子であることが示された。また,画像解析によって得られる前額部の表面反射光および内部反射光の光学的特性値を用いて重回帰分析を行い,ギラつき度予測式を導いた。表面反射光の光学的特性値は,皮膚上に存在する皮脂量とキメの状態によって決定されると推測できた。紫外線対策が不十分な男性特有の生活習慣は,キメの不明瞭化や顔面色の暗化を引き起こし,男性顔面に特徴的な「ギラつき現象」を発生させていると考えられる。ギラつきを低減するには洗顔等による皮脂の除去が基本となるが,スキンケアによる皮膚色やキメの改善も重要であると考えられた。
著者
祝迫 惠子 坂口 志文
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.483-488, 2017 (Released:2018-02-14)
参考文献数
19

Organ transplantation remains the only fundamental treatment for end-stage organ failure. Immunosuppression therapy is the key to successful post-transplantation outcomes. Although the survival after organ transplantation has improved with the development of immunosuppressant, chronic rejection and side effects of long-term exposure to immunosuppression remain ongoing concerns. Immune tolerance is important for normal physiology, and occurs in two forms: central and peripheral. The regulatory T cell is the essential constituent in peripheral tolerance. Regulatory T cells specialize in suppressing immune responses, including autoimmune disease, allergy or alloreaction. Regulatory T-cell therapy in transplantation may be emerging as an alternative therapeutic choice.
著者
島田 淳
出版者
一般社団法人 日本顎関節学会
雑誌
日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.3-8, 2021-04-20 (Released:2021-10-20)
参考文献数
23

顎関節(雑)音は,顎関節症の主要症候の一つである。しかし症状が,顎関節(雑)音のみの場合には,日常生活に支障がでることはほとんどなく,自然経過は良好な場合が多いとされ,治療による顎関節(雑)音の改善,消失は困難であり,再発することも少なくない。痛みや開口障害を伴わない顎関節(雑)音を生ずる病態は,主に顎関節円板障害と変形性顎関節症であり,そのほとんどに関節円板転位が関与している。しかし顎関節(雑)音の病態はさまざまであるため,診察・検査により病態を診断する必要がある。「痛みと開口障害を伴わない顎関節(雑)音」の多くは自然経過が良好である。治療を行ってもその効果は不確実で,副作用として咬合が変化する可能性があり,咬合治療や矯正が必要となる場合がある。しかし症状が悪化しないためには,病態に対する理解とセルフケアが必要である。歯科医師は診察・検査で得られた患者の病態を基に経過観察を含めた治療に対する合理的な選択肢とそれらの利益やリスクに関するエビデンス,さらには患者の価値観を共有し,患者にとって最善の治療方針を患者と一緒に決定することを目的とした説明を行うことが求められる。
著者
合田 美子
出版者
公益財団法人 国際交通安全学会
雑誌
IATSS Review(国際交通安全学会誌) (ISSN:03861104)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.51-59, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
21

自動運転の高度化に伴い、複数のレベルの自動運転車が混在するようになる。自動運転のレベルによって、自動車の挙動、ドライバーの役割などが異なってくる。このような社会で、安全で安心で円滑な交通を実現するためには、システムや法規などの構造的なアプローチだけでなく、安全な態度と行動を取るドライバーや交通利用者の育成などの教育的手法を用いる必要がある。本稿では、教育工学の観点から、安全教育の仕組みづくりや仕掛けを提案する。特に、自動運転に関して学ぶべき内容、教材、教授法について、実証的検証により効果のあった方法について解説し、今後目指すべき方向性について検討する。
著者
吉澤 小百合
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.101-119, 2023 (Released:2023-06-30)
参考文献数
64

本稿の目的は,探究学習の実施における日本の高等学校の学校図書館と学校図書館職員の現状と課題を,教員と学校図書館職員の考えをもとに明らかにすることである。研究方法は,文献調査と質問調査(Web 調査)である。まず文献調査から5 つの論点を整理し,論点を構成する先行研究を基に,質問事項を決定した。質問調査の対象は国内にある国立・公立・私立の全日制高等学校・中等教育学校における国語科,社会科の教科主任,学校図書館担当教諭,学校図書館職員である。調査の回答数は750 校送付中,330 校(44.0%)であり,回答者は合計646 名(21.5%)だった。回答結果について,全体の傾向分析と因子分析などを行った。これらの調査結果から探究学習指導の目的,情報検索に関する指導内容,学習・情報センター職務の実施,学校図書館職員の自信,学校図書館の情報化,という5 つの論点に基づいた現状と課題を明らかにした。