著者
吉田 剛
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B3O1068, 2010 (Released:2010-05-25)

【はじめに】一般的に、加齢により喉頭位置は下降して、嚥下時の喉頭挙上、食道入口部開大を阻害するといわれているが、喉頭が上方に位置して喉頭運動を阻害する病態については知られていない。我々は嚥下運動阻害因子を検討するための指標として相対的喉頭位置を開発し、臨床で用いてきた。本学会で過去に発表した縦断研究では、嚥下障害重症度の悪化時に、頸部・体幹機能の低下と相対的喉頭位置の上昇が生じることを示したが、悪化群は6名と少なかったため、喉頭位置が上昇することにより悪化することの意味は解明できなかった。【目的】脳卒中による嚥下運動障害者について、発症後、片麻痺などの運動障害による姿勢への影響がある程度定着したと考えられる回復期以降のデータを横断的に分析し、嚥下運動障害者の中で、相対的喉頭位置が上方に位置する者がどれくらい存在するのかを明らかにしたい。また、相対的喉頭位置が特に高い群と低い群および中等度群の3群に分けて、その特徴を検討することで、喉頭位置が上方にある群の特徴を明らかにしたい。【方法】対象は、脳血管障害による嚥下運動障害を有し、発症から評価までの期間が90日以上経過したデータを有する127名(男女比69:58、平均年齢75.2±13.2歳)であった。評価項目は、嚥下障害について、才藤の臨床的病態重症度分類、反復唾液嚥下テスト(RSST)、改訂版水飲みテスト(MWST) 、食物テスト(FT)の4つ、頸部・体幹機能として、吉尾らの頸・体幹・骨盤帯機能ステージ(NTPステージ)、頸部関節可動域4方向(回旋と側屈は左右で少ない方の値を採用)、運動麻痺の程度は、下肢のブルンストロームステージを4段階にグレード化し、ステージ1と2を重度=3、3と4を中等度=2、5と6を軽度=1、麻痺なし=0とした。また、我々が開発した嚥下運動阻害因子に関する評価項目として、前頸部最大伸張位でのオトガイ~甲状切痕間距離GT、甲状切痕~胸骨上端間距離TS、GT/(GT+TS)で計算する相対的喉頭位置(T位置)、舌骨上筋筋力を4段階で示すGSグレードを採用した。127名の全データから、T位置が、平均値より1標準偏差以上逸脱しているかどうかで、上方群、下方群、平均群の3群に分類した。統計処理は、有意水準を5%未満として、平均群と上方群、平均群と下方群間の比較には、ウェルチのt検定およびマン・ホイットニーのU検定を用い、各評価項目間の相関については、各群でピアソンの相関係数を求めた。【説明と同意】ヘルシンキ条約に基づき、全対象者またはその家族に対して、研究の目的、方法を十分に説明したうえで、同意を得た。【結果】127名のT位置の平均は、0.41±0.07であり、上方群(T位置<0.34)は24名(平均70.0±18.1歳)で、下方群(T位置>0.47)は、14名(81.6±8.6歳)、平均群は89名(平均75.7±11.9歳)であった。上方群はGTが短く、下方群はTSが短い傾向がみられた。平均群に比べて、上方群は、頸部可動域制限が全方向にみられ、GSグレード、反復唾液嚥下回数も低かった。下方群は、平均群に比べて、年齢が高く、頸部伸展・回旋・側屈の可動域制限、GSグレード、NTPステージ、FTの低下がみられた。各群の指標間の相関は、全体および平均群では弱い相関であったが、上方群と下方群では、中等度の相関がみられる項目が多く、上方群では、GTとTSがNTPステージと、また重症度とNTPステージの間に中等度の相関がみられた。上方群の中でも、GSグレードが高く、TSの長さが長い者は軽症である傾向があり、下方群でもGSグレードが高い者は軽症である傾向がみられた。【考察】嚥下運動障害者のT位置は、下降により問題が生じるケースが多いが、上方に位置する場合も平均群より問題が大きいことが明らかになった。T位置上昇は、頸部・体幹機能低下によって生じる頸部筋緊張異常によるものと推察された。しかし、各群の中にも、GTやTSが標準より長いか短いか、喉頭挙上筋である舌骨上筋の活動が強いか、頸部可動域が標準以上であるかどうかで、嚥下障害の重症度は影響を受ける傾向がみられた。従って、これらの嚥下運動に影響を与える複数要素を複合的に評価しながら、嚥下運動の改善を図ることが必要であると考えられる。【理学療法学研究としての意義】嚥下時喉頭挙上運動は、喉頭下降によって阻害されているばかりではなく、上昇位でも阻害されることが明らかになった。嚥下運動阻害因子を評価しながら、その病態に合わせて、舌骨上筋群の強化、舌骨上・下筋群の伸張性改善、頸部筋緊張の改善による可動域の向上などを行うことが、理学療法士の役割として重要であることが示唆された。
著者
進 武幹 梅崎 俊郎
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.88, no.5, pp.553-559, 1995-05-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
14
被引用文献数
2 3

In general, esophagography with a VTR system, electromyography and measurement of the pressure of the digestive tract are used for evaluation of the swallowing function. In previous reports a time lag in movement of the bolus was pointed out in many patients with dysphagia. However, a standardized time reference for this lag was not clarified in most cases.A new concept evaluating dysphagia is introduced in this study to clarify the pathophysiology of swallowing disorders. The movement of the bolus is referred to as a phase, and the time progress of the patterned output from the medullary swallowing center is referred to as a stage. It can, therefore, be considered that dysphagia occurs when the time lag between the phase and stage exceeds the physiologically permissible limits.The standard point of the phase and stage were determined separately from an analysis of the esophagogram with a VTR system in normal volunteers, and the time lag between the two points was measured in patients with dysphagia. We devised a new instrument to evaluate the swallowing function, which can record simultaneously the pressure of the oral cavity and pharynx and the air flow rate. These methods were useful for detecting the delay of the initiation of pharyngeal swallowing which is observed in patients with dysphagia caused by lesions of the corticobulbar tract.
著者
伊藤 彰則 牧野 正三 城戸 健一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J74-D2, no.9, pp.1147-1155, 1991-09-25

連続音声認識のための新しい統語処理アルゴリズム「機能語予測CYK法」について述べる.機能語予測CYK法は,CYK法をベースとし,これに機能語の予測機能を加えたものである.機能語を予測しながらマッチングすることにより,効率的な処理を行うことができる.次に,この機能語予測CYK法にビームサーチを導入したアルゴリズムを提案する.また,機能語を効率良く予測するための正規文法(機能語オートマトン)を導入する.これは,従来の文節処理に用いられてきた有限オートマトンと同じものが使用できるため,文節内文法での各種の制約が利用できる.ビームサーチと機能語オートマトンの導入によって,非終端記号数の増加に伴う記憶容量および計算量の増加を抑えることができる.このビームサーチを用いた機能語予測CYK法と,文節検出+統語処理の2段階の認識方式との比較実験を行った結果,計算量・精度ともに機能語予測CYK法が優れていることがわかった.
著者
中橋 友子 Tomoko NAKAHASHI 尚美学園大学総合政策学部非常勤 Shobi University
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.75-94, 2016-12-25

暴言王トランプの当選に世界は驚いた。しかしアメリカの有権者の多くが置かれている状況を考えれば、それは驚くに値しない。ここではアメリカがどのような文化・社会的問題を抱え、人々が何を彼に期待して投票したのかを論じる。
著者
藤井 透 大窪 和也
出版者
一般社団法人 日本接着学会
雑誌
日本接着学会誌 (ISSN:09164812)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.66-73, 2004-02-01 (Released:2015-08-31)
参考文献数
12
著者
Shuichi Sato Tetsuya Chikama Mikio Ohuchi
出版者
The Society of Photopolymer Science and Technology (SPST)
雑誌
Journal of Photopolymer Science and Technology (ISSN:09149244)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.57-67, 2017-06-26 (Released:2017-08-10)
参考文献数
12
被引用文献数
2

Photoelectric properties and drive characteristics of guest-host (GH)-type liquid crystal cells with yellow, magenta, cyan, green, and gray colors using 4-cyano-4'-pentylbiphenyl (5CB) and three diazo-based dichroic dyes were systematically investigated in different driving modes. The dichroic dyes have structures similar to 5CB; therefore, they uniformly mixed and dispersed into the liquid crystal matrix. The green and gray colors were obtained by mixing appropriate ratios of two or more dyes. Impedance of the GH cells decreased upon the incorporation of the dyes into 5CB. However, the photoelectric properties and drive characteristics of the liquid crystal cells were not altered after the inclusion of the dye. In particular, the alignment of the molecules strongly depended on the cell structure. The GH cells in twisted nematic mode exhibited a low driving voltage of approximately 1.5 V.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ベンチャ- (ISSN:02896516)
巻号頁・発行日
no.263, pp.62-64, 2006-08

昨年話題になった近未来小説『半島を出よ』は、「戦う姿勢」を忘れている日本人への警告の書として読みました。 北朝鮮の「反乱軍」が福岡を制圧しにかかっているのに、日本の政府も国民も右往左往するばかり。北朝鮮の兵士たちが拍子抜けするほどのふがいなさです。けれど、現実にこういう事件が起きれば、やはり今の日本人は、こう反応するでしょう。
著者
岩堀 由裕 水野 信也
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2017-IOT-38, no.7, pp.1-7, 2017-06-17

静岡理工科大学では現在脆弱であった情報基盤の整備を進めている.これには当然ながらコスト削減も必要であるが,教育機関として役割を果たすために次のような観点で計画を進めている.(i) 教育にフィードバックできる情報基盤の作成,情報基盤は見えない部分が多く,学生にとっては内部でどのような処理がなされているか見えない部分が多い.これには可視化が欠かすことができず,WiFi やウイルス対策状況など可視化しフィードバックをしている.またデータセンターの見学も行い,実際の運用環境を見ながら教育を実施している.(ii) クラウド環境利用の取り組み,クラウド ・ コンピューティングの環境は様々な場面で利用されているが,本学では教育クラウド環境と呼び,多くの学生に利用されている.また教員にもバックアップを個々で管理できるような環境が整備されている.クラウドの利点を活かし,幅広い利用を実施している.(iii) 情報基盤データの IR 利用,IR の重要性が高まる中,情報基盤データを IR に利用する取り組みをしている.学内には様々なデータがあるが,そのデータ整合性を取るために Office 365 を用いた統合認証環境を導入した.今後 IR を活用し,教育にフィードバックしていく.本研究では現在の取り組みをコストや可用性の面だけでなく,教育への貢献の面からも議論していく.
著者
小国 喜弘 木村 泰子 江口 怜 高橋 沙希 二見 総一郎
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.1-28, 2016-03-31

The purpose of this paper is to discuss theory and art in Inclusive Education (referred to as “Full Inclusion” in the United States) within regular classes or at regular schools, by focusing on the practice of Osaka City Municipal Ozora Elementary School, which is known to utilize Inclusive Education. Section 1, entitled “Explaining Ozora Elementary School,” was written by Yasuko Kimura, the former principal of the school. In section 2, we discuss the history of the movement towards Inclusive Education in Japan, which began in the 1970s. In section 3, we discuss details pertaining to teachers’ value of human rights in daily school life. In section 4, we outline the kinds of techniques that must be acquired by teachers who work in Inclusive Education schools.
著者
辛 星漢
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究開発では、既存のパスワード認証方式を理論的に分析した上、効率がよくてかつ厳密な安全性証明ができる新しいパスワード認証方式を提案する理論研究とともに国際標準団体でのその標準化活動を行った。理論研究の成果としては、既存のパスワード認証方式の安全性を分析し、新たな(匿名)パスワード認証方式を提案した。国際標準化活動の成果としては、IKEv2 へ適用したパスワード認証方式(AugPAKE)の仕様が国際標準団体IETF より新たな規格 Experimental RFC 6628 として承認・発行された。

1 0 0 0 OA 毛利家文書

出版者
巻号頁・発行日
vol.[15],