著者
Zaw Win Ko 榎並 正樹 青矢 睦月
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集 2003年度 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
巻号頁・発行日
pp.34, 2003 (Released:2004-12-31)

四国三波川帯・別子地域の瀬場谷中流域は、曹長石-黒雲母帯に属し、変斑れい岩 (250 m × 150 m)を取り巻いて、少量の泥質片岩を伴う塩基性片岩が不定形のレンズ状 (2 km × 1 km) に分布している。これらの岩相からは、散在的にではあるがエクロジャイト相の鉱物組み合わせが報告されており、変斑れい岩と塩基性片岩を主とするレンズ全体はエクロジャイト・ナップの一部をなし、エクロジャイト相の変成作用を経験していないとされる通常の結晶片岩類の上位に重なると考えられている。しかしながら、このエクロジャイト・ナップに属するとされる泥質片岩からは、エクロジャイト相での平衡を示す岩石学的・鉱物学的デ-タは報告されていない。そこで、泥質片岩中からエクロジャイト相変成作用の情報を読みとることを目的として、クロリトイドを含む泥質片岩に注目して研究を行った。その結果、新たにクロリトイド+バロワ閃石の共生を見いだした。今回はこの共生が、エクロジャイト相条件下で安定であったことを論じる。 検討した2試料において、クロリトイドと黒雲母が、ざくろ石の包有物としてのみ産する。そのほかの鉱物としては、ざくろ石、バロワ閃石、パラゴナイト、フェンジャイト、緑泥石、緑レン石、石英、電気石、チタナイトおよびルチルが認められ、パラゴナイト以降の鉱物は、ざくろ石の包有物としても産する。曹長石は、ざくろ石の包有物としては認められないが、基質部にバロワ閃石や緑泥石をともなう細粒集合体として、きわめてまれに産することがある。クロリトイド:mg# [= Mg/(Mg+Fe)]値は0.29-0.33であり、中・低圧変成岩中のもの(mg# ざくろ石:結晶の中心部から周辺部にかけて、MgとFeが増加し、Mn およびCa が減少する昇温型累帯構造を示し(Alm49-66Prp8-18Grs14-24Sps2-23)、曹長石-黒雲母帯に属するクロリトイドを含まない泥質片岩中のざくろ石 (Alm25-73Prp1-12Grs13-39Sps0-50) に比べて、Mgに富む。バロワ閃石:Al (1.65-2.34 pfu) とNa (0.95-1.57 pfu) に関して広い組成範囲を有し、曹長石-黒雲母帯に属する他の泥質片岩中の角閃石 (Na 緑泥石:基質の緑泥石は均質(Si = 2.7-2.8 pfu, mg# = 0.60-0.64)である。一方、包有物として産する緑泥石は、Si量が3 pfuを超えて広い組成範囲を示し (Si = 2.7-3.3 pfu, mg# = 0.50-0.73)、それは緑泥石とタルクがサブミクロン単位で互層していることによると解釈される。 Holland & Powell (1998)の熱力学データベースを用いて見積もった、クロリトイド+緑泥石+バロワ閃石+ざくろ石+パラゴナイト+石英の組成共生の平衡条件は、540-570 C・1.6 GPaである。一方、緑泥石+クロリトイド+ (タルク) の共生から得られる圧力条件は、550 Cにおいて1.8-1.9 GPaである。これらの平衡条件は、エクロジャイト・ナップの下位に位置するとされている周囲の結晶片岩類 (500-580 C・0.8-1.1 GPa) に比べると、有意に高圧条件を示し、変斑れい岩および塩基性片岩中のエクロジャイト共生の平衡条件 (610-640 C・1.2-2.4GPa) とは矛盾しない。今回の研究結果は、泥質片岩を含めてレンズ部の結晶片岩類全体が、エクロジャイト相変成作用を経験したことを示しており、エクロジャイト・ナップの存在を強く示唆す
著者
Nagai Yuji Kikuchi Erika Lerchner Walter Inoue Ken-Ichi Ji Bin Eldridge Mark A G Kaneko Hiroyuki Kimura Yasuyuki Oh-Nishi Arata Hori Yukiko Kato Yoko Hirabayashi Toshiyuki Fujimoto Atsushi Kumata Katsushi Zhang Ming-Rong Aoki Ichio Suhara Tetsuya Higuchi Makoto Takada Masahiko Richmond Barry J Minamimoto Takafumi
出版者
Springer Nature
雑誌
Nature communications (ISSN:20411723)
巻号頁・発行日
vol.7, 2016-12-06
被引用文献数
88

脳内に「やる気」のスイッチ、目で見て操作 : 霊長類の生体脳で人工受容体を画像化する技術を確立、高次脳機能研究の飛躍的な進展に期待. 京都大学プレスリリース. 2016-12-16.
著者
MIN SEO CHANG SEOK OH JONG HA HONG JONG-YIL CHAI SOON CHUL CHA YURI BANG IN GUK CHA YANG GUN WI JUNG MIN PARK DONG HOON SHIN
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (ISSN:09187960)
巻号頁・発行日
pp.160920, (Released:2016-12-17)
被引用文献数
40

In paleoparasitology, which is the study of ancient parasite species, parasite egg remnants in archaeological samples are examined by microscopic or molecular analysis. The parasitological information thus obtained can inform speculation about the parasite-infection patterns that prevailed in ancient societies. The current analysis of ancient feces removed from Joseon period mummies adds six new paleoparasitological outcomes to the existing pool of mummy parasitism data already maintained in South Korea. The current microscopic examination revealed the ancient parasite eggs of Trichuris, Clonorchis, Paragonimus, Ascaris, and Taenia in the Joseon mummy feces. When the updated Joseon data were compared with the 20th-century National Survey statistics of South Korea, clear differences could be observed between ancient and modern parasite infection rates. These results will yield invaluable insights—unobtainable by conventional historical investigation—that contribute to the knowledge base on the parasitism of pre-industrial East Asian societies.
著者
近藤 大介 加藤 正吾 小見山 章
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.9-16, 2008-06-25
被引用文献数
1

ブナ天然林における維管束着生植物・つる植物の生育環境を明らかにするために,岐阜県白川村のブナ天然林に100m×100mの調査地を設置し,胸高直径50cm以上の樹木に着生・登攀する維管束植物の種名・着生部位を調査し,あわせて森林の上層・下層の維管束植物リストを作成した。調査地には,着生植物43種,付着根型つる植物3種,上層木4種,下層植物99種が出現し,森林全体では111種が存在した。着生植物のうち31種は上層木または下層植物に含まれる種で,調査対象樹木上のみに出現したのは12種であった。調査対象樹木上に生育する着生植物の種数・出現数は,調査対象樹木の胸高直径が大きくなるほど増加する傾向がみられた。着生位置の高さ2〜4mの範囲では積雪の沈降圧により,着生植物が少なかった。高い頻度で出現した4種の着生する高さに着目したところ,ノキシノブ・ホテイシダに比べて,オシャグジデンダ・ヤシャビシャクは調査対象樹木の低い部位に分布していた。また,ヤシャビシャクが主に大枝の分枝点に着生していたのに対して,ほかの3種は幹や枝に多く着生していた。ブナ天然林の大型樹木によって作り出される多様な樹上の構造と環境の垂直分布が,そこに生育する着生植物の空間分布に影響していた。
著者
高﨑 章裕
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.72-73, 2013

沖縄県東村高江区におけるヘリパッド建設問題に反対して座り込みを行う地元住民や支援者のネットワークがどのように広がっているか、また地域とはどのような関係性を構築しているのかについて明らかにする
著者
名久井 文明
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.13, no.22, pp.71-93, 2006-11-01 (Released:2009-02-16)
参考文献数
105

縄紋時代以降の遺跡から発見されるトチの「種皮付き子葉」や「剥き身子葉」、および種皮の細、大破片は、当時のトチ利用の実態を理解するための手掛かりが民俗例の中に求められることを示している。民俗例のトチの「あく抜き」方式と,そのために前処理されるトチの態様との間に認められる対応関係に基づくと,遺跡から発掘されるトチ種皮の細片は,トチ利用者が「発酵系」「水晒し系」「はな(澱粉)取り系」の「あく抜き」方式で「あく」を抜いていたことを窺わせる。各方式に用いられる容器の物理的特性に着目すると,「煮る」ことを必要としない各「あく抜き」方式は旧石器時代に開発されていたと推察される。
著者
曽ヶ端 克哉 染谷 哲史 佐藤 卓 鳥越 俊彦 佐藤 昇志 平田 公一
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.1115-1118, 2005
被引用文献数
1

自動吻合器を使用したPPH (procedure for prolapse hemorrhoids) 法により痔核手術を施行したが,術後に巨大な直腸粘膜下血腫を生じ排便困難になった症例を経験した.患者は69歳女性で,痔核の脱出を主訴に外来受診し, Goligher分類ではIII度内痔核であったため手術を施行した.手術は肛門拡張器を肛門内に挿入し, Purse-string Suture Anoscopeを順次回転させながら2-0プロリンにて直腸粘膜に巾着縫合を全周にかけ,自動吻合器により切除を行った.巾着吻合の糸を索引した際に下腹部痛,嘔気および徐脈・血圧低下を訴え,術後も下腹部の違和感が残っていた.術後4日目になっても便が排出されず,肛門診の際吻合部に疼痛を訴えたため術後7日目に骨盤CT施行したところ,直腸に直径約7cmの粘膜下血腫を認めた. PPH法は手技も簡便で術後痔痛が少ないなど利点も多い.しかし安易な施行は合併症を起こすことを認識し,適応と手技を十分に検討していく必要があると思われた.
著者
能勢 博夫 水上 雅人 大橋 英史 村川 一雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMCJ, 環境電磁工学
巻号頁・発行日
vol.98, no.434, pp.51-55, 1998-11-27
被引用文献数
1

ファクシミリ、コードレス電話、パソコン通信用モデムのような通信端末機器は通信線及び商用電源線に接続されるため、雷サージ等の過電圧が通信線から商用電源線(又はその逆)へ雷サージ電流が流れ、通信端末機器が破壊されることがある。これに対してこれまでにバイパスアレスター法等の雷防護法が提案されているが、本報告では通信線又は商用電源線を一時的に遮断することにより、雷サージ過電圧による通信端末機器の破壊を防ぐ「雷防護ブレーカ」方式を提案するものである。
著者
松尾 美央子 力丸 文秀 檜垣 雄一郎
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.105, no.4, pp.369-373, 2012 (Released:2012-04-01)
参考文献数
8

TS-1® is an oral anticancer drug composed of tegafur which is a derivative of 5FU and 5-chloro-2,4-dihydroxypyridine (CDHP) and oxonic acid. We report on a patient with acute toxicosis who orally ingested a large dose of TS-1® 1400 mg in an effort to commit suicide. First of all, we treated him with gastric lavage, laxative and hydration. After that, he underwent hemodialysis. Before hemodialysis the blood concentration of tegafur was 25200 ng/mL, 5-FU was 3000 ng/mL and CDHP was 1870 ng/mL. These blood concentrations were high, compared with cases where 50 mg of TS-1® has been ingested. After the 2nd hemodialysis, all blood concentrations decreased to the normal level, so the patient was saved without severe side effects. To our knowledge, there has been no report of a case involving ingestion of a large dose of TS-1®, and we therefore report our experience of this rare case.
著者
増田 啓年 池田 和正 東岡 喜作子 永山 績夫 川口 安郎 堀 勝行 益子 俊之 江角 凱夫
出版者
The Japanese Society for the Study of Xenobiotics
雑誌
薬物動態 (ISSN:09161139)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.289-300, 1997-08-30 (Released:2007-03-29)
参考文献数
7
被引用文献数
7

ラットに[14C-FT]-S-1,[14C-CDHP]-S-1あるいは[14C-Oxo]-S-1を投与しその吸収および排泄について検討し,以下の結果を得た. 1.[14GFT]-S-1を投与した絶食雄性ラットでは,血液中放射能濃度は投与後1時間にCmax 6215 ng eq./mlを示したのち2相性を示して消失する傾向を示した.主排泄経路は尿中であり,投与後72時間までの尿中,糞中およびに呼気中にそれぞれ投与量の74.7%,1.6%および15.5%排泄された.また,投与後48時間までの胆汁中には投与量の4.3%が排泄された. 2.[14C-FT]-S-1を投与した絶食雌性ラットでは雄性ラットと比較して血液中放射能濃度および排泄率に大きな相違は認められなかった. 3.[14C-FT]-S-1を投与した非絶食雄性ラットでは吸収および排泄に食餌による大きな影響はなかった. 4.[14C-FT]-S-1注入後30分における消化管ループからの吸収率は十二指腸で96.0%,空腸で96.2%,回腸で91.4%,結腸で67.8%であった. 5.[14C-CDHP]-S-1を投与した絶食雄性ラットでは,血液中放射能濃度は投与後1時間にCmax 569 ng eq./mlを示したのち1相性を示して消失した.主排泄経路は尿中であり,投与後72時間までの尿中および糞中にそれぞれ投与量の74.8%および22.5%が排泄された.また,投与後48時間までの胆汁中には投与量の1.3%が排泄された. 6.[14C-CDHP]-S-1を投与した絶食雌性ラットでは雄性ラットと比較してCmaxは1.3倍,AUCは1.4倍であったが尿中への排泄率は9.8%少なかった. 7.[14C-CDHP]-S-1を投与した非絶食雄性ラットでは食餌により吸収率は低下した. 8.[14C-CDHP]-S-1注入後30分における消化管ループからの吸収率は十二指腸で18.2%,空腸で20.2%,回腸で12.1%,結腸で4.0%であった. 9.[14C-Oxo]-S-1を投与した絶食雄性ラットでは血液中放射能濃度は投与後1.3時間にCmax 947 ng eq./mlを示したのち2相性を示して消失した.主排泄経路は尿中であり,投与後72時間までの尿中,糞中および呼気中にそれぞれ投与量の70.7%,27.0%および3.0%排泄された.また,投与後48時間までの胆汁中には投与量の1.0%が排泄された. 10.[14C-Oxo]-S-1を投与した絶食雌性ラットでは雄性ラットと比較してCmaxは1.3倍,AUCは1.5倍であったが尿中への排泄率は16.6%少なかった. 11.[14C-Oxo]-S-1を投与した非絶食雄性ラットでは食餌により吸収率は低下し,血液中放射能濃度推移も絶食時と大きく異なった. 12.[14C-Oxo]-S-1注入後30分における消化管ループからの吸収率は十二指腸で20.4%,空腸で37.6%,回腸で18.6%,結腸で6.8%であった.
著者
川口 輝久 久保 正則 秋山 仁 小富 正昭
出版者
The Japanese Society for the Study of Xenobiotics
雑誌
薬物動態 (ISSN:09161139)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.661-674, 1994 (Released:2007-03-29)
参考文献数
8
被引用文献数
1

14C-BOF-A2(3-[3-(6-benzoyloxy-3-cyano-2-pyridyloxycarbonyl)benzoyl]-1-ethoxyme-thyl-5-fluorouracil)をラットに単回および反復経口投与後の放射能,主代謝産物である1-ethoxy-methy1-5-fluorouracil(EM-FU),3-cyano-2,6-di-hydroxypyridine(CNDP),5-fluorouracil(5-FU)の吸収,分布,代謝および排泄について検討した. 1.絶食あるいは非絶食下に雄性ラットに単回経口投与後,血液中放射能濃度は絶食下投与の方が高い推移を示した. 2.雌雄ラットに単回経口投与後の血液中放射能濃度推移には顕著な性差は認められなかった. 3.雄性ラットに反復経口投与後7および14日目の血液中放射能のCmaxは,投与初日の各々,1.8,2.2倍に増加し,AUC0-24hrもほぼ同様の割合で増加した. 4.雌雄ラットに単回経口投与後,総放射能濃度のAUC0-24hr に対する5-FUあるいはEM-FUのAUC0-24hrの割合は,5-FU(雄 : 7%,雌 :5 %)で,EM-FU(雄 : 63%,雌 : 78%)であった.5.雌雄ラットに単回経口投与後2~8時間に,胃,小腸以外では,肝臓,腎臓,副腎,骨髄において血漿中よりも高い放射能濃度を示した.投与後12時間以降の放射能の消失は多くの組織において血漿中に比較して緩慢で残留する傾向が認められた. 6.雄性ラットに反復経口投与14日目の投与24時間以降の放射能の消失は多くの組織において緩慢であり,残留傾向が認められた.7。雄性ラットに非絶食下単回投与後7日目までに尿中へ47.1%,糞中へ41.1%,呼気中へ8.6%の放射能が排泄され,死体残存率は1.2%であった.尿,糞および呼気へ排泄された放射能のほとんどが投与後48時間までに排泄された.また,絶食下単回投与後48時間までの放射能の排泄率は,尿64.9%,糞13.1%,呼気11.8%で,非絶食下投与群との間に差が認められた.8.雄性ラットに14日間反復経口投与期間中の毎回投与後24時間ごとの放射能の排泄率は,尿が約40%,糞が約35~55%,呼気が約10%で,反復投与による変化はなかった. 9.絶食あるいは非絶食下に雄性ラットに単回経口投与後24時間までに尿中へ排泄された総放射能に対するEM-FUの割合は,絶食下13%,非絶食下56%で,5-FUの割合は,絶食下24%,非絶食下9%であった. 10.雄性ラットに非絶食下単回投与後48時間までの放射能の胆汁中への排泄率は4.5%で,そのうち約50%がEM-FUであった. 11.in vitroでの血漿蛋白との結合率は,EM-FUは,ラット34~46%,イヌ47~51%,ヒト27~38%,5-FUは,ラット14~21%,イヌ16~17%,ヒト14~17%,CNDPは,ラット53~58%,イヌ63~71%,ヒト67~69%であった.ラットに14C-BOF-A2を単回経口投与後4,24時間における放射能の血漿蛋白との結合率は各々,39,93%であった.
著者
川口 輝久 久保 正則 秋山 仁 小富 正昭
出版者
The Japanese Society for the Study of Xenobiotics
雑誌
薬物動態 (ISSN:09161139)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.651-660, 1994 (Released:2007-03-29)
参考文献数
5
被引用文献数
1

BOF-A2(3-[3-(6-benzoyloxy-3-cyano-2-pyridyloxycarbonyl)benzoyl]-1-ethoxymethyl-5-fluorouracil)をイヌ,サルおよびモルモットに経口投与後の主代謝産物である1-ethoxymethyl-5-fiuorouracil(EM-FU),3-cyano-2,6-dihy-droxypyridine(CNDP),5-fluorouracil(5-FU)の血漿中動態および尿中排泄について検討した.また,安息香酸およびイソフタル酸の血漿中動態についても検討した. 1.イヌに絶食および非絶食下で単回経口投与後,EM-FUは8時間にCmaxを示したのち,各 々,19.4,48.2hrの長いT1/2で消失した.EM-FUおよびCNDPの血漿中濃度推移は絶食群と非絶食群との間で差は認められなかった.また,いずれの時間においても5-FUは血漿中には検出されなかった. 2.イヌに単回経口投与後の血漿中にはイソフタル酸が検出されたが,EM-FUおよびCNDPよりも低い濃度推移を示した. 3.サルに6,20mg/kg/dayの用量で反復経口投与時の投与初日において,EM-FU,CNDPおよび5-FUは投与量にほぼ対応した血漿中濃度を示した.各代謝産物ともに血漿からの消失は非常に遅く,20mg/kg投与群ではEM-FU,CNDPは各々,22hr,10hrのT1/2を示し,5-FU濃度は投与後24時間まで増加し続けた. 4.サルに反復経口投与した場合,5-FUのCmaxおよびAUC0-24hrは投与日数の増加とともに減少する傾向を示し,T1/2は短縮した. 5.サルに単回経口投与後の血漿中には安息香酸はいずれの時間においても検出されなかった。イソフタル酸は投与後1時間にCmaxを示し,6時間以降の消失は緩慢であった. 6.モルモットに単回経口投与後の血漿中には,5-FUおよび安息香酸はいずれの時間においても検出されなかった. 7,イヌに単回経口投与後72時間までの尿中排泄率は,EM-FU10.1%,CNDP30.1%で,5-FUは尿中へはほとんど排泄されなかった.サルに単回経口投与後96時間までの尿中排泄率は,EM-FU12.7%,5-FU7.1%,CNDP50.9%であった.イヌおよびサルともに各代謝産物の排泄はラットに比べて遅延する傾向にあった.