著者
宮本 みち子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.204-223, 2015 (Released:2016-09-30)
参考文献数
68

1990年代後半以後, それまで低迷していた若者研究が活発になり, その後2000年代の中盤あたりまで, 政府の若者政策の活発化を背景に, 学術研究とマスメディアのさまざまな言説のブームとなった. それらを区分してみると, ①フリーターなどの若者の実態把握を中心とする調査研究, ②国際比較の観点で, 先進工業国の若者の実態と施策を検討する研究, ③日本における労働を中心とする若者施策の検討, ④フリーターやニートやひきこもりなどから脱出するためのアドバイス本, ⑤フリーターやニートを巡る言説分析の5つに分かれる.2000年代の取り組みは, 研究者, 行政, 民間団体の密接な共同関係を抜きには発展しなかった. そのなかで, 若者の実態を分析し, 社会政策の課題として提示したことが研究者の役割であった. 社会学は, 無業者問題を社会的包摂の課題として位置づけ, 社会政策を構想できる. また, 若者問題を包括的に理解するという視点や方法論は社会学が得意とするところである. 社会学者は社会政策の視点をもち, 長期的な視野に立って若者への社会投資が必要であることを主張する必要がある.
著者
小川 聰
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DC, ディペンダブルコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.250, pp.1-6, 2003-07-30

N+1予備は,N個の負荷分散に対して,1個の予備を持つ経済的な方式であり,広く実用化されている.予備は1以上でもよく,共通予備方式として一般化できる.モバイルエージェントの場合もこの方式が適用可能である.また,N重化システムの信頼性をさらに高めるために共通予備方式を用いることができる.モバイルエージェントは,ソフトウェアではあるが,ネットワーク環境における活動であることから,設計分散の多重化の他,オブジェクトレベルのクローンの作成でも,ある程度のフォールトトレランスは実現可能である.この場合の予備の生成は容易であり,かつ実行時にダイナミックに行うことができる.必要に応じてクローンを次々に生成すれば,死んでも生き返るゾンビのように,ほとんど故障しない信頼度が1になる方式も夢ではない.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1326, pp.106-109, 2006-01-30

かつてテレビ番組の名司会者として鳴らした大橋巨泉が「セミリタイア」して、既に16年間が経つ。1年の大半を海外で過ごす彼は、日本のテレビに浸かっている者よりも、変化を実感するのだろう。 内輪ネタばかりのテレビ番組——。大橋は「ストリップ」だと嘆く。 「自分たちの裸を見せてやっているわけですよ。それはタレントとしては自殺行為なんだ。
著者
園山 繁樹
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.57-68, 1994-11-30
被引用文献数
2

障害を持つ幼児を障害を持たない幼児の集団の中で保育するという統合保育については、その利点が多くの研究者によって示唆されているが、実際に成功するための条件は複雑である。本研究ではわが国と米国の文献を概観し、統合保育を行う上で考慮すべき要因を相互行動的立場の状況要因の視点から分析した。分析した状況要因は、(1)概念的要因、(2)障害を持つ幼児の要因、(3)プログラムの要因、(4)障害を持たない幼児の要因、(5)保育者の要因、(6)園の要因、(7)療育専門機関の要因であり、これらの諸要因を検討せずに統合保育の有効性を論ずることはできない。また、今後の課題として、実際の統合保育場面での実践研究、保育者と療育専門家との共同研究、統合保育の専門性の確立、統合保育が困難な幼児への対策、保育場面以外での社会的統合を挙げた。
著者
津久井 亜紀夫 小林 恵子 斉藤 規夫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.115-119, 1989

フィリピン酸紫ヤム塊根粉末中のアントシアニン色素の安定性に関する研究の一環として, 蝶豆花アントシアニン色素とpH, 温度, 紫外線ならびに窒素ガス中での貯蔵における影響について検討し, 下記の結果が得られた.<BR>1) UBEおよびPAのANの23日後の色素残存率は, それぞれ 30℃ で 97% と 77%, 60℃ で 61% と 30%であった. 90℃ では4~5日でほとんど分解された.<BR>2) UBEおよびPAのANをアンプル管に入れ, 60℃で23日間加熱した.空気中での色素残存率はUBEが62%, PAが30%であったが, 窒素中では, それぞれ約85%で安定であった.<BR>3) UBEおよびPAのAN溶液に殺菌灯を直接照射した場合は6時間後約20~30%の色素残存率であったが, アンプル管中のPAの色素残存率は100%, UBEが約95%で安定であった.また屋外に放置した場合は両ANとも1日間で分解退色した.<BR>4) PAのAN溶液に各種添加物を添加し, 加熱した結果, とくにレアスコルビン酸および過酸化水素水によって, 分解退色した.<BR>以上の結果, UBEのANは, ANの中では温度には比較的安定で紫外線照射さえ避ければ十分に加工食品への利用が可能であると考える.
著者
吉川 瑛治レオナルド Robson Ryu Yamamoto José Luiz Petri Fernando José Hawerroth 山根 健治 本條 均
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.143-153, 2014 (Released:2014-06-30)
参考文献数
25
被引用文献数
1 3

ニホンナシ‘幸水’と‘豊水’の鉢植え樹を供試し,2007,2009,2010および2011年度の4か年にわたりシアナミド剤の散布処理を行った.その後22°Cの自然光ガラス室に移動させ,発芽・開花状態を調査した.ニホンナシの自発休眠覚醒の指標とされる7.2°C以下低温遭遇時間と,発育速度(DeVelopmental Rate, DVR)モデルによる発育指数(DeVelopmental Indexes, DVI)を対比させ,シアナミド剤の散布時期の有効範囲の設定を試みた.なお,DVI1は大谷(2006),杉浦(1997),が定義している,自発休眠覚醒期中の-6~12°Cの温度範囲を対象としたものである.そのDVI1は本研究でDVI(old)と定義した.一方,杉浦ら(2003)は自発休眠覚醒期中の21~24°Cの温度域は低温積算の一部を打ち消して自発休眠を逆進させる効果があると報告している.その報告に基づき求めたDVI1をここではDVI(new)と定義した.その結果,7.2°C以下の低温遭遇400~600時間処理の時点でシアナミド処理をすると,両品種の自発休眠打破の促進効果が認められた.両品種ともにDVI(new)(杉浦ら,2003)が0.65~0.70の範囲内でシアナミド処理すると,発芽および開花が改善され,開花日も促進した.DVI(old)(杉浦,1997)とDVI(new)において,発育ステージが進行し,DVI(old)では,1.03以上,DVI(new)では,0.80以上では処理の効果は弱まる傾向を示した.2011年度の秋冬季(10~2月)では他の年次より21°C以上に遭遇した時間が68時間長かったため,低温遭遇時間のみでシアナミド剤の散布時期を特定することは困難であったが,高温時の打ち消しを考慮したDVI(new)は,発育ステージを適正に評価した.以上の結果から,低温代替技術として,シアナミド処理を行う場合,気候温暖化に対応可能なDVI(new)モデルによる散布時期の予測が有効であることが示唆された.
著者
飯塚 啓
出版者
社団法人日本動物学会
雑誌
動物学雑誌 (ISSN:00445118)
巻号頁・発行日
vol.35, no.416, 1923-08-15
著者
Keisuke Suzuki Masayuki Miyamoto Tomoyuki Uchiyama Tomoyuki Miyamoto Takeo Matsubara Koichi Hirata
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
vol.55, no.18, pp.2713-2716, 2016-09-15 (Released:2016-09-15)
参考文献数
15
被引用文献数
7

We herein report an elderly patient with a history of restless legs syndrome (RLS) who developed unpleasant sensations in the lower abdomen and perineum. The patient' s symptoms occurred during the evening and at rest and forced the patient to void, resulting in some symptom relief. Urological examinations and spinal magnetic resonance imaging findings were unremarkable. The adjunctive use of rotigotine resolved her symptoms. The symptoms were considered to be "restless bladder". Further studies are required to elucidate whether restless bladder is an identical condition to the clinical entities of other RLS variants or whether it represents an unusual feature of RLS.
著者
韓 青 稲垣 恵三 飯草 恭一 大平 孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.50, pp.39-46, 2001-05-11
被引用文献数
10

エスパアンテナの極近傍界を測定するために必要な電波暗箱の最小寸法を見極めた。まず、シグナルフローグラフおよびアンテナの近傍に使うため光路差を考慮したレーダ方程式を用いたモデルを考案して、反射係数の理論式を導出した。次に、幾つかの電波吸収体について,エスパァンテナのReturn Lossを測定した。理論的及び実験的に厚いピラミッド型の吸収体を利用した場合はアンテナの極近傍に置いても吸収体からの反射量は低く抑えられており、アンテナと吸収体を1λまで近づけられることが分かった。さらに、導出した理論結果に基づいて小型暗箱を設計し、厚いピラミッド型の電波吸収体を使って、小型電波暗箱を試作した。最後に、試作した暗箱を検証した。約100MHzの帯域幅に約-40dBの反射係数が得られた。
著者
Harniati
出版者
新潟大学大学院現代社会文化研究科
雑誌
現代社会文化研究 (ISSN:13458485)
巻号頁・発行日
no.49, pp.137-161, 2010-12

2001年の米国における同時多発テロ以来、安全保障理事会決議に基づき各国においてテロ対策のための措置が国内においてもとられるようになってきている。インドネシアにおいてもそれは同様であり、かつインドネシア国内におけるイスラム過激派勢力によるテロ攻撃が頻発したことにより、インドネシアにおいてもテロ対策の立法が迫られるようになってきた。そのような動きに対応する形で、インドネシアにおいてもテロ対策に特化した法律が制定されてきている。しかしながら、2003年に制定されたテロ対策法はテロリズム対策や国家安全保障に大きな力点が置かれており、それにより警察や軍隊に強大な権限を付与する結果となっている。このことは、テロ対策の名の下により行われる活動に伴う人権侵害が生じた場合、被害の救済などにおいて大きな障害となり得る。また、テロ対策活動中に人命が失われるような場合において、警察などの内部における懲戒手続なども整備されておらず、権力の濫用あるいは人権保障という観点から看過し得ない問題点が存在することが明らかとなっている。本稿では、インドネシアにおけるテロ対策法の内容を概観した上で、テロ対策において特に問題となり得る「生命権(生命の恣意的な剥奪)」の観点から法律上の問題点を検討する。検討の視角として、国際人権法における生命権に関する議論状況を概観し、その規範内容及び国家の義務を明らかにすることにより、インドネシアにおける立法の改善のためにどのような点が考慮されるべきかを検討する材料としたい。
著者
筑波大学農林技術センター 筑波大学農林技術センター教育推進部国際交流班
巻号頁・発行日
1997

1992年6月、ブラジルのリオ・デ・ジェネイロで開催された国連環境開発会議(United Nations Conference on Environment and Development:UNCED)を契機として、森林・林業の分野においては環境問題への対応に向けたためさまざまな取り組みがなされ、今日世界中で大きな変化が起きている。いくつか例を挙げると、まず第一に、個別の森林経営について環境問題が強く意識されるようになり、森林施業が皆伐から択伐へ、天然林施業の増加、伐採量の減少、野生生物との共存を可能にする施業の導入等が、各林業セクターによって行われるようになってきていることがあげられる。第二に、自然環境を ...
著者
小林 通有
出版者
一般社団法人日本PDA製薬学会
雑誌
日本PDA学術誌 GMPとバリデーション (ISSN:13444891)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.20-27, 2001

Spray drying is used as a very convenient means for drying liquid into powder instantly, continuously and economically in laboratory use and large production, but at high temperature, e.g. over 100°C as inlet air temperature. Freeze-drying is a typical drying technology for drying heat-sensitive products at 20-50°C during desorption drying, but for several hours. Due to invention of Four Fluid Nozzle (patented in USA, Europe and Japan), spray drying at low temperature closer to atmospheric temperature below 80°C as hot air temperature is possible and therefore a new drying technology as low temperature spray drying has been realized based on the principle of quicker drying speed by huge heating surface area of droplets minimized below abt. 10 μm by the new nozzle. The Four Fluid Nozzle, which was developed by the design concept of minimization and uniformity of droplet size for quicker drying speed and elimination of wet deposits on chamber wall, has a special acceleration zone on it for forming thin film of liquid just before atomization in addition to a focusing point of compressed air as a newly designed structure for removing loss of atomization energy. Thus, the droplet size distribution is in a very narrow range resulting in the uniform particle size distribution of dry powder all in a single micron. The smaller and uniform droplet size makes heating surface area bigger by abt. 10 times compared with conventional atomization systems and so such smaller droplets are dried quickly and completely before reaching chamber wall even at low temperature without wet deposits on chamber wall. The geometry of the new nozzle is quite the same even in smaller or larger types of the nozzles and so the quality of dried product is also the same even in case of the so-called circle nozzle for larger production scale, for example having the atomization capacity of max. 1000 Itr/h. There is a possibility that conventional low temperature drying technology like freeze-drying, vacuum drying, etc. can probably be replaced by the low temperature spray drying technology. Drying of parenteral drugs will also be possible by the new drying technology with Four Fluid Nozzle using CIP/SIP systems, powder recovery system with metal mesh cartridge filter and isolation technology as a validatable system in the near future.<br>