著者
高橋 豪仁
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

スペクテーター・スポーツの魅力を権力作用の観点から検討した。(1)女子プロ野球の観客を対象とした質問紙調査を実施したところ、選手との交流が満足度を規定していた。またゲームやそれに伴う儀礼的行為において、「球児の直向きさ」と「かわいさ」が演出されていた。(2)プロバスケットボールリーグの観戦者を対象とした質問紙調査を実施したところ、チームへ投影する地元意識が満足度を強く規定していた。(3)新聞を資料として、プロ野球のイーグルス優勝の物語について検討したところ、優勝というスポーツの出来事を被災という実生活に関連づけた物語が紡がれており、それは生活世界を受容可能にする概念装置であることが示唆された。
著者
中島 俊克
出版者
政治経済学・経済史学会
雑誌
土地制度史学 (ISSN:04933567)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.38-55, 1986-04-20

French machine building industry, which started its modernisation in 1820s, came to maturity about 1860. Large-scale factories, engaged chiefly in the building of locomotives, grew up on the outskirts of the city of Paris. But these factories looked for skilled workers in the East End (around the Saint-Martin Canal) where small machine shops swarmed. The mechanisation of Parisian industries, especially that of the fabrication of articles de Paris, had activated these shops. Skilled workers, most of which were potential shop owners, dominated the work of machine building even in large factories, and the skill ef these workers ensured the high quality of French machines. The Great Depression deprived French machine builders of its foreign market, and the crisis of 1882 forced them definitively to reorganise their activities. (Technical progress, notably the diffusion of universal milling machines, transformed the character of the work of machine making. In this aspect, the United States and Germany went far ahead of France.) Some large factories, forsaken by railway companies, quit Paris to find a greater market in Northern region; others turned into a trade which had little or no connection with mechanical engineering. Small shops, damaged by the decline of articles de Paris industry, subsisted by the fabrication of new products, bicycles for example. The recovery of world economy from the mid-1890s encouraged the renascence of French machine making. The building of steam engines and of machines for verious industries revived. But this time the chief stimulus came from the automobile industry. Many machine makers entered for themselves into this new domain, or found a large market in automobile firms. Small shops, after the concentration of bicycle fabrication, reorganised themselves to realise the mass production of automobile parts. In the East End, very small-scale machine shops specialised in this field grew rapidly like so mony mushrooms. They enjoyed the benefits of technical inventions-coal gas engine, machine-tools for small works etc. Only the combination of these new technics and the traditional skill of machine making, which was fading away even in the East End, could meet the large demand of automobile parts in the early years of the 20th century.
著者
村田 勝幸
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、1960年代以降、アメリカ合衆国、なかでも特にニューヨークへと渡ったハイチ人移民とその子孫を対象に、かれらの特殊な社会的な位置や、かれらと人種を同じくするアフリカ系アメリカ人との関係、さらには他の西インド諸島系住民との関係を、ディアスポラという概念を軸に多角的・学際的に分析することを目的としている。
著者
千葉 則茂 海野 啓明 和田 誓一 村岡 一信 CHIBA Norishige KAINO Keimei WADA Seiichi MURAOKA Kazunobu
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D-2 情報・システム (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.73, no.10, pp.p1742-1750, 1990-10
被引用文献数
8

泥のようなものを乾かしてできるひび割れは,粘着性の度合により乾いた地表面のひび割れからガラスのそれをも含むいろいろな形状を示す.もし,このようなひび割れ形状を生成できるような行動モデルが開発できれば理論的にもCGへの応用上も興味深い.本論文では,まずこれらの粘着性の違うひび割れ形状の特徴を解析し,ひび割れの行動モデルの構築のためのいくつかの仮定を示す.次に,これに基づいて粘着性の強さをパラメータとするひび割れの行動モデルを提案し,シミュレーション例によりその有効性を示す.更に,ひび割れの形状のコンピュータグラフィックスへの応用例,すなわちひび割れ形状による大理石模様や陶磁器のうわ薬のひび割れの表現例を示す.最後に,ひび割れの行動モデルを任意曲面上で動作できるように拡張するための今後の課題について言及する.
著者
金子 仁子 標 美奈子 増田 慎也 宮川 祥子 三輪 眞知子 渡邊 輝美 及川 智香子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、青年期の人々が容易に学習機会の得られるインターネットを使用して、子育てをバーチャルに体験しながら、人を世話することの楽しさや人間として成長していくことを実感でき、また人間関係の取り方を学べる子育て学習支援プログラムの開発である。まず、大学生を対象に子育ての経験、子育てのイメージに関する質問紙調査を行った。525名のデータについてクラスター分析を行った結果、子育てに関して5つのタイプに分けられ、学習内容の興味関心もそのタイプによって違いがあった。ドラマ部分の作成は、研究者メンバーの話し合いから導き出した、「12の意図」(子育ての生活のイメージ、子育ての楽しさ・子育ての大変さ、予測していなかったできごとへの対応、子どもの成長を実感(2歳まで)、子どもとのコミュニケーションの取り方、仕事を続けていく母親の子育てについて等)により、その内容を考えさせるものとした。ドラマはフラッシュを用いて漫画を動画化し5話のドラマとしてウェブサイトから配信した。ドラマの配信は平成18年6月から行い平成19年3月までの10ヶ月間のアクセス数は985件で、視聴するための登録者は35名で、うち6割が学生であった。ドラマの内容についてはウェブサイト上のアンケートでは第1話では、仕事との育児の両立を考えながら視聴していることがわかり、また、第2話では結婚・出産・育児についてのことが最も印象に残ったとしていた。このドラマの評価のためのグループインタビューを行った。その中で、学生達は乳児期の育児、仕事と育児の両立について関心が高いことが明らかになった。このドラマを見ることによって、大学生は仕事と育児の両立について具体的にイメージすることができたと考える。登録者同士の交流を図るため掲示板を設けたが記載する人は少なく、登録者を増やすための、ウェブデザインの改良等が必要である。
著者
西川 広平
出版者
山梨県立博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

甲府盆地周辺地域を対象にして、人々が自らの生活基盤を守るために育んだ治水・利水技術の展開や、自然環境の変化の状況などについて考察した。この結果、甲斐国の代表的な治水・利水技術である牛枠類の使用は、甲斐国および天竜川流域を中心にして、天竜川流域からその西方を流れる豊川や木曽川の各流域へと広がったこと、また、江戸時代の甲斐国で実施された治水事業では、水害を被る村落間のネットワークが機能していたことが明らかとなった。そして、これらの技術や地域のネットワークをふまえて、17世紀初頭から継続した耕地開発と用水路建設にともなう畑地から田地への転換が、地域の景観に影響を及ぼしたことを指摘した。
著者
工藤 遥
出版者
北海道大学大学院文学研究科
雑誌
北海道大学大学院文学研究科研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
no.13, pp.453-474, 2013

子育て家庭の孤立や育児不安の拡がりを背景に,日本では「子育てサロン」と呼ばれる地域子育て支援拠点づくりが全国的に進められている。地域に住む乳幼児の親子が集う場である子育てサロンは,育児に関する情報提供や相談等を行うフォーマルな子育て支援機関であるが,大都市では,母親同士が「ママ友」等の育児ネットワークを形成し,インフォーマルな育児援助を交換する場・機会としても機能している。本稿では,少子化と核家族化が顕著な大都市である札幌市で実施した質的調査をもとに,子育てサロンおよびその内部における母親同士の育児援助の機能を,「子育てサポートシステム」の視点から検討した。この分析枠組みでは,乳幼児の母親の子育てを支える育児援助は,制度的支援と関係的支援の2つのサポート構造と,3つのサポート機能(直接・間接・複合サポート)および2つのサポート側面(道具的・表出的サポート側面)でとらえられる。制度的支援としての子育てサロンは,運営形態により,センター型,児童館型,地域主体型,常設ひろば型に4分類できる。各類型の子育てサロンでは,保育や発達教育,リフレッシュ支援といったフォーマルなサポート機能が異なっている。また,施設内部で母親同士が相互に行うインフォーマルな関係的支援のサポート機能も,それぞれ異なる特徴や段階がみられる。また,子育てサロンにおける集まりの一部では,母親同士の互助の進展と並行して,育児ネットワークや小集団の形成がみられ,集まりの3つの段階(coming,keeping,working)を経て,「支えあい」の福祉コミュニティへと発展する可能性もうかがわれる。ただし,「子育ち」の視点に立てば,家庭内および子育てサロンの内部における第一・第二の母子孤立を解消し,子どもの発達に重要となる性別・世代混成的なコミュニティを目指した子育て環境づくりが望まれる。
著者
田添 浩一
出版者
日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.97-101, 1960

The effect of allithiamine and other vitamins on acute hydrocyanic acid poisoning was examined on dd-strain mice. Thiamine propyldisulfide and the garlic extract were effective against acute hydrocyanic acid poisoning. Thiamine hydroxyethyldisulfide and thiamine tetrahydrofurfuryldisulfide were not so effective as the previous substances. Thiamine hydrochloride had no effect.
著者
本橋 信宏
出版者
創出版
雑誌
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.150-155, 2007-08
著者
阿部 美香
出版者
昭和女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

東国の宗教文芸を解明する上で重要な安居院唱導資料の研究のうち、特に歴博本『転法輪鈔』については共同で翻刻と解題作成を行い、国立歴史民俗博物館の研究報告書にまとめることができた。その過程で重要な研究対象となった『融通念仏縁起』の研究は、国内外で諸本調査を積み重ね、鎌倉時代後期の正和本から、南北朝・室町時代の良鎮による勧進本の成立と展開の諸相を明らかにするとともに、勧進状絵巻としての比類無い独創性を解明し、その成果を国内外に広く発信することができた。
著者
岡田 あおい
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、宗門改帳を史料とし、ここからデータベースを構築し、徳川後期の農民世帯の家族構造を明らかにすることが目的である。本研究で用いる史料は、東北日本2地域(会津山間部4か村・二本松平野部3か村)と中央日本2地域(美濃平野部6か村・信州山間部2か村)である。結果的には、当初予定していたデータベースの完成には至らなかった。データベースの完成にはまだ時間を要するが、完成度の高い東北日本の一農村のデータを用いて、徳川後期農民社会の家族構造を解明するための基本的指標の分析を試みた。
著者
本田 信治
出版者
福井大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

私たちはモデル生物のアカパンカビを用いて、ヘテロクロマチン領域が異常に拡がるのを防ぐ複合体 (DMM-1/DMM-2)を同定し、この分子機構を発表した (Honda et al. Genes Dev. 2010)。今回、DMM-2と相互作用する候補蛋白質としてDMM-3を同定した。本研究では、この新規蛋白質DMM-3とヘテロクロマチン境界制御の関係を明らかにするために、当初の計画に沿った研究を行い、以下の成果を得た。1) アカパンカビKOプロジェクトでは、DMM-3の部分欠損株の作製しか遂行できなかった。そこで私たちは、ノックダウン法によりDMM-3遺伝子発現を抑制させた株、DMM-3が有し、種間で保存されたドメインに変異を入れた機能抑制株、更に独自にDMM-3の完全欠損株の作製を行い、これらすべてを成功させた。2) 上記で作製したDMM-3欠損株は極度の成長阻害を持つ。この欠損株にC末端にFLAGタグを付加したDMM-3遺伝子(DMM-3-FLAG)を導入すると、成長が元に戻った。この結果、成長阻害はDMM-3の欠損によって引き起こされること、そしてDMM-3-FLAGは正常な機能を持つことが明らかになった。3) DMM-3-FLAGを発現する株を用いて、DMM-3を精製し、Mass spec解析により相互作用する蛋白質を同定した。更に、この同定した蛋白質をFLAGタグ化した株を作製し、同様な方法で精製とMass spec解析を行った結果、DMM-3と相互作用することを確認した。この結果、DMM-3はこの新規蛋白質と安定的に相互作用することが分かった。以上から、次年度に計画しているDMM-3の分子機構から生理作用に結びつけるために必要な実験系の確立を本年度中に遂行することができた。