著者
米山 秀 THOMAS Olding
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、経済史上もっとも古典的な研究テーマの一つである農業賃金労働者の形成過程を、農民層分解論としてではなく賃金労働者の家族史として考察することにあった。すなわち小農民の土地所有の分解論としてではなく、若い男女の独身の奉公人が、小農民になるかその世帯内に奉公人のまま生涯包摂されるというライフサイクルの在り方が、若い奉公人の大半が結婚して賃金労働者となるというライフサイクルの在り方へ変化する過程として住民台帳で捉えることにあった。本研究においては、こうした想定を研究史の再構成によっていくつかの具体的な仮定にするとともに教区簿冊や住民台帳類でその検証を試みた。その結果、本研究の範囲内では賃金労働者家族自体の増加は直接的には検出できなかったが、短期奉公人(ライフサイクル・サーヴァント)は決して近世イギリスの奉公人の一般的な特徴ではなく、賃金労働者の結婚前のライフサイクルの特徴であり、しかも近世後半に急増したという形で、農業賃金労働者家族の形成過程が間接的には論証されたといえる。
著者
宮内 清子 望月 好子 石田 貞代 佐藤 千史
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.433-441, 2009-01
被引用文献数
1

目的:中高年女性の就業形態が更年期症状にどのように影響しているかを明らかにし,今後の健康支援において主たる対象とすべき集団の特性とその課題をみつけることを目的とした。方法:対象者は40〜65歳までの女性とし,都内および近郊に在住の某女子大学学生の母親および大学関係者から公募した。調査協力に同意の得られた220名を対象として,自己記入式質問紙調査を実施した。調査内容は,属性,生活習慣,健康情報入手方法,健康相談相手,将来の健康不安,更年期症状とした。更年期症状は簡略更年期指数(SMI)を用いて調査した.また,医学中央雑誌で先行研究を検索し,SMIの得点を比較した。結果:SMI得点は先行研究における一般女性とほぼ同様の結果であった。SMIの得点を就労形態別に5群で比較したところ,就業形態によってSMI得点に有意な差がみられた(p=0.049)。症状別にみると,自営業群は他の群と比較して「怒りやすくいらいらする」「くよくよしたり,憂うつになったりする」「頭痛・眩暈・吐き気がよくある」などの精神的症状が有意に高かった。結論:就業形態別に更年期症状を検討した結果,就業形態によってSMI得点に有意な差がみられた。特に自営業群の精神的な症状が,他の群に比べて有意に高かった。このことから自営業の中高年女性に精神面の支援の必要性が示唆された。

1 0 0 0 宗教年鑑

著者
文化庁編
出版者
文化庁
巻号頁・発行日
1969

1 0 0 0 宗教年鑑

著者
文化庁編
出版者
ぎょうせい
巻号頁・発行日
1968
著者
川上 和人 阿部 真 青山 夕貴子
出版者
首都大学東京
雑誌
小笠原研究 (ISSN:03868176)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.1-19, 2011-03

小笠原諸島では、外来木本植物であるトクサバモクマオウ Casuarina equisetifoliaが野生化し、優占種となることで、様々な影響を与えている。本研究では、父島列島の西島において、本種が優占する森林の環境特性を明らかにするため、開空度、リター厚、土壌水分量、土壌硬度、リター下の温湿度の測定をおこなった。その結果、モクマオウ林では、在来樹林に比べ、開空度が高く、リターが厚く堆積し、土壌が乾いていることが示され、また比較的温度が高い傾向があった。このような環境の違いは、動植物相の成立に影響を与える可能性がある。西島では、トクサバモクマオウの試験的な駆除がおこなわれており、環境特性の変化をモニタリングする必要がある。The invasive alien woody species Casuarina equisetifolia has expanded its range and become dominant in various areas in the Bonin Islands, situated in the northwestern Pacific. In order to clarify the environmental characteristics of Casuarina forests, we examined the canopy openness, litter depth, soil moisture, soil hardness, air temperature, and air humidity on Nishijima, which is widely occupied by the alien plants. We found that the canopy was opener, the litter was thicker, and the soil was drier in Casuarina forests than in native forests. These physical differences are likely to affect the faunal and floral assemblages. As experimental eradication is being conducted on the island, and the trend in the physical conditions should be monitored.
著者
畑 憲治
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

森林生態系において優占する外来木本種の駆除は、生態系内の水循環を変化させる可能性がある。この仮説に基づいて、海洋島である小笠原諸島の森林生態系で優占する外来木本種トクサバモクマオウの駆除が、土壌含水量に及ぼす影響を野外実験的なアプローチから明らかにした。除草剤によってトクサバモクマオウを枯死させた調査区(以下駆除区)における土壌含水量は、隣接する対照区においてよりも有意に高く、これは駆除処理によって土壌含水量が増加したことを示唆した。また、この駆除処理による土壌含水量の増加は、降雨がない乾燥期間における土壌含水量の低下の程度が駆除処理によって緩和されることと関係していることが明らかになった。
著者
佐藤 幸男
出版者
明治大学大学院
雑誌
明治大学大学院紀要 政治経済学篇 (ISSN:03896064)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.241-258, 1974-12-01

日常生活の中で我々は「選挙」、「就職」、「結婚」とかの決定を迫られたり、定めなけれぽならない状況が数限りなく存在している。この意思決定の問題は人間の社会生活だけに限らず、経営レヴェル、国家レヴェルにおいても複雑な構造をもち、人間一人では解決されない幾多の難問をかかえこんでいる。『三人寄れば文珠の智恵』という諺にもあらわれているように、このような難問を解決する為に、集団や組織が構成される。多段階組織では中井正一氏のいう「正しく考え、それを他に対して正しく主張する」ことが、いかなるメカニズムを通して疎外されたり、行なわれたりして合理的な決定を生みだすのか。筆者の論点はそこにあり、研究対象にもなる。
著者
西本 真弓 吉田 あつし
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.221-233, 2009 (Released:2010-05-26)
参考文献数
19
被引用文献数
1

療養病床には医療保険適用の医療療養病床と介護保険適用の介護療養病床の2タイプがあり,前者には医療の必要性が高い患者を,後者には医療の必要性が低い患者を受け入れることを目的としている。本稿では,どんな患者がどちらの入院サービスを受けているかを,ある療養病床を有する病院のデータを用いて検証した。 分析の結果,以下のことが明らかとなった。(1)要介護度が2以下の場合,介護療養病床を選択する確率が3割強減少する。(2)患者が1級または2級の身体障害者手帳を所持している場合,介護療養病床を選択する確率が25%前後減少する。(3)入院回数や脳血管疾患や心疾患によってあらわされている患者の入院時の健康状態は,療養病床の選択に有意に影響しない。いずれの保険も原則的に包括払いを採用し,要介護度が高い患者が介護療養病床を利用した時の報酬は医療療養病床を利用した時の報酬よりも高くなる。分析結果は,保険からの報酬の大きさによって病床が選択されていることを意味している。患者の健康状態にはほとんどかかわらず,介護保険からの報酬が医療保険よりも大きい場合は,介護療養病床が使われる。1級または2級の身体障害者手帳を持つ患者は,医療費自己負担分が地方自治体から助成されるので,医療保険が適用される医療療養病床を選択する。病院の場合も患者の場合も,経済的インセンティブが病床の選択に影響を与えているといえる。
著者
永田 勝秀 片山 幸太郎 東條 秀太郎 佐藤 泰生 松沢 耕介
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.264-272, 2005-06-30 (Released:2014-11-15)
参考文献数
17

We prepared two types of bone defect fillers (BDFs) which were made from a mixture of α-tricalcium phosphate (α-TCP) with chitosan or alginate in solution. A solidifier was added to the mixtures. These solutions were then kneaded to be solidified. The solid substances, named chitosan-BDF and alginate-BDF, were implanted in femurs of guinea pig to study the effects of the BDFs on the processes of bone formation by EPMA. The alginate-BDF was surrounded with growing bone from all directions at 6 months after the operation and seemed to have an affinity to the tissues. However, no degraded or absorbed form of the BDF was observed. In contrast, most of the chitosan-BDF was replaced by growing bone at 6 months. The adjacent part of the BDF to surrounding cortical bone was especially well-absorbed, probably due to being involved in a reabsorption process after ossification. According to the data, both BDFs were shown to have excellent mechanical properties for filling bone defects. Especially, the chitosan-BDF would be useful as bone defect filler because of its induction of ossification and its smooth absorption.
著者
堀 潤之
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、ニューメディア以降の映像環境において諸メディアの収斂という事態が生じつつあるという現状を批判的に吟味するべく、デジタル・テクノロジーの登場以前にまでさかのぼって、(A)不動性をめぐる映像理論小史、(B)不動性の映画史、(C)現代美術の映像作品における運動と不動という3つのトピックを通じて、主として20世紀後半の映像理論および映画史・映像芸術史における「運動への抵抗」の系譜をたどったものである。
著者
木村修三
雑誌
研究報告デジタルドキュメント(DD)
巻号頁・発行日
vol.2014-DD-96, no.4, pp.1-1, 2014-11-14

BPIA (ビジネスプラットフォーム革新協議会) の EPUB マニュアル研究会では,2012 年 12 月より業務マニュアルの EPUB 化を推進してきた.電子書籍のフォーマットである EPUB で業務マニュアルをデジタル化する.これによりスマートフォンやタブレットを利用した 「どこでもマニュアル」 「マイマニュアル」 を実現できる.これは,業務現場での業務品質の向上,効率化に大いに役立つと考えている.今回は技術的な検証が終了し現場での適用事例を報告する.また,普及への課題について触れたい.
著者
山村 隆 国下 龍英 大橋 高志 近藤 誉之
出版者
国立精神・神経センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

1.SSCP法によるT細胞抗原受容体レパトアの解析:T細胞レパトア解析の新しい方法論(RT-PCR-SSCP 法)を導入し、多発性硬化症(MS)の脳病変部位、末梢血の病変部位におけるT細胞を解析した。その結果、1)MSの病変ではかなり限られたクローンの増殖がみられることがわかったが、特定のVベータ鎖の優先使用はなく、Vベータ特異的治療の可能性に疑問を投げかけた。2)MS患者末梢血から樹立したMBP82-102特異的、PLP95-116特異的T細胞クローンを対照において患者末梢血をSSCPで解析したところ、同クローンが体内で持続的に活性化状態にあり、増殖していることがはじめて明らかになった。3)慢性炎症性脱髄性ポリニューロパチーの末梢神経においてVB11陽性細胞の特異的な浸潤のあることを明らかにした。2.脳炎惹起性T細胞抗原認識機構の解析:ミエリン塩基性蛋白(MBP)特異的脳炎惹起性T細胞の中に、プロテオリピッド蛋白(PLP)を共認識するものをはじめて見いだした。アナログ・ペプチドによる解析の結果、共認識されるMBP89-101およびPLP136-150ペプチドは、I-A^S結合部位を共有するが、T細胞抗原受容体結合残基はそれぞれ異なることがわかった。すなわちTCRは複数のセットの接触残基を利用して活性化されることがわかった。同クローンはPLP95-116、PLP118-135などにも反応し、polyreactive T細胞と命名されるべきである。polyreactive T細胞の各ペプチド・リガンドに対する反応性は異なり、活性化の結果脳炎を誘導できるペプチドはMBP89-101とPLP136-150に限られていた。
著者
山崎 誠 柏野 和佳子 田嶋 毓堂 山元 啓史 内山 清子 砂岡 和子 薛 根洙 韓 有錫
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本語研究におけるシソーラスのより一層の活用を図るため、人文系日本語研究者の間でもっとも普及している『分類語彙表増補改訂版』に研究に有益な情報を付与する作業を行った。多義語として複数の分類項目に出現している見出し語27171語について、一定の基準に基づいて「代表義」を1つ決定し、その情報を付与した。作業結果は、2015年7月を目指してウェブ上で公開する予定である。これにより、意味解析上の精度が向上し、異なる分析結果の間の適切な比較が可能になることが期待される。また、旧版の分類語彙表との異動の比較を行い、結果の一部を「語彙研究」12号に発表した。