著者
志水 田鶴子
出版者
東北文化学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、生活モデル理論に基づくプログラムを実施している高次脳機能障害者の小規模作業所での実践を評価することで、生活モデル理論によるプログラムの有効性を実証し、高次脳機能障害者にとってより効果的な生活支援プログラムを開発することが目的である。昨年度末から今年度は、これまでの生活モデル理論に基づく高次脳機能障害者の生活支援プログラム評価に関する研究の成果を踏まえ、プログラムを途中で放棄(作業所を長期間休むなど)した利用者への支援と、就労支援のプログラムの評価を試みた。リハビリテーションプログラムを放棄する者は(1)通所開始間もない頃に「自分は(健常者であるので)他の障害者と一緒にされたくない」と、障害が認知できないことから早期にプログラムから離脱するケースと、(2)長期間リハビリテーションに参加し回復もみられるが、他の障害者が一般就労したといった情報や、家族等から回復を急がされる(「ずいぶんよくなってきたから、そろそろ就職できるんじゃないの」といった)言葉により、簡単に自分にとって必要なプログラムを見失うことが見受けられた。(1)の場合は、無理に通所開始を促すのではなく、自分なりに就労や復学をした結果やはりうまくいかないことを理解するまで待っしかない。しかし、(2)のケースでは、ある程度様々な状況や自分自身の障害も受け入れ理解することができるようになるため、今どのようなことで混乱し、何があるから慌てているのか、自分にとって何が必要なのか、今まで成功したことと失敗したことはどんな違いがあるかについて、繰り返し面接を行うことで、落ち着きを取り戻しプログラムに参加できるようになる。ただし、この面接を通じた支援が途切れてしまうとかなり長期間プログラムから離脱し、結果として混乱した状況も長期化する。電話などでも支援を行うが、直接面接し支援を行うケースよりもプログラムへの復帰率は低い。今後も引き続き、プログラムを長期離脱した利用者への支援のあり方を検討する必要がある。就労支援については、事例が1例みられたが、開始直後であるため評価には至っていない。しかし、復職に向けジョブコーチが復職先の上司と打ち合わせを繰り返し、試験的に受け入れてもらうなど進展は見られる。継続して就労支援プログラムについても研究する必要がある。
出版者
日経BP社
雑誌
日経レストラン (ISSN:09147845)
巻号頁・発行日
no.316, pp.122-124, 2002-07

JR明石駅から、車で10分程の住宅地に「とり梅」はある。交通の便が良いとは言えないが、30km程離れた姫路や三田方面から来店するお客もいる。客数は、平日でも80〜90人、週末なら100〜120人。客層は、グループ客やカップル、女性の二人連れ、家族連れなど様々で、開店を待ちきれず、午後4時半頃から訪れるお客もいるほどだ。 ここの鶏料理は多彩だ。
著者
Osvaldo N. Oliveira Jr. Tácito T. A. T. Neves Fernando V. Paulovich Maria Cristina F. de Oliveira
出版者
(社)日本化学会
雑誌
Chemistry Letters (ISSN:03667022)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.1672-1679, 2014-11-05 (Released:2014-11-05)
参考文献数
46
被引用文献数
17

An overview is presented of the many opportunities and challenges for using “Big Data” concepts to treat data from chemical sensors. Issues discussed include the need to make data machine readable and how to integrate distinct types of data that can be acquired and stored in different places. As a concrete example of possible applications, we propose a framework for an expert system dedicated to clinical diagnosis, where data from various types of sensors can be combined with text to provide better-informed diagnostics.
著者
粟井 郁雄 石田 哲也 張 陽軍
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MW, マイクロ波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.48, pp.41-46, 2006-05-11
被引用文献数
1

FDTD法を用いて時間領域のみで共振器の基本パラメータ即ち共振周波数、無負荷Q、外部Q、結合係数を算出する方法を提案している。FDTD法は本来時間領域計算であるにもかかわらず、パルスレスポンスをフーリエ変換して周波数領域に直して利用することが多い。この方法ではそれをやらない事によって時間短縮ができる上に、時間領域計算自身も非常に短縮することができる。それは外部回路と共振器の結合が極めて周波数選択的である事に依拠している。
著者
宮本 洋二 藤澤 健司 福田 雅幸 湯浅 哲也 長山 勝 山内 英嗣 河野 文昭 日野出 大輔
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.292-301, 2005-06-30 (Released:2014-11-15)
参考文献数
30

The purpose of this study was to determine whether clinical success can be achieved with immediate loading in the edentulous maxilla and mandible with Brånemark implants (Nobel Biocare, Goteborg, Sweden) at one year after placement of the implants. The study sample consisted of 18 patients who were edentulous or about to lose all remaining teeth. A total of 118 fixtures were placed in 7 maxillae and 12 mandibles, including one bimaxillary patient. Ninety seven of the 118 fixtures were immediately loaded and 21 fixtures were submerged. Five to 7 fixtures (mean of 5.9 fixtures) supported the prostheses in the maxilla and 4 or 5 fixtures (mean of 4.7 fixtures) in the mandible. All fixtures immediately loaded were placed in the incisor and premolar regions of both maxilla and mandible. The mean lengths of the fixtures in the maxillae and mandibles were 14.8±1.8 mm and,15.6±2.6 mm, respectively.All of 41 immediate loading fixtures in the maxillae showed a placement torque of more than 35 Ncm. Although 5 of 56 fixtures in the mandibles showed a placement torque of 30 Ncm, remaining fixtures showed more than 35 Ncm. Provisional implant-supported fixed prostheses were fabricated in a laboratory from an impression and were placed on the next day after surgery. After a 4-to 7-month healing period, a definitive prosthesis was fabricated and placed. One implant, although still osseointegrated, was removed owing to bone resorption. In the patient, the provisional prosthesis was supported by 4 remaining fixtures;thus the cumulative survival rates for fixtures and prostheses were 99.0%and 100%, respectively, after one year. This clinical report suggests that immediate loading of implant-supported fixed prostheses in the edentulous maxilla and mandible can be a safe and successful treatment as long as patients are carefully and strictly selected.
著者
谷 武幸 ALI Arnaut HORVATH Pete HOPPER Trevo SCAPENS Robe 加登 豊 TREVOR Hopper PETER Horvath ROBERT Scapens ARNAUT Ali HORYATH Pete HOPPER Trero SCAPONS Robe WANGENHEIM S
出版者
神戸大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

平成10年度には、過去2年間の研究を踏まえて、研究成果の総括を行った。研究の成果は、次の3点にまとめることができる.(1) 原価企画の日独比較。3年間のフィールド調査に基づいて、またすでに実施済みの日本企業対象の「原価企画の実態調査」をドイツ企業対象に実施した.これらの比較調査の分析観察結果については、8月に神戸大学でワークショップを開催し、日米の研究者・実務家が参加してディスカッションを行った。このワークショップでのディスカッションをフィードバックして、研究成果をとりまとめ、公刊することにしている。(2) サプライヤーマネジメントの日独比較。これについては、平成9年度に行った日独比較のサーベイ調査をとりまとめ、論文を公刊した。ドイツ企業において、試作から量産までのリードタイムが長くなっている要因をサプライヤーマネジメントの観点から析出できた。(3) グローバル組織の管理会計に関する日英比較。次の諸点が明らかになった。1 日本の多国籍企業は、本社主導でマネジメントコントロールを行う傾向があること2 日本における場合と同様に、業績評価を行うが、それとインセンティブとの関連が希薄なこと3 指揮や指示がハイコンテキストな方式で行われる結果、現地人管理者には不平や不満が少なくないこと4 現地からすれば、不要だと思われるような頻繁で大量の情報を本社が要求すること、そして、それらの情報に基づいた本社からの指示がほとんと行われていないこと5 上記の点を含めて、「マネジメント・コントロール」という用語が世界共通で用いられるにもかかわらず、その意味の理解については、国ごとに相違があり、このことが、多国籍企業のマネジメント・コントロールの実施にあたって,多種多様な問題を生じさせていることなどが明らかになった。
著者
横山 昇治
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1072, pp.153-156, 2001-01-01

2000年10月31日の火曜日、時計の針は午後2時半を指していました。あと30分以内に処理しなければ手形は不渡りになる。何とかしないと。決済に必要な額は4800万円。工面できたとしても、また来月も返済が迫ってくる。やるだけのことはやってきた。もう限界かな…。こんな思いを巡らせながら、午後3時の時報を聞いたことを覚えています。
著者
筧 一彦 島田 正治 河原 英紀 竹内 勇剛
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

良好な人間-機械間の対話コミュニケーションの実現には、人間の機械に対する対話の志向性を形成することが重要である。このため対話における非言語情報や環境要因について検討した。1)対話の共感性:非擬人的エージェントであるクリーチャーが、人間の発話の韻律情報を模倣する非言語的応答を返すことによって、エージェントとの共感性が高まることを明らかとした。人間はクリーチャーの発話速度の変化に対して調整的発話をすることや通常より高いピッチレンジの応答に対して相手の強い意図や要求を感じるなどの点が明らかとなった。また、擬人的エージェントに対しては、エージェントの仮想的身体に対して働きかけを行うこと、複数エージェントとの対話環境においては、多数意見を背景にした行動をとることなどが判明した。2)感情音声の高品質処理と知覚特性:STRAIGHTをベースとした音声モーフィング法を完成した。異なる感情発話の間をモーフィングした音声の自然性が心理実験に十分な品質をもつこと、感情音声の心理連続体を構成うることを明らかとした。また、表情の知覚と異なり感情音声の知覚は必ずしもカテゴリカルでないことを示した。また、感情音声は言語の制約をこえて普遍的に知覚されることを示した。3)音源知覚・音環境制御:明確な音源定位知覚を得るのに必要な刺激音の提示時間刺激音の種類について明らかとした。また、ヘッドホン受聴、ステレオ拡声における両耳相加効果を解明した。音環境実現する手法として波面合成法をベースとし、音源推定によって少ない情報で音場再現・制御を可能とする方法を提案し、その実用を示した。また、音源が動くような場合にも適用可能なアルゴリズムを示した。
著者
酒巻 智宏 岩井 将行 瀬崎 薫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.400, pp.37-42, 2011-01-20
被引用文献数
1

近年,Twitterを初めとしたマイクロブログが注目されており,データマイニングや自然言語処理の分野で多くの研究が行われている.本研究では,Twitterのジオタグを用いて,ユーザの行動範囲とモビリティパターンを推定する.ユーザごとの行動パターンの推定とTweet内容を合わせて,ユーザの行動アシストや大規模マーケティング等に利用できる可能性がある.本研究では,位置情報を元にしたクラスタリングと投稿内容を元にした特徴語の発見により,上記の目的を達成する.
著者
平松 和政 WU J WU J.
出版者
三重大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

HVPE法により作製した無極性AlN単結晶基板上に高性能な深紫外LED(波長250~300nm)を実現することを目的として、HVPE法による高品質無極性AlNバルク単結晶成長の作製を行った。今年度は特に、(1)傾斜r面サファイア基板上へのa面AlNの成長、(2)a面サファイア上への高品質c面AlN成長を行った。a面AlN成長におけるr面サファイア基板の傾斜角依存性を調べることを目的として、基板の傾斜角を+5°(c軸方向)から-5°(m軸方向)に変化させた基板を用いてa面AlN結晶の成長を行った。基板の傾斜角によって結晶性が大きく変化することがわかった。特にc軸方向に傾けた基板を用いた場合、X線ロッキングカーブの半値幅が大きく減少することから、c軸方向に傾けたr面サファイア基板を用いることが、高品質a面AlNを得るために有効であることが明らかになった。選択横方向成長や中間層などの複雑な技術を用いないで簡便に高品質なAlNエピタキシャル層を得るための方法を検討した。a面及びc面サファイア基板上にc面AlNの結晶成長を行ったところ、a面サファイア基板に成長したc面AlNの方が、X線ロッキングカーブの半値幅が小さく、低転位密度で、クラックが少ない高品質な結晶を得ることができることを明らかにした。以上の結果から、高性能な深紫外LED(波長250~300nm)を実現するために必要となるAlNバルク単結晶基板を作製するための見通しを得ることができた。
著者
山崎 晶子 久野 義徳
出版者
特定非営利活動法人ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会誌 (ISSN:13447254)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.229-234, 2006-11

総務省戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)特定領域重点型研究開発 次世代ヒューマンインタフェース・コンテンツ技術視覚情報に基づく人間とロボットの対面およびネットワークコミュニケーション(051303007)平成17年度〜平成19年度 総務省戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)研究成果報告書(平成20年3月)研究代表者 久野 義徳(埼玉大学大学院理工学研究科 教授)より転載
著者
宗宮 弘明 宮崎 多恵子 後藤 麻木
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

魚類、両生類(サンショウウオ)、爬虫類(ヤモリ、カメレオン)、鳥類(カナリヤ)さらには哺乳類の一部(ラット、マウス)も紫外線視覚(UV Vision)を持ち、摂餌、配偶者選択、コミュニケーション等に利用する(Yokoyama 2000)。初年度(H14)にショウワギスとボウズハゲギスの網膜を調べ、それらが紫外線視覚に関与するUV CONEを多数網膜底部に持つことを明らかにした(Miyazaki et al. 2002)。また、タペータムを持つカイワリ(アジ類)は紫外線視覚に関与するUV CONEを持たないことがわかった(Takei & Somiya 2002)。次年度(H15)にはテッポウウオが空中を見るにもかかわらず紫外線視覚に関与するUV CONEを持たないことがわかった。最終年度(H16)にはヨツメウオの視覚特性を探求し、それらが紫外線視覚を持つことがわかった。また、ヨツメウオの網膜特性の研究の結果、従来いわれていたように、ヨツメウオは腹側網膜で空中視を行い、背側網膜で水中視せずに水平Visual streakで空中視も水中視も受容していることを証明できた。しかし、ヨツメウオ紫外線視覚の機能については解明することが出来なかった。当初、研究の方針は、網膜の博物学的組織学と分子生物学の二本建てで進める予定であったが、分子生物学学的研究が思うようにはかどらず現在も継続中である。しかし、現時点で、今回の研究結果をまとめると次のようになる。魚類の祖先がすでに紫外線視覚を持っていたことは良く知られている。一般に紫外線の無い環境に生息する魚類、たとえば、シーラカンスは紫外線視覚を持たない(Yokoyama et al. 1999)。紫外線の多い環境にすむ魚種でもテッポウウオのように紫外線視覚を利用しない魚種もいる。おそらくそれは、紫外線が網膜に悪影響を与えることに関係しているかも知れない。
著者
児玉 年央
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

多くのグラム陰性病原細菌は3型分泌装置を使って、エフェクターと総称される病原因子を直接宿主細胞に注入することで、病原性を発揮する。申請者はこれまでに食中毒原因菌である腸炎ビブリオの3型分泌装置の一つであるTTSS2が本菌の下痢原性に必須であることを明らかにしてきた。しかしながら、このTTSS2依存的な下痢原性に寄与するエフェクターは不明であった。本研究では、TTSS2依存的な下痢原性に寄与する新規エフェクターとしてVopE を同定した。VopEは構造的にN-terminal domain、long repeat (LR)domain、C-terminal domainに分けられる。申請者はLR domain、C-terminal domainがそれぞれ独立してactin 結合活性を持つこと、これらの結合がVopE の下痢誘導活性に必要であることを見いだした。さらに、TTSS2やVopEはnon-O1/non-O139 V. choleraeの下痢原性にも寄与していることを明らかにした。これらの結果により、VopEはF-actinを標的とする新規エフェクターであり、TTSS2を保有する病原細菌の下痢原性に寄与していることが示唆された。
著者
村山 美穂 ARNAUD Coline ARNAUD Coline
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、長期にわたる観察により母系の血縁が判明している野生ニホンザル集団を対象として、性格の進化過程の解明を目指した。本年度は、前年度までに蓄積した幸島ニホンザル集団における 1.新奇性探求の行動テスト、2.質問紙による性格評定、3.血縁関係のデータの相互の関連性を解析した。新奇物体テストでは58%、新奇食物テストでは19%の個体が全く接近しなかった。新奇物体テスト項目は1主成分、新奇食物テスト項目は2主成分に分かれた。新奇物体や新奇食物への接近が遅い個体は、接近後に食物を調べたり味をみる時間が短かった。性別、年齢、給餌、指向数、時間、季節、他個体の有無などの影響は見られなかった。メスの順位の高い個体は中・低順位と比較して、新奇物体への興味が弱い傾向にあった。母子を除く近縁個体は、遠縁個体に比べ、新奇食物への興味(調べたり味を見る行動)のスコアが似ていた。このことから新奇食物への興味は、母親から社会的に伝わる影響に加え、遺伝的な影響も大きいことがわかった。性格評定の質問20項目中、評定者間の一致度が高かった12項目を用いて因子分析を行った結果、“Loneliness”,“Subordination”, “Emotionality”の3因子が抽出された。これらの結果をまとめて国際学会で発表し、学術雑誌に投稿した。
著者
内田 隆三
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.2-19, 1982-03-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
43

D・ベル、A・トゥレーヌ、J・ハバーマスらの世代は、テクノロジズムとの相関における社会統合の危機や疎外、コンフリクトの視角から「産業化」の問題を論じた。人間の主体性やシステムの合理性という基準からテクノロジーの発展が批判的に評価されたのである。だが、産業発展が帰結する高度大衆消費社会は、脱工業化社会論や正統化の危機論が依拠する基準や言説の場そのものを変容させつつある。W・W・ロストウは、産業の高度化が一層前進し、実質所得自体の相対的限界効用の逓減が大衆的基盤で起こりはじめたらどうなるのであろうか、と語っていた。「産業化」が提起する逆説的で本質的な問題は、「産業化」がそれ自身同一的な実体ではなくて、それを押し進めた生産=効用の論理やそれに連接した諸エートスとは、異質の論理に陥入していくトポロジカルな変容にある。相対的に溶解していく効用の空間とは異質のトポロジーを「産業化」が分節するのだとすれば、効用という曖昧な概念を軸にした「産業化」の理解や批判はもはや妥当的ではない。既に、J・ボードリヤールは効用の論理の外部に、「産業化」の帰結としての高度大衆消費社会の記号論的解読を試みている。本稿は、ボードリヤールの分析を踏まえつつ、その限界を超えるべく、高度大衆消費社会の経験と産業システムの新たな相関項(レファレント) (ホモ・コンスマンス) の再発見を行ない、「産業化」の現在を消費的世界において検討するものである。