著者
池田 昌彦 西部 次郎 中原 武利
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.368-374, 1981-06-05
被引用文献数
3 18

テトラヒドロホウ酸ナトリウムを使用してヒ素などの水素化物を連続的に発生させて原子吸光分光分析装置で定量するに際し,水素化物の発生効率及び吸収感度に影響を及ぼす諸条件について検討した.水素化物の自然分解率については,2分間にヒ素1%,鉛30%,テルル57%であった.同時に生成する水分はヒ素と鉛にはほとんど影響しなかったが,テルルには著しく影響を及ぼした.水素化物の発生反応は鉛とテルルについては試料とテトラヒドロホウ酸ナトリウムが混合した瞬間に発生が完了するが,ヒ素については混合後2秒間程度発生が継続していた.水素化物連続発生装置で水素化物形成元素を原子吸光測定する際にキャリヤーガスとして使用するアルゴンは,発生した水素化物を希釈するだけでなく,水素化物の自然分解及び原子化セルの内壁の温度に影響を及ぼした.
著者
長谷川 正 丹羽 健
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

ダイアモンドアンビルセル(DAC)という超高圧発生装置と赤外レーザー加熱(LASER)を組み合わせたシステムによって得られる圧力10~100GPa(1GPa=約1万気圧)および温度2000~4000K程度の"超高圧超高温"の"高活性な希ガス超臨界流体"を利用して,新しい希ガス化合物を創製することを目的とした.常圧で気体として存在する物質をDAC内に高密度に封入する方法として,常圧下で気体を冷却し液化して高密度な物質とし,これをDAC内に充填する方法を選択し,今年度は,まず昨年度に開発したダイアモンドアンビルセル内に液化ガスを充填する装置を改良した.特に,昨年度の実験で問題となった次の2点を改良した.観察系において窓に霜が付着し観察が困難となる.ガス導入パイプから流出する希ガスが過剰に冷却されパイプ内で固化する.これらの問題を解決するために,熱伝導を悪くし霜の付着を妨げるために,窓の部分に断熱材を挟んだ.さらに,霜を溶かした際に,水滴が排出されやすくするために,窓の淵の二箇所に切り込みを入れた.また,DACセルにサーマルアンカを取り付けて,ガス導入管パイプのサーマルアンカは外した.充填時にセル下部は上下方向に移動するため,DACセルに取り付けるサーマルアンカはこれを考慮して設計・改良・設置した.さらに,セルとサーマルアンカの接触を良くするために,薄いアルミニウム箔を敷いた.上記の改良の結果,希ガスの液化を容易に達成することができ,新しい希ガス化合物の物質探索が容易になった.研究終了直前に改良に成功し希ガス充填までたどり着けたが,新物質の創製は今後の課題として残された.しかしながら,本研究課題の最も重要な物質創製装置の開発には成功したため,今後新しい希ガス化合物が創製されることは十分に期待できる.
著者
渡津 章 井汲 憲治 野浪 亨
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.243-248, 2001-07-25
被引用文献数
2

人間の口腔内で破損したBranemark人工歯根を調べ, 破断プロセスを検討した.この試料は歯根として機能していたが, 歯槽骨の吸収が起こった後, 破折したものである.破断部ではフィクスチャーの内側のネジ山の谷部に沿った形で外側の谷部が形成されており, 大きい荷重を受ける機械的強度の低い部分から破壊したことが分かった.また, フィクスチャーの破断面では, 破断時に生じる細かい起伏形状がなくなっていた.一方, 中央のネジには細かい波状の構造があった.つまり, このネジが繰り返し応力を受けて破断したことが分かった.これらのことから, まずフィクスチャー部のネジ山谷部に沿って亀裂が生じた後, 破断面が塑性変形を起こし, 最後に中央のネジが繰り返し応力により破断したことが分かった.
著者
寺村 泰 山崎 志郎 西野 肇 日向 祥子 小野塚 知二 松田 紀子
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、業種ごとに市場のコーディネートが多様な形態で行われてきたことを資料に基づき実証するとともに、国際比較を踏まえて日本における市場のコーディネーションに関する特質を解明するものである。第一に、日本国内にある2100の業界団体に対して保存資料に関するアンケート調査を行い、その集計結果および資料リストを冊子にまとめ、研究者に郵送したほか学会において無償配布した。第二に、海外における業界団体等の資料保存体制に関して現地調査を行い、日本における資料保存体制との比較考量を行った。第三に、調査過程で収集した資料に基づいて多様な市場コーディネーションの実態について研究し成果を発表した。
著者
對馬 誠也 南 栄一
出版者
独立行政法人農業環境技術研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

種子消毒法により、無菌イネ(以下、低表生菌密度イネ、RLEと呼称)の作出に取り組んだ。その結果、3年間の試験から、RLEは通常栽培イネより1/10000以下の菌密度であり、RLEの研究用素材としての実用化が可能と考えられた。本成果は、マイクロアレイでイネ遺伝子発現を調べるにあたり、従来考慮されなかった「植物生息微生物ノイズ」を大幅に除去した「高精度のイネ遺伝子発現解析」を可能にすると考える。昨年に続き、RLEと普通栽培イネのマイクロアレイ解析を実施した。発現の違いに関する解析では、昨年同様に各遺伝子発現レベルで2-fold upしたものを選抜して解析に供試した。その結果、低表生菌密度イネではDNAの複製と修復、たんぱく質の合成・加工・輸送に関与する遺伝子群がより多く発現していることが明らかになった。
著者
コルニ マリア G. トレンティニ M.
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.258-261, 1990-11-30
被引用文献数
3

食用二枚貝2種V. aureaおよびR. philippinarum(最近養殖のため輸入されたアサリ)の染色体を再検し, 雌性細胞による知見を追加した.いずれも従来の雄性細胞による結果と一致し, 雌雄ともに2n=38, n=19で, 性染色体は認められなかった.
著者
吉川 政夫 有沢 孝治 川野辺 裕幸 内田 晴久
出版者
広島大学高等教育研究開発センター
雑誌
大学論集 (ISSN:03020142)
巻号頁・発行日
no.43, pp.337-351, 2012-03

The purpose of this study was to develop a structured class evaluation questionnaire to be completed by students at Tokai University. Two thousand and seven hundred students from sixty-two classes answered the new class-evaluation questionnaire. The data of the survey were collected and analyzed and the results of the analysis are as follows.In relation to the items "teaching content and teaching methods", five factors labeled "motivating students", "intelligible teaching", "the passion and concern of the teacher", "the critical goal of the course", and "the appropriate presentation of information", were extracted by factor analysis. Similarly, in the items for "outcomes from the teaching and learning process", one factor labeled "outcomes from the teaching and learning process" was extracted.The findings, which were revealed by multiple regression analysis, were as follows. For the items of "teaching content and teaching methods", the factor of "intelligible teaching", predominantly, and the factor "the passion of the teacher", secondly, contributed to the overall evaluation score. Also, the item "outcomes from the teaching and learning process", affected the overall evaluation score.There were significant differences in the mean scores between those who wrote their names on the questionnaire form and those who did not, in relation to several of the evaluation items. But, including the overall evaluation, significant differences in the mean scores between the two groups were not found in many of the evaluation items. Overall, differences were slightly smaller between those who wrote their names and those who did not.Based on findings outlined above, a structured questionnaire for class evaluation by students was developed.
著者
湯淺 墾道
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP)
巻号頁・発行日
vol.2013-EIP-60, no.7, pp.1-6, 2013-05-09

平成15年の地方自治法の改正により導入された指定管理者制度は,自治体の個人情報保護との関係において多くの問題点を生み出している.自治体は公的機関として公共性や透明性が求められ,個人情報保護条例で個人情報保護を図っているのに対して,企業等の民間事業者である指定管理者には個人情報保護法が適用されている.本稿では個人情報の取扱をめぐる公的機関としての自治体と民間事業者との相違を明らかにし,公の施設の管理に際して指定管理者が収集・保有する個人情報に対する個人情報保護法と条例の適用問題について検討を加える.
著者
田越 秀行
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

コンパクト連星合体重力波をレーザー干渉計重力波検出器ネットワークで検出する場合のパラメータ決定精度を調べた.その結果,ショートガンマ線バーストに付随する連星合体重力波が検出できた場合には,高次変調モードを取り入れた理論波形を用いて解析することで,連星の軌道傾斜角を3度から7度の精度で決定できることが分かった.また,ブラックホール周りの赤道面上に円状の回転リングがある場合に生じる重力場の摂動を,Teukolsky方程式とCCK形式によって計算し,CCK形式を用いて具体的に重力場を求める際の問題点について有用な知見を得た.
著者
大井 隆夫 掛川 一樹 小坂 知子 本多 照幸 垣花 秀武
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.5, pp.543-548, 1993-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
25
被引用文献数
1

草津白根山の火口湖である湯釜について,二つの湖水試料,二つの湖底泥試料および一つの固体火山噴出物中のランタノイド元素を中性子放射化分析法により定量した。その結果,水試料では11~14元素がppbのオーダーで,固体試料では8~10元素がppmレベルでそれぞれ定量された。すべての試料において,定量された元素でみる限り元素の存在量に関するOddo-Harkins則が成り立っていた。各試料中のランタノイド元素濃度をLeedeyChandrzte中の対応する濃度で規格化して得られるランタノイド元素パターンを求めたところ,固体試料では軽ランタノイドで左上がり,重ランタノイドでほぼ水平の傾きをもった,岩石でよく見られる,互いによく似たパターンが得られた。水試料のパターンは,全体にわずかに左上がりのものであった。固相と液相との間でのランタノイド元素の分配係数をイオン半径に対してプロットしたところ,中程度のイオン半径(90~95pm)のところでピークをもつ特徴的な曲線が得られた。これより,閉鎖系の酸性環境下においては,三価イオンの場合このあたりのイオン半径を持つ元素が最も液相側に分配しやすいことが示唆された。
著者
菅原元信
出版者
財務省
雑誌
ファイナンス
巻号頁・発行日
no.489, 2006-08