著者
有馬 拓也 鹿嶋 雅之 佐藤 公則 渡邊 睦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.380, pp.7-12, 2012-01-12

掃除ロボットが実用化されて我々の身近なところにも見られるようになったが,単に移動経路上のゴミらしきものを回収して行くだけでゴミの分別など高度な清掃作業は実現できていない.そこで本研究は,ロボットが自らゴミを選別して回収する新たな清掃ロボットを目指し,ロボットビジョンを用いたゴミ分別のための能動的物体認識を提案する.まず,対象の表面にレーザー光パターンを投影・解析することにより曲面・平面・折面などの表面形状を識別してゴミ選別の手掛かりとする.次に接触し圧力を加える前後の対象の位置変位を観測することにより重量を推定して対象ゴミかどうか決定する.実験室にてゴミ選別のための物体認識実験を行い,提案手法の有効性を検証した.
著者
藤原 裕展
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

毛包バルジ部に存在する表皮幹細胞は、発生期を通して幹細胞の性質を獲得するが、そのメカニズムはよく知られていない。本研究では、毛包幹細胞が表皮細胞としての性質に加え、立毛筋制御のための腱様機能を持つという多機能性が幹細胞としての性質決定に関わるとの仮説を立て、それを検証した。バルジ表皮幹細胞の遺伝子発現プロファイルを他の細胞と比較したところ、バルジ幹細胞で筋肉-組織接続部に特徴的な遺伝子の発現が強く誘導されていることが明らかとなった。さらに、バルジで発現する腱組織形成に重要な転写因子Scleraxis 欠失マウスを作製したが、毛包形態や幹細胞の遺伝子発現に顕著な異常は現れなかった。
著者
矢野 隆 井上 久雄 清水 康雄 新開 志帆 越智 政勝
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.53-58, 2002-04-01
被引用文献数
3 1

ユスラウメ台木栽培に適した品種を探索するため, モモ15品種を試作し, 収量, 乾物分配および枝幹横断面の性状について調査した.年平均収量は'千曲白鳳', 'あかつき', 'よしひめ', '川中島白桃'で多く'武井白鳳', '八幡白鳳', 'やまなし白鳳', '瀬戸内白桃'で少なかった.果実生産性の高い品種は他の部位の乾物重量も多かったのに対して, 生産性の低かった'八幡白鳳', 'やまなし白鳳', '竜鳳'は総乾物重も低く, 純生産量が少ないと考えられた.一方, '武井白鳳', '瀬戸内白桃'は果実生産量は少なかったが穂木部の幹への分配は多く, 総乾物重において高生産性品種との有意な差はなかった.穂木部における幹の性状と乾物生産についてみると, 皮部の面積割合の高い品種はおおむね穂木部乾物重が少なかった.衰弱しやすいとされる'川中島白桃'はF/L比が極めて高く, 果実への分配が特異的に多くなった.この物質分配の不均衡は, 樹勢衰弱を誘発させる一要因と考えられた.
著者
内藤 親彦 田井 晰
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

ニホントガリシダハバチHemitaxonus japonicus complexの野外個体群を研究対象として、同所性寄主転換と生態種形成機構を解明するために、主として遺伝・化学生態的手法により研究を行い、以下の新事実を得た。1.日本の北緯34度付近の狭い移行地帯(南北約10km)において、イノデ生態種がジュウモンジシダ生態種から、寄主転換と生殖隔離をともなって同所的に分化している。2.寄生転換の主要因である雌成虫の寄主選択性は一遺伝子座支配と考えられ、両生態種は異なる産卵誘引物質を感受している。両化学物質はパルミチン酸メチルに近い揮発性成分であるが、それらの構造決定には至っていない。3.両生態種は外部形態や染色体で区別することはできないが、酸素多型やDNA高度反復列の比較においても、生態種分化に伴う明瞭な変化はみられず、生態種形成の速度が極めて速いか、またはその過程が遺伝的変化とは独立であるかを示唆している。4.同所的生態種形成とその短期確立には、寄主選択機構の他、寄主植物上での同系交配、一方向的選択交尾、条件づけ効果による幼虫の不食化等の諸要因が関与している。一方向的選択交尾は旧生態種から新生態種への遺伝子流入を防ぎ、新生態種の遺伝的独立性を保証する機構であり、それには性フェロモンの介在が実験的に示唆されたが、両フェロモンの同定には至ってない。5.機種転換が一遺伝子座支配による分断選択に起因していることを想定し、ジュウモンジシダ旧生態種の雌に、寄主選択の突然変異因子を含むイノデ派生生態種の雄を交配し、得られたF1雌にさらにイノデ生態種の雄を交配して、イノデのみに産卵、摂食するF2雌を分離することに成功し、生態種形成の実験的再現の可能性を強く示唆した。
著者
持田 大輔
出版者
奈良県立橿原考古学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、日本列島出土の朝鮮半島・中国系の金属器-とくに装飾付大刀・銅鋺・銅鏡の変遷について整理し、それら遺物が受容される過程について検討した。結果、各時期の東アジア国際情勢を反映しながら威儀具的性格を有する金属器が日本列島で製作され、古代国家成立過程においてとりこまれていく過程の一端が明らかになった。
著者
山本 祐輔 手塚 太郎 ヤトフト アダム 田中 克己
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.576-584, 2008-03-01
被引用文献数
2

「恐竜は6500万年前に絶滅した」といったような知識の信頼性を確認する際,現在では検索エンジンの検索結果を用いて確認が行われている.しかし,ユーザの確認したWebページのみで判断を行うのは,個々のページの信頼性が低いことやページが網羅的に確認されていない点に問題がある.そこで我々はユーザが真偽に確信がもてない知識の信頼性を判断支援するシステムを提案する.本論文では,知識の信頼性をそれに関連するWebページの品質評価,言語的な分析,ページの生成時間分析から判断支援する方法を述べ,並びに実装,その評価を行う.類似のシステムとしてWebQAが挙げられるが,今回提案するシステムはユーザの質問に対する回答を発見することが目的ではなく,知識の信頼性を積極的に判断支援する点で異なる.提案手法ではまず知識を言及するWebページの評価と知識が言及された文脈の分析を行った.更に,ある時期においてある知識がどの程度Web上で言及されているか,どの程度継続して言及されているかを分析することで,時間的な観点からの知識の信頼性を評価し,その有効性の確認を行った.
著者
寺田 和憲 川合 直裕 山田 誠二 伊藤 昭
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

縁起担ぎとは,真の因果が存在しないにもかかわらず,特定の行為を行うことで良い結果を期待することである.本研究では,縁起担ぎを探索と搾取のトレードオフの観点からモデル化し,心理実験によって,以前に行われたタスクの成功率が高い場合には,たとえ明らかにタスクの成否に関係なくても無意識に同一の行動を選択し,成功率が低い場合には,異なる行動を選択する傾向があることを検証した.
著者
大野 和朗
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

農薬に高度の抵抗性を発達させたアザミウマ類の捕食性天敵であるヒメハナカメムシ類の生存や繁殖にオクラの分泌物である真珠体が重要な働きをすること、露地ナス圃場にオクラを植栽することで、ヒメハナカメムシ類等の天敵ほ働きが安定することを、世界で初めて明らかにした。室内実験により、真珠体そのものは動物質餌と同等の効果はないが、補助的な餌として、動物質餌が少ないとき、天敵の幼虫の体サイズが小さく、餌を捕獲できないときに、天敵の生存を高め、結果的に天敵個体群の持続性の向上につながると考えられた。圃場調査から、ナス上で餌昆虫(アザミウマ)がいなくなっても、ヒメハナカメムシ類の発生は続くことが明らかになった。
著者
二見 順 入江 浩彰 大江 修造 西 功
出版者
日本質量分析学会
雑誌
Journal of the Mass Spectrometry Society of Japan (ISSN:13408097)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.386-388, 1999 (Released:2007-10-16)

In recent studies, it has been revealed that Helicobacter pylori (HP) causes stomach cancer, stomach ulcers, duodenal ulcers and chronic gastritis. The 13C-urea breath test (UBT) is one of the diagnostic methods for HP infection. A new UBT method with the respiratory mass spectrometer developed by authors continuously measures with on-line the amount of decomposed 13C-urea in the stomach after the administration of 13C-urea. Trial examinations by the new method were carried out with two subjects; one was diagnosed positive of HP infection and the other was negative by clinical examinations. Significant difference was found in the amount of decomposed 13C-urea between both subjects. The results presented in this paper demonstrate that the new UBT method is applicable to the clinical use in the diagnosis of HP infection.
著者
泉澤 真紀 山本 八千代 宮城 由美子 岸本 信子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.347-356, 2008-07
被引用文献数
2

わが国の学校教育では,小学校で行われる初経教育から高等学校まで継続した月経教育が実践されているが,教育現場における時間数,教育内容の問題などが指摘されている。そのため,月経のメカニズムの理解や月経時のトラブル,月経痛への対処の知識の不十分さ,月経をネガティブにとらえる生徒への課題がある。本研究の目的は,学校現場における月経教育の実態と,「月経痛」「月経知識への満足感」「月経知識への関心」と関連ある内容を明らかにすることである。中学および高校の女子生徒216名に質問紙を配布し回収,協力の得られた210名の結果を分析した。「月経痛」は,「月経痛緩和法の知識」「友達と話すことがある」「月経知識への関心」「月経痛があるのは当然とする考え方」と有意に関連があった。また,「月経知識への満足感」は「学年」「薬の服用」と,「月経知識への関心」は「学年」「基礎体温の知識」「低用量ピルの知識」「月経痛と病気との関連の知識」「相談者の存在」「薬の服用」と有意に関連があった。さらに「月経知識への満足感」「月経知識への関心」の両者も強い有意な関連性を示した。これらから月経教育の課題が明らかになった。
著者
森 達哉 エスキベル ホリー アキラ アディティヤ 下田 晃弘 後藤 滋樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IA, インターネットアーキテクチャ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.137, pp.53-58, 2009-07-10

2008年11月11日に実施されたホスティング会社McColo社の上位ISPによる遮断は,世界の至るところでスパム流量を半分あるいはそれ以上減少させるという画期的な効果をもたらした.2007年夏以降の世界的なスパム流量の爆発的増大を引き起こした主要因とされるスパムボット,Srizbiをはじめ,今日の主要なスパムボットのC&Cサーバが同社によってホスティングされていたことが明らかになっている.本研究では世界最大規模のスパムボットであるSrizbiの全体像把握,およびインターネットエッジサイトの視点からスパムボットC&Cを標的とした制御の有効性を定量化することを狙いとする.分析には2007年7月から2009年4月にかけて3箇所の異なるネットワークで計測された広範なデータを用いた.本研究の主要な貢献は次の通りである.(1)Srizbiの世界的な規模を確率的な方法によって推定した.(2)Srizbiボットネットから送信されたスパムの流量とそのインパクト,およびMcColo社遮断による効果をインターネットエッジサイトの視点から定量化した.(3)Srizbiの勃興と衰退,そしてMcColo社の遮断前後におけるバージョン遷移など,スパムボットの全体像把握に有用な発見を明らかにした.
著者
石井 美保
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.21-46, 2005-06-30

本論の目的は、ガーナのエウェ民族によって行われている卜占アファを対象に、地域社会を越えて利用されている卜占の特徴を明らかにするとともに、卜占と儀礼を通して創出される多声的な語りと重層的な現実構成の可能性を考察することである。サハラ以南アフリカの卜占を対象とする先行研究の多くは、共同体における社会秩序の再生産や合意形成といった卜占の社会政治的機能を指摘してきた。一方、卜占を利用する人々の主体性に焦点を当て、卜占の参与者を能動的なエージェントとしてとらえる視点が提起されている。社会構造に規定された存在としての人間像を生産してきた構造機能主義的な卜占研究に対して、後者の研究は人々の経験や能動的な行為に焦点を当て、構造に対する個人の戦略や選択の意義を明らかにした。しかしこのような視点は構造に対峠する個人の主体性を強調するあまり、託宣をはじめとする特殊な発話や行為の様式を通してうみだされる個人の意図を超えたエージェンシーや多元的な現実構成の可能性さえも、既存の社会内部における個人の選択や戦略に従属するものとして矮小化してしまう危険性をもつ。本論では、アファの卜占と儀礼を微視的に分析し、占師と依頼者の共同作業を通して多声的な物語りと超常的なエージェンシーが発現する過程を検討する。占いの過程では、依頼者の日常的な社会関係は託宣が開示する神話的/呪術的な現実の位相の中に位置づけなおされるとともに、語り手である依頼者の人称は多重性を帯びる。また、儀礼の過程では身体的な演技と祭祀要素の操作を通して、依頼者の苦難と運命は儀礼のエージェントとしての「もの」に依託される。II章では、アファ祭祀の一般的特徴を概観し、調査地の社を紹介する。III章では、卜占の対話と儀礼を分析し、物語りの創出と供犠の施行を通して依頼者が日常的な現実認識を脱却する過程を考察する。
著者
Jae Yun Cha Doo Chul Shin Seung Ho Shin Myung Mo Lee Kyoung Jin Lee Chang Ho Song
出版者
理学療法科学学会
雑誌
Journal of Physical Therapy Science (ISSN:09155287)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.749-751, 2014 (Released:2014-05-29)
参考文献数
22
被引用文献数
1

[Purpose] This study examined the relationship between core stability and exercise intensity during a pulley-based shoulder exercise (PBSE) on an unstable support surface. [Subjects] Twenty healthy college students enrolled in this study. [Methods] Surface EMG was carried out in twenty healthy adult men. The electromyographic activities of the rectus abdominis (RA), erector spinae (ES), exercises with 14 kg or 26 kg of resistance and external oblique (EO) muscles during pulley-based shoulder on an unstable support surface (USS) were compared. [Results] The EMG signals of the RA, ES, and EO did not increase with increasing exercise resistance. [Conclusion] Increasing the exercise intensity to increase the core stability during PBSE on a USS may be ineffective.