著者
野々瀬 晃平
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度では実際の現場観察やシミュレータを使ったより実現場に近い実験環境での行動観察データを用い、チーム協調におけるメタ認知の重要性を検討した。具体的には2006年、2007年に行われた北関東セクターを用いたシミュレータ実験および同様のセクターを用いた東京コントロールで行われた実現場の記録データを用い、対空席と調整席という二人一組で構成されるエンルート航空管制官のチーム認知モデルの構築を行った。まず、航空管制官同士の言語的、非言語的インタラクションを記録データより抽出し、それを相互信念に基づくチーム認知を用いた「意図の次元」(インタラクションの理由)とタスク分析に基づく「内容の次元」(インタラクションの内容)を組み合わせたコミュニケーション分析マトリクスにより分析した。これは、インタラクションが行われた空域状況や航空管制官の指示、理由等について管制官の資格を持つ協力者に確認しつつ行った。その結果、対空席と調整席ではその役割の都合上、協調時の主要なメタ認知のあり方が異なることが示唆された。対空席はレーダー画面の監視を行い、トラフィック状況や航空機の現在の指示状態など自身の認知過程に対するメタ認知を行い、また調整席に対し自身の認知状態の補完を求めるインタラクションが多く見られた。一方で、調整席は自身もトラフィック状況や航空機の現在の指示状態などを確認しつつも、対空席の行動を見ながらその認知状態を推測し、その信念の正確さや十分さを補完するインタラクションが多く見られた。また、対空席の考えを確認した上でより良い管制プランを提案、補助するなどの行動も見られた。そしてこの分析結果及び航空管制官の認知モデルに関する先行研究の知見を合わせ、航空管制官のチーム認知モデルの構築を行った。これらの成果は今後予想される管制システムの自動化の際、チーム協調の観点からシステムを評価することに寄与すると期待される。
著者
福井 麻純
出版者
美学会
雑誌
美學 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.57-69, 2002-03-31

NAKAMURA Hochu has been conventionally known as a Rimpa school painter who published Korin Gafu and whose folding screen work entitled "Flowers of the Four Seasons" is now possessed by The British Museum. Some scholars, however, have often pointed out that he was also well connected with other artistic schools led by Taiga, Buson, or Nichosai. Nevertheless, his raison d'etre as a distinguished painter in the late 1700s and early 1800s has been obscured. The main reason is that people have taken him just as one of many Rimpa schoolpainters and he flourished mostly in the Osaka art circles during the Edo period. This paper explains that it is not appropriate to discuss Hochu simply as a Rimpa school painter and explicates his views on Korin and the figure motifs illustrated in Korin Gafu. This paper also tries to put some light upon his close relationship with the world of Haikai and his personal involvement with the Bunjin circles in Osaka. In addition, this paper tries to show how versatile his artistry was and how critical his contemporaries were to his paintings. Through these topics, this paper elucidates Hochu in a wider context than ever before.
著者
筒井 健一郎
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-04-01

グループ逆転学習課題を遂行中のサルの前頭連合野の諸領域(背外側部(DLPFC)、背側部(DPFC)、腹外側部(VLPFC))の神経活動を、低頻度反復経頭蓋磁気刺激(低頻度rTMS)によって抑制したときの、課題遂行行動の変化を調べた。グループ逆転課題は、我々が独自に開発した課題であり、モデルベースおよびモデルフリーの行動制御過程を分離することができる。8つの抽象図形によって構成される刺激セットを、4つの刺激からなる2群に分け、それぞれの群は異なる結果(ジュースあるいは食塩水)を予告する条件刺激として、パブロフ型条件づけを行った。数十試行ごとに、刺激と結果の関係をすべて逆転させる「全体逆転」を繰り返すと、サルは常に同じ意味をもつ4つの刺激を「カテゴリ」(刺激の等価性に基づいたグループ)として認識するようになり、1つの刺激について逆転を察知すると、その他の刺激については、あらかじめ結果との関係が逆転することを予測して行動するようになった(モデルベース行動)。一方で、8つの刺激のうち4つしか刺激と結果の関係を逆転させない「部分逆転」においては、このカテゴリの情報が使えず、個別の刺激について新たに刺激と結果の関係を、時間をかけて学習するストラテジーをとった(モデルフリー行動)。DLPFC、VLPFC に低頻度rTMSを与えた時には、全体逆転における課題成績が低下したが、部分逆転の課題成績には影響がなかった。一方、DPFC に低頻度rTMSを与えた時に、全体逆転、部分逆転ともに、課題成績への影響は認められなかった。この結果により、DLPFC および VLPFC は、モデルベース行動の制御に重要な役割を持っていることが明らかになった。一方、モデルフリー行動の制御には、前頭連合野を必要としないことが示唆された。
著者
早川 文代 馬場 康維
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.437-446, 2002-05-15
被引用文献数
3

"Mattari," which is a term for describing food properties, was clarified by a questionnaire to 496 young people in the metropolitan area around Tokyo. The respondents were first asked when and how they had known the term, and the answers reveal that "mattari" is a vogue-word. Second, the association between "mattari" and 52 kinds of food was studied. The panel was asked how "mattari" an item is: very, a little, not at all, and "I've never eaten." The data were analyzed by quantification method III, and their item category values were obtained. Order was apparent among the data categories, showing that there was a common conception of "mattari." Order was also found among the evaluated items, meaning that scaling of "mattari" was possible, so that the intensity of "mattari" for each kind of food could be quantitatively obtained. Sweets or dairy products such as custard cream, fresh cream, butter cream and carbonara sauce were very "mattari." Third, the panel was asked whether 53 kinds of terms-for describing food properties were close to "mattari" or not. The terms close to "mattari" were "sticky," "mild," "spreading slowly in the mouth" and "rich."
著者
嶋田 有三 安部 明雄
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

有人宇宙輸送の信頼性向上を目的として、(1)非パラメトリック方式と(2)パラメトリック方式の2タイプの適応制御方式を研究した。(1)の方式では、外乱観測器とフィードバック線形化法を併用した飛行制御システムを設計し、数値シミュレーション上でスペースシャトルを滑走路に自動着陸させることに成功した。(2)の方式では、横方向運動を最小位相系となるように設計し、外乱観測器を付加してその効果をシミュレーションで確認した。さらに、5基の操縦舵面の内、1基ないしは2基が故障しても飛行可能な制御則も開発した。
著者
竹内 健司 遠藤 守信
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、カーボンナノチューブ(CNT)の構造、CNTの均一分散技術および細孔共連続構造ポリマーであるポリマーモノリス技術を最適に融合することにより、軽量高強度樹脂複合材の技術基盤の構築を目的としている。目標を達成するために複合材に適したCNTの検討に加えてポリマーモノリス材の調製および構造解析について検討した。調製したポリマーモノリス/CNT複合材は、ポリマーソリッド材のような脆性破壊が起こらず、CNT未添加のポリマーモノリス材よりも高い初期応力、圧縮破断強度、柔軟性を有し、圧縮後も構造の割れや破断が見られないことを示した。
著者
秋谷 かおり
出版者
獨協医科大学
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.149-158, 2004-07-25

左室駆出動態が末梢動脈血流に及ぼす影響を明らかにする目的で,弁膜症例について頸動脈血流と左室駆出血流速度波形との関係を検討した.対象は弁膜症患者104例(平均年齢62±13歳),内訳は,大動脈弁閉鎖不全症37例,大動脈弁狭窄症17例,僧帽弁閉鎖不全症31例,僧帽弁狭窄症19例である.対照は,拡張型心筋症32例,肥大型非閉塞性心筋症12例とした.計測は,心エコー図検査と頸動脈エコー図検査を行い,左室駆出分画,心係数,1回抽出係数,平均左室円周方向心筋線維短縮速度,総頸動脈径,左室流出路ピーク駆出血流速度(LV Flow),総頸動脈ピーク収縮期血流速度(Car Flow)を計測した.大動脈弁狭窄症を除く全ての患者はLV Flowが速くなるほどCar Flowも速く,両者に正相関がみられた.大動脈弁狭窄症はLV Flowは速いほどCar Flowは遅く,両者は負の相関関係がみられた.また,大動脈弁狭窄症では弁狭窄が重症例ほどCar Flowは低下していた. Car Flowに弁膜症における左室駆出血行動態を反映した.
著者
小助川 博之
出版者
東北大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

樹脂と炭素繊維で構成される炭素繊維強化複合材料は、優れた比強度と比剛性のために鉄鋼やアルミ合金に代わる構造材料として期待されているが、その非破壊欠陥診断の方法は未だ確立されていない。本研究では、電気化学的手法を用いることで構造体自身が欠陥の発生を自己検出するスマートな炭素繊維強化複合材料の開発に成功した。このような複合材料は、構造体内部にセンサを埋め込む必要がなく内部欠陥の発生を誘発することがないため、構造物としての高い信頼性を示すことができる。
著者
近藤 光子
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.401-405, 2005

気管支鏡を介して, 気管支内に生理食塩水を注入し, 肺胞や末梢気道レベルを洗浄し, その回収液の細胞成分や液性成分を解析する方法で, 反復して施行することも可能である. 1970年代に開発され, 1980年代にびまん性肺疾患に対する有用性が確立された. 1990年代にはBALのガイドラインが示され, 標準化がなされるようになってきている. 現在, びまん性肺疾患の診断, 病態解析などに広く用いられている. 通常の気管支鏡と同様の前処置を行い, 気管支鏡を楔入し, そのチャンネルを通して生理食塩水を通常, シリンジで50mlを用手的に3回注入, 回収する. 回収時には気管支の虚脱が起こらないように陰圧は強くかけすぎない. 洗浄部位はびまん性肺疾患では中葉や舌区の区域支または亜区域支を選択することが多い. 病変が限局しているときは病変部を選択することもあるが, 回収率が不良になる可能性がある. 洗浄部位の記載は忘れずに行う. BAL施行中の咳嗽は回収率を低下させ, またcontact bleedingによる血液混入は結果の解釈に影響するので, 十分麻酔して咳嗽を防止する.
著者
立石 健二 福島 俊一 小林 のぞみ 高橋 哲朗 藤田 篤 乾 健太郎 松本 裕治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.93, pp.1-8, 2004-09-16
被引用文献数
14

本稿では、Web文書から意見を抽出し、それらをレーダーチャートの形式で要約/視覚化する意見抽出分類システムを提案する。Webの意見は、商品購入の際の情報収集、市場調査等のマーケティング、企業のリスク管理等、さまざまな目的での利用が考えられる。Webの意見の収集/分析に関する研究には2つの課題がある、対象とするWeb文書から意見に該当する箇所を抽出すること、抽出した意見を要約/視覚化することである。本システムは、この2つの課題を3つ組{対象物 属性 評価}のモデルと情報抽出の手法を用いて解決する。本システムを車に関するレビューサイトの100記事を対象として評価したところ抽出精度が適合率82% 再現率52%であり、システムが出力したレーダーチャートと人手で作成したレーダーチャートが類似することを確認した。This paper proposes an opinion extraction and classification system, which extracts people's opinions from Web documents and summarize/visualizes them in the form of "radar charts". People's opinions on the Internet are available for many purposes such as surveys before purchasing products, market research and risk management for enterprises. There are two issues on this area. One is to locate opinion sentences from Web documents, and the other is to summarize/visualize the extracted opinions. The proposed system solves them by employing an opinion model {object name, attribute expression, evaluative expression} and information extraction techniques. The experimental result conducted with 100 articles on the car domain showed that the system performed 82% on precision and 52% on recall, and that both radar charts created by the system and by the hand are similar to each other.
著者
高田 和夫 杉田 誓子 藤浪 隆夫 長嶋 正實 岩田 弘敏 高田 晴子 岩田 豊
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
日本総合健診医学会誌 (ISSN:09111840)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.382-388, 1997-12-30 (Released:2010-09-09)
参考文献数
16

高校1年生における「肥満」の判定基準を策定する目的で, 高校1年生男子50, 644名, 女子47, 457名を対象とし, 男女別に身長2cmごとの体重分布をHoffmann法で正規化して平均値を求めて基準値とした。この基準値は男女ともBMI=20の値にほぼ一致した。この基準で算定した肥満度別の「高血圧」発現頻度は肥満度が高いほど高く, また標準値を10%以上越える低体重あるいは過体重の生徒はいずれも問診によって身体活動性が悪いと評価し得た。高校1年生の体重の評価を行う時, 基準値の10%を越える低体重あるいは過体重の生徒は生活習慣改善の指導対象と判定すべきである。
著者
小室 一成 瀧原 圭子 松原 弘明 斉藤 能彦 室原 豊明 福田 恵一
出版者
千葉大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

本研究の目標である心不全の病態解明と新たな治療法の確立について多角的に研究を推進できたと考えられる。特にマウスの心機能解析法(心臓カテーテル検査、心臓エコー検査)を確立させたことは、我が国全体における心機能解析技術の飛躍的な向上に寄与できだと思われる。また、本研究代表者や研究分担者らがこれまで世界的にもリードしてきた研究対象であるナトリウム利尿ペプチド、アンジオテンシンII、サイトカイン、三量体G蛋白質、などに着目し、これらの遺伝子改変マウスを作製し実験に用いることができた。心機能に関与する遺伝子をターゲットとした遺伝子改変マウスの解析をおこなうことで心不全の病態を分子レベルで解明した。さらにこれらのマウスに胸部大動脈の縮窄または冠動脈の結紮などの手術を施し、圧負荷心肥大モデル、心筋梗塞モデル、虚血再灌流モデルなどを作製した際の心不全の発症・進展に対する影響も検討した。得られた知見は心不全の発症機序のみならず、心筋細胞が正常機能を維持するための機序についても新しい概念を与えた。心不全発症の分子機序を明らかにすることで心不全の新たな治療基盤を打ち立てることができた。また、心筋細胞の分化・発生の機序に関する研究をおこない、心筋細胞の分化に必須の転写因子や成長因子などを同定した。複数の転写因子を同時に発現させることにより心筋細胞の分化が誘導されることを明らかにした。細胞治療に関する研究では幹細胞生物学と再生医学、心臓病学の領域において先駆的な業績をあげ、国内外における心筋細胞の再生研究に大きな進歩をもたらした。
著者
三道 弘明 ROY Larke
出版者
流通科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では,対象を小売業に絞り,そこに存在するいくつかの問題を発掘するとともに,その問題を科学的に解決することを意図した数理モデルを構築した.本研究で発掘した問題は次の4種類である.(1)小売業において新規取扱商品が売れ筋商品であるのか死に筋商品であるのかを如何にして短期間で判断するか.(2)小売業における棚卸しは税法上義務付けられたものと,自主的に行うものとがある.この棚卸しの適切な頻度はどのようにして決めればよいのか.(3)特別展示商品は,展示量が多いほど売れ行きも良い.このような性質を持つ商品の最適発注量や発注点はどのようになるのか.(4)パーソナルコンピュータ等を取り扱う小売業では,追加料金を支払えば,小売業者が独自に実施しているより長い期間の保証契約を行うことができる場合が少なくない.このような場合,追加料金及び保証期間終了後の1回当たりの修理に関する適切な価格設定が問題となる.上に列挙した4種類の問題に対し,(1)テスト販売政策に関する数理モデルを構築し,コンビニエンスストアのデータに基づきその有効性について検証を行った.(2)最適棚卸し頻度に関する数理モデルを構築し,小売業現場でのヒアリング調査結果に基づき有効性について検証を行った.(3)特別展示商品の最適発注量に関する数理モデルを構築した.(4)保証期間延長契約問題を,小売業と消費者間のゲームとして捉え,契約および契約期間終了後の1回当たりの修理に関する最適価格を求めた.
著者
吉川 俊夫 岩田 博之 中原 崇文
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.92-100, 2002

研磨粉とエポキシプレポリマーの混合物の注型成形によって導電性硬化物を得た。導電性は研磨粉量の約1.5乗に比例した。硬化前に磁場を印加して研磨粉を磁化することにより, 硬化物の導電性を増加させることができた。この系の導電性は系の硬化収縮と連動して発生していることがわかった。硬化反応でのプレキュア温度が高いほど導電性の高い硬化物を得た。研磨粉量が80phr以下では樹脂層と研磨粉層に分離するが, 80phr以上では均一な組成の硬化物を得た。
著者
兵庫県明石郡 編
出版者
明石郡
巻号頁・発行日
1926