著者
水田 健一
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.57-80, 2017

「ふるさと納税」制度は,納税者が自分の意思で,地方税の納税対象を選択することができるようにすることを意図して,居住地以外の地方団体に対する寄附金に対する所得税,地方住民税の税額控除制度として,2008年度から導入され,その後寄付件数,寄付額共に大きく増大している。本稿では,この制度の創設が議論された総務省の「ふるさと納税研究会」における議論を振り返ることによって,この制度が創設された目的を検討した後に,この制度が持つ問題点と改善すべき諸点について考察を行う。この制度の持つ問題点として,望ましい地方税のための原則に抵触すること,地方交付税特別会計の財源不足を増大させること,寄付を求めての返礼品競争を激化させること,負担を伴わない「寄付」は寄付の理念に反すること,地方団体への寄付とその他の団体への寄付との間での不平等性が発生すること,が挙げられる。さらに一定の仮定の下で,ふるさと納税制度を用いた寄付について,寄付者本人,居住地および寄付先の地方団体,および国の各主体グループ別の受益額と負担額についての検討を行った
著者
小針 大助
出版者
日本SPF豚研究会
雑誌
All about swine (ISSN:0918371X)
巻号頁・発行日
no.35, pp.9-13, 2009-09

アニマルウェルフェアとは、西欧に始まった動物の扱いについての倫理的概念であり、人と関わる動物の苦痛や快といった情動への配慮の必要性を謳った考え方である。情動の保障といった観点から、わが国では動物の快適性に対する配慮といった見方で取り入れられている。それを満たす条件として、1992年に英国家畜福祉審議会により、『5 freedom(5つの自由)』が提案された。これらは「1.飢えと乾きからの自由」「2.物理的及び熱による不快からの自由」「3.苦痛、傷害、病気からの自由」「4.正常行動発現の自由」「5.恐怖や苦悩からの自由」の5つからなる基準である。しかし、内容は必ずしも難しいことを求めているのではない。具体的にブタの飼育管理に当てはめて考えてみると、「飢えと乾きからの自由」というのは、全てのブタが十分にエサや水を摂取できるようにすることであり、「物理的及び熱による不快からの自由」とは、寒かったり、暑すぎたりしないようにすること、「苦痛、傷害、病気からの自由」というのは、けがや病気をしないように健康管理をきちんとするということだけである。また、「恐怖や苦悩からの自由」とは、パニックや怪我を誘発するような乱暴な取り扱いに注意するなどといった、主に管理者の取り扱い方法に関するものであり、これらは、生産性に直結する部分であるため、理解しやすいのではないかと思う。しかし、アニマルウェルフェアの保障を考える上では、残り一つの項目である「正常行動の発現の自由」についても満たしていく必要が指摘されているのである。
著者
森岡 涼子 津田 宏治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IBISML, 情報論的学習理論と機械学習 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.476, pp.161-167, 2011-03-21

産業連関表とは、産業の各部門間の取引額を表形式にまとめたもので、マクロ経済解析の基礎を成すものである。本研究では、これまで情報理論や脳科学の分野で用いられてきた情報幾何を産業連関表に適用し、産業構造の変化に関する解析を行うことを目的とする。情報幾何の有効な特徴は、直交葉層化を用いることによって、解析対象を階層的に分解できる点にある。本論文では、産業連関表を、行和・列和(周辺和)と、それ以外の部分(相互作用行列)に分解することによって、各産業部門の規模と、部門間の相互作用を分離して観察することを可能にする。本手法を1970年から2006年までのJIP産業連関表に適用した結果、オイルショック、バブル崩壊、アジア金融危機などに伴う経済構造の変化が、元の連関表よりも、相互作用行列の方に顕著に表れていることを確認した。また、情報幾何的分解から、技術革新の影響を考慮に入れた連関表の推定法が導き出せることを示し、従来のRAS法との比較を行う。

5 0 0 0 OA 手芸と編物

著者
香蘭女史 編
出版者
井上一書堂
巻号頁・発行日
1908
著者
新谷 肇一 青木 正夫 篠原 宏年
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文報告集 (ISSN:09108017)
巻号頁・発行日
vol.376, pp.51-65, 1987-06-30 (Released:2017-12-25)

Military hospitals was very important in Japan during the Meiji Era. The Meiji Goverment founded the army and navy under the national policy to enrich and strengthen the country. Armies were stationed throughout the country, where medical treatment facilities were systematically constructed. In 1871, an image plan for military hospitals was made by Ryojun Matsumoto who was the director of Surgeon Administration Department. His plan was reasonable and interesting because of constructing some of the appropriate hospitals intead of a large hospital, but they were not realized. In 1874, a model plan for the military hospitals was made under the guidance of a French Military engineer. Kumamoto and Nagoya Garrison Hospitals, the typical examples of the model plan built in 1875 and 1878. Both hospitals were composed of bilaterally symmetrical finger plan type with a large courtyard. In 1893, a standard planning for the military hospitals was made under the influences of German medical science, which was the first important standard of hospital architecture in Japan. Most of the military hospitals constructed afterwards were based on this standard.
著者
小川 賀代 小村 道昭 梶田 将司 小舘 香椎子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.51-59, 2007
被引用文献数
10

理系人材不足の背景をふまえて,今まで以上に「実践力」を有した人材を輩出することが急務であり,このための人材育成システムの再構築が求められている.本論文では,日本女子大学が長年にわたり蓄積してきた人的資源である卒業生の情報を活用したロールモデル型eポートフォリオ(RMP)を提案し,その構築を行った.本手法は,ポートフォリオの評価指標設定に社会で活躍する卒業生の学生時の成績を利用するため,評価指標の決定のための組織だった議論の必要がなく,導入が容易である.また,業種・職種別のロールモデルと現在の自分の実践力を比較することができ,自分の現在の能力,またどの能力が基準に達していないかなどを視覚的にとらえられる.よって,自分の目指す職業に要求される実践力の強化を効率よく行うことができる.蓄積情報は,就職時の自己PRに活用したり,教員による実践力育成支援に役立てることができる.システム構築は,eポートフォリオはオープンソースを活用し,これにRMP解析部分を独自拡張した.
著者
曹 陽 高木 修
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.743-747, 2005

本研究では、服装と痴漢被害の関係についての「痴漢神話」が存在するのか、つまり、人は女性の服装が電車内での痴漢被害の原因になる可能性があると認知するのかを、探索的に検討することを目的とした。<BR>15歳から37歳までの326名の高校生と大学生を対象に質問紙調査を実施し、主として、次の2点が明らかとなった。<BR>1) 痴漢被害経験のない女性においては、ミニスカートを含めて女性の服装が、痴漢被害の原因にならないと認知していた。<BR>2) 痴漢被害経験のない男性においては、ミニスカートを含めて女性の服装が、痴漢被害の原因になると認知していた。
著者
舛田 勇二 國澤 直美 高橋 元次
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.201-208, 2005-09-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
10
被引用文献数
3 11

肌の透明感は美しい肌の大きな要因の一つである。しかし, 現時点では実用的な評価法は美容技術者による視覚評価しかなく, また, どのような皮膚生理特性がいかなる作用で透明感を変化させるかについては明らかになっていない。本研究の目的は, 光学的手法を用いて肌の透明感を客観的に評価する方法を確立することと, 透明感に与える皮膚生理特性の作用機序を明らかにし肌の透明感向上に高い効果のある商品を開発することである。ゴニオメーターの入射光部と受光部に偏光フィルターを組み込むことで反射光を拡散反射成分と鏡面反射成分に分離して計測可能な光学測定機器 (変角偏光反射率測定装置; 偏光ゴニオメーター) を開発した。偏光ゴニオメーターにより計測される鏡面反射光および拡散反射光と透明感との関係を解析した結果, 透明感と拡散反射光の強さには高い正の相関 (r=0.699) があることが判明した。一方, 鏡面反射光とはほとんど相関 (r=0.190) がなかった。透明感と皮膚生理特性間でのPLS解析 (Partial Least Square Analyses) の結果から, 透明感の高い肌はキメが細かく整っており, 角層水分量が多く, メラニン量, ヘモグロビン量が少ないことがわかった。透明感のある肌の皮膚生理要因に対応させて「美白剤」「血行促進剤」「高保湿剤」を配合した美容液を作製し, 一般女性パネルを対象に8週間の連用効果試験を実施した。連用後において偏光ゴニオメーターによる拡散反射光は統計的有意差をもって増加し, 被験者の自己評価においても透明感の向上が認められた。
著者
下司 忠大 吉野 伸哉 小塩 真司
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.28.1.3, (Released:2019-05-15)
参考文献数
7
被引用文献数
1

The purpose of this study was to examine the relationship between littering behavior and Dark Triad personality traits (Machiavellianism, narcissism, psychopathy). Forty-one college students (average age=19.83 years, SD=1.11; 9 males, 32 females) were assigned randomly into either a clean or a dirty laboratory condition, and participated in an experiment to assess their littering behavior. Results of Bayesian logistic regression analysis that predicted the littering index, indicated that cumulative probabilities that the odds ratio for narcissism and psychopathy exceed 1 in posterior distribution under dirty condition were 84% and 87%, respectively. The results of the present study showed that the Dark Triad personality traits may be related to littering behaviors, while previous studies focused on manipulations of condition.
著者
清水 まさ志
出版者
富山大学地域連携推進機構生涯学習部門
雑誌
富山大学地域連携推進機構生涯学習部門年報
巻号頁・発行日
vol.15, pp.7-14, 2013-03

二十一世紀の今もわが国で広く読まれているフランス文学作品は、おそらくたった一冊―アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの『星の王子さま』だけなのではないだろうか。某インターネットショップサイトで検索してみても結果は同じである。明治期以降、日本語に訳された多くの作品もすでに訳が古び、現在の若者にはその日本語訳自体が難解となってしまっている。新訳を出版している奇特な出版社もあるが、広く読まれているとはいえないだろう。しかしフランスはノーベル文学賞受賞者がもっとも多い国であり、その文学は一国の文学であるとともに文学的世界遺産だということができるだろう。さらに近代日本文学に大きな影響を与えた翻訳作品は、日本語文学の貴重な遺産だともいえる。このまま高度経済成長期に流行った世界文学全集の一部として古紙回収業者に回されていいものであろうか。現代の日本において過去のフランス文学作品をどう読み直したらいいのか考えていきたい。
著者
佐藤 次高
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho (ISSN:03869067)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1・2, pp.115-139, 1989-12

On 17 Dhû a1-Hijja 717 A.H./20 February 1318 A.D., a man appeared at Qirtiyâwus in the Syrian province of Jabala and called himself Muhammad b a1-Hasan al-Mahdî. Three thousand of al-Nusayrîs immediately assembled around him asserting the deity of Alî b. Abî Tâlib. They proclaimed publicly the abolition of both prayer (salât) and abstinence from drink, and then attacked the Muslims of Jabala in public prayer. Among the rebels was included a youth named “Ibrâhîm b. Adham”, a popular sûfî saint who died in Jabala in the latter half of the 8th century. Received the news of their revolt, amir Shihâb al-Dîn Qirtây, governor of Tripoli, despatched 1,000 cavalries under the command of his three Mamlûk amirs. On Dhû al-Hijja/25 February they battled with al-Nusayrîs and succeeded easily in suppressing the revolt after they killed 120 rebels including al-Mahdî.According to the contemporary sources such as al-Nuwayrî’s Nihâya al-Arab and Ibn Battûta’s Rihla, the revolt was clearly against the religious policy of the Mamluk government toward al-Nusayrîs. In 1317 Sultan al-Nâsir (1293-94, 1299-1309, 1310-41) carried out the cadastral survey (rawk) in the province of Tripoli including Jabala and ordered al-Nusayrîs to construct mosque (masjid) in each village. Then he prohibited them strictly from holding the initiation called “khitâb” in which new participants are granted the secret creeds peculiar to al-Nusayrîs. Al-Maqrîzî (d. 1442) explains that they believe Alî’s deity and insist the idea of heaven and hell to be denied. The sunnî ulamâ’ in the Mamluk period regarded al-Nusayrî’s belief as infidel and estimated them inferior even to the Christians and Jews. We find its example in the fatwâ of Ibn Taymîya which was delivered at the revolt of a1-Nusayrîs in 1318.
著者
長坂 和茂
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.304-316, 2017

日本図書館協会の総裁徳川頼倫は,1923年から特別預金5万円の利子として年3000円を協会に対して支払い,財政的に支援している。その利子を当時の協会財政と照らし合わせ,利子の影響力の大きさと,使途について調査した。 年3000円とは当時の日本図書館協会の会費収入に匹敵する重要な収入源であり,図書館雑誌の月刊化や図書館週間の宣伝などに使われていることが判明した。 特別預金利子が大正期の日本図書館協会の財政にとって,大きな役割を果たしていることが明らかとなり,華族による社会貢献の一端を見ることができる。
出版者
米国博覧会事務局
巻号頁・発行日
vol.第2巻 日本出品目録, 1876
著者
桜井 武
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

ナルコレプシーは日中の強い眠気を主訴とする特徴的な睡眠障害であリ、視オレキシンを産生するニューロン群の後天的な脱力によって発症する。その症状のひとつであるカタプレキシーは、喜びや笑いなどポジティブな情動によって誘発される脱力発作であるが、その発動機構は未解明のままである。本研究では、カタプレキシーを発動する神経回路を明らかにすることを目的にし、ナルコレプシーモデルマウスにおいてレム睡眠の制御にかかわる領域や、報酬系にかかわる領域および情動にかかわる領域に光遺伝学的刺激を行い、数種の領域において、カタプレキシーを誘発する刺激条件を見出した。

5 0 0 0 OA 直江兼続伝

著者
木村徳衛 著
出版者
木村徳衛
巻号頁・発行日
1944
著者
吉田 和也 梶 龍兒 飯塚 忠彦
出版者
Japanese Society of Oral and Maxillofacial Surgeons
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.563-571, 2000-10-20
参考文献数
26
被引用文献数
3 2

Oromandibular dystonia is characterized by involuntary contraction of the masticatory and tongue muscles, causing difficulties in mastication or speech. Muscle afferent block (MAB) therapy by intramuscular injection of lidocaine and alcohol is aimed at reducing muscle spindle afferents. We treated 37 patients with oromandibular dystonia by intramuscularly injecting 5 to 10ml of 0.5% lidocaine with 0.5 to 1ml of 99.5% alcohol. The muscles for injection were chosen from among the masseter, the inferior head of the lateral pterygoid muscle, the anterior belly of the digastric muscle, the genioglossal muscle, the medical pterygoid muscle, the sternocleidomastoid muscle, and the trapezius muscle. The effect of therapy was assessed subjectively on a linear self-rating scale ranging from 0 (no improvement) to 100 points (complete cure). All patients showed clinical improvement with reduced EMG activity in the affected muscles. The mean number of injections was 10.1±5.8. The overall subjective improvement rate was 60.8±25.4%. Maximal mouth opening (26.0±7.7mm) in patients with restricted mouth opening increased significantly (<I>p</I><0.0001, <I>t</I> test) after treatment (37.1±7.6mm). Some patients had tenderness, stiffness, or swelling of the muscles after repeated injection. The discomfort disappeared spontaneously after discontinuing therapy. MAB therapy is an effective means of treating oromandibular dystonia that has no major side effects.
著者
千葉 達朗 林 信太郎 小野田 敏 栗原 和弘 藤田 浩司 星野 実 浅井 健一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.XXI-XXII, 1997 (Released:2010-12-14)
被引用文献数
1

5月11日午前8時, 秋田県鹿角市の澄川温泉で, 地すべりと石流が発生, 澄川温泉と赤川温泉の16棟が全壊, 国道341号も寸断された. 5月4日頃から水の濁りや道路の変状等が察知され, 適切な警戒避難が行われたため, この災害による死者・負傷者はなかった. なお, 地すべりの最中に末端付近で水蒸気爆発が発生した. ここでは, 5月12日にアジア航測(株)が撮影した空中写真, その後の現地の他, 秋田航空(株)が撮影した水蒸気爆発の瞬間の写真を紹介する.