著者
青木 輝勝 安田 浩
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.109-120, 2011-01-15

近年,インターネット上ではCGM(Consumer Generated Media)コンテンツが急増している.CGMはこれまで困難であったエンドユーザの発信を可能にするという特徴を持つが,もう1つの特徴として,個々のコンテンツ自体の価値に加え,その集合体または融合体としてのコンテンツ群の価値が高いことがあげられる.この集合体・融合体としての価値の高さは「共創効果」によってもたらされたものと広く考えられている.その反面,共創効果に関しては概念論のみが先行し,それを定量的に測定するための方法論や共創効果を高めるために情報通信システム・情報通信サービスが何を行うべきかについてはこれまで十分な議論が行われていない.本稿では,筆者らが開発したDMD2.0と呼ぶシステムを用いて開発したAnimepediaという複数ユーザによるCGMアニメ制作システムを基盤として,ツリー型CGM制作における共創効果の定量化を試みる.まず,共創曲線と呼ぶ概念モデルを仮定し,実験を通じてこの曲線の存在を実証する.続いて,この曲線を用いた共創効果の最適化方法について提案を行う.
著者
加藤 光男
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.497, pp.6-11, 2010-06-11

阪神高速道路の出入路をJCT(ジャンクション)に改築する工事だ。出入路の橋脚や橋桁の一部を再利用することで、すべてを新設する場合に比べて通行止め期間を1年ほど短縮し、コストを最大で3割削減する。(加藤 光男=フリーライター)既設RC橋脚に鋼部材を継ぎ足し複合構造に 阪神高速神戸線と神戸山手線が接続する湊川JCT。
著者
青木 義次 大佛 俊泰
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

我々は自分の頭の中に描いたある種の概念図形を利用して,実際には見ることのできない巨大な都市空間を理解している。本研究では,都市の基本骨格となるような環状の鉄道路線について,その地理的イメージを計量的に抽出し,どのような概念図形を用いて理解しているのかについて検討した。まず,イメージマップを用いた山手線に関する過去の研究をもとに,同じ環状構造を有する大阪環状線について同様の分析を行った。その結果,大阪環状線はほぼ円に近い円環状の形態として,また,内部を縦断する御堂筋線は直線に近い形態として,非常に単純化した概念図形のもとに理解されていることが判明した。さらに,居住歴の長い人ほどイメージ変形は小さいと予想されたが,イメージ変形の程度と居住歴との間には相関性は認められなかった。以上のような地理的イメージ形成に重要な概念図形は,文化的な枠組みを背景として形成されることから,文化の異なる場所では概念図形自身が異なっていたり,イメージ変形のメカニズムが異なっているという可能性がある。そこで,このことを比較検証するため,大韓民国ソウル特別市の環状線(2号線)について,韓国人と日本人(何れもソウル市に在住の人)に同様のイメージマップを用いた調査分析を試みた。その結果,山手線・大阪環状線についての調査結果と同様に,環状線である2号線を横長の楕円状の形状として,実際の形態を非常に単純化して理解していることがわかった。すなわち,図式による理解構造には,文化的枠組みの違いや,(ソウル市内での)居住暦の差異に依存した傾向は見いだすことができなかった。以上の結果を総合すると,本研究で調査分析した環状の鉄道路線に限って言えば,文化的な枠組みにはそれ程影響されない幾何図形のような普遍的なものが模式図として用いられていると言える。
著者
Hidekazu Tanaka Kazuhiro Tatsumi Sei Fujiwara Takayuki Tsuji Akihiro Kaneko Keiko Ryo Yuko Fukuda Kensuke Matsumoto Mayumi Shigeru Akihiro Yoshida Hiroya Kawai Ken-ichi Hirata
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.382-389, 2012 (Released:2012-01-25)
参考文献数
28
被引用文献数
33 38

Background: Dyssynchrony has various detrimental effects on cardiac function, but its effect on cardiac sympathetic activity is not fully understood. Methods and Results: We studied 50 heart failure patients who underwent cardiac resynchronization therapy (CRT). Cardiac sympathetic activity was assessed by 123I-metaiodobenzylguanidine (123I-MIBG) scintigraphy as the delayed heart-to-mediastinum ratio (H/M ratio). Echocardiography was performed before and 7 months after CRT, and response was defined as a ≥15% decrease in end-systolic volume. Dyssynchrony was determined by the time difference between the anteroseptal-to-posterior wall using speckle-tracking radial strain (≥130ms predefined as significant). H/M ratio in patients with dyssynchrony was less than that in patients without dyssynchrony (1.62±0.31 vs. 1.82±0.36, P<0.05), even though ejection fraction was not significantly different (24±6% vs. 25±7%). Patients with dyssynchrony and H/M ratio ≥1.6 had a higher frequency of response to CRT (94%) and favorable long-term outcome over 3.0 years. In contrast, patients without dyssynchrony and H/M ratio <1.6 were more likely to show a lower frequency of response to CRT (0%) and unfavorable long-term outcome after CRT. Conclusions: Dyssynchrony is associated with cardiac sympathetic activity, and 123I-MIBG scintigraphy may be valuable for predicting the response to CRT. (Circ J 2012; 76: 382-389)
著者
川村 満紀 谷川 伸 五十嵐 心一 鳥居 和之
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究は、融雪・融氷剤(塩化ナトリウムおよび塩化カルシウム)のコンクリートの化学的劣化におよぼす影響およびそのメカニズムを解明するものである。融雪・融氷剤(塩化ナトリウムおよび塩化カルシウム)による影響を想定された各種温度および濃度条件の下で綿密に調べることにより、融雪・融氷剤によるコンクリート構造物の化学的劣化に対しての防止対策について具体的な指針を確立することを目的とした。研究計画は、(1)融雪・融氷剤によるコンクリートの化学的劣化メカニズムの解明、(2)融雪・融氷剤によるコンクリート構造物の化学的劣化に対しての防止対策の確立、とに大別できる。(1)に関しては、濃度および温度を変化させた塩化ナトリウムおよび塩化カルシウム溶液に各種配合のセメントモルタル供試体を浸漬し、浸漬材令に伴う強度の低下および膨張量の変化などを調べることにより、高濃度の塩化カルシウム溶液においてのみ化学的劣化現象が発生することを明らかにした。また、高濃度の塩化カルシウム溶液による劣化現象がコンクリート中の水酸化カルシウムの溶解とそれに伴う複塩(CaO・CaCl_2・15H_2O)の生成によるものであることを明らかにした。(2)に関しては、各種鉱物質混和材(フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、シリカフューム)の使用したコンクリートの塩化カルシウム腐食に対する抵抗性を検討するとともに、融雪・融氷剤のコンクリート内部への浸透防ぐ目的で使用される各種表面塗布材の遮塩性およびその化学的劣化現象に対する効果について明らかにした。以上の研究成果をふまえて、融雪・融氷剤によるコンクリートの化学的劣化のメカニズムについて解明するとともに、このような劣化現象の防止対策について具体的な提案を行った。
著者
家田 章正
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

地球の昼間電離圏における、高度積分した電気伝導度の、太陽天頂角(SZA)依存性を調べた。電気伝導度は電子密度に依存している。しかし、過去の研究においては、伝導度のSZA依存性が、Chapman理論による電離層最大電子密度で表現できるか否か不明であった。本研究では、観測された電気伝導度を理解するためには、Chapman電離層を修正すれば良いことを見出した。さらに、SZAが大きくなるほど、つまり夜に近づくほど、ホール層が薄くなる効果を指摘し、この効果を、Chapman理論における最大電子生成高度により表現し、電気伝導度比の近似式を作成した。
著者
高木 英至
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.133-141, 2010 (Released:2011-04-27)

高木(1992b,1993)では外見的魅力、態度の類似性、報酬履歴に基づいて恋愛関係が形成されるという前提に基づき、恋愛関係形成の計算モデルを構築した。本研究は、基本的にこのモデルを前提とし、新たなプログラミング環境に適合したコード化をしつつ、距離空間を導入した新たなモデルを構築する。距離空間の導入により、対人関係の古典的説明要因である近接性(proximity)をモデルの中で考慮することが可能になる。そしてこのモデルの実行による試験的なシミュレーション試行を実施する。シミュレーションから次の傾向が確認できた。1)成立するデート関係および婚約関係は、距離の導入によって近隣で生じるようになる。2)距離を導入した場合、デート関係の場合より近隣で婚姻関係が生じるようになる。3)距離の導入により外見の良い相手を求める傾向が阻害される半面、高い態度類似性をパートナー間で実現する傾向が生じる。4)位置によって相手の選択が分岐し、中心的位置にあるエージェントは周辺的な位置にある場合より態度類似性が高いパートナーを見出しやすい。これらのシミュレーション結果の含意と、今後の研究の展開を議論する。
著者
王勇華著
出版者
朋友書店
巻号頁・発行日
2004
著者
角 幸博 石本 正明
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は北海道および樺太を対象として、棟札や戦前期の新聞、職員録等を資料として、建築技術者・建築家・建設業者・建築系職人の人名および経歴や関与建築物の関連情報を統合したデータベース作成を目的としたものであり、2326件の情報を集約することができた。その内訳は、営繕技術者873件、民間技術者・建築家173件、建設業1014件、その他266件(建築関連団体役員を含む)である。
著者
吉村 ミツ 飯島 泰蔵
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.135-143, 1970-03-15
被引用文献数
2

A method for the design of the Font of KATAKANA (a group of Japanese letters) for the line printer is discussed in this paper. The essential of the method is using a formal characteristic of the letter which is defined by the formula. The characters which were amended from those in the Fig. 4 by the method are shown in the Fig. 6.
著者
坂本 瑞樹 徳永 和俊
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

水素透過粒子束の実時間測定システムを製作し、厚さ0.1mmのタングステン試料に重水素プラズマを照射して、試料表面状態の変化に起因していると考えられる水素透過フラックスの減少を観測した。また、厚さ0.1mmのタングステン基板に約280nmのイットリウム薄膜と約20nmのパラジウム薄膜を蒸着させた試料を作成し、試料表面への水素導入に対して光反射率が可逆的に変化することを示した。水素透過フラックスシステムとの組み合わせにより実時間の動的リテンション計測が可能となることを示すことができた。さらに、結晶粒の延びの方向が表面に対して垂直のタングステン試料の重水素吸蔵量は、平行の試料よりも重水素吸蔵量が2~10倍高いことを明らかにした。これは結晶粒界を通した実効的拡散係数の違いに起因していると考えられる。
著者
向井 理恵
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、フラボノイドを用いてユビキチンリガーゼの発現抑制を通じて廃用性筋萎縮を予防することを目的とした。研究計画では、フラボノイドのなかでもケルセチンを中心に研究を進めるとした。ケルセチンを摂取させることによりユビキチンリガーゼの発現を抑制するかは明らかにできなかったものの、筋萎縮にともなう酸化ストレスを抑制することが分かった。筋萎縮を抑制した場合でも骨格筋成長に関わる体液性因子であるIGF-1の量に変化は無かったことから、この効果は骨格筋に直接影響した結果によると考えられた。骨格筋の分解と合成との分岐点であるAktのリン酸化については、ケルセチンによってリン酸化が向上した。この結果は、骨格筋の分解よりも合成の経路が活性化されていることを意味する。このように、食事性ケルセチンは、骨格筋での酸化ストレスを抑制し、骨格筋の分解を予防しうることが明らかとなった。さらに、効果の高いフラボノイドとしてプレニルナリンゲニンを見出した。ユビキチンリガーゼの発現を抑制した。ユビキチンリガーゼの発現抑制には、PI3K-Akt経路が関与する可能性を明らかにし、学術論文として発表した。食品成分としての効果を考えるうえで重要な生体利用性についても検討したところ、血中への吸収は少ないものの、標的組織である骨格筋へ蓄積することがわかった。本研究の計画では、筋萎縮した場合にフラボノイドの蓄積性が変わるのではないかと予測を立てたが、その点については、正常な筋肉と萎縮のかかった筋肉との間に差は無かった。本研究の成果は、フラボノイドが廃用性筋萎縮を予防するメカニズムとして、PI3K-Akt経路の活性化を見出した。抗酸化フラボノイドは、骨格筋内の酸化ストレスを減弱することも明らかにした。これらの成果が得られたのでフラボノイド含有食品の臨床試験を進めており、研究の発展につなげることができた。
著者
清水 昭伸
出版者
The Japanese Society of Medical Imaging Technology
雑誌
Medical Imaging Technology (ISSN:0288450X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.134-137, 2011

オートプシー・イメージングは,剖検と関連づけながら死亡時に行う画像診断のことである.最終的な目的は死因の正確な推定にあり,死体の解剖率が先進国中最低の2パーセント台であるわが国の現状を踏まえて提唱されている,死亡時医学検索の新しい方法である.本稿では,計算解剖学に基づくオートプシー・イメージング支援を目指す本計画班の最近のいくつかの成果について紹介する.
著者
玉川 安騎男
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の主目的は、3名の海外共同研究者(C.Rasmussen(米)、A.Cadoret(仏)、M.Saidi(英))との、代数曲線の被覆の数論幾何に関する3つの共同研究(「ガロア表現」、「フルビッツ空間」、「正標数」)の進展だった。実際、3氏の訪日、玉川の渡仏・渡英などを通じて共同研究を進め、伊原の問題に関連するアーベル多様体のある有限性予想、フルビッツ空間の有理点に関するモジュラータワー予想、ガロア表現像の普遍下界性問題、正標数及びp進の遠アーベル幾何、などについて、大きな成果を上げた。
著者
中田 行重 村山 正治 下川 昭夫 平野 直己
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は個人心理臨床では十分に埋め合わせられない今日の社会病理への対応として、地域への心理的援助の枠組みを探った。研究の方法論として、地域のフリースペースやグループアプローチ、スクールカウンセリングなどにおける地域臨床実践およびインタビュー調査、地域文化・風土のローカルな視点に関する文献研究が行われた。研究により明確になったのは大きく次の4点である。第1点は西欧で始まった"コミュニティアプローチ"は日本においては、日本人の心理的風土に合わせる必要があるということである。例えば日本では子育て支援とは、コミュニケーション支援であることが明らかになったのはその1例である。第2点は、臨床心理学は西欧社会から生まれているが、自己と関係性、心理療法論において日本では西欧とは深い面で異なっていることが明らかになった。第3点はコミュニティアプローチのリーダーや心理臨床家は、個人療法家と異なり、水平アプローチという対象間の関係性を活性化する触媒として非構造化された環境における実践を行う資質が必要であることが明らかになった。第4点は日本は対人支援のためのネットワーキングとして西欧と異なるものが必要であり、それはスクールカウンセリング事業などで現れていることが明らかになった。このようにして明らかになったことは、それぞれ本課題の研究者達の日々の臨床実践で活かされており、更なる実践・研究の継続を予定している。