著者
松林 達史 山田 武士 藤村 滋 藤村 考
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.88-101, 2008-09-26
被引用文献数
1

本研究では,ラベル付きグラフ可視化のための,ラベルどうしが重ならない効率的な可視化座標計算の手法を提案する.従来のラベル付きグラフ可視化の座標計算アルゴリズムはForce-directed法やバネモデルといった,ノードを"点"として扱う座標計算を行うために,文字列や,異なるサイズのラベルを扱う場合,ラベルどうしが重なってしまうという問題が生じる.ラベルの重なりを回避する手法はいくつか提案されているが,いずれの手法も可視化計算を行った後に,再び座標計算処理を必要とする.これ等の手法では大規模なグラフ可視化では計算量が莫大となり,さらに元の可視化結果を破壊してしまうという問題が生じる.そこで,各ノードの斥力項として,ラベルサイズに依存した固有楕円ポテンシャルを与え,さらに,点対称ポテンシャルと固有楕円ポテンシャルの関数の重ね合わせる手法を提案する.提案法により,メンタルマップを保ちつつ,かつ,局所的なラベルの重なりを回避できることを示した.We present a new graph layout algorithm for a graph with node labels. The proposed algorithm can generate a graph layout efficiently avoiding overlapping of node labels. Most of the conventional algorithms such as force-directed and spring methods compute node positions by treating nodes as "points", and thus may cause node overlapping when strings or labels with various sizes are added to the nodes. Most of the conventional approaches to solve this problem require an initial graph layout creation phase without considering label sizes and a separate layout adjustment phase for overlap removal as its post processing. These methods are not suitable for a large-scale graph layout, because their computational costs are high and they may even destroy the initial graph layout. The proposed algorithm gives an individually different ellipsoidal potential to each node depending on its label size as well as a common point-symmetric potential, and the combination of these two potentials defines the repulsion force. This enables an efficient graph layout that can avoid local node overlaps while maintaining the mental map.
著者
小杉 誠司 Seiji KOSUGI
出版者
淑徳短期大学紀要委員会
雑誌
淑徳短期大学研究紀要 (ISSN:02886758)
巻号頁・発行日
no.46, pp.145-156, 2007

光子箱の思考実験を、Heisenbergの不確定性関係を拡張した小澤の不等式に適用した細谷と石井の考察を検討した。彼らの設定では△mc^2は出ていった光子のエネルギーであって、エネルギーの不確定さではない。従って△m→0としても、光子のエネルギーを正確に測定したことになっていない。また彼らの設定ではTはシャッターが開いている時間であり、△TはそのTに対する不確定さになっている。従って△T→0としてもT→0とはならないので、光子の発射時刻を正確に測定したことにはならない。バネの伸びから箱の静止質量を測定する際の精度△mがκσ_q/gであることに気がつけば、Bohrの議論で曖昧であった点が明瞭になる。箱をつりあいの状態にするのに要する時間Tを充分大きくしたとき、△mを決定しているのはTではなくバネ定数κである。
著者
藤田 一彦 安田 直彦
出版者
岐阜工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

MPB(Morphotropic Phase boundary)濃度相境界近傍で育成したリラクサー型強誘電体固溶体単結晶は、優れた圧電特性を示し、工業的な価値が高い。中でも非鉛系の強誘電体固溶体材料として、特に優れた特性を示すリラクサー系のビスマス化合物(Na_<1/2>Bi_<1/2>)TiO_3や(Na_<1/2>Bi_<1/2>)TiO_3-BaTiO_3系固溶体に着目し、その固溶体単結晶をBridgman法により育成することができた。更に、育成された単結晶を用いて、その圧電特性、誘電特性を偏光顕微鏡によるドメイン構造の観察、および圧電応答プローブ顕微鏡によるナノ領域における電界誘起歪み特性の評価を行って、優れた圧電特性を生ずる基となるナノドメインの構造について調べた。
著者
レヴィ アルヴァレスC 町田 宗鳳 中坂 恵美子 材木 和雄
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ヨーロッパの統合が進行するにつれて、各国において移民若しくはマイノリティに対して「差別」と「排他」のメカニズムが徐々に弱まっていると言える一方、各国の固有の事情によって、そうした流れに対する抵抗も多く存続している。こうした状況をマクロとミクロの両面から分析した結果は、本年度書籍として出版される予定だが、今後の日本における移民政策にも大いに役立つと期待できるであろう。
著者
小澤 正直 神保 雅一 松原 洋 西村 治道 浜田 充 ブシェーミ フランチェスコ
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

量子測定理論と量子集合論を軸に量子計算量理論と量子符号理論に新しい数学的方法を開発した.本研究代表者が確立した小澤の不等式と呼ばれる普遍的な不確定性原理の研究を発展させ,世界で初めて測定誤差と擾乱に関するハイゼンベルクの不等式の不成立を実験的に観測し,小澤の不等式の成立を確認した.また,量子計算の実現に伴う様々なモデルに対して,計算量,デコーヒーレンス,必要な物理的リソースなどを明らかにした.更に,誤差を回避するための新しい符号化法を開発した.これらの成果により,量子情報技術の開発,関連産業,文化などにも幅広いインパクトを与えた.
著者
飯島 泰蔵 岩城 護
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.81, no.11, pp.1575-1582, 1998-11-25
被引用文献数
9

本論文では, 正規型自然観測変換による波形観測における, 被観測波形と正規型基本観測値系列との間の瞬時的な関係について論じる.これはフーリエ変換の場合で言うところの不確定性関係に類似している.正規型自然観測変換の大域的な不確定性関係は既に明らかにされていたが, 波形の瞬時的な取扱いを定式化しようとする自然観測法理論にとって十分な結果ではなかった.それに対して本論文では示された関数は, 自然観測法理論による波形の瞬時的な取扱いに関する基本的な性質として重要な意味がある.
著者
泉水 宏臣
出版者
(財)明治安田厚生事業団体力医学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、精神疾患患者への運動療法の効果を検討した。まず、様々な種類の運動(動的運動、静的運動、競技的要素を含む運動)が精神疾患患者の感情状態に及ぼす効果を検討した結果、いずれの運動も心理教育と比較して感情状態改善効果が高かった。次に、運動(ヒップホップダンス)による感情状態改善効果を気分障害患者と統合失調症患者において検討した結果、どちらも感情状態が改善した。さらに、長期的な運動の効果を検討した結果、デイケア施設にて実施した運動プログラムに定期的に参加した精神疾患患者は、そうでない患者と比較してメンタルヘルスが向上した(精神科症状の軽減、自己効力感の増加)。統合失調症患者に限って同様の検討をした結果でも、定期的な運動参加がメンタルヘルスを改善した(自己効力感の増加)。よって、精神科の治療として運動は有効であることを示すことができた。
著者
三谷 研爾 中村 真
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究課題は、ナショナリズム対立が深刻化だったボヘミアを対象とし、1890年代から両大戦間にかけて書かれた同地の文学史的・民俗誌的記述を検証したものである。ザウアー、ハウフェンなどのドイツ系知識人による、地域性を重視する文学史は、理念においては国民文学史を相対化する契機を含みながら、具体的記述としてはナショナリズム的な本質主義の思考を強く主張する結果となった。他方、チェコ系知識人ホスチンスキーもまた、その民族芸術論をとおして、文化の移動の生産性に注目しながら、民族文化の恒常性に固執した。同地における文化的越境現象は、人文学的ディスクールのこうした構造と並置して理解すべきことが明らかとなった。
著者
井上 寛
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-13, 2008-06-30 (Released:2008-08-11)
参考文献数
50
被引用文献数
3

数理社会学あるいは社会学にパラダイムが存在しているかどうかを判断すること自体が危うい試みであるが、研究者はコミュニケーションを可能にする共有知を自覚していることも事実である。パラダイムという用語の概念的な厳密さには深入りせず、ここでは、少し広めに、認識の場におけるいくつかの分岐点において、研究者の部分集合によって持続的に共有され、認識のアウトプットを導きあるいは制約する概念、理論、方法、さらには意識的あるいは無意識的な信念あるいは価値意識の複合体としておく。 結論からいえば、緩やかなパラダイムなしには社会科学の発展はありえないが、現在は必ずしも十全なパラダイムは存在せず、よりよいパラダイムを求める個別パラダイムの相克のなかにあり、またそうであることが望ましいといえるだろう。問われるべきはその相克の様相をできるだけ明らかにすることであり、本稿は、その課題に少しばかりの発言をするものである。 この作業のためのさしあたりの視点として、科学認識の基本的な2組の様式の分岐点を置くことにする。ひとつは実証的か規範的か、今ひとつは経験的か理論的かである。これらの区別を説明する必要はないと思われるが、「実証的」という用語については注意が必要である。ここで実証的とは経験的研究(計量的研究)に限定されず、理論研究(演繹理論)も含むものとする。その上で、理論と経験的研究を識別する。行動、態度、社会状態(不平等)であれ、その状態の特性を明らかにし、その状態の出現のメカニズムを明らかにすることは、理論にも経験的研究も共通であるが、アプローチが異なる。ただし、この2組の単純化した区別は、議論のなかでもう少し複雑な関係にあることが明らかになるだろう。
著者
岡部 悟志
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.169-187, 2007-10-31 (Released:2008-01-08)
参考文献数
21

1990年代以降、若年層を中心に進行した就業の非正規雇用化は、彼らの社会的な地位達成のあり方に大きなゆらぎを与えた。そのような中、若者の間に広がる収入差などの格差に着目した研究は蓄積されつつあるが、一方で当事者である彼らの主観的評価に焦点を当てた研究は相対的少数に留まっている。本稿では、当事者評価の中でも特に「仕事に対する総合的な満足」(仕事満足)を手がかりとし、若年非正規雇用の実態把握から問題点の特定を行った。分析の結果、同じ非正規社員でも、未婚男性の仕事満足が最も低いこと、そして、当カテゴリに属する若者は、無職の若者と生活意識面で強い親和性があり、生家の暮らし向きや学歴などの経歴が恵まれていないことがわかった。さらに、当カテゴリに限定して仕事満足の決定要因を探ったところ、現在の社会的属性ではなく過去の教育体験、とりわけ親や親以外の大人との接触体験の多寡が影響していることが判明した。過酷な労働条件のもとで仕事満足が相対的低位にとどまる若年非正規雇用の問題に対して、その解決の糸口を専ら彼らの働き方や処遇改善だけに求めるのではなく、義務教育段階より大人交流体験を促進する教育プログラムを導入するなどの方策を、政策議論の俎上に載せていくことが急務といえる。
著者
丹羽 公雄 中野 敏行 森島 邦博 朴 ビョン渡
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

1. OPERA実験の解析に向けた、原子核乾板超高速自動飛跡読取装置の開発・実用化を行ない、OPERA実験解析の準備を行なった。2. ニュートリノ実験以外の用途(ダークマターの直接検出、ミュー粒子を用いた火山、溶鉱炉の透視、ガンマー線望遠鏡など)への応用研究などを行い、原子核乾板を用いた手法の有効性を示した。これらの開発により、現在主力のOPERA のみならず原子核乾板を用いた将来の基礎研究、応用研究へ広げてゆくための基礎を構築できた。
著者
松浦 春雄
出版者
日本医療機器学会
雑誌
醫科器械學雜誌 (ISSN:00191736)
巻号頁・発行日
vol.13, no.11, pp.537-538, 1936-05-20
著者
岩室 紳也 古田 昭 岩永 伸也 野田 賢治郎 波多野 孝史 中條 洋 田代 和也
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.35-39, 1997-01-20
被引用文献数
4 2

(背景と目的)新生男児の大半は包茎であるが,包茎に関しては明瞭な治療指針がない。われわれは新生児期から包皮を翻転し,包皮内の清潔を保つ指導をすることで亀頭部を露出できる可能性について検討した。(対象と方法)1994年1月より1995年10月の間に当院で出生した男児の母親に対して新生児期からパンフレットとビデオで包茎と包皮翻転指導の有用性について説明した後に泌尿器科医が母親に対して包皮翻転指導を実施した。指導内容は1)無理のない範囲で包皮を翻転し,ガーゼ等で包皮内面や亀頭部を陰茎根部に向かって拭く,2)包皮の翻転はおむつを替える度と入浴時に行う,3)操作後は包皮を戻すを原則とした。包皮翻転の進捗状況は1ヵ月健診時に泌尿器科医がチェックし,亀頭部が完全に露出できる状態を完了とした。(結果)初診時の亀頭部の用手的露出度を不可(0)〜亀頭部中間(III)〜完全(VI)の7段階に分類した。新生児538例中,亀頭部を完全に露出できるVI度の症例はなかった。しかし,包皮翻転指導を行った結果,継続的に経過観察し得た372例は埋没陰茎の2例を含め全例亀頭部を完全に露出することができた。亀頭部が完全に露出できるまでに要した期間は,0度は平均2.94月,III度は1.78月,V度は1.22月,全体の平均2.32月であった。指導に伴う特記すべき合併症はなかった。(結論)新生児期から包皮を翻転し亀頭部を露出する指導を徹底することで,真性包茎状態の新生児でも経過観察できた企例が仮性包茎となり,手術を回避することが可能になると思われた。
著者
孫 飛舟 中橋 國藏 古沢 昌之 原 敏晴 崔 圭皓
出版者
大阪商業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

日本、韓国と中国の多国籍企業によるグローバル展開に関する比較を行い、それぞれの組織体制と経営戦略の違いを明らかにした。特に、新興国の市場開拓において、韓国企業に比べて日本企業が現地の消費者のニーズをうまく捉えていない局面が多い。近年、中国企業による海外進出が活発化し、日本企業が中国企業に買収されるケースが増えている。しかし、中国企業は情報公開が不十分で、経営ビジョンも不明確なケースが多く、今後改善していく必要がある。