著者
大西 康雄
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.53-70, 2003-03-31 (Released:2009-01-20)
参考文献数
28

Krackhardtによって提起された認知社会ネットワーク研究は、もともと「実在」するネットワークをより「正確」に把握するという問題意識から出発した。その研究枠組みが提起する問題は、いままで無前提に研究の準拠としてきたパーソナルネットワークを集計して構成した全体ネットワーク(LAS)以外にも全体ネットワークの構成方法がありうるということである。本稿では、認知社会ネットワーク研究の流れを紹介するとともに、山梨県内の一地域で実施した地域政治家のネットワークデータの分析を通じて、コンセンサスネットワーク(CS)とLASネットワークに対する対象者のネットワーク認知の「正確さ」(一致度)に関する分析的有効性の差異の検討を中心として、認知社会ネットワーク研究が提起した問題について考察を加える。
著者
中山 晶一朗
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.89-102, 2003-03-31 (Released:2009-01-20)
参考文献数
8

本研究では,流行・普及現象を,流行を採用するのか否か,流行商品を購入(所持)するのか否か,という個々人の二者択一の離散選択の集合と捉え,その離散選択をロジットモデルにより定式化を行う.モデルは,同調や差別化という他者の影響及び購入価格を含む採用するためのコストを考慮し,(流行の)採用率を算出するものである.このようなロジットモデルを用いた流行・普及現象モデルを構築し,数値計算により流行・普及現象の考察を行うことが本研究の目的である.数値実験の結果として,差別化の効果がない場合は採用率が単調に増加し,収束するだけの単純普及のみであったが,差別化効果がある場合は,流行の循環やカオス的挙動が生じることもあることが分かった.その場合,単純普及,循環,カオス的挙動のいずれになるかは,同調及び差別化という他者の影響のみならず,採用コストにより決定されることが分かった.
著者
射場 敏明 齋藤 大蔵
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.37-45, 2011-02-15 (Released:2011-05-03)
参考文献数
56

そもそも播種性血管内凝固(DIC)は,「種々の基礎疾患に合併する全身的な血管内凝固の活性化状態で,初期には検査値異常のみで捉えられるが,重症化すると出血症状や臓器症状を呈し,その背景には全身的な微小血栓形成が関与している病態」として認知されてきた。すなわち基礎疾患は異なっても,検査値異常としては共通であることがその存在意義であった。しかしその後詳細が明らかにされるにつれ,治療や経過,転帰は基礎疾患によってそれぞれ異なることが明らかされてきた。したがって最近では,これらをひとくくりに診断し治療することの妥当性が問われるようになり,むしろ個別対応することの必要性が強調される傾向にある。とくに敗血症性DICは,その頻度と緊急性,重症度の高さから注目度が高くなっている。またDICの捉え方については,合併症のひとつという見地から,感染防御のための生体反応という意味合いを見いだそうとする方向性がみてとれる。診断に関しては,より早期に診断を行って抗凝固治療を迅速かつ積極的に始めようとする動きが顕著である。治療については,アンチトロンビン,トロンボモジュリン,活性化プロテインCなどの生理的抗凝固物質がとくに重要視されており,いずれも単に凝固を調節するだけではなく,炎症反応を制御することが期待されている。
著者
松木 順
出版者
京都帝國大學經濟學會
雑誌
經濟論叢 (ISSN:00130273)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.463-472, 1942-04
著者
小笠原 勝 竹内 安智
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

植物カバーマルチを利用した少耕起栽培とは、過度の耕耘による作土の流亡を防ぐための作物栽培技術であり、特に米国において積極的な普及が試みられている。種々の問題を抱えるわが国の農業においても、低投入持続型農業あるいは農薬の総合防除と密接に関連する少耕起栽培の可能性を明らかにする必要がある。そこで、本研究では、「日本における植物カバーマルチを利用した少耕起栽培の可能性」を、ライムギ〜ダイズを例にとり、しかも、実際場面への普及を見据えた実証的な研究として位置づけ、6000m^2の大規模圃試験を実施した。ライムギをカバーマルチとするダイズ栽培の実際は、1)ダイズ収穫、2)ライムギ播種、3)ライムギのマルチ化、4)ダイズの不耕起播種の4つの作業から成る。本研究では、汎用コンバイン、汎用播種機および背負式除草剤散布を用いて、1)〜3)の作業を遂行することが出来たが、4)については、播種精度が牧草地用簡易更新機を用いた場合に著しく低下し、専用の不耕起播種機が開発されない限り、「日本における植物カバーマルチを利用した少耕起栽培の普及」は非常に困難であることが判明した。少耕起栽培の利点は、雑草発生量の低下と、土壌固結の防止において確認されたが、新しい作物栽培技術の導入に際しては、その必要性、意義、経済性を実際場面に則した実証的研究によって評価することの重要性が再確認された。
著者
田澤 博
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.1-3, 1949

寒地農業は未完成の農業であり, 幼稚な農業である。幼稚なメセに内地の大人の眞似をしだマセた農業である。自然環境の異る所で, 僅々50年, 俄造りに格構すけられた農業である。從て現在寒地農業が直画している問題は極めて多いが, 技術的に觀ただけでも非常に多い。元來農業は技術的に幼稚で差支えないもののように羅され勝であるが, 事實は全く異りているもので, 現在の農業は殆ど郷を除いては全くの經驗農業でしかない。沿革の淺い寒地農業が實績に於て暖地農業に著しい遜色を感するのは固より當然の事である。併し寒地農業は輓近科學の發達しつつある今日に於て其の改良を餘儀なくされているのと, 自然條件が不利と考えられているだけに痛切に, 科學の力が要望されて居り, 寧ろ此の點恵まれた實情にあることは事實である。私共が北海道に住んでいて北海道農業が内地農業を凌駕する時期の到來が案外早いのではないかと考えているのは此の爲である。北海道農業は物理學, 氣象學, 低温科學等の協力を相當歡迎しているが, 之を積極的忙導入する過程に入つたならば其の躍進は火を見るよりも瞭かである。科學導入の農業は恐らく北海道農業が内地農業よりも一足先に完成するであろう。農業は現在の段階に於て一鷹は完成の域に達していると考えられている。之は農學から観た見方である。今後の進歩は徐々で一應は行詰つたとも云える。而も農業にはなお著しい豊凶があり, 不時の災厄も兔れ難い。残され左改良進歩は他の科學によつて未知の世界を開拓する外にはあるまい。人爲的に天氣を變える事だつて全く不可能とは云い切れない今日, 農業の凶作を人工で防ぐことだつて決して不可能だとは思えない。堂々たる農業技術者が技術の權威を誇り乍多も自然的災厄に對しては極めて卑屈であり, 斷念的なのは斯の方面の知識に乏しく, 飴りにも自然の力を恐れ過ぎ敬遠し過ぎている事に基因していると思う。茲に學問の分科制度の缺陥が見られる。私は寒地農業の諸問題の解決には先す離れ過ぎている物理學, 氣象學, 工學, 化學等の農業えの接近を張く強調したいのである。農象以外の科學者は農業を知らないという理由の下に農業えの協力を喜ばない風があるが, 我々は一般の學者に農業を知つて貰わないでも協力を受けたや問題が澤山ある。夫々專門の學者の助言や應用に對する僅かの指示が如何に大きい効果を實際に齎すか想像以上で, 寒地農業の諸問題は實に之等諸學者の支援に期待する處の多いものである。以下殆ど項目に止まるかも知れないが, 記して各位の御批判と御認識を得たいものと考える。
著者
Harinantenaina Liva Tanaka Michi Takaoka Shigeru ODA Munehiro MOGAMI Orie UCHIDA Masayuki ASAKAWA Yoshinori
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
Chemical & pharmaceutical bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.1017-1021, 2006-07-01
被引用文献数
4 150

Bioguided fractionation of the methanol extract of Momordica charantia dried gourds led to the isolation of three new cucurbitane triterpenoids (1-3), together with eight known compounds (4-11). The aglycone of momordicoside I was isolated from the ether soluble fraction in a high amount. The structures of the metabolites were established on the basis of one and two dimensional NMR spectroscopic evidence, X-ray analysis, and comparison with the reported data in the literature. A number of phytochemicals have been isolated from Momordica charantia but the constituents responsible for the hypoglycaemic/antihyperglycaemic activities have not been determined. Therefore, in order to evaluate the contribution of the cucurbitane triterpenoids of the ether fraction of M. charantia methanol extract to in vivo anti-diabetic effects, the major compounds, 5β,19-epoxy-3β,25-dihydroxycucurbita-6,23(E)-diene (4), and 3β,7β,25-trihydroxycucurbita-5,23(E)-dien-19-al(5) have been tested and have shown blood hypoglycaemic effects in the diabetes-induced male ddY mice strain at 400 mg/kg. The two aglycones of charantin did not show any hypoglycaemic effects. Our finding is the first demonstration that major pure cucurbutanoid compounds of M. charantia have in vivo hypoglycaemic effects.
著者
Ying-Wu Lin Chang-Ming Nie Li-Fu Liao
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
Chemistry Letters (ISSN:03667022)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.1330-1331, 2011-12-05 (Released:2011-11-09)
参考文献数
27
被引用文献数
4

Uranium is toxic to the human body with mechanisms not fully understood. The interaction between uranyl ion (UO22+) and ubiquitin (Ub) was predicted by molecular modeling, molecular dynamics (MD) simulation, and steered molecular dynamics (SMD) simulation. The structural and dynamics consequences, as well as protein unfolding behavior, upon uranyl binding to two surface residues of Ub, Glu18 and Asp21, were revealed at an atomic level. This in silico study exhibits a possibility of UO22+ binding to Ub, providing a possible mechanism of uranyl toxicity in vivo.
著者
久光 徹 丹羽 芳樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.109, pp.113-118, 1997-11-20
被引用文献数
5

新聞記事には平均10行に1個以上の割合で括弧表現,すなわち二つの文字列A,Bが括弧により対応付けられた表現"A (B)"が現れる.このような括弧表現の一部は,"欧州連合(EU)"や"朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)"等の言い替えの括弧表現,"日立製作所(会社人事)"等の固有名詞を含む括弧表現であり,これらが特定できれば多数の重要語や固有名詞を獲得できる.本報告では,共起の強さを計る統計指標とエントロピーを字種情報などに基づく単純なルールを組み合わせ,上記の有用な括弧表現を簡便かつ高精度に獲得できることを示す.共起の強さを計る指標として,自己相互情報量,χ^2検定,Yate補正したχ^2検定,頻度,尤度比,Dice係数,改良Dice係数の7種類を比較し,それぞれの効果を調べた.One year worth newspaper articles contain about 300,000 parenthetical expressions. Some of them contain important unregistered words (terms) such as abbreviations, organization names, and company names. The detection of such expressions is therefore an effective way of lexical knowledge acquisition. The proposed method identifies useful parenthetical expressions by combining entropy criteria, a statistical measure to evaluate collocational strength, and a small number of simple rules. In order to select a proper statistical measure, we conducted a comparative evaluation of seven statistical measures: mutual information, χ^2-test, χ^2-test with Yate's correction, frequency, log-likelihood, Dice coefficient, and modified Dice coefficient.
著者
三河 一夫 久野 昭太郎 犬塚 勉
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.75-86, 1997-12-15
被引用文献数
3

飲酒,喫煙習慣を考慮のうえ,血圧とBMIおよび体脂肪率の関連性について,単年度の健診データをもとに分析した結果,血圧は体脂肪率よりもむしろ,BMIと,より強い関連性を有していた。また,血圧とBMIおよび体脂肪率について一年間の変化をみると,血圧の変化の程度は,体脂肪率の変化の程度よりもむしろ,BMIの変化の程度と,より強い関連性を有していた。これらのことから,血圧に対する肥満の影響を考えるうえで,BMIは体脂肪率に比べ,より鋭敏で,安定した肥満の指標であることが示された。
著者
桂木 健次
出版者
富山大学経済学部
雑誌
富山大学紀要. 富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.599-608, 2004-03 (Released:2016-02-15)
著者
翠川 博之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、サルトル演劇の分析を通じて「対話のモラル」を提起するものである。暴力は他者を支配しようとする主体の欲望から生じる。したがって、人間関係を規制する倫理は絶対対等な人間関係に基づいて構想されなければならない。本研究では、個人の自律性を損なわない対等な関係性を「遊戯的関係」というモデルで明示している。「遊戯的関係」に基づく「遊戯的対話」は規範を創出する自由な相互活動である。