著者
横田 理
出版者
日本大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究では、まず眼圧の測定原理をヒントにして測定方法を考えた。これを基に柔らかさ試験機の実用化を目指して、我々が提案する柔らかさの定義と測定方法について、実際に柔らかさ試験装置を開発し、空気噴射力による軟体物やうさぎの臓器等の被測定物表面に発生させたくぼみを計測して、それぞれの柔らかさを調べた。さらに、粘弾性測定ができるように装置の改良を行っている。本試験装置は、被測定物に流体(空気)を吹付けるノズル、ノズルに流体を送り込むコンプレッサ、流体を等速度で被測定物に噴射させるレギュレータとそのときの圧力を測定する圧力センサ、噴射された被測定物表面のくぼみを測定する形状検知装置、コンプレッサおよびレギュレータを制御する制御部、および表示部より構成されている。噴流により被測定物表面を圧平する力は、デジタル荷重計により予め求めておく。ノズル先端から被測定面までの距離1を設定したときに噴射力Fは決まるので、被測定物表面に生じたくぼみ深さh、およびくぼみ直径dは形状検知センサで計測する。被測定物の柔らかさ(Pa)は、被測定物に働く力Fをくぼみの表面積πdhで除した商より求められる。(1)圧縮空気を吹付けてくぼみを発生させ、そのときの空気圧、くぼみの直径と深さを計測する簡単な方法である。(2)本装置は柔らかさと粘弾性特性(クリープおよびクリープ回復)の測定が可能である。(3)本試験機は比較的簡単な方法でかつ迅速な計測であり、非接触・非破壊試験方法のため、衛生的であり、高い安全性をもつ。
著者
佐々木 良子
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

20世紀初頭の初期合成染料の利用に焦点を当て、京都工芸繊維大学美術工芸資料館所蔵品を中心にその技法を調査・研究した。旧来の天然染料に代替した合成染料の使用により、染色技術が大きな変貌を遂げた。合成染料導入における友禅染の技術革新の状況をこの時期に開発された種々の友禅染の技法を収蔵品から確認した。次に、20世紀初頭の染織品に用いられた初期合成染料について、微量分析手法を開発し、資料に用いられた合成染料の同定を試みた。合成染料の場合、化学構造が類似した数多くの染料が合成されている。また、単離精製されている場合と、よく似た性質の染料が混合物のままで市販されている場合がある。更に、同じ化学構造の染料でも製造会社によって異なる名前がつけられる場合や、同じ名前でもヨーロッパと日本では異なる染料を示す場合がある。従ってこれまで構築してきた天然染料の分光分析手法をそのまま適用する事は困難である。そこで、天然染料に於いても化学構造の類した染料同士の分析に用いてきた質量分析を初期合成染料の分析に適用した。宮内省の下命により、京都高等工藝学校が秩父宮殿下御成年式の式服を作成し、1922(大正11)年3月に上納した。当時染色加工を担当した色染科の担当者が書き残した『式服加工仕様書』(AN.2517-2)によると、ほとんどの資料は酸性染料を用いて染色し、幅だしや裏糊加工を行っている事が会った。この秩父宮殿下御成年式式服等の残り裂、試し織資料(AN.2520)から、紅地資料(AN.2520-1)を選び、裂地端より微量試料を採取し、染料を抽出、質量分析に供した。その結果、『式服加工仕様書』に記述のあるMethanil Yellow(acid yellow 36)及びPalatine Scarlet(現在は市販されていない)と同じ分子イオンM/Z 352及び435が観察された。
著者
村田 忠男 伊原 睦子
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

日本語の連濁に関する村田(1984)をスタート地点とし、21年後に伊原・村田(2006)で再立ち上げを行った研究は、さらに、発展を続け、Ihara, Tamaoka and Murata(2008)及びTamaoka, Ihara, Murata and Lim(to appear)その他と進化かつ深化した研究論文となった
著者
牛越達也 河野恭之
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.12, pp.1-8, 2009-05-08

映像作品のコミック形式への変換を目指し, 鑑賞者の興味が集中する場面を抽出し, 興味度に応じて強調した画像を提示するシステムを作成し, 一定の評価を得た. web上で公開されている複数のオマージュ作品とオリジナル作品と一致する区間を検出することで, 二次創作者の興味が集まっている場面を特定, 抽出する.
著者
本田 真也
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.126-129, 2009 (Released:2009-05-25)
参考文献数
16

On the ideology of minimalism, we have designed a micro-protein consisting of only 10 amino acids. The molecule, CLN025, exhibits a β-hairpin structure in both crystalline state and aqueous solution. Thermal unfolding is shown to be reversible and can be fitted as a two-state transition. Molecular dynamics simulation starting from an extended conformation leads to a funnel-shaped surface and scale-free network, being the structures located at the bottom and the hub similar to the experimental ones. Considering these consequences, we proposed the concept of “ideal protein” as a way to clarify the differences between “protein” and “peptide”.
著者
竹中 晃二 大場 ゆかり 満石 寿
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.157-168, 2010 (Released:2010-07-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1

The Relapse Prevention Model (RPM) has provided a framework for successful long-term maintenance of some types of health behavior. The purpose of this study was to identify high-risk situations for inducing exercise slip and lapse, which may lead to real relapse, and to clarify the coping strategies in this regard for Japanese regular exercisers, from the viewpoint of the RPM. We examined 677 regular exercisers by obtaining open-ended responses about 1) their typical high-risk situations as immediate determinants interfering with their planned exercise, 2) their coping responses to those situations, and 3) subsequent patterns of exercise outcome. High-risk situations included fatigue, bad weather, bad conditioning or injury, work or academic obligation, troubles in personal life, interpersonal relationships, and getting into a groove, although the frequency orders differed according to gender. Females were more aware that interpersonal relationships were associated with a higher incidence of exercise slip and lapse than did males, whereas males identified fatigue as the highest risk. Positive coping strategies as problem solving and behavior strategies as execution of routine work were most commonly employed, and were associated with positive exercise outcome for both females and males. On the other hand, the usage of negative coping strategies tended to lead to slip and lapse. These results suggest that adoption of coping strategies regarding high-risk situations is associated with exercise outcome, although the effects differ between males and females. These data demonstrate the importance of coping ability or strategy for exercise and suggest that slip and lapse may result from ineffective coping with high-risk situations. These findings confirm and extend previous work on the application of the RPM for examining exercise slip and lapse. Measurement issues and knowledge derived from this study are discussed in relation to future application to real practice.
著者
吉川 敏之
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 = THE JOURNAL OF THE GEOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.12, pp.760-769, 2006-12-15
参考文献数
27

栃木県北部のうち,日光市今市(旧今市市)周辺地域には珪長質火山岩類が広く分布する.このうち,飯山層および大滝凝灰角礫岩の火砕岩のフィッション・トラック(FT)年代を測定した.飯山層の火砕流堆積物中に含まれるジルコンのFT年代は14.8±0.7 Maで,ほぼ火砕流の噴出年代を表していると判断できる.大滝凝灰角礫岩の岩屑なだれ堆積物の基質部分に含まれるジルコンのFT年代は13.4±0.6 Maであるが,χ<sup>2</sup>検定に失格し,ポアソン変動以外の年代値を乱す要因を受けている可能性があり,大滝凝灰角礫岩の年代は依然として明確でない.飯山層の年代は栃木県内の海成中新世火山岩類では最も古く,放射年代に基づくと,各地域の珪長質火山岩は時間間隙を伴いながら場所を変えて噴出したものと見なせる.ただし,宇都宮地域の年代に関しては,年代値と層序の矛盾,年代決定手法間の不一致があり,この問題が解決されないと火山岩類の対比も確立できない.<br>
著者
野口 高明 中村 智樹 木村 眞 木村 眞
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

4年にわたり、総計約400kgの雪を南極より日本に持ち帰ってもらい、その雪から地球外起源の塵を約200個発見した.その中から、従来、成層圏でしか捕集できなかった彗星起源塵を約10個同定できた.彗星起源塵には、炭素質コンドライトという隕石に特徴的な構成要素と鉱物学的にも同位体化学的にも区別のつかない物体が含まれることを発見した.さらに、彗星起源の塵と小惑星起源の塵には、炭素質物質の骨格構造的に違いがあることがラマンスペクトルの解析から分かった.
著者
今泉 祐治 大矢 進 山村 寿男 戸苅 彰史
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

脳神経等の興奮性細胞では、強い刺激と興奮により細胞にCa^<2+>負荷が生じた場合、自己防衛的にスパイク発生頻度を減じてCa^<2+>過負荷による細胞障害を回避するシステムが存在する。特にCa^<2+>活性化K^+チャネルはその活性化により、過分極を介して電位依存性Ca^<2+>チャネル活性を低下させるため、多くの興奮性細胞において最も基本的な[Ca^<2+>]_i負帰還調節機構を担う重要な分子と認識されている。本研究はCa^<2+>活性化K^+チャネルの分子制御機構の解明を基盤とした創薬研究を目的としている。研究期間内に以下の事柄を明らかにした。(1)脳血管内皮細胞に発現している小コンダクタンスCa^<2+>依存性K^+(SK)チャネルがアストロサイトなどから遊離されたATP刺激による内皮細胞増殖促進機構において、極めて重要な機能を果たしていることを発見し、創薬ターゲットとしての可能性を示した(JBC,2006)(J Pharmacol Sci,104,2007)。(2)型リアノジン受容体(RyR2)異型接合性欠損マウス膀胱平滑筋を用いて、[Ca^<2+>]_i負帰還調節機構へのRyR2と大コンダクタンスCa^<2+>活性化K^+(BK)チャネルの寄与を明らかにし、尿貯留・排泄調節という膀胱機能発現において生理的に重要であることを示した(J Physiol,2007;J Pharmacol Sci,103,2007)。(3)電位感受性蛍光色素として創薬探索に汎用されているオキソノール化合物がβ1サブユニット選択的なBKチャネル開口作用を有することを発見し、BKチャネルβサブユニット選択性のある初めての化合物として創薬シーズの可能性を示した(Mol Pharmacol,2007)。(4)本態性高血圧症モデルラット(SHR)の大血管において細胞外液酸性の状態で収縮が著しく増強されることが知られていたが、高血圧の補償として発現促進されたBKチャネル機能更新と酸性時に活性が抑制される特有の機構が主な原因であることを見出した(Am J physiol,2007)。
著者
斎藤 博
出版者
社団法人日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.40, no.449, pp.249-250, 1991-02-15
著者
杉尾 孝
出版者
日本工業出版
雑誌
ターボ機械 (ISSN:03858839)
巻号頁・発行日
vol.31, no.9, pp.520-524, 2003-09-10
被引用文献数
1
著者
荒牧 草平
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.189-203, 2007-10-31 (Released:2008-01-08)
参考文献数
25
被引用文献数
3

本稿ではRobert D. Mareが提案し、教育達成過程の実証分析で国際的に事実上のスタンダードとなってきた、通称Mareモデルとその応用モデルによる分析(Transitions Approach)を通して、わが国の教育達成過程における不平等とその変動を実証的に明らかにするとともに、不平等生成に関する理論の目指すべき方向性について検討した。分析の結果、先行研究において繰り返し確認された階層効果逓減現象が、わが国の場合は戦前の一定期間にのみ認められること、中等教育機会の平等化と高等教育機会の不平等化の同時進行は、戦後の高学歴化期ではなく戦前における中等教育のマス化に関わって生じたこと、中等教育であれ高等教育であれ格差の拡大は上位層による希少財の先取りと関わって生じた可能性のあること、MMI仮説の主張する上位層の飽和による平等化がわが国の場合には必ずしも認められるわけではないこと等が明らかとなった。
著者
前野 正夫 鈴木 直人 田中 秀樹 田邊 奈津子 田邊 奈津子 田中 秀樹
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ニコチンとLPSが,歯肉上皮を浸透して骨芽細胞および破骨細胞前駆細胞に作用することを想定し,本研究を企図した。ニコチンとLPSは,骨芽細胞に対して破骨細胞形成を促進する種々の因子の発現を増加させるとともに,骨芽細胞による類骨層のタンパク代謝を分解系に傾けた。破骨細胞前駆細胞に対しては,骨基質タンパク分解酵素の発現増加を介して骨吸収能を上昇させた。これらの結果,歯槽骨吸収が促進されて歯周病が増悪する可能性が示唆された。
著者
神奈木 玲児
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.445-446, 2003-09-01

癌の転移には数多くの接着分子が関与するが,ここでは臨床的に最も問題となる遠隔血行性転移に関与するセレクチン系の細胞接着分子について最近の研究を紹介したい.<BR>1.癌転移におけるセレクチンの関与と癌細胞における糖鎖リガンドの発現誘導機構<BR>血行性転移において流血中の癌細胞が血管内皮と接着する際にセレクチンとその糖鎖リガンドが重要な役割を演じる.血管内皮側ではE-セレクチンが,癌細胞側にはシアリルルイスa・シアリルルイスXなどの糖鎖リガンドが発現する.これらの糖鎖リガンドは以前からCA19-9,SLX,NCC-ST-439などの名称のもとに腫瘍マーカーとして臨床応用されてきた.癌細胞ではこれらの糖鎖の発現が正常上皮細胞に比べて有意に亢進している.最近になり癌におけるこれら糖鎖の発現亢進機構がようやく判明してきた.<BR>最近,大腸の正常上皮細胞がシアリルルイスa・シアリルルイスXよりも一段と複雑な構造の糖鎖を構成的に発現することが知られるようになった.おそらく発癌の最も初期に起こるのはこれらの複雑な糖鎖の合成不全であると考えられる.正常上皮細胞に発現する複雑な糖鎖としては,シアリルルイスX系糖鎖では硫酸基の付加した硫酸化シアリルルイスXが典型例であり,シアリルルイスa系糖鎖ではシアル酸がさらに付加したジシアリルルイスaが代表的である.癌化の初期に硫酸化やシアル酸化反応が低下してこれらの複雑な糖鎖の合成不全がおこり,これらの修飾のないシアリルルイスa・シアリルルイスXの発現が亢進する.この合成不全の背景には,これらの修飾に関与する転移酵素遺伝子のDNAのメチル化やピストンの脱アセチル化が推定されている.<BR>2.上皮細胞と免疫系細胞との相互作用と発癌<BR>正常上皮細胞に発現する硫酸化シアリルルイスXはL一セレクチンの特異的リガンドとして日常的にホーミングするリンパ球の粘膜内での挙動を制御し,ジシアリルルイスaはNK細胞や一部のT細胞の抑制性リセプターSiglec-7/p75/AIRM1の特異的リガンドとなっている.<BR>正常上皮細胞に発現するこれら複雑な糖鎖がいずれも免疫系細胞との相互作用を媒介する機能を持つことは注目される.腸管ホーミング性のリンパ球はα4β7インテグリン,L-セレクチンをもち,腸管上皮細胞が産生するケモカインTECKのリセプターCCR9を発現する.このリンパ球は腸管関連リンパ組織ヘホーミングしたのち,さらに粘膜固有層へ出て硫酸化シアリルルイスXやジシアリルルイスaを発現する腸管上皮細胞とL-セレクチンやSiglec-7を介して接着する.この接着によってリンパ球側にCCR10の発現が誘導される.CCR10はより分化した腸管上皮細胞が分泌するケモカインMECのリセプターであり,これによってリンパ球は粘膜固有層内をさらに遊走する.こうした細胞接着分子とケモカインの継時的なはたらきが正常粘膜のLPLやIELの成立に関与すると思われる.<BR>細胞の癌化に伴ってこれら複雑な構造の機能性糖鎖が消失すると粘膜内の免疫学的ホメオスタシスが障害されると考えられる.大腸癌の血行性転移を促進するシアリルルイスX・シアリルルイスaの発現亢進の背景には,こうした機能性糖鎖の消失がある.腸癌発生におけるCOX2の関与や,IL-10ノックアウトマウスにおける発癌は,粘膜中の免疫学的ホメオスタシスの乱れが大腸癌の発生に深く関連することを示す.正常大腸においては硫酸化シァリルルイスXやジシアリルルイスaなどの糖鎖は主にMUC2ムチンに担われるが,最近MUC2ノックアウトマウスで大腸癌の発生が報告されたことは,これら糖鎖を介する正常の細胞接着の消失が癌の発生に関与する可能性をさらに示唆する.<BR>3.三種のセレクチンのリガンド特異性と治療応用の展望<BR>セレクチンにはE-,P-,L-セレクチンの三種類があるが,癌細胞と血管内皮との接着で主役を演じるのはE-セレクチンであり,P-およびL-セレクチンの関与は少ない.しかし最近P-セレクチンやL-セレクチンのノックアウトマウスを用いたモデルでも転移の減少が認められ,P-,L-セレクチンも癌の血行性転移に有意に関与すると考えられるようになった.このため三つのセレクチンのすべてを阻害する治療法の樹立が課題である.この点についても紹介したい.
著者
田村 陽子
出版者
立命館大学法学会
雑誌
立命館法學 (ISSN:04831330)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.4, pp.1120-1148, 2007
著者
山田 昌弘
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.17-20, 2009-04-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
11

2008年度の家族社会学会のシンポジウムでは,貧困を伴った家族の経済格差拡大という社会における子育て状況を解明するために,子育てする親の調査を精力的になされている3人の研究者を報告者としてお招きした。後藤憲子氏には親の経済状況の変化と親の子育てへの態度の現状を,片岡栄美氏からは,お受験などに熱心な高階層の親の子育て戦略と意識を,湯澤直美氏から,経済的に困難な家族における子育ての実態をご報告いただいた。討論者として,竹村祥子氏,吉川徹氏にお願いし,司会は渡辺秀樹と山田昌弘が当たった。
著者
牟田 和恵
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.7-9, 2008-04-30 (Released:2009-08-07)
被引用文献数
1 1

シンポジウムでは,1対1の性的関係に絶対的基盤をおかないつながり,あるいはそれを基としながらも,カップルの対の関係(とその子ども)という核家族的関係に閉じないつながりによる,「家族のオルタナティブ」の新たな可能性を検討した。小谷部育子は「コレクティブハウジングの理念と実践」,釜野さおりは「レズビアン家族とゲイ家族から『従来の家族』を問う」,上野千鶴子は「家族の臨界:ケアの再分配問題をめぐって」と題して,新たな親密さ・拠るべき生の基盤の構築の可能性を,実践的・理論的に提示した。討論者の野沢慎司は,ステップファミリー研究の知見を生かし,これまでの家族研究とのつながりを論じた。司会は,牟田和恵と須長史生が務めた。