著者
川手 圭一
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、国境変更後にポーランド国内に居住することになったドイツ人住民を主体・客体として展開した「国境を超える」「ホームランド・ナショナリズム」の実態を追った。そのさい、併せてドイツ国内のポーランド人住民、とりわけドイツ本土から「ポーランド回廊」によって切り離された東プロイセンのポーランド人を取り巻くナショナリズムの問題にも注目することで、「ホームランド・ナショナリズム」の客体として翻弄される国境地域の住民の社会的問題を明らかにした。
著者
日高 圭一郎
出版者
九州産業大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、福岡県福岡市において開催される「博多どんたく」及び「博多祇園山笠」を紹介した観光パンフレット(以下、観光情報媒体)を収集し、分析対象とした。収集した観光情報媒体から、「博多どんたく」及び「博多祇園山笠」を被写体とした観光写真を抽出し、それぞれについて写真枚数、写真面積、写真中における「祭り」部分の面積、「祭り」の前景・背景に撮影されている景観要素別の面積を計測した。前年度に実施した福岡県北九州市の4っの「祭り」の同様の計測結果とあわせて、計測結果の分析を実施した。その結果、各祭りとも写真中における「祭り」部分の面積は、70%前後であることがわかった。また、昨年度、北九州市の分析結果とほぽ同様の傾向が、福岡市における「祭り」においても見られることがわかった。つまり、第一に市街地の風景を前景・背景とする場合が少なく、観光情報媒体の製作者又は情報提供者は、市街地の風景は祭りの前景・背景としてふさわしくないと判断していること、第二に祭りの開催空間の景観整備が観光対象としての祭りの魅力向上に寄与する可能性があることが、北九州市の固有の特徴ではなく、「祭り」を被写体とした観光画像情報の一般性的特徴であることがわかった。以上の研究と並行し、「祭り」が多く行われる場所である神社の立地的特徴についても調査研究を実施した。具体的には明治期の観光画像情報として位置づけられる「名所図録図会」に掲載された名所といわれた神社の立地点について分析を行った。分析の結果、微地形の観点から、名所といわれた神社の立地点は3タイプ(微高地、平地、山頂)に分けられることなどが明らかになった。
著者
竹下 享典 沼口 靖 新谷 理 柴田 怜 室原 豊明
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

血管新生は既存の血管から新たな血管枝が分岐して血管網を構築する生理的現象であり、その制御は、虚血をきたした組織の血流の改善、あるいはがん細胞増殖の抑制のために重要な治療ポイントである。本研究では、受精卵から成体になる過程で重要な役割を果たすことで知られるNotchシグナルが、成体の虚血組織の血管新生においても重要であることを、細胞内シグナル解析および遺伝子改変マウスを用いて明らかにした。
著者
小林 聡 宮川 眞一 清水 明
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

癌細胞に特異的に結合するペプチドが同定できれば、そのペプチドで抗癌剤を修飾し、癌組織により高濃度に、また非癌部組織により低濃度に抗癌剤を分布させ、効果を高めつつ副作用の低減を図ることが可能となる。当研究では、ファージライブラリーを用いたバイオパンニング法という方法で、肝細胞癌に特異的に結合するペプチドを同定した。同ペプチドを提示したファージ、ならびにビオチン修飾した同合成ペプチドを用いて、各種悪性腫瘍由来細胞株ならびに肝細胞癌手術切除標本において、その肝細胞癌結合性を確認した。
著者
松永 達雄 幸池 浩子 務台 英樹
出版者
独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ミトコンドリアDNAのA1555G変異とA3243G変異およびGJB2遺伝子変異を除外した日本人の原因不明の両側性感音難聴患者(先天性難聴100家系および後天性難聴120家系)において、これまでに難聴遺伝子としての報告があるミトコンドリア遺伝子7種類(12SrRNA、tRNA Leu (UUR)、tRNA Ser (UCN)、tRNA Lys、tRNA His、tRNA Ser (AGY)、tRNA Glu)の変異をスクリーニングした。この結果、難聴者のみで同定される遺伝子変異が、12SrRNA遺伝子を含む2遺伝子に同定された。本研究成果は日本人難聴者の診断におけるミトコンドリア遺伝子変異解析の重要性を示すものである。
著者
張本 鉄雄
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は二ビーム励起およびアイドラ光の最適化制御による光パラメトリックチャープパルス増幅の超広帯域化と安定化の新しい方式を考案し、ペタワット(1PW=10^<15>W)・サイクル(数フェムト秒)パルスレーザー光の発生を目的とした。研究成果として、スペクトルバンド幅400nmを超えるレーザーパルスの増幅を実現した。また、光パラメトリックチャープパルス増幅に関する簡易な光学設計法を開発した。
著者
結城 良治 北川 英夫 東郷 敬一郎
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.47, no.422, pp.981-989, 1981-10-25
被引用文献数
2

本報は, 従来のデータの得られていなかった二軸荷重重下の疲労き裂成長の低ΔK_I 領域特性と下限界条件ΔK_<Ith> を高張力鋼きつき系統的に調べ, またこの疲労き裂の開閉挙動を調べたものである. その結果, 二軸荷重下のき裂成長特性は, 単軸荷重下の場合と同様にΔK_Iと応力比 R_K(=K_<I min>/K_<I max>) あるいはΔK_<Ieff> で統一的に特性づけられることを明らかにした. 本実験では, き裂に平行な応力(非特異定数項)の影響は認められなかった.
著者
田中 美夜
出版者
富山大学芸術文化学部
雑誌
GEIBUN : 富山大学芸術文化学部紀要 (ISSN:18816649)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.32-35, 2009-02

駅地下芸文ギャラリーは2007年4月にオープンしました。2年目に入った今年は昨年に引き続き学生が企画段階から関わっていく動きも入れながら、ワークショップ及びセミナーの開催と昨年度よりも多い来場者数を目標として事業を行ってきました。学生の企画としては5月のゴールデンウィークに合わせた「Tommy Dining」が挙げられます。この企画は学生が主体となって運営組織をつくり、期間限定のショップをギャラリー内にオープンするというものでした。企画のみに関わる学生がいれば作品出品だけ行う学生もいて、多くの学生が興味のある得意分野で関わっていくことができました。また、地域を巻き込んだ企画として、市民と学生を対象とした座談会、そして小学生を対象としたワークショップを開催しました。両者ともに次回を望む参加者の要望もあり、継続した企画として今後も行なっていきたいと考えています。

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出版者
京都大学哲学論叢刊行会
雑誌
哲学論叢 (ISSN:0914143X)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.112-121, 2005-09-01
著者
橋本 修 高橋 英則 本田 敏志 田口 光 衣笠 健三
出版者
群馬県立ぐんま天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

恒星進化末期の漸近巨星枝(AGB)にある炭素星の形成とその進化シナリオを検討するため、炭素星の可視高分散分光観測を行い、炭素の同位体比^<12>C/^<13>Cを測定する。ぐんま天文台のGAOES分光器を用いることによって、高い波長分解能でありながら、かつ広い波長領域を網羅した高精度の可視分光データを大量のサンプルに対して取得した。この様な大型サンプルに対する高精度の炭素同位体比の測定はこれまでに類をみないものである。
著者
古阪 秀三
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
vol.105, no.1301, 1990-07-20
著者
松井 亮輔
出版者
全国障害者問題研究会
雑誌
障害者問題研究 (ISSN:03884155)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.105-113, 2008-08
被引用文献数
1

2006年12月に国連総会で採択された障害者の権利が2008年5月3日に発効したことで、障害者差別禁止法制定に向けての各国の取組みがさらに加速することとなると予想される。しかし、ADAの経験からも明らかなように、障害者の雇用機会の均等と待遇の平等を実現するには、差別禁止アプローチだけでは不十分である。EU諸国がEU指令のもとに取組んでいるように、差別禁止アプローチと雇用率制度など、積極的差別是正措置の組み合わせがより効果的であろう。さらに、障害者の就労実態を本格的に改善するには、それらの組み合わせに加え、障害者の能力開発をすすめるための教育や職業訓練の向上、社会的企業や協同組合等、地域ベースの多様な働く場の創出など、総合的な取組みが不可欠と思われる。そして、こうした総合的な取組みが実効をあげるための前提として、障害者も含む、すべての人がディーセント・ワークにつきうるような社会的条件整備が求められる。
著者
TRENSON Steven (2010) 西山 良平 (2008-2009) TRENSON Steven
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

平成22年度は、醍醐寺の龍神信仰の日本中世の宗教における意義についての研究をまとめる作業をした。本研究の主眼は、醍醐寺の龍神信仰の日本中世の宗教における重要性に光を当てることである。日本宗教史学では11世紀末~12世紀初めに真言密教思想を基層とする日本中世の宗教が確立したとされているが、この真言密教思想の内容と特徴が十分に理解されているとは限らない。というのは、中世の真言宗の神髄が宝珠信仰にあることはすでに先学の研究によって明らかにされたが、この宝珠信仰の内容、そしてその成立と展開については、なお検討する余地が多いのである。しかし、11世紀末~12世紀初めの醍醐寺(真言宗の主要寺院の一つ)では龍神信仰が発達し、その後、その信仰が醍醐寺を中心とする宗教ネットワークの中で広まった。それゆえに、龍神信仰が宝珠信仰と不可分であるので、日本中世の宗教の形成史と有様を解明するために、醍醐寺の龍神信仰とそれと直接にかかわると考えられる諸宗教形態(神道灌頂、玉女信仰、室生山や三輪山の龍神信仰、宇賀弁財天信仰など)について検討することにした。この研究の成果・意義として主に次の点があげられる。(1)真言宗の宝珠信仰(仏舎利と龍神の宝珠との同体説)が、まず真言宗の雨乞儀礼を背景に展開し、その後、醍醐寺の密教の根本教義として伝承されたという点。(2)中世の醍醐寺では、龍とその宝珠が、天地陰陽及び両部曼荼羅(胎蔵と金剛界)を一体化する霊物と見られたが、その化身がほとんど女性の密教の神(仏眼、愛染明王、ダキニ天)であるという点。(3)醍醐寺で葬られていた白河院の中宮賢子が"玉女"(女性として現れる宝珠)として崇敬され、その崇敬が宝珠を女性の神と見る観点を促した可能性。(4)神道・即位灌頂の本尊が宝珠の女性の化身であるという説、(4)醍醐寺の龍神・宝珠信仰が地方の霊場(伊勢神宮室、生山、三輪山)へ伝承され、この信仰こそがこれらの霊場と縁が深い両部神道の基盤となったと考えられる点である。
著者
福岡 万里子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本年度は、(1)幕末維新期における日独関係の基礎を築いたプロイセン東アジア遠征をテーマとする博士論文の執筆を進め、また(2)ドイツ・オランダにおいて短期の研究調査旅行を実施した。以下、(1)・(2)の具体的内容を略記し、(3)でその意義を述べる。(1)博士論文執筆:プロイセン東アジア遠征は、東アジアとドイツ諸国との間の通商関係樹立のため、プロイセン政府が1860〜62年にかけ日本・中国・シャムへ派遣した外交使節団である。博士論文は、(1)同遠征実施の誘因となった19世紀中期における東アジア・世界情勢の変容過程を明らかにした上で、(2)遠征が幕末動乱期の日本に英・米諸列強に遅れて到来するに当たって生じた諸問題を、マルチ・アーカイヴァルな手法に基づき、実証的に解明することをねらいとしている。この博士論文を構成する章として、本年度は一連の論考を執筆した。学会誌『洋学』17(2008年度)号(査読有・未公刊)への掲載が決定している論文「19世紀中期の東アジアとドイツ諸国」、及び後記「研究成果欄」に記載した、学会発表「日蘭追加条約をめぐる「誤解」に関する考察」は、その成果の一部である。(2)研究調査旅行:年度末にはベルリン・ライデンを計3週間の日程で訪問し、プロイセン枢密文書館、ベルリン国立図書館、ライデン大学図書館等で資料調査・収集を行った。その結果、19世紀中期の日本・東アジア情勢に関する欧米側理解、プロイセン東アジア遠征、及び幕末のオランダ対日政策に関する、一連の貴重な外交一次史料・文献を入手した。オランダでは加えて、幕末日蘭関係史の専門家であるヘルマン・ムースハルト博士を訪問し、研究上の指導を受けた。(3)意義:幕末の日本開国史については、国内的な政治・外交過程分析、及び日米・日英関係史などの観点から、多くの研究が蓄積されてきた。しかしそこでは、遅れた近代化過程の渦中にあったドイツが、プロイセン東アジア遠征によって日本・東アジアの開国過程に遅れて参と与した際、その「遅れ」の故に、どのような特徴的な諸問題に遭遇し、日本開国過程にいかなる影響を及ぼしたのか、といった問題は、全く考慮されてこなかった。本研究の意義は、プロイセン東アジア遠征の実施過程をこのような観点から分析することによって、日本近代化の出発点となった幕末史を、19世紀中期の世界史的潮流の中に置き直そうとする点にある。
著者
大庭 英雄
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.388-399, 1999-09

21世紀の前半には, 欧米から出発した情報革命によって, 世界を巻き込んで政治・経済・社会・文化などが連携し, 情報を知的に活用する社会システムが確立されること想定されており, これを情報社会と言う.情報社会では, 情報と言う媒体を共有して, 国という境界が薄れ, 世界を巻き込んだ共同体としての新しい社会システムに移行するのであるが, そのとき, 情報を積極的に活用する環境を整備した欧米と乗り遅れた各国との間には, 国の繁栄に大きな格差が生じてくる.また, クライシスにおいても世界では, 戦争, テロ, ゲリラ闘争, 組織犯罪, 大量殺害事件, 爆発事故や原子力発電所等の事故, 自然災害, 人災, 政治的なクライシス, 金融不安・通貨不安, エネルギー, 貿易のアンバランスなどから発生する関税障壁, 人口爆発/食料, 難民流入, 宇宙機の落下, 隕石の落下, ミサイルの(誤)発射, 情報戦略戦争など数限りなく発生することが考えられる.欧米では, 情報社会で構築された情報を知的に活用し, これらあらゆるクライシスを想定し, 即応的に真の原因や要因を正しく理解した上でクライシス未然の防止策など, 被害を最小限に食い止めるために知的なクライシスコントロールの研究開発がなされている.我が国は, 島国で閉鎖環境にあり, 危機意識が非常に薄い傾向にある.21世紀に向けて, 情報社会の社会システム構築と平行して, 情報社会におけるクライシスコントロールを真剣に取り組む必要がある.
著者
山形 英郎
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

住民保護責任を中心概念として、「人間の安全保障」と「国家の安全保障」の関係を研究した。人間の安全保障には、日本を中心とした平和的なアプローチとカナダを中心とした軍事的なアプローチがある。前者によれば、人間の安全保障は国家の安全保障と矛盾するものではなく、相互に補完的な関係を有している。その一方で、後者であれは、人間の安全保障の優位が認められ、国家の安全保障が毀損される場合がある。とりわけ、破綻国家のような場合には、国際社会の介入が許されるとされ、破綻国家の王権=安全保障が害される可能性があるめである。しかも、そうした介入の対象となるのは、破綻国家であり、途上国を中心として中小国である。しかも、そうした介入が、介入国にとって、テロ防止の名目で行われる場合があり、被介入国の主権=安全保障を犠牲にして、介入国の主権が強化されることになる。そうした一方性が存在していることを明らかにした。アフリカ連合では、住民保護責任概念の拡大傾向がある。また、国際司法裁判所のジェノサイド条約適用事件では、住民保護責任の影響が判決の中に出始めている。その一方、国連事務総長が作成した「住民保護責任の実施」文書によれば、国際社会が実施する住民保護責任は、国連の集団安全保障制度の枠内でのみ可能であるとされ、住民保護責任限定花が行われている。濫用を戒めているのである。住民保護責任が一般国際法上の概念として確立するまでには至っていないが、国際法上の主権概念に大きな変容をもたちす可能性をもっていることに注意が必要である。