著者
木村 玲二 森山 雅雄 篠田 雅人
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ダストの発生源であるモンゴル・中国の乾燥地域において,ダスト発生モニタリングに関する観測ステーションを設置し,春季における黄砂の発生と地表面の状態の関係に関するデータを得ることに成功した。その結果,黄砂の発生に対する植生(特に枯れ草)や土壌水分の効果が観測によって明らかにされるとともに,ダストの発生と地表面状態の関係について定式化し,黄砂被害の軽減資料として役立つ「黄砂ハザードマップ」の試作品を公表した。
著者
本田 靖 中井 里史 小野 雅司 田村 憲治 新田 裕史 上田 佳代
出版者
筑波大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

本研究は,東アジアにおけるエアロゾルの健康影響,特に死亡への影響を,疫学的手法を用いて明らかにしようとした.日本,韓国,台湾の主要都市における粒子状物質濃度,日別死亡数などのデータを収集した.福岡市など九州地域では粒子状物質濃度に越境汚染の影響が示唆されたが,東京などでは大きな影響は見られなかった.死亡への影響ははっきりしなかったが,福岡で大きいという可能性が示唆された.
著者
常松 展充
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究で開発した「黄砂発生輸送モデル」を用いて、地球温暖化に伴う気候変化の情報を反映させた長期間シミュレーションを一部実施した。このシミュレーションでは、全球気候モデル「MIROC」によるSRES-A1Bシナリオ実験の結果から得られた気候予測データと、20世紀再現実験結果から得られた気候再現データをモデルに組み込んだ。具体的には、気温・比湿・ジオポテンシャル高度・風のuv成分・地表面温度について、将来(2080-2100年)と近年(1980-2000年)の差分(以下「温暖化差分」と呼ぶ)を、全球気候モデルの各グリッド毎に算出し、6時間毎の温暖化差分データを作成した。そして、作成した温暖化差分を、黄砂の発生と輸送のシミュレーション(水平解像度:20km)の初期・境界条件となる数値データに加算した。高解像度シミュレーションの初期・境界条件となる数値データに温暖化差分を加算する方法は「擬似温暖化法」と呼ばれ、それが、全球気候モデルのもつバイアスへの依存を低減させたダウンスケーリングを可能にする手法であることから、気候変化予測に関する多くの先行研究で用いられているものの、それを黄砂等の大気汚染物質動態の将来変化シミュレーションに応用した先行研究はない。これにより、本研究では、全球気候モデルのバイアスを低減させた上で黄砂発生輸送の将来変化をシミュレートした。地球温暖化の進行に伴う気候の将来変化が黄砂の発生と輸送に及ぼす影響を予測した研究は現在のところ希少であり、本研究で実施した数値シミュレーションの結果を解析することで、黄砂の発生・輸送の将来変化が量的・空間的に明らかになるとともに、黄砂等のミネラルダスト、あるいは他の大気汚染物質の動態の将来変化に関する今後の研究に資する知見が得られることが期待される。
著者
市瀬 孝道 吉田 安宏 吉田 成一 山元 昭二
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

1. 肺炎桿菌と黄砂曝露による培養細胞における炎症性サイトカイン・ケモカンの遺伝子発現とタンパク発現:黄砂は肺炎桿菌(Klebsiella Pneumoniae(KP))による肺の炎症を悪化させた(前年度)。このメカニズムを明らかにする目的で、BALB/cマクロファージ(MP)由来のRAW264.7細胞に黄砂と肺炎桿菌を曝露して、Toll-like receptor(TLR)2とTLR4mRNAの発現、炎症性サイトカイン・ケモカインのmRNA発現と培養液中のこれらのタンパク発現を調べた。またTLR2とTLR4の抗体を用いてこれらの発現への影響を調べた。肺炎桿菌を添加したRAW264.7細胞はTLR2mRNAの発現を高めたが、TLR4の発現はむしろ低下した。TLR2とTLR4の抗体を用いて、TLR2とTLR4のmRNA発現を調べた結果、TLR2抗体はTLR2mRNAの発現を抑えると共に、炎症性サイトカイン・ケモカインのmRNA発現と培養液中の炎症性タンパク発現を抑えた。しかし、TLR4抗体はこられの発現を抑えることができなかった。この結果からKPはRAW264.7細胞のTLR2発現を介して炎症性サイトカイン・ケモカイン類の発現を高めていることが分かった。RAW264.7細胞にKPと黄砂を添加してTLR2とTLR4mRNA発現、炎症性サイトカイン・ケモカインmRNA発現と培養液中のタンパク発現を調べた結果、黄砂は肺炎桿菌によるTLR2の発現と炎症性サイトカイン類のタンパク発現を更に高めたがTLR4は低下した。この結果から、黄砂の肺炎桿菌による炎症増悪作用はTLR2の活性化を介して肺の炎症を増悪している可能性を示唆した。2. 黄砂付着細菌の感染実験:日本に飛来した黄砂から分離したBacillus spと黄砂をマウスの気管内に投与して黄砂の炎症増悪作用を調べた。その結果、本実験に用いたBacillus spは病原性が低く、マクロファージ数は増加させるものの、炎症反応の誘導性(好中球数の増加)は低かった。またマクロファージに関連したサイトカインは誘導するが炎症性サイトカイン類の発現は低かった。今後は病原性の強い細菌による感染実験が必要である。
著者
市原 樟夫
出版者
東海学園大学
雑誌
東海学園大学研究紀要. 経営・経済学研究編 (ISSN:13491601)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.25-43, 2005-03-31

この論考では、パチンコホール業の店舗運営に必要な戦略的管理会計システムの機能実体を明らかにするため、パチンカーのプレイ場面に対応した店側の計数管理ノウハウをルール化することが企図された。すなわち、パチンコ店内において典型的に現れる五つの操業場面-(1)店が貸し主による売上高を上げるとき/(2)店が客にサービス玉を払い出すとき/(3)客が大当たりして客への出玉数が増えるとき/(4)客が持ち玉と景品とを交換するとき/(5)客の囲い込みによる利益増に向けて店が粗利益の獲得状況を操作するとき-で使いこなせる管理会計用の最適な計算方式が、現場リサーチを通じて体系化されている。
著者
王 青躍 鈴木 美穂 中島 大介 三輪 誠
出版者
埼玉大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

近年、黄砂の飛来とスギ花粉飛散ピークと重なって度々出現し、同時にスギ花粉アレルゲン含有粒子の高濃度現象が観測されているため、都市部において、黄砂がスギ花粉と接触し、スギ花粉アレルゲンの放出や修飾影響、アレルギーの増悪など、花粉症罹患への黄砂や汚染物質の複合影響を評価した。特に、スギ花粉アレルゲンの微小粒径への移行は降雨が影響しており、降雨のイオン成分やpHによるスギ花粉アレルゲンの溶出挙動とその活性変化を検討した。
著者
川崎 謙一郎 衛藤 和文 河上 哲
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本科学研究費助成により,ネーター局所環AのイデアルIが1次元のイデアルであるならば,余有限加群からなる圏M (A, I) cofはアーベル圏であることを証明することができた.
著者
市原 樟夫
出版者
東海学園大学
雑誌
東海学園大学研究紀要. 経営・経済学研究編 (ISSN:13491601)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.61-94, 2004-03-31

Mr. Takeichi Masamura invented the Masamura-Gauge in 1948. After that, the Pachinko-Hall business had rapidly expanded in all parts of the country because of its both aspects, amusement and gambling. Lately the Pachinko trade has become a huge market: its annual turnover is 29 trillions yen, a gross profit is 4 trillions yen, establishments are 17 thousands, persons engaged is 342 thousands, instore equipments are 4.5 millions and players are 22 millions. There are many references about general trends of the business from a journalistic point of view. However, there is no treatise on the management of it with the angle of a marketing management. The reason of the lack of academic paper is that researchers hesitated to specialize in it because of its dirty image: an unclearness of accounting, an illegality of cashing system, an unlawful use of converted pachinko machines, interventions of organized violence, its closed society, its categorization as adult entertainment businesses by Japanese law, etc.. And so, in this circumstance, there is no proper evaluation of it as 'the King of tertiary industry' which has 1.8 times as large market size as a car industry does. Moreover, this situation might retard the growth of the leisure industry. Therefore, this paper will focus on the store format systems of it from the viewpoint of a marketing management on the basis of following definition; the Pachinko-Hall business offers entertainment service and places for individual; it provides amusements such as pachinko-machines and pachislo-machines which stir up people's gambling spirit with a charge. The approach used by this paper will be followed. In the first place, '10 operational variables', which are basic factors for the business will be distilled. Secondly, on the basis of that, synthetic criteria consisted of marketing performance and financial performance will be set. Finally, the method how to use this criteria in various conditions of each companies will be discussed. Also, how to organize and operate the store format systems, which can be applicable both to business administration and store operation, will be revealed.
著者
川上 幸治郎 高山 昭康 前川 進
出版者
神戸大学
雑誌
兵庫農科大學研究報告. 農芸化学編 (ISSN:04400216)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.20-24, 1961

1. 標高差による種イモの春作における比較では, 1,000m(5月4日植∿8月20日掘)産及び1,400m(5月14日植∿9月5日掘)産は, 収量ことに大イモ収量が多い。標高600m(4月23日植∿8月10掘)産は劣る。前2者は月令が6∿7で適令の範囲にあるのに対し後者は適令を過ぎて7.5に達しているためである。2. 600mのところでは普通植よりも3週間晩く(5月14日)植付けすることにより生産性の高い種イモができ, これは月令を切り下げるためである。1000mで晩植の効果がないのは月令のこの程度の切り下げがなお適令を外れないからである。3. 掘上げは茎葉枯凋期がよく, これを晩くすることは種イモの品質を高めることとはならない。
著者
中瀬 勲 清田 信
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.216-221, 1988-03-31
被引用文献数
5

公園他の緑地での熱的環境要因と人間行動との相互依存関係の解明を目的として本研究を実施した。なお,調査は堺市大仙公園内で1987年4月29日と5月4日の春季の晴天の休日の2日間に実施し,気温,表面温度,人間行動,等に関するデータを収集した。これらの温度諸データと公園の地表面被覆との関連を明らかにし,さらに人間の滞留行動が気温や樹影に関係し,特に表面温度に関係していることを明らかにした。
著者
瀬在 俊浩 川西 登音夫 四十物 邦雄 古川 欣司 磯野 賀瑞夫 黒崎 忠明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.156, pp.19-24, 2003-06-20
参考文献数
1
被引用文献数
2

NASDAはAMSRとAMSR-Eの2つの人工衛星搭載マイクロ波放射計を開発した。AMSR-E・AMSRは地球規模の水・エネルギー循環を解明するために必要なデータを取得する地球観測用電波センサである。AMSR-EはAMSRをベースに開発したもので、形状、仕様はAMSRと殆ど同じである。AMSR-EはNASAの衛星Aquaに搭載され、2002年5月4日に打上げられた。又、AMSRはNASDAの衛星ADEOS-IIに搭載され、2002年12月14日に打上げられた。本論文ではAMSR-E・AMSRの概要と軌道上初期評価結果を説明するとともに、取得画像を紹介する。
著者
神田 圭一 大場 謙吉 田地川 勉 高見沢 計一 渡辺 太治
出版者
京都府立医科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

人工物を体内に埋入した際に、生体防衛機構の働きによって周囲に繊維芽細胞とそれが産出するコラーゲン線維によって構成されるカプセル状組織体を血管内治療に応用するための基礎的技術開発を行った。(1)基材・形状設計:鋳型基材の材質の違いが与える組織形成への影響を調べた。また、鋳型形状の設計により、目的とする形状が任意のサイズで構築できる事を確認した。(2)カプセル状組織体をカバードステントとして形成する技術の開発:金属製のステントを拡張した状態でシリコンチューブの周囲にマウントしてこれをウサギ皮下に埋入した。1ヶ月後にステントの間隙は自家結合組織で覆われ、カバードステントが形成された。(3)動物移植実験:ウサギの大腿動脈を切開し、病変の無い腹部大動脈に径3mmのカバードステント自家留置を行った。留置は問題なく行うことが出来、留置後の血管造影でも開存が確認出来た。更にカバードステントの内腔は完全に血管内皮細胞で覆われていた。(4)疾患モデルの開発:疾患モデルの開発に着手した。まずは、Bio-Covered Stentの為の動脈瘤・動脈損傷モデルと、大動脈瘤モデルの開発に着手した。ウサギ頸動脈に頸静脈をからなるパッチを用いて嚢状瘤を人工的に形成した。この部分にカバードステントを留置することにより瘤を血栓化させ縮小させることが出来た。また、血管を露出後故意に損傷させ出血部にカバードステントを留置して止血させることが出来た。小口症血管に対する新しい血管内治療の選択肢となり得ると示唆された。
著者
一色 大悟
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

平成二十年度当初においては『阿毘達磨倶舎論』第二章「根品」の因果論該当箇所のサンスクリット・テクスト再校訂を継続することと、有部系諸文献における縁起説の輪廻論的側面についての検討を行なうことを計画した。『倶舎論』第二章「根品」の因果論該当箇所のサンスクリット・テクスト校訂作業にあたって、まず『倶舎論』関係の和漢撰述・チベット撰述文献の資料収集を継続した。その結果として、存在は確認しつつも入手しえていなかった資料を数点複写の形で得ることができた。また『倶舎論』第四章「業品」、第五章「随眠品」、第九章「破我品」.において議論が関連する箇所、および『倶舎論』に対する反駁書として重要な『阿毘達磨順正理論』の三世実有説(説一切有部の存在論の基礎となる説、一切のものは一切時に存在すると説く)を論ずる箇所の訳注を行い、因果論に関するそれらの内容との比較検討を行なった。結果として「根品」因果論該当箇所のサンスクリット・テクスト校訂は、上記の情報収集に時間を費やす必要があったため、完遂し得なかったものの、精度の高い校訂のための基礎固めを十分に行なうことができた。第二に、縁起説の輪廻論的側面について検討し、『倶舎論』「破我品」における無我説を踏まえつつ、『阿毘達磨識身足論』『阿毘達磨大毘婆沙論』『阿毘達磨順正理論』などの有部系諸文献との比較検討を行なった。また、上記文献において対論者として現れる犢子部の議論については、さらに正量部の『三彌底部論』、及び後代に書かれた諸論書における議論を調査した。
著者
中塚 次郎 竹中 克行 横山 正樹 ヒガ マルセーロ 立石 博高 金七 紀男 山道 佳子 宮崎 和夫 川上 茂信 砂山 充子
出版者
フェリス女学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

地域の形成にはたんに経済的要因や地理的要因だけではなく、その地域に流入してきた人間集団の存在や、そこから出ていった移民たちの意識などが重要な役割を果たしている。たとえば、EU内を移動しそこを生活空間とする一方で、EU外の集団との差異を経験することで、人々はEUをひとつの「地域」と認識する、といった具合にである。このことは、国家内の「地域」にもあてはまる。本研究は、こうした観点を生かしながち、イベリア半島を対象にして、「ヒトの移動」と「地域」形成の関係を、歴史的に分析しようとするものである。共同研究の前提として、まず、大西洋をはさんだ、現代におけるイベリア半島とアメリカ大陸間のヒトの移動を中心にして、統計的な研究、地域意識の形成、移民先での移民の社会的地位といったテーマについて検討した。その後、対象を近代以前にまでひろげ、さらに移動の地域をピレネー山脈をはさんだ、イベリア半島とほかのヨーロッパ地域とのあいだの人の移動にまで拡大して、宗教意識の変容や言語の変化を含む、幅広い視,点から検討を行なった,また、強いられた移動である「亡命」についても、人々の帰属意識の変化の側面から分析を進めた。共同研究の最後に、アジアにおける人の移動を比較検討の対象としてとりあげ、いかなる分析方法が地域研究にとって有効であるか、といった総括的な作業を行なった。