著者
立川 武蔵
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.564-571, 2006-03-20
被引用文献数
1
著者
HIGA MARCELO G.
出版者
フェリス女学院大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

アルゼンチンに定住した日本人移民の間、「ニッケイ・日系」的なアイデンティティの登場は比較的遅く、80年代末から90年代初頭にかけて起こった日本への「出稼ぎ」移住の体験をきっかけに普及したのである。なお、ニッケイという範疇は彼らのアイデンティティ志向の中で重要な指標となって来たが、これを名乗る場所や文脈などによって意義が異なり、必ずしも統一した意味世界を指していると言えない。一方では、アルゼンチン出身者にとって、日本で日系人を名乗ることは合法的に労働する以外の意味が薄く、主観的な選択としてあまり採用されていない。日本人及び他の南米出身者に対しても従来の国籍の方が自他認識の方法としてむしろ有効である。さらに、南米出身者同士は確かに職場を始め様々な生活の場を共有するが、ニッケイとしての特別な連帯感は今のところそれほど強く表れていない。彼らはそれぞれの国籍に沿って結合する傾向があり、日系人・ニッケイよりも互いに外国人として接するのである。他方では、アルゼンチンにおいてニッケイたるものはアイデンティティを語る上で近年新たな意味をもつようになったことも否定できない。この現象の発生状況について前年度の報告で触れたが、今回の調査では「沖縄」に由来する要素について詳しく調べることができた。アルゼンチンの移民集団の構成からして、沖縄の存在は不思議ではないはずであるが、従来移民の子孫の間アルゼンチンに対して日本は対立の対象として認識され、沖縄は積極的な位置を占めていなかった。しかし、ニッケイの登場と共に、オキナワというものも再認識され、アルゼンチンで理解される「ハポネス」の重要な部分を示すようになった。アルゼンチン出身の日本人移民子孫のアイデンティティ志向には、様々な経緯を辿って来た要素が複雑に組み合わせられており、ニッケイとされるものもその中の一つの表現である。人々は定住民だと前提とする場合、国籍または固有文化は指標として採用しやすいが、移民は常の状態となる時その有効性は低下する、今後文化やアイデンティティの動熊を理解する上でこのようなケースを追求し続ける必要がある。
著者
澤井 直
雑誌
日本医史学雑誌 (ISSN:05493323)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.560-561, 2001-09-20
著者
小越 康宏 小越 咲子 広瀬 貞樹 木村 春彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.959-964, 2002-05-01
参考文献数
6
被引用文献数
6

独居老人の介護,危険回避のために,家庭内での生活様態を把握することは非常に重要であるが,家庭内での振舞い認知についての研究は少ない.本論文では,赤外線センサを各部屋に分散配置し,部屋ごとに老人の滞在の傾向をとらえることにより家庭内での振舞い認知を実現し,新しく観測される老人の活動が,習慣的な振舞いとは異なる振舞いなのかを検知する手法を提案する.
著者
樋口 咲子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究の研究成果は以下の4点である。一点目は、行書の書き方の課題解決法がわかる、書字動作に注目した資料集を作成したことである。二点目は、行書の書き方の課題解決法がわかる動画教材を作成したことである。三点目は、書字動作を理解しやすい行書規準文字(いわゆる手本)を提案したことである。4点目は、書字動作に注目した、行書の授業展開法を提案したことである。以上の研究成果により、課題解決学習の充実を目指した。
著者
小阪 美津子 水野 伸彦
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

幼弱期のマウス網膜組織内に、光受容体細胞(視細胞)の形質を獲得しているにもかかわらず、取り出して培養すると増殖を開始して他の網膜神経細胞へ分化転換するという細胞を発見した。その細胞は組織傷害時などに細胞分裂を開始し他の神経を生み出す幹細胞として機能しうる可能性が器官培養系の結果から得られ、全く新規の網膜幹細胞であることが示唆された。またその細胞の遺伝子発現を網羅的に解析し、網膜の発生・分化・疾患に関わる遺伝子候補を多数同定した。
著者
菊池 三穂子 平山 謙二 NGUYEN Huy Tien
出版者
長崎大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

住血吸虫症の家畜向けワクチン等の開発により、住血吸虫感染のコントロールに寄与することを目的として本研究を推進した。放射線照射セルカリア感染によるワクチン効果が確かめられたミニブタの血清中の特異抗体に反応する住血吸虫抗原分画を同定し、新規ワクチン候補分子を虫卵及び虫体の可溶性抗原分画を二次元液体クロマトグラフィーシステム(2D-PF, BECKMAN Courter社)で分画し、抗体の反応性が認められる分画蛋白から、感染防御に関わるワクチン候補分子として4分画の配列を決定し、相同性検索の結果と分子量、アミノ酸配列から想定される蛋白の等電点(pI)の情報を元に4候補分子を決定した。これらの候補分子の虫卵、幼虫、成虫の各ステージにおける発現を確認し、虫卵ステージ以外でも発現が確認できたAAW27472.1、AXX25883.1、AWW27690.1について組み換え蛋白を作成し、放射線照射セルカリア感染ミニブタ血清が反応し、通常感染ミニブタ血清では反応が認められないことを確認した。この新たなワクチン候補蛋白のうち、AWW27472.1は23%程度の日本住血吸虫のカテプシンB・エンドベプチターゼ、26%のマンソン住血吸虫のカテプシンBとの相同性が認められた。AXX25883.1はsimilar to syntaxinと83%、Glutathion S-transeferase (GST)と23%の相同性を、AWW27690.1はDehydrogenase subunit1と46%の相同性を示すことが確認された。これらの候補分子の組み換え蛋白質で、マウスを免疫し抗血清を作成し培養ソーミュラ幼虫での発現部位について解析を行ったところ、AWW27472.1、AXX25883.1はソーミュラ表面に発現していることが推察された。これらの候補分子のワクチン効果を判定するための予備実験として、候補分子をpcDNA/V5/GW/D-TOPO(Invitologen)に挿入しDNAワクチンを作成し、Balb/Cマウス(1群13匹)に3回免疫後、血中抗体価を確認し日本住血吸虫セルカリアを40隻感染させた。感染後6週目に灌流し、成虫虫体を回収しワクチン効果を判定した。陰性対象群(Empty plasmid DNA)と比較した結果、AAW27690.1とAAW27472.1には、感染防御効果が認められなかったが、AXX25883.1は27%程度の回収虫体数の減少が認められた。今後、候補ワクチンの局在、効果に関わる免疫応答の本態等についてさらに詳細な検討を進めて研究を継続する。
著者
熊ノ郷 直人
出版者
工学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

区分的に陪特性な経路を用いた時間分割近似法により、相空間(ハミルトン型)経路積分の理論を構成した。厳密に言えば、時間分割近似法が、運動量の始点と位置の終点に関して広義一様収束する、かなり一般的な汎関数のクラスを与えた。このクラスは不確定性原理にかかわらないように一部の汎関数を除外しているため、和や積という演算が自由にできる。応用として、ハミルトン型の摂動展開や準古典近似を証明した。
著者
森山 徳長
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.72-79, 1999-09-30

ゴールドラッシュ時代のカルフォルニア州のサンフランシスコに流れて来た歯科医エルメンドルフは,この繁栄の町で開業した.約一年弱の努力も空しく,彼はニューヨーク州北部の田舎町で開業している歯科医の父の後を継ぐため撤退した.その間日記を克明につけていたので,当時のサンフランシスコの市民生活と歯科開業の実態が,彼の日記という貴重な一次史料により手にとるようにわかる.米国は南北戦争の最中であり,リンカーン再選の選挙風景を含め原著者Malvin E. Ring氏の歯科医史学的解説を加えて紹介した.
著者
日高 健 小野 征一郎 鳥居 享司 山本 尚俊 中原 尚知 北野 慎一
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

マグロ養殖業は、オーストラリア、メキシコ、地中海諸国、日本において行われており、現在では総生産量は約4万トンに達し、重要な産業となっている。クロマグロ養殖業は天然資源に原魚を依存したCapture-based aquacultureであり、天然資源との関わりが強い。さらに、長い価値連鎖のため、経済主体間の関係のあり方が養殖経営に与える影響が大きい。そこで、主要生産国における養殖管理制度と主要業者の経営管理を比較分析し、持続的なマグロ養殖管理のための要件抽出を目的として研究を行った。漁業資源管理では、オーストラリアが最も緻密な管理を行っており、養殖業者は各自のITQと自国EEZ内での原魚採捕によって優位性を持つ。これに次いで、スペインではマグロ漁業資源管理の強化が進んでいる。メキシコと日本では漁業資源管理の対象となっていない。価値連鎖における経済主体間関係を軸としたビジネスシステムをみると、スペインは生販統合型、オーストラリアは原魚供給確保型、メキシコの二事例は生販統合型と原魚供給確保型、日本は生販統合型である。これらの中では、メキシコ1のシステムが高いパフォーマンスを示しており、メキシコ2がこれに次ぐ。メキシコが有するビジネスシステムの優位性は、経済主体間の連携の強さに基づくものである。生産コストの低さに加え、生販統合による市場情報に応じた生産と出荷の体制は、日本市場における競争優位を確実にする。ただし、高い天然資源の豊度と緩い漁業資源管理に支えられたものであり、脆弱である。つまり,供給の不確実性に対応するためには、確実な資源管理制度を基盤に、原魚供給確保型と生販統合型の双方の性格を具備したビジネスシステムが必要である。原魚採捕者、養殖業者、流通業者の三者の戦略的提携関係をいかにして構築するか、それを政府がいかに支えるかが持続的な養殖マグロ産業を構築するための要件となる。
著者
藤田 昌宏
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では、従来からハードウェアの設計支援や設計検証に用いられてきた手法によって、近年注日を集めているシステムバイオロジーにおけるシミュレーションや解析を効率的に行い、実験室で行う実験では観測が困難な現象の観測や生化学反応における内部状態の推定を実現することを目的としている。今年度は、まず、昨年度の一般的な調査の続きとして、ハードウェア実装による生化学システムのシミュレーションの高速実行に着目し、特に詳細な調査を行った。その結果として、既存研究lこよりNext Reaction Method(NRM)までの手法は高速なハードウェア実装が既に提案されており、それらにおいては浮動小数点演算処理の最適化が重要であることが分かった。次に、上記の調査結果を踏まえて、NRMよりも高速なシミュレーション手法であるTau Leaping(TL)に着目し、その高速なハードウェア実装について検討した。反応を一つずつ逐次処理しているNRMに対して、TLでは複数の反応が一つの時間区間で起こり得ることを前提としてそれらをまとめて処理している点に特徴がある。したがって、複数の反応を並列に処理することが可能であり、よりハードウェア実装に適していると考えられる。さらに、一つの反応あたりの除算処理数もNRMより少ない点も、ハードウェア実装に有利である。ただし、TLにはNRMには無い微分処理が含まれているが、差分式に近似して処理を行うことにより高速に実行可能である。比較実験として、実際のソフトウェアの生化学シミュレータであるStockSimによるシミュレーションと、FPGAであるVertex5によるハードウェア実行との比較を考えており、現在までにその環境構築が完了している。今後は、実際にシミュレーション速度を比較することにより、提案するハードウェア実装による高速化できていることを確認する予定である。
著者
村山 繁雄 齊藤 祐子 石井 賢二 初田 弘幸
出版者
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

レビー小体型認知症(DLB)、パーキンソン病(PD)の認知症の責任病巣として、特異な線条体へのアミロイドβ沈着が原因と、ペンシルベニア大学、ロンドン大学からの報告で示されたことを受け、高齢者ブレインバンクプロジェクトで、PIB PETとドーパミンPETによる臨床例における線条体の検討と、死後脳におけるアミロイドβ蛋白とリン酸化αシヌクレイン沈着を免疫組織学的に線条体で検討する二つの方法で行った。DLB、認知症を伴うPD(PDD)51例と、認知症を伴わないPD(PDNC)48例の神経病理学的差分の検討で、辺縁系(扁桃核、嗅内野、CA2)、線条体、新皮質のαシヌクレイン沈着が抽出された。老人班に関しては、新皮質については抽出されたが、線条体は抽出されなかった。また、新皮質のAβ沈着はαシヌクレイン沈着を誘導する傾向が確認されたが、線条体沈着への促進作用は確認されなかった。なおこの研究期間3年間の新規蓄積例は13例であった。またこの検討過程で、αシヌクレイン沈着のみが有意で、アミロイドβ沈着、タウ沈着が軽度であり、認知症を呈するいわゆる純粋型レビー小体型認知症が23例検出され、辺縁方20例、新皮質型3例であった。これらの症例は、線条体のAβ沈着はないかほとんどなく、責任病理としての意味は少ないと考えられた。DLB/PDDとPD 3例ずつの差分で、DAT Scan(^<11>C-CFT PET)で、尾状核の集積低下が検出された。しかし、^<11>C-PIBでは新皮質はDLBの一例のみ陽性所見が検出されたが、尾状核を含め、線条体は全例で検出されなかった。研究期間中PDD一例の剖検所見が得られたが、辺縁型に分類され、新皮質にごくわずかびまん性老人班を認めるのみであり、線条体にはAβ沈着は認められなかった。以上の検討より、新皮質のアミロイドβ沈着は、レビー小体病理の新皮質への進展を促進することで、レビー小体型認知症の認知機能低下に影響を与えうるが、線条体における存在が、積極的に認知機能に影響を与えている結論は得られなかった。ただし、DLB/PDDにおける尾状核のDAT scan低下は、PDDに関しては病気の進行期であるためとの説明が可能であるが、DLBの場合の原因は、課題として残った。
著者
高島 裕臣
出版者
県立広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

語彙情報処理の母語話者-学習者連続性を検証するため日本人学習者の英語語彙判定・音読実験を行い,結果を母語話者と比較した。語彙判定・音読潜時ともに母語話者と学習者との間で有意な相関があり,さらには,語彙判定・音読潜時への寄与が有意な変数の多くが母語話者-学習者間で重なることを見出した。学習者の語彙判定が音読よりも早く母語話者と逆であることなど相違の例も見出したが,総じて,英語語彙情報処理の母語話者-学習者連続性を支持する結果が得られた。