著者
岸川 禮子 児塔 栄子 岩永 知秋 宗 信夫 家守 千鶴子 庄司 俊輔 西間 三馨 石川 哮
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.369-378, 2001
被引用文献数
8

1987年から,全国11施設で重力法による空中花粉調査を行ってきた.スギ花粉症患者の抗原曝露について明らかにする目的でスギ,ヒノキ科花粉飛散状況の年次変化について検討した.スギ花粉は日本列島の中央部,ヒノキ科は西日本に多く,両者を併せると浜松市が最も多かった.重力法による花粉飛散開始日はすでに患者が発症している報告があり,初観測日から飛散開始日までも飛散期間とみなした.スギ花粉初捕集日からヒノキ科花粉飛散終了日まで平均約100日間で,飛散量の多い地域ほど期間が長かった.この12年間では各地の花粉捕集量の増加傾向,地球温暖化の影響といわれる飛散開始の早期化は明らかではなかった.秋のスギ花粉が各地で捕集された.1994年以降増加傾向にあり,抗原として無視できないようになった.スギ花粉症・感作率増加原因の一つとして,秋のスギ花粉飛散による年間抗原曝露期間の長期化が示唆された.
著者
瀧口 桂子 松本 園子 富田 恵子 遠藤 久江 森久保 俊満 小林 理
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

<研究目的>核家族化や少子化が進み、地域社会の連帯も失われつつある現在、子育て中の家族が孤立化し、育児不安や養育困難な問題が生じ、児童虐待も深刻な社会問題となっている。本研究は乳児院や児童養護施設などの基幹児童福祉施設が要保護児童の保護や自立支援など従来の役割に加えて、地域社会の家庭養育支援施設としてどのように機能を拡大し、地域社会のネットワークを形成していくことができるか、またその課題を明らかにすることを目的とした。平成9年の児童福祉法改正により新設された「児童家庭支援センター」に焦点を絞り、センターがどのように設置運営され利用されていくかそのプロセスを調査し、地域におけるセンターの役割機能と地域子育て支援ネットワークの実態を明らかにして、これからの児童家庭支援センターの充実発展、さらにセンター制度改革への提言を行う。<研究成果>1.児童家庭支援センター構想とセンター制度が制定された経緯を検証した。2.児童家庭支援センター制度創設から5年間のセンター設置プロセスを明らかにした。児童家庭支援センターが発足して今年度で5年が経過した。平成14年度末現在、全国に36センターが設置されている。そのうち25センター(実質1年以上の活動実績があるセンター)を訪問し、運営方針、活動内容、利用状況、地域の関連機関との連携・ネットワークの形成、今後の課題などを聞き取り調査した。そのほか全国児童家庭支援センター会議で情報、資料収集を行い全センターの状況を把握した。3.児童家庭支援センターは付設されている本体施設の機能を活用し、地域の子育て支援機能を果たしていることは実証できた。しかし地域偏在、センター間の活動内容、利用状況の差が大きいこと、児童相談機関としての位置づけが明確でないこと、本体施設の運営、養護実践自体が厳しい状況下でセンター付置が容易でないことなど、多くの課題が明らかとなった。
著者
南斉 亮佑 中村 憲正 藤江 裕道
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.76, no.769, pp.2340-2344, 2010-09-25

We have been developing a new tissue engineering technique for cartilage repair using a scaffold-free tissue engineered construct (TEC) bio-synthesized from synovium-derived mesenchymal stem cells. A round-chondral defect of 8.5mm in diameter and 1.5mm in depth created on the medial condyle of 12 month-old mature porcine femur was filled with the TEC. Six months after surgery, a cylindrically shaped specimen of 4mm in diameter and 4-5mm in depth was extracted. Micro-indentation test was performed on the specimen using an AFM after the surface image of the specimen was obtained. Macro-scale compression test was, then, performed for the specimen using a custom made micro compression tester. As compared with many bump-like elevated portions of approximately 1-2μm in height observed in the surface of normal cartilage, rougher surface was observed in the TEC-treated and TEC-untreated tissues. The surface stiffness of the TEC-treated tissue was significantly lower than that of the normal cartilage, and slightly lower than that of the TEC-untreated tissue with no significant difference. In the quasi-static compression test, the tangent modulus of the TEC-treated tissue indicated no significant difference against the normal cartilage. In contrast, the tangent modulus of the TEC-untreated tissue was lower than those of the normal cartilage and the TEC-treated tissue, with a significant difference against the normal cartilage. It is suggested that the surface stiffness was independent of treatment of TEC, while the bulk modulus recovered well in the TEC-treated cartilage-like tissues as compared with the TEC-untreated cartilage-like tissues.
著者
楢崎 幸範 田上 四郎 山本 重一 濱村 研吾 力 寿雄 天野 光 大久保 彰人 安武 大輔
出版者
福岡県保健環境研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

北部九州の広域で観測される大気汚染について2010年~2012年の春期を中心に同位体化学を含む環境動態解析及び健康影響評価を実施した。西日本では大気環境が悪化し,春先から梅雨にかけて都市部以外でも空がかすむ現象が頻発した。汚染大気中には化学物質の他,黄砂や花粉が観察された。これらの複合大気汚染が原因で鼻炎の悪化,アレルギー疾患,呼吸器疾患等の増加が懸念された。なかでも,2010年5月20~21日には越境大気汚染物質によると思われる濃い霧に包まれ,視程が悪く鉄道や航空機等の交通機関に支障をきたした。この間,黒色炭素,硫酸塩,鉛,オゾン及びベンゼン等の人為起源成分が高濃度で検出された。この濃霧は1945年のロサンゼルスと同様なメカニズムで発生していたことを突き止めた。また,同時に大気汚染物質に曝された黒い黄砂の存在を明らかにした。
著者
高橋 義雄
出版者
名古屋大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

昨年は、多くのスポーツ種目のトップアスリートが雇用され、トレーニングできる環境を与える市場による経済システムについて調査してきた。しかし平成不況による業績不振、さらには資本の国際化により海外投資家や機関投資家らによる事業の見直しもあり、アスリートを雇用してきた企業が本来の事業ドメインとは異なるトップアスリートの育成から撤退している。そこで本年度は、文部科学省が推進している総合型地域スポーツクラブにおける競技力向上に関連する経済的なシステムについて、ヒアリングや質問紙調査を実施した。特にスポーツ競技連盟などのNPO組織が、トップアスリート育成を直接実施している事例をとりあげ、NPO組織と行政、企業との連携を考察した。具体的には、鶴岡市水泳連盟の事業である鶴岡スイミングクラブを調査した。そこでは公共財である市民プールの運営委託を受け、運営・管理するとともにアスリート育成システムを構築している。直接の公共投資ではなく、ソフトの部分をNPOが請け負うことで、公的資金をアスリート育成に還流させるシステムである。このような公的資金を還流させるシステムに成功している競技団体に共通することは、学校では施設や指導者の関係でアスリート育成が難しい点である。例えば、温水プール、スケートリンク、スキージャンプ、スキーアルペンなどである。学校施設ではないために、競技者の意思により選択されるために、アスリートのモチベーションが高く、そして施設の維持管理のために市場とともに公的な資金が支えていることが共通していた。これらの結果から、総合型地域スポーツクラブが単に学校スポーツクラブの代用になるのではなく、アスリート自らの選択が可能となる選択の多様性の確保が大事であることが示唆された。また競技団体やクラブ、学校などが組織横断的にコミュニケーションをとること、さらには今後の資金現となるスポーツ振興投票の配布先についても多様なニーズを汲み取る必要性が示唆された。
著者
小林 芳恵
出版者
広島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

平成17年度は、本研究の目的達成の為に、バルトリハリ著『ヴァーキヤパディーヤ』第三巻及びそれに対するヘーラーラージャの注釈「プラカーシャ」について、次の研究を実施した。まず、前年度のインド渡航時に収集した写本写真を含む現在使用可能な『ヴァーキャパディーヤ』及び「プラカーシャ」の写本資料を整理し、同時にコンピューター上で画像ファイル化した。これによって写本使用の便が図られ、かつ永続的な保存が可能となった。次に、それら収集・整理された写本資料を利用して、『ヴァーキャパディーヤ』及び「プラカーシャ」のこれまでの読了部分、すなわち第一章「種詳解」章前半分(第一詩頌から第四十詩頌まで)、第二章「実体詳解」章、第四章「再実体詳解」章、第五章「属性詳解」章について、テキスト・内容・翻訳を再検討した。その成果は広島大学に提出予定の学位請求論文「ヴァーキャパディーヤ研究」に附論として収録の予定である。同論文は、既発表の論文を含むこれまでの研究成果と本科学研究費による成果等を集大成するものであり、それによって、抽出された語意の観点からバルトリハリの言語理論が明快に示されることとなろう。なお、研究計画において同論文は本年度中に広島大学に提出される予定であったが、『ヴァーキャパディーヤ』及び「プラカーシャ」の写本の整理編集作業と写本研究の成果反映に予定外の時間と労力を要したため、今年度中の提出は見合わせざるを得なくなった。しかし研究の内容そのものに変更がないことはいうまでもない。そのほか前年度に開催された国際バルトリハリ学会での口頭発表の内容を論文としてまとめた。近刊の同学会報告書に掲載予定である。
著者
大石 芳裕
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究の主テーマはグローバルSCMの現状と課題およびその成果の研究であるが、これらを定量分析(アンケート調査)や定性調査(インタビュー調査)を通して明らかにしている。その結果、グローバルSCMに取り組んている企業はすべて多かれ少なかれ一定程度の成果をあげているものの、それは一直線に向上するものでもなく、また必ずしも短期間で表れるものでもないことが分かりつつある。グローバルSCMを成功させるための条件にはいくつかあるが、経営者のリーダーシップ、流通業者との提携(精度の高い需要予測)、納入業者との提携(柔軟な調達体制)、受注生産に対応できる効率的な生産体制などがとりわけ重要な成功条件である。グローバルSCMに取り組み一定の成果をあげている企業は、まずこの4条件を満たしている。「延期・投機理論」的に言えば、投機から延期ヘシフトするSCMは、変化する需要にすばやくかつ的確に対応する必要がある。しかし、その成果が出るまでに時間がかかり、経営者の強い信念とリーダーシップを不可欠とするのである。リードタイムの短縮や在庫削減、欠品率低下などの成果は、良好な企業では一時的にかなり向上する。しかしながら、リードタイムの短縮はロジスティクス・タイムの制約を受けるし、在庫も少なすぎると柔軟性を欠くようになる。欠品率はメーカーと流通業者との提携によっても変化する。国内のSCMでさえそれらは簡単に克服できる課題ではないが、グローバルSCMではますます困難てある。グローバルSCMの経営成果が紆余曲折するのもそのためである。今後は、このような課題についても研究し、成功条件をより深く探索したい。
著者
新名 阿津子
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.99-120, 2009-06-30

本稿は山梨県における経営コンサルティングサービスの供給者特性を,「中小企業向け公的経営指導・支援機関」と小規模ビジネスサービス業の連携から明らかにした.当該サービスは中小企業政策によって制度化され,無料で供給されてきた背景がある.その制度的実践を担う商工会議所や産業支援機構などの「公的経営指導・支援機関」は,交通の利便性が確保された地点に立地し,地域経済に精通した人材が山梨県内に立地する中小企業を対象に,経営相談から問題解決まで一連のサービスを供給しており,主導的役割を果たしてきた.また,コストの面かちみても,サービス料金が発生しないため,「需要者の総負担コスト」が低い形態であった.一方,その補完的役割を担う小規模ビジネスサービス業は,経営コンサルタント業に特化した事業所だけでなく,税理士業や司法書士業などを営む事業所も含まれる.これらの事業所を経営する専門家は山梨県出身の中高年男性で構成され,自宅にオフィスを開設し,キャリア形成時に得た知識,資格,人脈を用いて,中小企業のみならず「公的経営指導・支援機関」や地方自治体ともサービス取引を行っていた.そして,この「公的経営指導・支援機関」を中心としたサービス需給関係は,地域経済との関係が深く,マクロスケールでの山梨県,ミクロスケールでの国中地域,郡内地域という経済圏を中心に形成され,維持されてきたものであり,地域内で完結していた.
著者
江川 孝志 長谷川 義晃 神保 孝志 梅野 正義
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会秋季大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1994, no.2, pp.230-231, 1994-09-26

Si基板上にGaAs結晶を成長させることにより、Si基板としてのメリットとGaAsの電気的・光学的優位性を兼ね備えた光・電子集積回路や光インターコネクションなどの新しい機能デバイスが実現できる可能性がある。しかし、SiとGaAsでは約4%の格子不整合、約2. 5倍の熱膨張係数差が存在し、転位および熱歪みの発生、表面モホロジーのマクロスッテプの発生、成長層へのSiのオートドーピングなどの問題点があり、これらはSi基板上のデバイス特性の劣化につながる。本報告では、MOCVD法を用いたSi基板上GaAs系光・電子デバイスついて報告する。
著者
田中 修二
出版者
大分大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

彫刻家・新海竹太郎のご遺族のもとにのこる彼の自筆手帳・ノート等の資料類(「新海竹太郎旧蔵資料」)の整理・調査・研究を進めた。彼の作品を多く所蔵する山形市の山形美術館で作品の写真撮影をさせていただき、同時に作品に刻まれた彼のサインについて調査した。その一部は平成19年7月の屋外彫刻調査保存研究会で「彫刻表現のために-新海竹太郎(1868〜1927)の資料から〜近代彫刻家が制作した仏像をめぐって〜」のテーマで発表した。当初、これらの調査の結果を年度末までに資料集にまとめる予定であったが、十分な調査及び研究を反映させるため、半年から1年後の完成を目指している。これまで3年間継続した新海竹太郎についての調査・研究の一部は、平成19年9月に刊行された共著『日本近現代美術史事典』に反映されている。彫刻家・朝倉文夫については主に第二次世界大戦当時の彼の活動と、戦後大分市に設置された彼の屋外彫刻作品について、当時発行された新聞などを調査しつつ、研究を進めた。戦時中の彼の活動については、平成19年12月に刊行された共著『戦争と美術1937-1945』所収の拙論「戦争と彫刻1937-1945」で論じた。また彼の屋外彫刻作品について調査は、別に大分市からの受託事業として実施している大分市内の屋外彫刻のメンテナンス活動および保存・管理の研究に活かすことができた。このほか、明治期に工部美術学校で学んだ洋風彫刻家たちや朝倉文夫の教え子にあたる日名子実三、戦後の彫刻界で重要な役割を演じた岡本太郎などについて調査を進め、その一部は平成20年度に論文等で発表することとなった。
著者
小出 圭 加藤 良隆 清光 六郎 三浦 義夫 岡本 太郎 則行 敏生 岩本 俊之
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.12, pp.2828-2832, 1990-12-01
被引用文献数
2

原発性小腸癌は, 比較的まれな疾患であるが, われわれは最近2手術症例を経験したので報告する. 症例1は59歳男性, イレウス症状で発症, CA19-9 の高値および, 小腸造影で Tretz 靱帯より 10cm 肛側で全周性の狭窄を認めた. 腫瘍は同部の空腸にあり, 空腸および回腸の腸間膜付着部側に動脈血行性転移と思われる小病巣を多発性に認めた. 原発巣を含む空腸部分切除を行いえた. 術後1年5ヶ月で死亡した. 症例2は53歳女性, 約6ヶ月間心窩部痛, 悪心, 嘔気が続き, イレウス症状が出現, 小腸造影で空腸末端付近で閉塞を認めた. 腫瘍は Tretz 靱帯より 30cm 肛側の空腸にあり, napkin ring constriction を認め, 腹膜播種もあった. 空腸部分切除を行った. 術後1年11ヶ月で死亡した.