著者
河崎 善一郎 山本 賢司 王 道洪 高木 伸之 RCICHRAD Gum HUGH Christi
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本年度の成果は,当該研究遂行のために設計・試作した「VHF波帯広帯域干渉計」が,仕様通りの機能を有する観測機であることを実証できた点である。すなわち雷放電に伴って放射されるVHF/UHF波帯パルスを,高い時・空間分解能で標定することに成功し,俗に「枝分かれ」と呼ばれほぼ同時に並行して進展する放電の様相が可視化できた点であると結論できる。通常放電路の可視化は,VHF/UHF波帯で,狭帯干渉法,時間差法を用いて具体化されてきたが,いずれの方法においても,樹枝状に進展する放電についての可視化は不可能で,本研究申請者等が,世界で初めて実現したといっても過言ではない。その結果,これまで先行する雷撃の放電路と同じ経路を取るものと,数十年来信じられていた多重落雷の後続雷撃が,時として異なる経路をとり,その結果,後続雷撃の落雷地点が,先行する雷撃の落雷地点と,数キロメートルも離れることのあることが明らかとされている。さらに雷放電の開始点についての詳細な理解や,多重落雷を引き起こす雷雲内の電荷構造,雲内放電の進展様相等々,電波観測という利点を生かして,数多くの観測的事実を見出している。一方,超高感度ビデオカメラにより,Red Spritesの観測にも成功し,共同研究者であるニュージーランド・オタゴ大学D.Dowden教授の,低周波電磁波観測結果との照合により,Red Spriteが,雷雲頂部から電離層下部への「放電」現象であるとの結論を得ていることも特筆すべき研究成果となっている。またこのRed Spriteの観測により,その発生が,地域や緯度に依存せず,きわめて一般的な現象であることが明らかとなり,その後北陸や地中海等でその発生が相次いで見出されるきっかけとなっている。なお上記の成果は,全て米国地球物理学会誌及び電気電子学会誌に公表印刷されると共に,「VHF波帯広帯域干渉計」は,特許申請中(出願番号 特願平11-170666)となっている。
著者
石橋 明浩
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2000

時空特異点の波動によるプローブによって、特異点は波動に対して正則、非正則の二つに分類される。もしダイナミカルなブロセスで非正則な裸の特異点が現れる様な状況は、宇宙検閲官仮説に法って、排除されることが望ましい。このような非正則な裸の特異点発生の排除が、量子効果を考えることで達成され得ることを簡単なモデルにおいて、具体的に量子粒子の計算をして、示した。(A.Ishibashi and A.Hosoya)我々の4次元宇宙が、高次元の反-de Sitter時空の中にあるブレーンとして記述される、いわゆるブレイン宇宙シナリオが近年、盛んに議論されている。このシナリオでは、5次元方向に運動しているダイナミカルな4次元ブレーンの振舞いを議論することが本質的に重要である。このシナリオは、これまでのところ通常の4次元一般相対論に基づく重力理諭と整合している。我々は、この5次元方向の存在が顕著な役割を果たすブレイン宇宙の新しいモデルを提案した。その特徴は、まずRandall-Sundrum modelと違って、はじめに5次元バルク時空は反-de Sitter時空である必要はない。bulk時空で真空泡発生、その膨張とブレーンと衝突する事によって、ブレイン宇宙の有効宇宙項が消え、ブレーン上のンフレーションが終り、ビッグバン宇宙に転じることができる。同時にバルクが反-de Sitter時空になるため、通常の4次元一般相対論的重力が再現されることになる。特に、通常の4次元での真空泡に因るインフレーションの終了と違い、ホライズンスケールを越えて、同時に4次元宇宙が再加熱される。この様に、ブレーン宇宙とバルク内部の真空泡や、別のブレーンとの衝突を用いて我々の4次元ビッグバン宇宙モデルを再現しようとする幾つかのモデルが最近提案されてきた。上述した我々のモデルの紹介とともにその他のブレーンの衝突を用いた理論についてレポートした。(U.Gen, A.Ishibashi, T.Tanaka)また、ブレーンの様な物体が重力とどの様な相互作用をするのかについて、4次元の場合には、線形摂動の範疇でブレーンの揺らぎの自由度が、その自己重力を考慮すると、周りの重力波摂動の自由度で記述されるという、ブレーンのダイナミクスについての、これまでの素朴な予想とは非常に異なる結論がえられていた。我々は、この現象は、一般の次元で起こることを示すとともに、この一見この矛盾する様な現象は、ある状況下では解消することを示した。即ち、我々の提案した、弱い自己重力近似の状況かでは、自己重力を考慮したダイナミクスは、考慮しないテストブレーン近似による運動の解析によって得ることができることを示した。(A. Ishibashi, T. Tanaka)また、ブレーンの様に拡がりをもつ物体と、同じく拡がりをもつ相対論的物体であるブラックホールとの相互作用は非常に興味深い。我々は数値計算の方法を用いて、この二つの物体の共存する静的な時空解が存在することを示し、相互作用について議論した。(R.Morisawa et al.)
著者
北川 信一郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.147-150, 1994-03-31
被引用文献数
1
著者
櫛引 素夫 北原 啓司
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学大学院地域社会研究科年報 (ISSN:13498282)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.79-95, 2005

東北新幹線盛岡-八戸間は2002年12月に開業を迎え、新幹線が青森県に到達した。同区間の利用者は在来線当時に比べて51%増加し、首都圏から青森県内への入り込み客数も大幅に増えて、新幹線開業は経済面で地元に恩恵をもたらしている。しかし、新幹線の経済的効果が及ぶ地域や業種はまだ限定的である上、JR東日本から経営分離された並行在来線の沿線では、運賃の上昇などによって新幹線と並行在来線双方の利用者が伸び悩んだ。高校進学予定者の進路が狭められる不利益も発生している。さらに、新幹線建設費の一部を地元県が負担する建設スキームは、青森県財政の最大の圧迫要因となっている。これらの大きな原因として、整備新幹線構想自体が持つ問題点と、地元側の開業準備態勢の問題が考えられる。2010年度の東北新幹線全通・新青森開業、2015年度の北海道新幹線新函館開業を控え、新幹線によるメリットを最大化し、デメリットを最小化するための対策はますます重要になっている。地域振興のために効果的な対策を講じるには、沿線の鉄道利用実態や新幹線がもたらすとみられる利害を早急に調査するとともに、行政や経済界、NPOなどによる議論や調整の場を設けるべきである。
著者
馬越 徹
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

近年におけるアジアの大学は、従来の理論(欧米の大学への従属から脱することは不可能とする言説)では説明できない発展相を示している。特に、広義の東アジアの大学は、グローバル化に対応した積極的な戦略を展開してきており、いわゆる「研究大学」が確実に誕生しており、国際競争力を増している。本年度(初年度)は、韓国、マレーシアの事例研究を中心に作業を進めた。まず韓国においては、「頭脳韓国21世紀計画(通称:ブレインコリア21)」(第2期)事業を通じ、ソウル所在の有力大学(ソウル大学、高麗大学、延世大学等)及び韓国科学技術大学等が、国際的大学ランキング(例:タイムズ紙)の上位200校入りを果たしたことに見られるように、研究大学としてのレベルアップが図られている。国家的にも教育科学技術部が打ち出したワールドクラス大学育成事業(WCU)がスタートし、研究大学の強化が図られている。また、マレーシアの場合も、従来から有力大学であったマラヤ大学のほかに、2020年を目途とする国家戦略のもと、マレーシア科学大学(ペナン)、国民大学(セランゴール州)、プトラ大学(セランゴール州)が研究大学の仲間入りを果たし、マレーシア科学大学が国内ランキングの上で、マラヤ大学を追い抜いたことに見られるように、大学間競争が熾烈となっている。これらの大学は法人化されており、ますますのガバナンス改革と競争力強化のための戦略が進行中であることが判明した。同時に、大学の質保証機構としてMQA(マレーシア大学質保証機構)が本格的な活動を開始していることも注目される。
著者
守山 正樹 我妻 則明 齊場 三十四 福島 哲仁
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

研究の最終年度として、触知実験の手順をまとめ、実習書を試作した。同時に、触知などの保有感覚を生かして社会復帰をする過程を総合的に把握するため、中途失明を克服し、サラリーマンとして働いているS氏の事例研究を試みた。特に注目したのは、社会復帰後に失明前の仕事だけでなく、ボランティア活動までも行っているS氏のコミュニケーションである。2001年11月にA大学医学部の医学概論カリキュラムにおいてS氏が行った授業を分析し、S氏が周囲と人間関係を築く過程の解明を試みた。「S氏の授業の進め方は、他の講師の授業に比較して、どのような特徴を持つか」を、S氏の授業が終了した直後に、自記式の評価表により、学生に評価してもらった。評価表の作成に関しては、S氏が1998、99年度にも同様の授業をした際に、学生が述べた感想や、医学概論の全授業に臨席したスタッフの印象を参考に作成した。11個の評価項目のうち最初の三評価項目については、S氏の授業は他の授業に比較して有意な低値をとった。特に、「1、黒板を活用する」、および「2、スライドやOHPを活用する」の2項目はゼロであった。S氏の授業に際しては、S氏が職場復帰した様子を報じた新聞記事を資料として印刷し、学生に配布していたが、「3、プリントを活用する」においても、S氏の授業は4.2%と他の授業の82.1%に比較して、有意な低値とった。資料のプリントは講義後に読む参考資料と位置づけられ、プリント自体の解説をS氏が授業中には行わなかったことが、低値の原因と考えられた。4番目以降の項目については、その全てでS氏の授業は他の授業に比較して高値をとり、特に「5、全体の学生に語りかける」、「8、ひとり一人の学生に語りかける」、「9、ひとり一人の学生に問いかける」、「10、ひとり一人の学生の応答から話を発展させる」の4項目に関しては、差が有意であった。これらのことより、S氏の授業は、全体の学生に対しても、個別の学生に対しても語りかけ、問いかけることを、特徴とすることが明らかになった。
著者
青柳 利隆 高木 和久 白井 聡 大村 悦司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. LQE, レーザ・量子エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.527, pp.65-68, 2003-12-12

インターネットトラフィックに代表される通信需要の急増に答えるには,85℃を超える環境温度で10Gb/sアンクールド動作が可能なDFB-LDの提供が必須である.我々は,10Gb/s動作に必要な高い緩和振動周波数の得られる構造として,短共振器と高い結合係数を有するλ/4位相シフトDFB-LDを提案してきた.また,光結合損失が増大し易いパッシブアライメント実装に適した高スロープ効率のDFB-LD構造として非対称な結合係数を有する回折格子構造が適していることを実証した.更に,今回,高温動作に有利なAlGaInAs MQW DFB-LDを作製し,105℃でもOC-192のアイマスクをクリアでき,85℃での信頼性についても良好な結果が得られたので,上述のアクティビティと併せて報告する.
著者
井端 泰彦 井上 慎一 岡村 均 千原 和夫 本間 さと 貴邑 冨久子
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究は昨年に続き12名の班員による研究により,生体リズム発現及び同調機構,内分泌リズム,自律神経リズム,ヒトにおけるリズム発現,時間記憶などの研究課題について研究を行ってきた。平成9年度に多電極皿上における培養視交叉上核のリズム解析(井端),行動リズム位相変化と哺乳類時間遺伝子(岡村),視交叉上核VIP,AVPニューロンの自律神経反応と高血糖反応への影響(永井),視交叉上核におけるリズム同調機構に対するCREB,CREMの関与(井上)マウスにおける概日リズム突然変異体の分離(海老原),概日リズム光同調に対する心理的ストレスの影響(柴田)GnRHの概日リズム発現に対する視交叉上核AVP,VIPニューロンの影響(貴邑)視床下部成長ホルモン分泌制御機構(千原),条件恐怖刺激に対する視床下部オキシトシン,バソプレシン分泌反応に対する視交叉上核の関与(八木),ヒトにおける生物時間同調因子について(本間),高血圧における血圧の概日リズム機構異常とその治療(田村),睡眠覚醒障害に対する高照度光治療(佐々木)についてそれぞれ研究を行い昨年12月に班会議を開催し研究成果の発表と討論が行われた。特筆すべきことは昨年哺乳動物(ヒトにおいても)にショウジョウバエの時計遺伝子とホモローグである遺伝子が存在することが異なる研究施設から時を同じくして発表されたが(Science,Nature)本研究班の一人である岡村はこの研究グループのひとりであり,彼は続いてこの遺伝子のマウス視交叉上核での発現や光照射による影響や位相変化について"Cell"に発表したことである。即ち哺乳動物における概日リズム発現機序の手がかりが得られたことは大きな成果と考えられる。
著者
神田 清子 栃原 裕 飯田 苗恵
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

癌化学療法に伴う味覚識別能の変化に対応した食事ケアを検討することを目的として,次の3研究を施行した.第一に,癌化学療法を受けた入院中の患者45名を対象に治療前・中(4日目)・後(治療後10日目)の甘味・塩味・酸味・苦味についての識別能を試薬滴下法により検査し分析した.第二に,癌化学療法を施行する患者のための病院献立および食事への取り組みについて,全国の病院241施設を対象として郵送法により調査し,有効回答145施設の現況を分析した.第三に,癌化学療法を受けている患者,3事例の味覚識別能および食事摂取状況,食事嗜好を調査し,栄養バランスの評価を行った.結果は次のようにまとめられる.1.甘味・塩味・酸味・苦味のうち癌化学療法の影響を強く受けていたのは塩味であり,識別閾値は治療中敏感になり,治療後は有意に鈍感になっていた.2.癌化学療法を受ける患者のために特別な献立を有している施設は,48(33%)であり,献立の種類は,化学療法食,口内炎食,加熱食などであった.3.味覚識別能と食事の嗜好との関係では,甘味・塩味・酸味の味覚では,味が鈍感になった味覚を主体とする食品を補食する傾向にあった.また,薬剤投与中は,蛋白食品や煮物に対する嫌悪感が認められた.4.化学療法剤が投与されている期間および口内炎の合併は,蛋白質,脂質,炭水化物摂取量を極端に減少させ,熱量は基礎代謝量にさえ満ちていない.以上,癌化学療法を受け味覚に変化をきたした患者の食事ケアとしては,鈍感になった味を少し強化した味付けにする.化学療法剤投与中では,肉,卵,魚類の蛋白食品を少量使用する.治療後は,口内炎の合併がなければ塩味をやや濃くし,麺類など塩分の味付けを集中させる献立を提供する.加えて,食事ケアでは,病院食として化学療法食,口内炎食を確立する必要がある.そのためには栄養士と協力し,組織的な取り組みを行うことが不可欠である.
著者
大下 市子 山本 友江 足立 蓉子
出版者
山口女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

調理済み・半調理済み商品の利用について、1984,1990,1994年に、大阪・広島・山口で学生の家族の調理担当者にアンケート調査を実施した。その結果、調査した30品目を利用の変化から5つのグループに分類し、その特徴を明らかにした。第1のグループは、1984年から1994年の10年間で利用に変化のない食品で、持ち帰り食品のすし、冷凍食品のハンバーグ、インスタント食品のス-プの3種であった。第2のグループは、1984、1990、1994年と利用が増加している食品で、持ち帰り弁当、そう菜のだしまき卵、そう菜の酢の物・あえ物の3種であった。第3のグループは、年次で増減が認められるもので、9種中6種はそう菜であった。第4のグループは1984年から1990年にかけて増加が認められる食品で、8種中レトルト食品3種、持ち帰り2種で、その食品はハンバーグ、カレ-・フライドチキン、ス-プ・シチューと洋風の食品が多く見受けられた。第5のグループは、1990年から1994年にかけて利用が増加している食品で、7種中4種がそう菜、3種が冷凍で、今まで家庭で作るとされていたきんぴら、にしめ、焼き魚等和食の食品が多く見受けられた。現在、これらの食品の利用におよぼす生活概況・食生活概況等の因子について、また、食品のイメージと利用の関連についても解析中である。
著者
山本 祐介
出版者
東京歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

明らかなマイボーム腺機能不全(meibomian gland dysfunction ; MGD)を有さないが、ドライアイに関する愁訴を有する者19例38眼を対象とし、アイマスク型の温熱マッサージ器「アイマッサー」を1回5分、1日2回、2週間毎日使用させ、自覚症状、涙膜破壊時間などの眼機能の変化、一般所見などを観察した。対象は男性2名、女性17名。平均年齢33.4歳(±6.9歳)。短期間効果:5分間使用し、前後の変化(眼瞼角膜温度、涙液膜破壊時間(BUT)など)を評価した。治療的効果:1日5分使用を1日に2回行い、2週間続けた。結果 BUTは短期間調査、治療的調査ともに著明改善した(P<0.01)。多くの症状が2週間の治療後に改善をみせた。DR-1上、干渉像の変化はないものから、厚みのある油層が観察されるようになる症例まで様々であった。5分間の温熱療法後、上眼瞼温度は1.6℃、角膜温度は1.3℃上昇した(P<0.01)。視力、眼圧、シルマー値に変化は認められなかった。調査した多くの自覚症状項目(瞼の重い感じ(p<0.001)、眼が疲れる、眼が乾燥する、異物感、充血する、不快感がある(以上5項目、p<0.01)、瞬きが多い、めやにが出る、眼がほてった感じがある(以上3項目、p<0.05))で改善が認められた。総合評価でも良好な成績が得られた。また、本試験では併せて眼精疲労に関する愁訴についてもアンケート調査を行ったが、これについても調査した症状の項目の半数以上で改善が認められるなど、良好な成績が得られた。これらのことからアイマッサーはドライアイ及び眼精疲労に関連した愁訴に対して有効であると考えられた。現在、論文執筆中である
著者
布川 清彦 伊福 部達 井野 秀一 中邑 賢龍 井手口 範男 大河内 直之
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

全盲者の白杖利用を対象として対象認知のために必要となる感覚情報を特定し,感覚情報と機器の身体化との関係を明らかにするために,マグニチュード推定法を用いて,利き手で握った白杖を用いた場合のゴムの硬度と硬さ感覚の関係を実験的に明らかにした.これにより白杖ユーザの移動支援のために,1)触覚と聴覚というマルチモーダルな情報提供を行う道具としての白杖に関する基礎的知見と,2)それに対応する環境側のデザインを考察するための手がかりが得られた.
著者
畑 信吾
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

PCR法を用いてミヤコグサ菌根cDNAライブラリーから単離した3種類のリン酸トランスポーター遺伝子のうち、LjPT3が菌根特異的に発現していることをリアルタイムRT-PCRで確認した。次いで、in situ hybridizationによってLjPT3 mRNAは菌根菌の樹枝状体を含む皮層細胞に局在することを見いだした。また、高親和性リン酸輸送体を欠損した酵母PAM2変異株にLjPT3を発現させたところ、菌体内へのリン酸取り込みが上昇したので、LjPT3には確かにリン酸輸送能があることが証明された。さらにLjPT3の役割を明らかにするため、毛状根形質転換によってRNAiコンストラクトをミヤコグサに導入した。菌根菌を接種して低リン酸濃度で対照との生育を比較したところ、LjPT3ノックダウン形質転換体では樹枝状体付近にリン酸が蓄積して吸収がスムーズに行われない結果、対照よりも生育が有意に劣っていた。共生時における菌根菌の発達をさらに詳しく観察したところ、LjPT3ノックダウン形質転換体では対照に比べて樹枝状体の数が半分近くに減少する一方、idioblast細胞(褐色のフェノール化合物を液胞に蓄積し防御応答に関与すると思われる植物細胞)や菌糸侵入地点が2倍近くに増加していた。この結果から、植物は菌根菌由来のリン酸吸収量を監視しており、能率の悪い菌根菌を排除して新たな共生関係を模索することが示唆された。次にノックダウン形質転換体に菌根菌と根粒菌を同時に接種したところ、ネクローシスを起こして早死した根粒が多数観察された。これは、宿主植物が低能率だと認識した菌根菌への攻撃を行う際に、根粒菌もそのあおりを食ったために起こった現象だと思われた。
著者
池野 武行 徳山 孝子
出版者
一宮女子短期大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

平成10年度では、中国産、ブラジル産、ニュージーランド産プロポリスのうち特に芳香性の強いブラジル産プロポリス1種(スーパーグリーン)を特定した。このプロポリスの従来からの応用・利用は、健康食品のみであったので次の点を開発した。1. アルコール抽出プロポリス(SG)を濃度調節に各プレーとして分散させる。2. 日本人の好きな檜チップ材(8×8mm)に加工してプロポリス芳香をもつ檜チップを開発して、枕の中に入れてリラックスを期待する。3. プロポリス原塊をアルコール抽出した残り分にも芳香性はあるため、これを粒子化して錠剤タイプ製型に持続型芳香剤を開発した。4. 上記の残り分を粉末のまま不織布等に封入して持ちはこび可能な芳香剤とした。とした。