著者
綾野 絵理
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

外部温度変化に応答し、その構造・性質を変化させる機能性ポリマー、poly(N-isopropylacrylamide)(PNIPAAm)と生分解性ポリマーであるPLA(ポリ乳酸)を用いて、薬物放出制御機能・ステルス性を備えた新しいナノ粒子製剤を開発した。ナノ粒子を細胞へ取り込ませたところ、相転移温度を境に取り込みのON-OFFが確認されたことから、人体に影響の無い程度のわずかな温度変化で取り込みの制御が可能であることが示された。このナノ粒子の実用化により、少ない投与量による副作用の軽減、高いQOLを目指せる製剤となることが期待される。
著者
横山 泰 生方 俊
出版者
横浜国立大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

フォトクロミズムに伴って生成する二つの安定な状態が、可視部に吸収を持たないような熱不可逆ステルスフォトクロミックシステムを、短段階の合成経路で合成した。さらに、100%のジアステレオ選択性で光環化するジアリールエテン、非常に高い量子収率で光環化するビスチアゾリルインデノン誘導体の合成を行った。また、スピロオキサジンの光着色体から無色体への熱戻り反応を架橋ポリシロキサンにペンダントして行うと、溶液中同様の速い速度で戻ることを示した。
著者
大村 悦二 小川 健輔 熊谷 正芳 中野 誠 福満 憲志 森田 英毅
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
M&M材料力学カンファレンス
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.73-74, 2009-07-24

In stealth dicing (SD), a permeable nanosecond laser is focused inside a silicon wafer and scanned horizontally. A thermal shock wave is propagated every pulse toward the side to which the laser is irradiated, then a high dislocation density layer is formed inside a wafer after the thermal shock wave propagation. In our previous study, it was supposed that an internal crack whose initiation is a dislocation is propagated when the thermal shock wave by the next pulse overlaps with this layer partially. In this study, a two-dimensional thermal elasticity analysis based on the fracture mechanics was conducted. The internal crack propagation was analyzed by calculating the stress intensity factor at the crack tips and comparing with a threshold of that. As a result, validity of the previous hypothesis was suggested.
著者
黒田 俊一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

我々は B 型肝炎ウイルス(HBV)表面抗原 L タンパク質粒子が中空ナノ粒子であり、ヒト肝臓特異的に感染できる性質を有することを利用して、非ウイルス性DDS ナノキャリア「バイオナノカプセル(BNC)」を開発した。マウス静脈内に投与されたBNC は細網内皮系(RES)に富む臓器を避けつつ、標的組織まで効率よく到達することができた。本研究では、ナノ医薬品の表面をアルブミンでコートすることにより血中半減期を延長することができることから、我々は BNC 表層にある重合血清アルブミンレセプター(PAR)がマウス肝臓の RES を回避するのに有効であることを証明した。その結果は、BNC のみならず HBV が、本来 RES回避機構を有することを強く示唆していた。そこで、PAR ペプチドの表面修飾は、次世代ナノ医薬品の薬物動態および薬物力学の改善に貢献する新しい方法であるのかもしれない。
著者
春成 正和 富岡 康浩
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.107-113, 2004-12-15
被引用文献数
4

横浜市鶴見区の2階建て木造住宅において2003年7月に,外来種アメリカカンザイシロアリIncisitermes minor (Hagen)による被害を確認した.被害は天井裏の構造材に多く見られ,木材の表面を薄く残して内部が著しく食害されており,虫孔の下部には乾燥した砂粒状の糞が小山状に堆積していた.防除は,クロルフェナピル21.44%懸濁剤(ステルス[○!R]SC:ピロール系殺虫剤)水希釈液の被害部への加圧注入と木材表面への残留散布,さらに壁内部(間柱の間)等にはエンペントリン5%炭酸ガス製剤(ブンガノン[○!R]VA:ピレスロイド剤)を噴霧した.この被害家屋を中心に半径約300mの範囲を踏査した結果,43戸の家屋の外周部から本種の特徴的な糞塊が確認され,周辺地域に比較的高密度で生息していることが判明した.地域内の製材所の在庫木材の下にも虫糞が認められたことから,有翅虫による自然分散に加えて,物流に伴う広範囲な分布拡散の可能性も示唆された.
著者
佐藤 衆介 瀬尾 哲也 植竹 勝治 安部 直重 深沢 充 石崎 宏 藤田 正範 小迫 孝実 假屋 喜弘
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

1.行動変化を指標とした家畜福祉飼育総合評価法の開発:ドイツ語文化圏で使用されている家畜福祉総合評価法であるANI(Animal Needs Index)法を我が国の酪農及び肉牛生産に適用した。そして本法は、放飼・放牧期間に偏重していることを明らかにした。さらに、(1)改良ANI(Animal Needs Index)法並びに家畜福祉の基本原則である5フリーダムスに基づいた飼育基準を作成した。(2)評価法改良のため、身繕い行動並びに人との関係の指標である逃走距離に関する基本的知見を収集した。(3)福祉評価においては、動物の情動評価も重要であることから、ウマを使い、快・不快に関する行動的指標を明らかにし、それは飼育方式評価に有効であった。2.生理変化を指標とした家畜福祉飼育総合評価法の開発:ニワトリの脳内生理活性物質のうちエンドルフィン(ED)が快情動の変化を捉えるのに適していること、またEDがMu受容体を介してストレス反応の調節にも関与することを明らかとした。また、輸送時の福祉レベルを反映する免疫指標を検索し、末梢血のNK細胞数やConA刺激全血培養上清中のIFN-γ産生量が有用であった。3.家畜福祉輸送総合評価法の開発:RSPCAの福祉標準に基づき、我が国の家畜市場に来場する家畜運搬車輌を対象に、福祉性評価を実施した。また、国内における子牛の長距離輸送および肥育牛の屠畜場への輸送について、行動・生理・生産指標に基づくストレス評価を行った。RSPCAの標準に基づく評価では、国内の運搬車輌は概ね福祉的要件を満たしていたが、一部、積込路の傾斜角度とそこからの落下防止策に改善の余地のあることが明らかになった。国内輸送時のストレス評価では、明確な四季を有する我が国では、季節により牛に対して負荷されるストレス要因が異なることが確認され、季節に応じた福祉的配慮が必要であることが示された。
著者
藤井 讓治 杣田 善雄 中野 等 早島 大祐 福田 千鶴 堀 新 松澤 克行 横田 冬彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、織豊期の主要人物、織田信長・豊臣秀吉・豊臣秀次・徳川家康・足利義昭・柴田勝家・丹羽長秀・明智光秀・細川藤孝・前田利家・毛利輝元・上杉景勝・伊達政宗・石田三成・浅野長政・福島正則・片桐且元・近衛前久・近衛信尹・西笑承兌・大政所・浅井茶茶・孝蔵主について、その居所と行動を、当時の日記と厖大に残されている多くは無年紀の書状をもちいて確定したものである。その成果は、この期の政治史・文化史研究の基礎研究として大きな意味をもつ
著者
高山 進
出版者
三重大学
雑誌
三重大学生物資源学部紀要 (ISSN:09150471)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.73-96, 2004-03-15
被引用文献数
1

In this work, I define "environment-civilization history" as the history of culture or civilization systems focusing on the relation between nature and mankind. History must describe how each cultural or civilization area has developed their own patterns of population supporting, resources gaining, pollution discharging, technology, economy, ruling, views of nature amid the special climatic conditions and natural backgrounds (for example woods and wetlands etc.). I introduce some typical discussions about Japanese "environment-civilization history" from the historical demography and the history of agriculture. Furthermore I compare European (England and Continental countries) cases with Japanese ones, paying particular attention to the way of overcoming stagnation periods, which necessarily come at the end of a civilization cycle, the so-called Malthusian trap. I deliberately use the method of "anti-progressivism" and the analogically applied the rules gained from the experiments on a "microcosm (infinite ecosystem)", which was carried out by a biologist named Yasushi Kurihara, and I confirm the conclusion that Japan had overcome the Malthusian trap in the beginning of 18^<th> century in the preventive way. To the contrary, continental Europe had fallen miserably into in the compulsory way at the beginning of 17^<th> century. The case of England was more complicated. It looks like the same situation as Japan experienced, but if they hadn't had such an incidental resource as coal, they would not have experienced such a successful outcome.
著者
新城 敏男 中村 誠司 上江洲 均
出版者
名桜大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

本研究の目的は、琉球・沖縄の歴史、とりわけ王府支配下の村々、さらには家の問題、人々の生活実態の理解を深め、沖縄の地域の歴史像を豊かにすることにある。その基礎作業として、平成8〜9年度において、沖縄の市町村・字・家レベルで地方(じかた)史料の残存状況を調査し、沖縄における地方史料の所在目録データベースの基盤をつくることを課題とした。まず、市町村史や各種史料調査報告書などの刊行資料から情報を収集整理し、また各市町村史編集室や博物館等で収集されている未刊情報についても調査を行なった。第2は、可能な限り新しい地方史料を発掘し情報化した。第3に、史料の保存と公開利用に向けて、主な地方史料のマイクロ撮影を行なった。なお、既刊資料を中心にした地方史料のテキストファイル作成は今後の課題とした。「沖縄県地方史料目録データベース」作成は、「史料カード」(24項目)をもとに可能な限り原史料に当たって情報を整理した。入力作業は、本プロジェクトのシステムに合わせて「桐」ソフトで行なった。整理・入力した各地域の主な史料群は次のとおりである。八重山の石垣市については計1809点を整理した。内訳は、石垣市立八重山博物館史料124点、石垣市管内明治35年調整図面及び石垣町・大浜村時代調整図面史料438点、石垣豊川家文書642点、石垣喜舎場英勝家文書242点、石垣石垣家文書363点である。竹富町は、竹富島喜宝院蒐集館文書391点を入力した。宮古の平良市については、宮古本永家文書35点のほか、平良市史編集室収集史料約50点を入力した。多良間村は村史に収録された537点を入力した。久米島については、新たに久米島与世永家文書396点を整理・入力した。沖縄本島北部は、名護市について583点、本部町444点、今帰仁村250点、国頭村奥区350点のほか、大宜味村・東村・伊是名村について既刊情報を整理した。沖縄本島中部は、宜野湾市17点、北谷町15点、西原町9点を入力した。以上、「沖縄県地方史料目録データベース」として約5000点を整理・入力した。
著者
山里 純一
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

琉球王国時代、久米村の蔡家(具志家)における冠婚葬祭等に関する家のしきたりを、1736年に11世の蔡文溥がまとめたものが『四本堂家礼』である。原本は失われているが、各地に全文および一部が写本として残っている。本研究ではそうした『四本堂家礼』の写本間の文字の異同を確認しながら、研究テキスト化を図った。
著者
宇治原 徹 手老 龍吾
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究では生体膜/半導体アクティブデバイスの基本動作のデモンストレーションとして、生体膜に光照射をして任意の位置に相分離ドメインの形成を行った。特にレーザー光照射によるパターニングを行うために、より効率的にパターニングが生じるための蛍光脂質組成および拡散係数の制御を行った。さらに、タンパク質凝集の可能性を調べるために、Annexin Vを導入したところ、ドメインの位置とAnnexin Vの存在位置が一致し、ドメイン制御によるタンパク質凝集制御が可能であることを示唆した。
著者
高木 博史 大津 厳生
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

大腸菌にはシステイン(Cys)をO-acetylserine sulfhydrylase A(OASS-A)によりO-acetylserine(OAS)とSO_4^<2->から合成する経路1と、OASS-BによりOASとS_2O_3^<2->から生成するsulfocysteineを介して合成する経路2が存在する。これまでに経路1の制御機構の解除を中心としたCys生産菌の育種が続けられてきたが、経路1だけでは合成系の強化にも限界がある。一方、経路2はsulfocysteineからCysへの還元に関わる酵素やその制御機構が未解明であるが、経路1と比べ硫黄同化経路でのエネルギー消費が少ないため、その知見を発酵生産へ応用することで、Cys生産性の向上が期待できる。まず、経路1のOASS-A遺伝子(cysK)と経路2のOASS-B遺伝子(cysM)を破壊した二重欠損株を作製したところ、予想通りCys要求性を示したことから、大腸菌のCys生合成経路には1と2しか存在せず、二重欠損株ライブラリーを用いた解析が可能であることが判明した。現在、Keio collectionとcysK破壊株を接合させた二重欠損株ライブラリーを用いて、Cys要求を示す菌株を単離し、新規経路に関与する遺伝子の探索を行なっている。また、すでに高等動物において、glutaredoxin(Grx)がsulfocysteineをCysに還元する反応を触媒することが報告されている。そこで、大腸菌に存在する酸化還元酵素がsulfocysteineからCysへの還元活性を示すかどうかについて評価した。9種類の酸化還元酵素にHisタグを融合した組換え酵素を精製し、酵素活性を測定した。その結果、Grx1,2,3はsulfbcysteineのCysへの還元を触媒することが明らかになった。さらに、in vivoでの効果を確認するために、これら酸化還元酵素をそれぞれ過剰発現させたCys生産菌を構築し、S_2O_3^<2->を硫黄源としたCys生産実験を行った。その結果、Grx1及びGrxと相同性の高い還元酵素NrdHの過剰発現株では、Cys生産量が有意に増加(20-40%)しており、これらの還元酵素の過剰発現がCys発酵生産に有効であることが示された。
著者
栗本 譲 野田 宏治 松本 幸正 高橋 政稔
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

この論文は、自動車交通流と駐車場野総合解析システムである。両シミュレーションモデルとも車両の挙動は、各車両の移動が明確に確認できるミクロシミュレーションモデルを用いた。モデルのシステムモジュールは長さLmとし、その先端に信号機を設置した単路を考えた。道路網および駐車場区画は、システムモジュールを直列、並列に組み合わせて任意の道路網や駐車場区画を構築することが出来る。なお、システムモジュールの連結方法はブロック接続表により接続し、車両の流出人はOD表より乱数処理をすることで決定した。また、信号機は、信号機が設置されている場合はその管制方法に従い、信号機がない場合は、常時青信号とした。シミュレーションは、任意の時間間隔で処理できるが、特に指定しないと車両の挙動を考慮して0.2scc間隔とした。なお、各車両の挙動は前車と自車の速度および車頭間隔により自車の速度を決定する追従理論に従い走行させた。車両の挙動として、自由走行、追従走行、加速走行、減速走行、停止、強制停止および強制減速走行の7種類に分けた。作成したシミュネーションモデルを用いて、平成6年に名古屋市・岡崎市および豊橋市の駐車場5カ所で実測を行い、ついて平成5年に名古屋市中区で実施した占用車線実測結果をそれぞれ入力として計算したところ、出力情報として交通量、速度、駐車待ち時間および車頭間隔等の値が実測値に比べて最大・最小値とも5%以内で良好な結果が得られた。また、シミュレーションモデルの一例として、駐車場では豊橋市の駐車場について、交通流では一方向2車線と一方向1車線道路が交差点で交差し、2車線道路側には右折専用車線を持つ道路が連続して5個ある道路を考え、これら道路の交通量、信号機間隔および信号現示との関係を求めることが出来た。
著者
緒方 甫 田島 文博
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

障害者スポーツは、脊髄損傷対麻痺者(脊損者)の精神・身体的能力の強化などを助け、身体障害者の社会参加、社会復帰につながる。一方、脊損者では易感染性が指摘され、一般に免疫力低下も危惧されている。免疫系の中で、Natural killer(NK)細胞は免疫能の一つの指標として広く、その活性は運動の影響を受けやすい。そこで、脊損者において車いすスポーツが免疫系に与える影響の一端を調査する目的で、過酷な運動である車いすフルマラソン(フル)と比較的適度な運動であるハーフマラソン(ハーフ)におけるNK細胞活性を測定した。被験者は大分国際車いすマラソン大会フル部門参加の男性脊損者9名とハーフ部門参加の男性脊損7名、コントロールとして競技に参加しない脊損7名とした。フル・ハーフ競技者は競技前日、終了直後、翌目に血液を採取し、コントロール群も同一のプロトコールで採血を施した。フル競技者のNK細胞数(310±130/μl)およびNK細胞活性(42.6±3.0%)は、それぞれ133±61/μlと38.2±3.2%へ競技直後低下し(P<0.05)、翌日には前値に回復した。血中アドレナリン、コルチゾール濃度は競技直後に増加し(P<0.05)、翌日には前値に戻った。一方、ハーフ競技者では、NK細胞数は競技直後も翌日も変化を認めず、NK細胞活性が45.5±7.5%から56.1±5.1%へ上昇(P<0.01)し、翌朝も上昇が保たれた。血中アドレナリン濃度はレース直後上昇し(P<0.05)、翌朝には前値に回復した。コルチゾールは変化しなかった。コントロール群ではいずれの項目も変化を認めなかった。NK細胞活性がフルでは低下しハーフでは上昇する結果は、運動負荷量の違いによるものであると考えられる。機序としては、コルチゾール濃度がフルのみで上昇したため、これがNK細胞活性低下に寄与したと推察される。本研究の結果から、ハーフでは特に格段の配慮は必要ないようであるが、フル競技者はゴール後も少なくとも翌日までは感染に留意することが推奨される。以上のように、本研究は障害者スポーツおける免疫動向を実用的な側面で予想を上回る成果をあげることができた。
著者
小松 誠和
出版者
久留米大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は花粉症のアレルゲンに対する生体の免疫応答を解析し、病態の予後予測可能な診断系を確立するとともに、ペプチドによる減感作療法への応用可能性について検討することを目的とした。平成18年度より引き続きSBP, Cry j1およびCry j2に対するIgG, IgE,IgM,IgAについて患者を追加しその血液を用いて抗体を検討した。その結果、患者の症状の度合いに伴って抗体比のパターンが得られることが確認された。同様にCry j1およびCry j2に由来する少なくとも84種類のペプチドを用いた抗体測定において、5種類のペプチドについて健常者(非花粉症患者)と花粉症患者との間に統計学的有意差を認めた。花粉症患者及び健常者(非花粉症患者)より末梢血を採血し、そのPBMCを分離し上記ペプチドの存在下で一定期間培養を行い、その培地中に産生されるサイトカインについて検討したが、変化は認められなかった。また、抗原+アジュバントにより一定期間ラットを免疫したが抗原特異的IgE抗体の産生を認めず、ペプチド投与における変化は陰性を示した。上記結果より、SBP,Cry j1およびCry j2、並びに健常者(非花粉症患者)を花粉症患者に抗体価の統計学的有意差を認めたペプチドに対する抗体を末梢血より測定することにより、花粉症の予後予測可能な診断系が確立できた。ペプチドによる減感作療法の可能性については、選択したペプチドでは低いと考えられた。
著者
平良 勉 金城 昇 Taira Tsutomu Kinjo Noboru
出版者
琉球大学教育学部
雑誌
琉球大学教育学部紀要 第一部・第二部 (ISSN:03865738)
巻号頁・発行日
no.48, pp.293-301, 1996-03

The purpose of the present study was to estimate exercise intensity and energy expenditure in marathon running.The subjects were seven male and six female students of physical education major. Heart rate were recorded by heart rate monitor. Exercise intensity and energy expenditure were estimated by HR-V^^・o2 method during marathon running. The blood lactate accumulation were analyzed to determine anaerobic threshold (OBLA:4mmol).The results were as follows:1) Mean maximum oxygen uptake of male was 43.9ml/kg・min and that of female was 48.0ml/kg・min.All subjects exceeded the desirable fitness level.2) Oxygen uptake in the race was corresponded to 73.6% of V^^・o2max for male and 67.7% of V^^・o2max for female. Heart rate was also corresponded to 77.4% of HRmax for male and 78.0% of HRmax for female.3) Heart rate and oxygen uptake during the race were within the OBLA level.4) Marathon performance was estimated to cost male subjects 3632.4kcal and female subject's 2759.0kcal.市民マラソンの運動強度とエネルギーの消費を検討するため、13名の被験者について実験室のall-out実験からHR-V^^・o2関係式を作成、マラソン走行中の心拍記録を代入して酸素摂取量を推定、消費エネルギーを算出した。all-out実験で同時に血中乳酸濃度を分析、OBLAを測定、マラソンの運動強度を推定した。結果は以下の通りである。1)最大酸素摂取量(相対値:ml/kg・min)は男子平均43.9ml/kg・minで一般日本人成人の"Average"、女子の平均は48.02ml/kg・minで"Very good"の判定であった。女子の日常の身体活動水準が部活動などで高くなったことが原因と思われた。2)レース中の心拍数は男子平均151.1beats/min,77% of V^^・o2max,女子の平均は155.2beats/min,76.0% of HRmaxであった。酸素摂取量については男子平均32.2ml/kg・min,67.7% of V^^・o2maxの成績であった。いずれも競技選手と比較すると低い強度であり、記録にこだわらず、制限時間内の完走を目指したためと考えられた。3)OBLAレベルでの心拍数は男子平均155.8beats/min,78.7% of HRmax、女子平均は166.4beats/min,83.5% of HRmaxであった。酸素摂取量については男子平均は36.0ml/kg・min,81.2% of V^^・o2max、女子平均は36.9ml/kg・min,76.0% of V^^・o2maxであった。走行中の心拍数、酸素摂取水準を越えず、無酸素性作業閾値以下であり、時間内完走のためには良好なペース水準であった。4)男子は平均3632.4kcalを消費、女子の平均は2759.0kcalであった。競技選手の消費エネルギーを比較すると高い傾向を示したが、これはレースにかかった時間が長いことが原因と考えられた。本報告の一部は日本民族衛生学会第23回沖縄地方会で発表した。
著者
草野 勝彦
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

知的障害児の体力発達は低い水準にとどまるのが一般的であるが、ある私立養護学校において、高等部3年生の生徒全員がフルマラソンを完走できる水準の体力を身につけている。本研はこの生徒たちの体力の水準を明らかにすること、この生徒たちがどのようなトレーニングを行ったのか、その内容を分析することである。トレーニングの内容は、週6日間、5kmのランニングである。ランニングは個人のペースで走り、仲間との競走も自由な状態となっていた。ランニング中の心拍数は平均150拍/分で、最後の1kmは165〜180拍/分という高水準の負荷となっていた。これに加えて週3回の体育を行っている。体育においては、柔軟性、筋力、平行性の運動が中心となっていた。運動負荷の面からみて特筆すべき強度をもったプログラムではなかったが、きついことや、くるしいことを強要するとパニックを起こして抵抗することが多い障害児に対して指導者の指導上の配慮は大きいものであった。年間にわたって市民、県民レベルで行われる競技会に出場し、次の大会への出場を動機づけにして、練習を行っていた。一般の人の中で上位に入ることが本人の社会参加意欲や自信につながるというサイクルが形成されていた。体力水準の診断テストの結果、筋力、持久力、瞬発力、平衡性、敏捷性、柔軟性の全ての項目において対象の養護学校は他の養護学校より有意に高い水準にあることが明らかとなった。特に、全身持久力においては、一般の高等学校生徒の平均値を上回る水準であった。
著者
南谷 和利 笠原 嘉介 ITOH Mamoru
出版者
順天堂大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

近年、高齢者のスポ-ツ愛好家が増加する中、マラソンのような激しいスポ-ツ活動に参加する高齢者が目立つようになってきた。しかしながら、同時にスポ-ツ中に突然死する事故も急増している。その原因として、循環器系の器質的障害が報告されているが、未だ解明されていない点が多い。また、習慣的にトレ-ニングを継続してきた者にも運動中の急死が起こることがある。本研究では、運動中における急死の発生機序を検討するための基礎的資料を得ることを目的として、市民マラソンに参加した経験をもつ高齢者マラソンランナ-を対象に、循環器系機能を中心とした体力測定、および血液生化学検査を実施した。平成2年度は、被験者14名(平均年齢61.2歳)を対象に安静時の心電図記録、体力測定、血液生化学検査などを実施し、被験者らのトレ-ニング状況を調査した。平成3年度では、被験者らのトレ-ニング状況などを引き続き調査し、被験者7名(平均年齢68.2歳)を対象にマラソンレ-ス前後の血液生化学検査所見の検討を行った。被験者らの体力レベルは個々に異なり、バラツキはみられたものの、一般の高齢者と比較した結果、一部を除き全体的に優れていたと思われる。心電図の記録では、数名の被験者に異常所見が認められたが、現状の運動継続には支障のないものと判断された。血液生化学検査所見においては、加齢や運動による影響と考えられる異常値が認められた。現在、変化の認められた血液生化学検査結果について運動の影響を検討している。本研究結果から、突然死に対する科学的対処法を導き出すことはできない。今後、本研究結果を基礎にして、さらに同様な知見を積み重ねていくとともに、高齢者が安全に運動を行うためのメディカルチェックを検討していく予定である。