著者
陳 明石 清水 忠男 佐藤 公信 一海 有里
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.13-18, 1999-07-31

調査対象となった岐阜県高山市の商店街路は, 私有地と公有地とを取り込み, 同じ舗装を施し, 一体感や広がり感を作り出している屋根付きの歩行者空間である。ここには, 平日, 週末を問わず, 店舗の営業時間に呼応して, 様々な仮設的要素が路上に置かれているのが観察された。それら仮設的要素の置かれ方は商店街の協定に基づいているため, 広い通行空間がほぼ確保され, 歩行者は歩きながら商品を楽しみ, 店内の様子をうかがうことが可能である。この点はアンケート調査においても肯定的に受けとめられていた。この空間は, 行政と商店側が双方の所有地を共同で計画, より幅広い歩行者空間としてデザインし作り上げた公私融合型歩行者空間ということができる。このようななりたちの歩行者空間は, 立場の異る様々な人々の多様な活動を支援し, コミュニケーションを促進する場となり, 商店街を活性化させる一つの有効なあり方を示している。
著者
荒川 泰彦 三浦 登 濱口 智尋 三浦 登 冷水 佐尋 難波 進 池上 徹彦 荒川 泰彦 森 伸也
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1999

本特定領域研究プロジェクトは、日英の優れた材料開発、特徴ある測定手段、理論グループの支援を総合的に融合して、ナノ構造デバイスに関する物理的基礎研究の飛躍的進展を図り、これを背景に次世代の光・電子デバイスの可能性を提示することを目的として、1999年から5年計画で日英の相互交流、共同研究を主眼として遂行された。わが国と英国のこの分野における第一線の研究者が重要な知見を挙げ、プロジェクトとしての成果を十分達成した。本年度は、5年間の研究の総括を行うために、ナノ物理およびナノエレクトロニクスに関する日英国際シンポジウムをわが国で開催することを活動の主眼とした。総括班メンバーは、領域代表者および計画研究代表者からなる。なお、三浦、濱口は、プロジェクト実施期間中にそれぞれ東京大学と大阪大学を定年になったため、荒川および冷水に交代している。具体的には、これまでの研究活動の総括として、ナノ物理・ナノエレクトロニクスに関する日英国際シンポジウムを、【日英ナノテクノロジーシンポジウム-物理から情報素子およびバイオまで-】として、平成17年3月16日(水)に東京虎ノ門パストラルで開催した。この会議では、英国のこの分野における主要メンバーを招聘するとともに、わが国の第一線の研究者である特定領域メンバーが中心となりプログラムを構成した。講演者は、L.Eaves教授(University of Nottingham)、安藤恒也教授(東京工業大学)、D.A.Williams博士(Hitachi Cambridge Laboratory)、M.Skolnick教授(University of Sheffield)、荒川泰彦教授(東京大学)、J.M.Chamberlain教授(University of Durham)、原田慶恵室長(東京都臨床医学総合研究所)であった。また若手研究者によるポスター発表も行われた。有意義な情報交換を行うとともに、日英研究協力の将来の発展に向けて討論が行われた。
著者
角 知憲 外井 哲志 大枝 良直 梶田 佳孝 松永 千晶 小林 敏樹
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

九州地方の中小都市を対象に、高齢化と人口減少がもたらす都市の閑散化・低密度化と高齢者の日常的な交通の実態を調査した。さらに、将来の年齢構成に基づいて交通需要を予測し、それを支える交通システムと都市の改造の方向性を検討した。その結果、軽便な軌道交通システムと進歩した情報システムを用いた効率的な公共交通網とそれに沿って住宅やショッピングセンターなどを適切に再配置する必要と、そのために都市の土地利用を誘導し規制する方策が求められることが判明した。
著者
杉森 裕樹 大神 英一 小田嶋 剛 丹波 泰子 高安 令子
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

米国のREALM、TOFHLA 等に加え、国立国語研究所「病院の言葉を分かりやすくする提案」を参照して、日本語版ヘルスリテラシー評価ツールを開発した。この評価ツールを用いた疫学調査では、医療用語認知度(ヘルスリテラシー)と、主観的健康度を含む健康関連QOL との間に有意な関連性が認められた。わが国でもヘルスリテラシー向上が、保健医療分野における国民のエンパワーメントに繋がる可能性が示唆された。
著者
横田 貴之
出版者
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
雑誌
アジア・アフリカ地域研究 = Asian and African area studies (ISSN:13462466)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.438-453, 2007-03

This article aims to examine the goal of the political activities of the Egyptian Muslim Brotherhood under President Mubārak's 'democratization,' by analyzing the Reform Initiative of the Muslim Brotherhood (Mubādara al-Murshid al-'Āmm li-l-Ikhwān al- Muslimīn hawla al-Mabādi' al-'Āmma li-l-I.slāh fī Mi.sr) published in March 2004, under the leadership of the General Guide Muhammad Mahdī 'Ākif. After the severe attack by Nasser regime in the 1950s-60s, the Brotherhood succeeded in reestablishing itself as the major Islamic movement in Egypt in the 1970s. Although the Brotherhood revived as a de facto political force, the government never lifted its illegal status for fear that it might rise as a new political competitor. As a result, its socio-political power has been limited. The Reform Initiative, which I will analyze in this article, aims to reform Egypt comprehensively and serves as the framework of the Brotherhood's activities. The goal of the Brotherhood's current political activities is to realize the ideas of the Reform Initiative, which demonstrates its attempt to overcome the organizational constraints stemming from its illegal status. Whether the Brotherhood will be legalized or not is one of the most important issues in the Egypt now, and will infl uence the future of Egyptian politics.
著者
舟橋 啓臣 今井 常夫 神部 福司 妹尾 久雄
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

クッシング症候群は、コルチゾルの過剰産生を認める症候群であり、高血圧、耐糖能異常、中心性肥満、満月様顔貌、免疫不全などの重篤な臨床症状を呈する。本邦におけるクッシング症候群の原因の多くは、コルチゾル産生副腎皮質腺腫(CPA=cortisol producing adenoma)であるがその発症機序は明らかにされていない。本研究では、CPA組織において特異的に発現増強あるいは減弱している遺伝子群をRDA(Representational Difference Analysis)を用いて同定し、その機能を明らかにすることによりCPAの発症機序を解明することを目的とした。CPAとそれに隣接する正常副腎から抽出したRNAを用いRDAを行い、CPAに特異的に発現しているcDNA群をクローニングした。その結果、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST-A1)及びDiminuto遺伝子が同定された。これらのmRNAの発現は、CPAに強く認められ、隣接正常副腎では殆ど発現が認めらなかった。副腎由来の細胞株H295Rを用い、GST-A1が副腎細胞の増殖に重要であることをこの酵素の特異的な阻害剤であるエタクリン酸を用いて明らかにした。一方、Diminuto遺伝子は、コレステロール産生に関わる酵素をコードすることが報告され、我々は、この発現が副腎皮質刺激ホルモンにより増加することをラットを用いた研究より初めて明らかにした。この結果は、Diminuto遺伝子産物による副腎におけるコレステロール産生がコルチゾル産生に重要であること示唆した。
著者
小島 杏子
出版者
日本女子医学研究会
雑誌
女子医学研究
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.42-43, 1951-02-25

日本女子医学研究会第6回総会演説抄録
著者
田中 則雄
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

後期読本の成立期に制作された、実録を典拠とする上方出来の作品群に見られる方法が、その後の読本制作の基礎となっている。実録には、各々の話を連結していく独自の方法があるが、読本においては、特に長編構成を統括するための仕組みが考慮され、人物の内面と連動させて必然性を示しながら話を繋いでいくという様式が考案され継承されたことを解明した。
著者
鈴木 淳史 国場 敦夫 中西 知樹 アンドレアス クリュンパー フランク ゲーマン
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

有限温度における一次元量子系の相関関数に関する定量的評価のため、量子転送行列の方法と完全WKB法を組み合わせる事により、近似によらない新しい定量的方法を確立することができた。この具体的な応用としてスピン1/2の量子磁性鎖に適用することにより相関関数および量子的もつれの磁場、温度依存性等に関する多様な振る舞いを発見した。
著者
戸谷 健朗 林 秀樹 渡辺 敏行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OME, 有機エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.59, pp.29-34, 2008-05-22

光を吸収することなく偏光を分離する偏光板を実現するために,複屈折ファイバーとマリックス樹脂で囲んだポリマーコンポジットの系を利用した.繊維の複屈折および樹脂の屈折率調整は比較的容易であり,これらの条件を整えることで偏光の拡散・反射を制御し、偏光分離機能を発現させることができた.偏光分離特性はコンポジットである繊維の複屈折と断面形状に依存して変化することがわかった.この特性はシミュレーション計算による理論および,実際に作製した素子による測定の両方で確かめられた.断面が三角形の繊維を用いてフィルムを作製した場合,偏光分離特性が向上し,さらに複屈折の大きな材料を選ぶことで偏光度は97%以上に達することが予測された.
著者
柿井 一男 ANUSHREE Malik
出版者
宇都宮大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

通気撹拌混合下で自然発生的に生ずる微生物凝集体(フロック)を有機性排水処理に積極的に利用する手法が活性汚泥法である。この水処理法の運転においては、混合培養系である微生物群が相互に沈降性・圧密性に優れたフロックを形成することが必要最低条件である。そこで、この凝集機構を明らかにする目的で、下水活性汚泥から無作為に分離した細菌株を用い、主に二者混合系におけるヘテロ凝集挙動を前年度に引き続いて調査した。これにより、以下のような結果を得た。分離した52株について、二者混合系におけるヘテロ凝集を調査したところ、16S rRNA遺伝子のホモロジー解析からAcinetobacter johnsoniiと同定されたS35株が、その他の複数の分離菌株と良好なヘテロ凝集体を形成することを明らかとした。このAcinetobacter johnsonii S35株の凝集のパートナーは、16S rRNAの遺伝子解析から、Microbacterium、Oligotropha、Xanthomonasの3種類の細菌種に分類されることを示した。また、凝集のメカニズムについて、タンパク質分解酵素、キレート試薬であるエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、過ヨウ素酸などを用い、菌体処理を行って調べたところ、凝集メカニズムはいずれも同様ではなく、菌種の組み合わせによって異なることが明らかとなった。その詳細は継続して実験中である。これらの実験で明らかとした結果は次頁の4つの国際的な学術論文誌に受理され、すでに公開している。さらに最後に、Acinetobacter属細菌の16S rRNAに相補的な約20塩基からなるオリゴヌクレオチドを合成し、これを赤色の蛍光試薬であるCy3で標識し、蛍光in situハイブリダイゼーション法を用いて、下水処理場の流入水や汚泥フロック中におけるAcinetobacter属細菌の存在を調査した。用いた2箇所の下水処環場のサンプルにおいて、いずれの場合もAcinetobacter属細菌の存在が確認された。現在は、現場のサンプルにおける凝集のパートナーを同法を用いて調査中である。
著者
保井 亜弓 神谷 佳男
出版者
金沢美術工芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

1645年に初めての本格的な凹版画の技法書を出版したアブラアム・ボスは、ジャック・カロの革新的な技法の後継者と看做されている。版画技法は刷られた作品から検討されるのが常であるが、本研究では、デジタル・マイクロスコープによる原版調査と技法書に書かれた防蝕被膜(グランド)の再現実験により、できる限りもの自体に即したアプローチを行い、版画技法の新たな側面に光を当てることを試みた。その結果、ボスおよびカロの制作の工程や技法をより明らかに示すことができた。