著者
阪本 久美子
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

シェイクスピアの道化が、400年以上の時を経て、日本および英国においてどのように演じられているか、現代の舞台でどのように再生されているかを検証した。職業道化という役を演じて観客を笑わせるという役作りもあれば、せりふに身体的コメディを追加して、観客からの反応を得ようとするアプローチもある。日本における問題は、結局のところ、翻訳という人工的な言語にあり、イギリス同様、道化を舞台上成功させることが難しくなっている。
著者
磯 直樹
出版者
SHAKAIGAKU KENKYUKAI
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.37-53,200, 2008

In this paper I will first introduce Bourdieu's idea of field, a network, or configuration, of objective relations between positions. Then I will show how it integrates theory and empirical research. In the history of Sociology, the relationship between theory and empirical research has been a grand theme, and Bourdieu was committed to integrating the two throughout his career. I will also examine the work of Blumer, an important predecessor to Bourdieu. While both his "sensitizing concept" and his "definitive concept" have limits, Bourdieu's "open concepts" which include habitus, capital and field have more possibilities and significances than Blumer's. The field is a social sphere which has a limit around itself and each has its own rules within. For Bourdieu, the field is considered together with habitus and capital, and also as a part of his theory of practice. The concept of field enables us to analyze social phenomena for which we have lacked a theoretical framework. We can also use the concept of field to relate and integrate differentempirical research. One example can be found in the study of social difference. Bourdieu's sociology makes sense in combination with the works of other sociologists because it owes so much to them. We should ask the question "Bourdieu and what else?" rather than think in terms of a dichotomy such as "Bourdieu or not." This will lead to a productive discussion.
著者
廣田 薫 董 芳艶 畠山 豊
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、提案している階層的多構造計算モデル(HIMS)に基づいた物流最適計算システムを構築している。構築システムでは、配送サービスに対する消費者の多様な要求を満足しつつ、配送側の利益を最大化し、さらにリアルタイムに変動する配送環境にも柔軟に対応することが特徴である。成果として、17 件の原著論文と16 件の国際会議論文(いくつかの基調講演を含む)を発表している。石油物流業界への産業応用の見通しも得られており、今後はコンビニエンス業界など他業種も含めた幅広い実用化に向けて更なる応用を進める。
著者
水谷 令子 久保 さつき 松本 亜希子 成田 美代
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.192-197, 1998-08-20
参考文献数
11

元来すしは魚や肉の貯蔵法の一つで, 魚と飯から作られ, 現在のすしとは違って酢を使用しないで発酵させる。あゆずしは, 三重県では, 宮川(伊勢市)と北山川(紀和町)の流域に伝承されている。あゆずしを調製するのは冬季で, 塩漬けしたアユと冷ました飯を合わせて, 木の桶にきつく詰め, 重石をして30〜40日間熟成させる。通常は正月のご馳走として, 家庭内で消費され, 市販されてはいない。1996年11月下旬に伊勢市大倉町で本漬けされたあゆずしについて, 水分, pH, 塩分, カルシウム量および各種有機酸の量を調べた。結果は次のようである。1) すしあゆ(あゆずしの魚部分)のpHは, 38日間熟成した場合は5.10, 65日では4.10で, 魚と飯のpH差はほとんどなかった。2) 塩漬けしたあゆの食塩濃度(23.2%)は, 5回水洗いすると8.7%まで下がり, これを飯と共に熟成させている間に2.1%まで下がった。3) 塩付けあゆの骨のカルシウム量は55.5mg/g, 38日間熟成したものは25.0mg/g, 65日では16.8mg/gであった。頭部のカルシウム量は65日間熟成すると著しく減少した。4) すしあゆ中の有機酸量は乳酸, 酢酸, コハク酸の順に多かった。これらの酸は, いずれも熟成中に徐々に増加した。すしあゆの乳酸量は65日間の熟成で約26倍に増加した。有機酸量は魚の方が飯より多かった。5) すし桶の上層部に漬けてあったすしは, 桶の中央部に漬けたものより熟成が速かった。また一旦逆押ししたすしを保存すると, その間に熟成は進行し, 食味に変化が生じた。
著者
原田 利宣
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

A)曲線(面),面構造に関する研究今日,ゲームやアニメ作品等で存在する2次元キャラクターを3次元CGや立体造形(フィギュアと呼ぶ)する傾向にある.人の顔を立体造形する技術の需要は増加傾向にあるが,その造形様式は漠然と存在している.そこで本研究では人の顔を表した造形物の中より日本人形,フィギュアおよびリカちゃん人形に着目し,これらを事例として取り上げ,3次元モデルと2次元画像の輪郭線の関係性を調査と事例に基づくキャラクターデザイン支援システムの作成を目的とした.まず,人形の顔の造形にはどのような相違があり,またどのように人の顔を抽象化しているかを明らかにした.次に,日本人形と浮世絵,フィギュアと2次元アニメキャラクターの顔の輪郭線の関係性を調査した.さらに,得られた人形の特徴を用いて,ある任意の人の顔の特徴を付加した人形の顔の断面線を出力するデザイン支援システムを作成した.B)システムの推論部に関する研究自動車の印象に対して,その設計において最も重要である最適なコンフィギュレーション項目を抽出する逆問題を解くことは,従来からいくつかの研究において行われてきた.このような感性に関する問題を扱うためには非線形問題を解く必要がある.しかし,非線形問題を扱うことができるラフ集合を用いた研究例は少ない.そこで,本研究ではこの逆問題を解くための手法としてラフ集合を適用した.また,本研究ではラフ集合を使用することにより非線形最適解の特徴の明確化と,実験計画法による線形最適解と非線形最適解の比較を目的とした.具体的には,C.I.値の高い決定ルール条件部と実験計画法による主効果の値の高い属性値を比較した.さらに,両方の解の特徴を考察し,それぞれの特徴を明らかにすることができた.最後に,両方の最適解の視覚化によりデザイン支援を行うシステムを開発した.
著者
田畑 仁 佐伯 洋昌
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

物性“ゆらぎ"の1現象であるスピングラスは、隣り合うスピンを並行に揃えようとする強磁性相互作用と、反並行に揃えようとする反強磁性相互作用が混在した状態、つまり、“フラストレーション"と“ランダムネス"とが競合した際に生じる興味深いスピン状態である。前述したように、スピネル型結晶構造を持つフェライト化合物(FeO){Fe_2O_3}を薄膜化することにより、室温を超える高い温度でのクラスター(スピングラス)グラス材料の合成に成功した。ホップフィールドによればスピングラスを示すハミルトニアンが、脳シナプスにおける情報伝達モデルと同値とされており、スピングラスを利用した脳型素子が期待される。一方、双極子“ゆらぎ"についても、人工格子技術を用いたペロブスカイト型酸化物において、双極子グラスとも言うべきリラクサー材料を対象として、双極子ゆらぎを人工的に制御することに成功している。さらにスピン秩序と双極子秩序を併せ持つ物質(マルチフェロ材料)を、ガーネット型フェライトにおいて実現し、これをトンネルバリアとして、スピングラスと強磁性金属によりサンドイッチしたスピンTMR素子は、スピンフィルタ機能を有すると共に、外場により強誘電性による双安定ポテンシャルおよび、強磁性によるゼーマン項を利用する事で多値論理回路への適応が可能となると思われる。このように、スピンおよび双極子の協調現象および“ゆらぎ"機能を利用する事で、新しい光エレクトロニクスが期待される。
著者
内川 隆一 手越 達也
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

これまでの研究からNippostrongylus barisiliensis成虫由来分泌排泄(Nb-ES)抗原中には多くの生理活性分子が存在することが示されている。我々の見出したNb-ES抗原中に存在するラットT細胞に対するIFN-γ産生抑制活性もそのひとつであり、本研究ではその活性機構を解析することを目的として実施された。本研究では、まずこのNb-ES抗原が他種動物のT細胞に対してもIFN-γ産生の抑制活性を持つかどうかを検討し、ES抗原およびその部分精製分画はマウスT細胞に対してもIFN-γ産生抑制活性を示すことが確認された。。次にブタ回虫(As)抗原を用いて他種線虫由来抗原中にも同様の抑制活性が認められるかどうかを検討した。その結果、As体腔液中には明らかなIFN-γ産生抑制活性は認められなかったが、As-ES抗原のNb-ES抗原と同じ精製分画にラットおよびマウスT細胞に対するIFN-γ産生抑制活性が認められた。これら結果は、宿主T細胞に対する線虫由来抗原によるIFN-γ産生抑制が幅広く線虫と宿主間に存在する現象である可能性を示している。そこで、ES抗原中に含まれる活性分子の特定を進め、段階的イオン強度勾配による陰イオン交換クロマトグラフィーおよび自作の抗ES抗原ポリクローナルウサギIgG抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーなどの組み合わせにより、ES抗原に比してほぼ20倍の比活性を持つ分画の精製に至った。その結果、活性分子は推定分子量が50kD〜100kDであること、活性は56℃30分の熱処理に対して抵抗性であるが、95℃30分の熱処理により部分的に失活すること、過ヨウ素酸処理により完全に失活することを明らかとした。
著者
篠原 和大
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

日本列島中部地域の農耕の形成について、特に本格的灌漑水田農耕成立以前の実態を明らかにする目的で調査・研究を行った。特に、静岡市手越向山遺跡の調査では、弥生時代中期前半に遡る可能性の高い畠状遺構を検出した。このような成果を含めた分析から、本格的農耕導入以前に、小規模集団がある程度選択的に各種の農耕形態を受容したことが考えられるようになった。また、静岡清水平野の事例の分析などから具体的にどのように農耕が形成されたかをモデル化することができた。
著者
梶原 健佑
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

表現の自由との緊張関係を孕むにもかかわらず、これまで十分に考究されてこなかった「名誉感情侵害」不法行為に焦点を当て、アメリカ不法行為法のIntentional Infliction of Emotional Distressとの比較から、「感情」という主観的法益の保護と表現の自由保障との調整法理を検討した。他のTortious Speechと同様に、表現の対象者と表現のテーマの両面からのアプローチが効果的と考えられる。また、調整にさいしては、結論を準則のかたちで得ることが望ましい。
著者
中村 僖良 山田 顕 小田川 裕之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、高結合KNbO_3圧電結晶について、ECR酸素ビームとPLD(パルスレーザデポジション)を組み合わせた独自の方法により、高品質な単結晶膜をエピタキシャル成長させることを目指している。本年度の成果概要を以下に示す。1.Nd:YAGレーザ4倍波を用いるPLDにECR酸素ビームを組み合わせた膜成長法を採用して(110)MgOおよびSrTiO_3基板上に膜成長を行い、擬立方晶(001)配向のKNbO_3膜の成長に成功した。2.ECR酸素ビームを導入した場合と単なる酸素ガスを導入した場合について実験を行い、ECR酸素ビームが膜成長に有効であることを明らかにし、酸素圧力、ECRパワー、基板温度などの最適条件を求めた。また、膜の組成比をEDSにより調べた結果、ターゲット組成比K:Nbが1:1よりも2:1の場合の方がK/Nb【approximately equal】1.0の良い膜が得られることがわかった。3.X線ロッキングカーブ測定を行い、半値幅FWHMの膜厚依存性を明らかにした。4.ポールフィギュア測定により、膜がエピ成長していることを検証し、基板との面内方位関係を決定した。5.X線回折用高温アタッチメントを用いてKNbO_3結晶と基板の格子定数の温度による変化を調べるとともに、成長時および冷却する際の相転移点通過時における基板との格子定数の関係で決まる面方位との関係について考察した。6.参考のため、格子定数がほぼ同じBaTiO_3強誘電薄膜を同じ方法で作成・評価して比較検討した。7.膜の導電率を測定し、10^6Ωcmと比較的高いことがわかった。またD-Eヒステリシス曲線を測定し、強誘電性を確認した。8.薄膜の圧電性の評価を行い、超高周波厚み縦振動の電気機械結合係数k_tは約27%であることがわかった。9.相転移点付近でポーリングすることにより2種類の90°ドメインからなる有極性マルチドメインを形成し、その圧電特性などを調べて圧電性がエンハンスされることを明らかにした。
著者
中村 仁彦 今川 洋尚 野地 朱真 岡田 昌史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究の成果は以下の4点でまとめられる.・複数のヒューマンフィギュアなど大規模な構造可変リンク系に適用可能な高速順動力学計算法を開発した.この計算法を用いるとN個のリンクからなる系の動力学シミュレーションに必要な計算量がO(N)となり,さらにO(N)個のプロセスで並列計算を行うことにより計算時間をO(logN)に短縮することができる.これは現在提案されている最も高速な順動力学計算法と同じ計算複雑性であるのに加え,構造可変リンク系に適用可能であるという特徴を持つ.これにより,接触を含む複雑な運動を実時間の数倍程度の時間でシミュレートすることができる.・逆運動学計算を用いて,数個のリンクの位置を指定するだけで全身のポーズを決定することのできる計算法を開発し,CGアニメーション生成に応用した.従来のCGアプリケーションと比べて容易に自然なアニメーションを生成することができ,作業効率が大幅に向上することが示された.・上記動力学計算法と逆運動学計算のインタフェースを応用して,力学的整合性を満たすヒューマンフィギュアの運動生成を行う方法を開発した.これにより,簡単なインタフェースで力学的なバランスなどを考慮した運動を自動的に生成できるようになった.・力学計算を用いたゲームなどのアプリケーションに必要なインタフェースを考案した.力学シミュレーションを用いることにより,サーカス,アクロバットなどモーションキャプチャの難しい運動も扱えることを実証した.
著者
奥田 太一 松田 巌 柿崎 明人 松田 巌 柿崎 明人
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

スピンを分離して電子状態を測定するスピン分解光電子分光法は従来のスピン分析法が非常に非効率であったため,測定に長時間かかるにも関わらずエネルギー、角度分解能を落として測定せざるを得なかった。そのためこれを用いた物質の磁性研究は必ずしも十分行えていなかった。本研究では新しく高効率のスピン分析器を開発し、その検出効率は従来の100倍に向上し、エネルギー角度分解能を格段に上げたスピン・角度分解光電子分光測定が可能となった。
著者
白水 始
出版者
中京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2006

講義は今日でも様々な教育機関で使われるが,その内容保持や理解に関する研究は少ない.本研究では,(1)初学者の講義理解の実態解明,(2)支援方法の開発と評価,(3)他機関への転用実験,(4)わかりやすい講義の原則同定を行った.結果,(1)講義内容は1年後には5%弱しか再生されないが,(2)内容を学習者が説明しあう協調学習活動や(3)講義を振り返るビデオシステム,(4)よく構造化された講義という総合的な支援で飛躍的に学習の質が向上した.