著者
松尾 剛
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、子どもが話し合い・学び合う授業を実現するための談話ルールの共有を図る熟練教師の実践知を明らかにすることである。平成19年度の調査から、授業の流れの中で児童が実際にルールを運用した際、話し合いの過程と結びつけてルールを明確化、意味づけていくという熟練教師の実践の特徴が明らかになった。本年度は、教育心理学、教育学、社会言語学などの諸領域における関連研究をレビューし、その中に上記の知見を位置づけ、本研究の理論的枠組みを精緻化した。授業における談話ルールの共有過程を捉えるため、「明示的過程」(教師が望ましい談話ルールを言語化して説明)と、「潜在的過程」(実際の話し合いの体験を通じて児童が談話ルールを学び取る)という二つの過程を整理し、各過程の詳細と、機能、その限界性について論じた。その上で、これらの二つの過程の両方を通じて共有化を図る事の重要性について論じた。また、平成19年度の調査において重要性が示唆された、授業の内外の文脈との関連について、上記のレビューで示された枠組みに基づきながら、詳細な検討を行った。小学校低学年の学級における、朝の会と国語の授業における相互作用過程を分析し、以下の知見を得た。まず、教員は朝の会の場を利用して、子どもたちが共通に体験していることを言語化し、共有する。その上で、教師はその体験を枠祖みとしながら授業中の話し合いの体験について意味づけを行う事で、子どもたちが授業において特定の談話ルールを運用する事の意味を実感できる状況作りを行っていた。これまでも理論的には授業内外のつながりの重要性は指摘されてきたが、今回、そのことを実証的に示したという点で、重要な研究の知見であると言える。上記のレビュー、調査はそれぞれ新たに論文にまとめ、教育心理学研究、心理学評論などの学会誌に投稿している(4月1日現在、審査中)。
著者
三瓶 まり 村田 勝敬
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

3歳児および小学生における睡眠時間と生活習慣の関連とともに睡眠時間と自律神経機能との関連を調査した。その結果、3歳児においては夜間睡眠と昼寝を合計した総睡眠時間630分未満の児童において交感神経機能および副交感神経機能の低下が認められた。生活習慣と保護者の生活習慣との関係をみると、保護者の帰宅時間が遅い児童に睡眠時間の短縮が認められた。保護者の意識や生活習慣を見直すことが必要と考えられ、生徒児童の健康を考えるときには、睡眠時間の確保が重要であることが示唆された。
著者
石井 薫
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1 地方自治体におけるISO環境監査の導入について、全国各地で現地調査を行うとともに、学校版ISOなどの取組み状況にっいて現状を明らかにした。2 大学、高校、小中学校、幼稚園・保育園、それに専門学校や各種教育機関などにおけるISO14001の認証取得に関する調査を行い、「地方自治体と学校における環境監査の導入(1)(2)(3)」というテーマで論文をまとめた。3 学校に環境監査を導入する一つの事例として、環境ISOだけでなく学生が自己宣言・自己認証できるような環境監査の新しい方法として、家庭版&社会版スーパーISO,学生版スーパーISOなどを、大学の講義で試みた。学生の実践レポートの一部をまとめて、『「環境マネジメント入門」講義の現場報告』『「環境監査論」講義の現場報告』『「環境マネジメント」講義の現場報告』というタイトルの新書3冊を出版した。4 大学や高校におけるISO14001の認証取得の実状を取り入れて、改訂版『環境監査(第三版)』を発行するとともに、コミュニティ版スーパーISOの実践レポートを取り入れた『公共監査論』を発行した。5 環境分野や教育分野などとのネットワークを構築して、具体的提言をするために、地球マネジメント学会の全国大会で、2004年度「"私"の意識マネジメントースーパーISOの進化」、2005年度「癒しと教育と秘学の統合」、2006年度「生きる意味を問う」という統一テーマの下で、スーパーISOによる大学の教育実践について報告した。
著者
菱山 剛秀
出版者
国土交通省国土地理院
雑誌
国土地理院時報 (ISSN:04309081)
巻号頁・発行日
no.108, pp.65-75, 2005
被引用文献数
2
著者
Shinji Toyota Takamasa Shimizu Tetsuo Iwanaga Kan Wakamatsu
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
Chemistry Letters (ISSN:03667022)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.312-314, 2011-03-05 (Released:2011-02-19)
参考文献数
35
被引用文献数
24

The title compounds having two 9-triptycyl rotors, two acetylene shafts, and an acene base were synthesized by coupling reactions as molecular spur gears. Their molecular structures were compared to evaluate the meshing of rotor moieties and the orientation of the two gear shafts. The mechanism of rotation of three-toothed rotors was explored by NMR spectroscopy and DFT calculations in terms of gear rotation and slippage.
著者
Tsuneomi Kawasaki Hitomi Ozawa Masateru Ito Kenso Soai
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
Chemistry Letters (ISSN:03667022)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.320-321, 2011-03-05 (Released:2011-02-19)
参考文献数
40
被引用文献数
38

Enantioselective synthesis has been achieved using chiral compounds arising from mono- and dideuterated methyl groups as chiral inducers in conjunction with asymmetric autocatalysis. The absolute configuration of the product was controlled by the small degree of chirality generated by the difference between the partially deuterated methyl groups (CDH2 and CD2H) and the non-deuterated methyl group (CH3) in N-benzoyl-α-methylalanine.
著者
佐藤 恭道
出版者
鶴見大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

フェノールやユージノールなど歯科治療に用いる薬剤が、嗅覚から患者に不安や精神的苦痛を与える可能性が考えられる。そこで一般歯科医院を訪れる患者に、匂いに対するアンケート調査を行なったところ、80%以上の患者が歯科特有の匂いを感じると答えており、その匂いは、約50%が待合室で感じていた。またそれらの匂いによって嘔吐反射を誘発したり、歯痛を思い出させるなどの精神的苦痛を惹起する患者もいた。しかし矯正歯科ではこの様な匂いは感じないとする患者がほとんでであった。一般歯科と矯正歯科における句いの違いは主に根管治療をするか否かによるものと考えられた。そこで一般歯科医院における匂い強度を測定した。玄関の外を基準値として、玄関内、受付、待合室、治療室(入口、中央部、治療椅子)を測定場所にした。匂い強度は歯科医院によって様々であったが、全ての施設で治療椅子での匂い強度が最高値を示し、玄関内が低値を示していた。多くの患者が歯科特有の匂いを感じるとしていた待合室は比較的低値を示していた。全体的には治療椅子に近くなるほど匂い強度は増加傾向にあった。匂い強度が比較的低値を示した待合室で、約50%の患者が歯科特有の匂いを感じていたのは、これから受けようとする治療に対する恐怖や緊張が嗅覚を敏感にしたためではないかと考えられた。また、アンケートから患者は歯科治療をリラックスして行える匂いとして、無臭もしくはアロマテラピーの応用を期待していた。しかし匂いの好き嫌いは個人の経験や成育環境による影響が大きい。そのため誰もが快く感じる香りの摸索には更なる検索が必要であると考えられた。
著者
田中 とも子
出版者
日本歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

齲蝕と歯肉炎は罹患率の高い生活習慣病である。そこで、我々はこれらの歯科疾患を教材とした「健康知識と健康行動の実践力が身につく生活習慣病予防ための教育プログラム開発」を目的として、健康教育を行ってきた。結果は2年間のPBL型健康教育が口腔状況の改善のみならず、自己管理スキルの向上に効果的であった。したがって、本研究で開発したプログラムは小児期のヘルスプロモーションに有効であると考えられる。
著者
外岡 豊 三浦 秀一
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
学術講演梗概集. D-1, 環境工学I, 室内音響・音環境, 騒音・固体音, 環境振動, 光・色, 給排水・水環境, 都市設備・環境管理, 環境心理生理, 環境設計, 電磁環境 (ISSN:13414496)
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.1021-1022, 2002-06-30

COP 3から5年、今秋ヨハネスブルグで開催されるリオ+10での京都議定書発効をめざして日本政府も6月初旬の批准が予定されている。その削減目標90年比6%削減を達成するための国内対策実行計画として2002年2月19日日本政府は4年ぶりに改訂された地球温暖化対策推進大綱 (新大綱) を発表した1)。2010年の温室効果ガス排出量は従来対策だけでは90年比7%増大と予測、追加対策による13%削減が必要とした。国内CO2排出量は90年比±ゼロ%とし、産業-7%、民生-2%、交通+17%、代替フロン+2%とした。民生部門の90年比-2%は1999年比-13%に相当する。筆者等はかねてから日本の民生部門温室効果ガス排出実態解析と対策検討2)〜6) を行って来たが本報告では住宅でのCO2排出削減対策に対象を絞って削減可能性を評価する。
著者
大沢 義明 鈴木 敦夫
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ リサーチ学会論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.368-395, 1987-09
被引用文献数
2

本研究では、最近研究されてきた計算幾何学の一分野である地理的最適化問題の手法を用い、グループ利用施設の最適配置問題について、都市施設計画という見地から考察を加える。グループ利用施設とは、会議室、結婚式場、テニスコートのように、"複数地点の利用者から成るグループ"と"施設"とが対応するような施設で、その配置問題は、"一地点の利用者"と"施設"との対応に注目した既存の配置問題とは、根本的に異なる。本研究では、まず第一に、グループの移動費用が距離の二乗和に比例する場合、グループ利用施設の最適配置問題が地理的最適化問題に帰着することを示す。第二に、グループ利用施設の最適配置の特徴とその頑健性について論じる。具体的には、単位正方形上での一様な人口分布と、現実の都市地域での人口分布(宇都宮市、日立市、諏訪地区)とを考え、地理的最適化問題の解法プログラムを用いて、最適配置などの計算を行う。そして、数値結果から、グループ利用施設の最適配置では、施設が中央に集中するという事実を例証する。さらに、"アクセシビリティ"、"施設容量"という二つの観点から、グループ利用施設の最適配置のグループ構成人数に関する頑健性について考察を加える。
著者
中村 紀子 鈴木 康江 田中 政枝 五十嵐 直美 加藤 満利子 金丸 智子 加藤 貞春 中西 祥子 杉野 信博
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.388-388, 1987-05-25

東京女子医科大学学会第269回例会 昭和62年2月19日 東京女子医科大学中央校舎1階会議室
著者
談 麗玲 今井 範子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.841-854, 2003-10-15
被引用文献数
2

本研究では,世代同居家族を調査対象とし,親世代,子世代の生活スタイルと同居に対する意識を明らかにしようとした.結果を要約すると,以下のとおりである.(1)炊事,洗濯等の家事行為は,家族の協力で行う場合と,片方の世代に負担が偏る場合の2つの傾向がみられた.洗濯物については,成都では,下着などの洗濯物にプライバシーを感じるという生活意識の存在が明らかになった.(2)食事状況について,ほとんどの世代同居家族は,平日,休日ともに,毎日少なくとも1回程度は親世代と子世代が一緒に食事し,依然として親と共に食事することを重視していることが確認された.(3)8割の世代同居家族は,生活時間のずれが気にならないとしているが,生活時間が気になる2割の家族では,気になる時間帯は,「起床時間」「就寝時間」という生活習慣に関わる時間帯が多い.(4)月々の生活費は子世代のほうが負担している傾向がみられるが,住宅の購入費は,親世代が多く負担している傾向がみられる.経済面で多くの親世代は子世代に支援していることがわかる.(5)定年退職した大部分の親世代は,昼間に,子世代の手伝いをしている.生活の楽しみとして,女性のほうが「家事をする」者が多いのに対して,男性の方が個人趣味として「スポーツ」などをする者が多い.「女主内,男主外」という伝統的な性別分業意識はまだ根強く残っていることがうかがえる.(6)同居の動機については,親世代は,「養児防老」という伝統的観念から,「年を取ったから」ということを大きな動機としており,高齢期に子供との同居を当たり前のこととする親世代の意識がうかがえる.子世代の同居動機は多岐にわたるが,その中で「親の健康が心配なため,面倒をみなければならない」という義務意識からくるものが大きな動機になっている.(7)同居の長所として,「養児防老」「児孫繞膝」という伝統的観念から,子世代との関わりを同居の長所として高く評価している.子世代は,同居の親世代からの助けが得られる点のほか,「寂しくない」という精神面も多くあげ,親と同居することは「天倫之楽」とされ,家族を大事にするという伝統は継承されていることがうかがえる.同居の短所は,親世代,子世代ともに「性格が合わないといざこざが起きる(親)」「性格が合わないと日常会話が苦痛であり,ストレスになる(子)」というような精神的な面が大きい.(8)親世代,子世代とも,同居志向が多い.別居を志向する親世代,子世代とも「ごく近い距離に住みたい」という希望が多く,6割を占め,近居志向がみられた.(9)自分が病気になった場合,また,親が病気になった場合,7割の者が在宅介護を望んでいる.親族の介護をより支援するために,「家庭病床(家庭に医師や看護婦が派遣される)」などの在宅介護のサービスが,今後一層充実される必要がある.
著者
堤 明純
出版者
公益財団法人 パブリックヘルスリサーチセンター
雑誌
ストレス科学研究 (ISSN:13419986)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.14-18, 2010 (Released:2010-06-01)
参考文献数
39

Health disparities among occupational classes have been observed constantly since the Industrial Revolution. These disparities are widening in recent years. The importance of occupational stress has drawn close attention since it was pointed out that psychosocial characteristics of jobs could explain the health disparities across occupational classes. First, the uneven distribution of stressors among occupational classes may explain the uneven distribution of health problems. This is known as the 'mediation mechanism.' With this, workers in lower occupational classes are more exposed to occupational stress than those in upper occupational classes. Although quantitative/qualitative workloads are not always heavier in lower classes, the higher one's position is, the higher the reward and the availability of control, support and other resources. There is evidence that the statistical adjustment of workers' control over their jobs significantly reduces the relative risk of coronary heart diseases occurrence among workers in lower occupational classes as compared to those in higher occupational classes. Second, it has also been observed that the effect of occupational stress on health is greater in lower than higher occupational classes or, alternatively, that a significant effect on health from stress is found only in lower occupational classes. The effect explained by the interaction between low occupational class and occupational stress is known as the 'modification mechanism' or 'modification effect.' Regarding the interaction between occupational class/occupational stress and health problems, further studies are necessary among diverse work sites and a wider range of occupations. They should evaluate a more permanent effect with longer follow-up. Employing several-wave panel design would be fruitful because reciprocal causal relationships will be evaluated more precisely.
著者
岡本 直久 堤 盛人
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は休日交通を考慮した交通網計画の策定に資することを目標とし、休日交通の時空間分布特性について、経年的な道路センサス休日調査データの比較を行い、道路整備と分布の関係について定量的に考察した。また、将来的な自動車交通需要を検討するうえでは、不確実な要因の影響を無視することが出来ないため、燃料価格と交通量との ヨ係について、時系列データによるモデルを構築し、短期的・長期的な影響について整理した。
著者
橋本 英樹
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.113-119, 2010-06-17

社会格差による健康影響について,近年内外の関心が高まっている。本稿では,社会経済的健康決定要因を探る社会疫学という領域について,その概念や歴史的背景について紹介する。また具体例として所得格差と健康の関係を取り扱った内外の研究を紹介しつつ,従来の疫学的研究手法が直面している課題について明らかにする。社会経済的健康決定要因は,学術的関心に留まらず,近年ヨーロッパを中心に政策的取り組みについても急速な運動が展開されている。世界保健機構に設けられた社会的健康決定要因に関する委員会の活動などを紹介する。健康の社会的不平等に取り組むには,縦割り行政の壁を越えた包括的政策と,科学的評価が両輪であることに言及する。
著者
馬場 基
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

木簡釈文へのタグ付きデータの作成を行った。タグ付きデータを『木簡画像データベース・木簡字典』で公開しているデータと組み合わせることで、木簡画像データ上での記載内容の位置の把握を行うためのシステム開発を行った。この情報を利用して、記載内容木簡上位置情報による分析実験を行い、手法をほぼ確立した。