著者
原野 悟
出版者
日本大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

初年度の調査に基づいて前年度に作成したホームページを公開した。同時にホームページの閲覧を促すアイキャッチャーとしてポスターを作成し学内に掲示した。ポスターの内容は直接的なものより、印象に訴えることを試みた。当初予定していた映像によるEnter-Edutamentの教材は構内放送設備の制限や予算の不足により中止の止むなきにいたった。ホームページ公開から6ヶ月のincubation timeを設けて、30名の学生を対象にfocus group interview法による質的研究を行った。この学生構成は男女、文系理系別で等しくした。その結果、ホームページを見たところ、成人麻疹に対する情報として設定したメッセージが理解され認識を変えたとする意見が多く、内容的にはほぼ妥当なものと考えられた。しかし、ホームページの存在はあまり知られておらず、ポスターを見て閲覧の動機となるという意見とイメージが先行して関心が惹起されないという意見に分かれた。このことより、インターネットを用いて健康コミュニケーションを実施する場合には、いかにホームページを見るように動機づけるかが大きな課題となることがわかった。その反面、インターネットを通じて提供される情報についてはあまり批判的ではなく受け入れられる可能性が高く、健康コミュニケーションで用いる有用性も示唆された。また、今回は受け取るメッセージを3つに限定してゴール設定をしたが、この限定が妥当なもので、情報量としての適切さが明らかとなった。本研究では開始時点から専門家によるプログラム開発としたが、より普及させるためには受け手である学生を計画時より参加させるSocial Learningの手法を用いたほうが適切であったことがわかり、今後の課題として残った。
著者
佐藤 英次 浅岡 康 出口 和広 伊原 一郎 箕浦 潔 藤原 小百合 宮田 昭雄 伊藤 康尚 居山 裕一 柴崎 正和 菊池 克浩 久保 真澄
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.34, no.30, pp.9-12, 2010-07-23

我々はポリマーネットワーク液晶(PNLC)を用いた60インチ型のシースルーディスプレイを開発した。このディスプレイは、TFTパネルと散乱-透過表示を組み合わせた世界初の大型シースルーディスプレイである。また、このシースルーディスプレイとプロジェクタの組み合わせによって実現したカラー表示システムは、他のディスプレイとは一味違うアイキャッチ効果を可能とする。これらのモノクロ表示およびカラー表示のディスプレイは、インフォーメーションディスプレイやデジタルサイネイジ、さらには窓の置き換えのような新しいディスプレイ応用商品への展開が見込まれる。
著者
大野 公一 YANG Xia
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

分子やクラスターの平衡構造(EQ)はポテンシャルエネルギー表面(PES)上のエネルギー極小点に相当し、化学反応の遷移状態(TS)はPES上の一次鞍点で近似できる。化学反応は、量子化学計算に基づくPES上でEQとTSを探索することによって理論的に解析または予測できる。しかし、PESは振動の自由度と同数の変数を持つ多次元関数であり、PES全体を考慮したグローバル反応経路探索は非常に難しい課題であった。そのような反応経路ネットワークの探索では、そのネットワーク自身を辿るのが最も効率が良いが、TSからEQへと反応経路を上ることのできる一般的な手法(超球面探索法)を開発し、自動的なグローバル反応経路探索を可能にした。本研究では、超球面探索法を以下の問題に応用した。(1)昨年度に引き続き、星間分子であるアセトアルデヒド、ビニルアルコール、および、エチレンオキサイドを含む組成であるC_2H_4OのPESに本手法を応用し、その反応経路ネットワークの全貌を解析した。さらに、CH_3ラジカルとHCOラジカルなどへの解離極限付近を、それらの電子状態を記述できる量子化学計算と本手法を併用して調べたところ、ローミング機構と呼ばれるラジカル対の再結合反応の遷移状態を初めて見出した。(2)キラリティーを持つ最も単純なアミノ酸分子であるアラニン分子について、そのD体からL体への熱変換反応経路を本手法によって系統的に探索し、4種類のD-L変換経路を見出した。さらに、競合する異性化過程および分解過程を系統的に調べた結果、4種類のD-L変換経路のうちの一つが、最も熱的に有利な過程であることを確認し、アラニン分子を気相中でレーザー光等により過熱した場合には、D-L変換が最も熱的に起こりやすいことを見出した。
著者
川口 大地
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

脊椎動物の大脳発生におけるニューロン産生期には、すべての未分化な神経系前駆細胞が一斉にニューロンに分化するのではなく、ある決まった割合で一部の神経系前駆細胞が選択されてニューロンに分化する。この選択メカニズムとしては非対称分裂が主に考えられてきた。しかし、本研究の前年度までの結果から、この選択にNotch-Delta経路による側方抑制機構が貢献していることがin vitro、in vivoにおけるDll1の過剰発現の実験により示唆されていた。本年度は、Dll1コンディショナルノックアウトマウス(Dll1cKOマウス)を用いた解析を中心に行った。Dll1のニューロン分化選択における必要性を検討した結果、Dll1を少数の神経系前駆細胞でのみKOするとDll1KO細胞は未分化性が維持されたが、殆どすべての神経系前駆細胞でDll1をKOした場合はニューロン分化が亢進する結果が得られた。さらに、Dll1をすべての神経系前駆細胞でKOしたマウス大脳皮質においてニューロン前駆細胞として知られるBasal前駆細胞が一過的に増加することがわかった。この結果は、ニューロン分化が亢進してBasal前駆細胞が増加したが、過剰なニューロン分化亢進により神経系前駆細胞が枯渇して最終的にはBasal前駆細胞の数が減少したことを示唆している。以上の結果は、神経系前駆細胞間におけるDll1の発現量の違いが分化運命選択に寄与している事を示唆しており、側方抑制機構が働いている事が支持された。これまでの結果からDll1の発現細胞はニューロン分化が促進することを示したが、Dll1の発現が細胞増殖や細胞死に与える影響についても検討した。Dll1を過剰発現した細胞が一定の培養期間でどの程度増えたのかを数えた結果、コントロールのDll1を過剰発現していない細胞との差はみられなかった。また、細胞死に関しても核の凝集からその数を調べたが、コントロールと差はみられなかった。従って、Dll1発現は神経系前駆細胞の細胞死や増殖には影響を与えずにニューロン分化を促進することが明らかとなった。
著者
玉井 武
出版者
小樽商科大学
雑誌
小樽商大人文研究 (ISSN:0482458X)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.45-67, 1960-07-10
著者
堀田 耕司
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

脊索動物の形態形成過程を細胞レベルで理解するために、本研究では、個体を構成する細胞数が少なくシンプルな体制をもつホヤを用いて個体まるごとの1細胞レベルイメージングを行った。ホヤ幼生ひのう部における新規末梢神経ネットワーク構造の3Dイメージングや尾芽胚の3Dコンピュータモデル化、および神経管閉鎖過程の3Dライブ(4D)イメージングを行い、ホヤ胚発生におけるさまざまな形態形成過程を細胞レベルで明らかにすることができた。
著者
横田 浩 中里 茂美 大黒 和夫 堤 義直
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.775-776, 1989-10-16
被引用文献数
1

最近の日本語ワードプロセッサ等で用いられているかな漢字変換技術は向上し、変換率も高くなり、操作性も良くなっている。操作性の向上については、全文まるごと変換方式によるところが大きいが、全文まるごと変換方式の問題点としては、機械が判断した文節が誤っている場合に正しく変換されず、オペレータが思い通りの文章に変換するためには、変換結果を正しい文節に区切り直さなければならない。この正しい文節に区切り直す機能が文節切り直し機能である。このため、最終変換率の向上をはかる上で文節切り直し機能は欠かすことの出来ない機能となっている。ただし、現行の文節切り直し機能ではいくつかの問題点がある。本報告では、これらの問題を取り上げ、その対策を述べ、より有効な文節切り直し学習機能について報告する。
著者
伊藤 秀三 山本 進一 中西 こずえ
出版者
長崎大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

龍良山の照葉樹林は海抜120mから山頂(海抜560m)に及び、面積は約100haである。海抜350m以下はスダジイ/イスノキ林、上方はアカガシ林である。調査項目は次の通り。1)スダジイ/イスノキ林に面積4haの永久方形区を設定し、胸高直径5cm以上の木本の生育位置、種別、胸高直径の測定、2)頂上に達する全長940m、幅10mのベルトトランセクトを設定し上記と同様の測定、3)低地から山頂まで、林冠木から林床までの林冠ギャップを除いた群落組成の調査、4)林冠ギャップ部位の群落組成の調査、5)林冠ギャップ部位のコケ植物の調査、6)ギャップ部位における樹木実生の生長の測定。下記の結果を得た。1)林冠ギャップは低地のスダジイ/イスノキ林に集中し、ギャップの大きさは5〜20mで、5m四方のメッシュ総数1600個のうちギャップは274個で森林面積の17.1%に達した。2)胸高直径分布では、二山型(スダジイ)、逆J型(イスノキ、サカキ、ヤブツバキ等)、正規型(ウラジロガシ)があり、全生存木では逆J型であった。3)低地〜山頂の植生傾度において、高木、低木、草本個体直群すべてにおいて海抜350ー400mで急激な組成の交替があり、種類密度は不変化、種多様度は低下した。4)ギャップ部位と非ギャップ部位の林床植生の比較により、次のギャップ指標植物(木本)が明らかとなった(出現頻度の高い順に)。イイギリ、アカメガシワ、サルナシ、カラスザンショウ、ハゼノキ、カジノキ、オオクマヤナギ。またギャップ部位で実生密度が高くなる照葉樹林要素はスダジイとカクレミノである。5)ギャップ指標のコケ植物の上位5種は、ホソバオキナゴケ、カタシロゴケ、トサヒラゴケ、エダウロコゴケモドキ、ツクシナギモドキ。6)ギャップ部位における実生の直径と高さの相対生長関係では、生長係数が高い上位5種は次の通り。ウラギンツルグミ、オガタマノキ、カラスザンションウ、カジノキ、クロキ。
著者
ヒルス レン
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.79-86, 2002-12

A key to the seven genera of the family Calymperaceae known to occur in Vanuatu is presented and an account given of the collections of Calymperaceae made in Vanuatu by Higuchi in 1996, and by Sugimura in 1997. Fifteen of the 32 taxa occurring in Vanuatu are noted, six of these are new records. A summary is presented of the taxa included in the checklist of Vanuatu mosses by Higuchi (1996) that have been affected by subsequent taxonomic revision.
著者
阪田 史郎 塩田 茂雄
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

外部電源供給型の固定ノードとバッテリー駆動で無線中継機能を有する移動ノードが混在するハイブリッドノード構成型アドホックネットワークに関し、混在構成の特徴を活かした高信頼化・省電力化・高寿命化技術を確立し、その有効性を定量的に示すことにより、センサネットワーク、ホームネットワーク、VANET(車車間/路車間通信)、無線LANメッシュネットワーク、DTN(Delay/Disruption Tolerant Network)など多様な各マルチホップ・アドホックネットワークの共通的な技術課題を横断的に解決した。
著者
鬼木 俊次 加賀爪 優 双 喜
出版者
独立行政法人国際農林水産業研究センター
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本年度は、前年度までに行ったモンゴル国および中国内モンゴルのデータの整理と計量分析を行いつつ、モンゴル国において災害(干ばつ・寒雪害)後の牧民の移住と過放牧の関係について調査を行った。本年度の調査は、モンゴル国ゴビスンベル県、トゥブ県南部、およびドルノゴビ県北部で行った。現地の牧民および行政機関での聞き取り調査の後、ランダムサンプリングで牧畜家計の調査を実施した。この地域の災害のよる被害は、1999年冬〜2000年春に最も多く、その翌年にもかなり被害が出た。しかし、その後、多くの牧民は家畜を急速に増加させている。今年度の調査により、民主化以後のモンゴルには本来的に家畜を増加させる勢いがあることが分かった。消費を抑制して家畜を増加させる牧民もいるが、大多数はもともと消費が少なく、家畜ストックを増加させる強い性向を有している。一般に貧困世帯の場合、将来の所得よりも現在の所得を優先する割合(主観的割引率)が高く、将来の所得確保のために資産を増やすことが少ないと言われる。だが、モンゴルの場合は、家畜の自然増加率が高いため、ストック増加のインセンティブが強く、家畜の消費が抑制されるようである。自然災害の後は、草地の牧養力の限界に達するまで家畜が増加し続ける。また、牧民は財産として多くの馬を持つ傾向がある。馬は飼育のために必要な労働力が少なく労働生産性が高いが、価格が低いため土地生産性は低い。競馬用の馬以外は販売も消費も少なく、実際に必要な数以上の家畜を保有している。これは、モンゴル国では草地の利用がオープンで無料であるからであり、内モンゴルの場合は馬の頭数は最小限度に留まっている。モンゴルの家畜の増加インセンティブが高いということ、および労働生産性が高く土地生産性が低い家畜が過剰に放牧されやすいということは、従来の研究で見落とされてきた問題であり、今後、実証研究の積み重ねが望まれる。
著者
後藤 春美
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

国際連盟は、社会・人道分野でも多くの任務を負っており、本研究で取り上げた婦女子売買禁止問題もそのひとつであった。本研究では、イギリス公文書館、英国図書館、ロンドン大学政治経済学院図書館などが所蔵する資料を利用して、イギリス及び国際連盟がこの問題にどのように取り組んだのかを調査した。「国際連盟の対中技術協力とイギリス 1928-1935年」、「帝国の興亡と人の移動--国際連盟が見た中国のロシア人女性難民」といった論文を執筆し、国際連盟が東アジアにも非常に関心を持っており、この地域への積極的な介入を試みていたということを明らかにした。