著者
楳田 高士 石部 裕一 石部 裕一 楳田 高士
出版者
近畿大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

1.イヌの左下葉肺分離換気標本を用いて、血管拡張薬ニトログリセリン(TNG)、プロスタサイクリン(PGI_2)の低酸素性肺血管収縮反応(HPV)に及ぼす影響を検討した。その結果TNGは肺血管を非特異的に拡張し換気血流不均衡を増強し、一方PGI_2は用量依存性にHPVを抑制しいずれも低酸素血症の原因になることを明らかにした。2.より正確に肺血管ト-ヌスを評価するために、in vivoでイヌの左下葉肺血管の圧・流量曲線を検出可能な標本を考察し、その標本を用いて、吸入麻酔薬イソフルレンとハロセンのHPVへの作用を検討した。その結果両麻酔薬とも低酸素領域に直接吸入すると用量依存性にHPVを抑制するが、1ー2MACの臨床使用濃度では従来指摘されていたようなHPV抑制は見られないことを報告した。3.同じ標本を用いてプロスタグランジンE_1(PGE_1)のHPVへの作用を検討した結果、イヌの体血圧を30%低下させる量のPGE_1はHPVを抑制し、低酸素血症の原因になることを示した。4.ARDSなどの傷害肺においてHPV反応がどのように修飾されているかについて、同じ標本で検討した。イヌに微量のエンドトキシンを投与すると、HPVは完全に抑制され、この時プロスタサイクリンの代謝産物6ーketoーPGF_1αの減少を伴った。このHPV抑制はあらかじめシクロオキシゲナ-ゼ阻害薬イブプロフェンで前処置しておくと予防され、6ーketoーPGF_1αも減少しなかった。この結果からエンドトキシンによるHPV抑制には肺血管内皮細胞からプロスタサイクリンの遊離あるいは産生の増加が関与していることが明らかになった。
著者
森原 剛史 武田 雅俊 工藤 喬 田中 稔久
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

NSAID誘導体によるAβ42産生の抑制作用は認められなかった。背景遺伝子を混合させたAPPトランスジェニックマウスはAβ蓄積を修飾する遺伝子群の収集には大変有効であった。候補遺伝子アプローチで炎症関連遺伝子の関与を調べたが、有意な関係は認められなかった。高齢者の血中CRPと認知機能の変化の関係は本研究機関では認められなかった。
著者
加瀬 友喜 田吹 亮一 速水 格 武田 正倫 遠藤 一佳 千葉 聡
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1.海底洞窟特有のソビエツブ科巻貝の2新属4新種、クチキレエビスガイ科の1新属2新種、従来全く知られていない殻形態を示す1新属1新種(Pluviostillac palauensis)を発見、報告した。2.海底洞窟のシラタマアマガイ属巻貝の殻体を検討し,2新種を含む6種を識別し,コハクカノコガイ属と単系統群(コハクカノコガイ科)を構成することを明らかにした.また、それらの軟体の解剖学的研究を進め、殻体による結果を支持した。3.マーシャル島の化石種を検討し,この種はシラタマアマガイ属に近縁な新属であることを明らかにし,同類が中新世には既に海底洞窟のような環境に適応していたことを示した.4.海底洞窟のシラタマアマガイ属と河川に生息するコハクカノコガイ類の殻体および軟体の解剖学的研究を進めた。また、両者の環境を繋ぐanchialineやhyporheic環境から多くの未知のコハクカノコガイ類を発見し、それらを分類学的に検討し、2新属を認めた。5.コハクカノコガイ類を含むアマガイ上目の解剖と分子系統学的研究から、同目は複数回地上環境へ進出し、また、コハクカノコガイ類は海底洞窟などの隠生的な環境に適応した後、anchialineやhyporheic環境、さらに地上の河川に進出したことを明らかにした。6.海底洞窟及びanchialine環境の微小甲殻類のカラヌス目Ridgewayia属の1新種を見いだした。この種は北大西洋や地中海の種に近縁であることが強く示唆された.また、アミ目のHeteromysoides属とHeteromysis属の4新種、BochusaceaのThetispelecaris属の1新種を見いだした。Thetispelecaris属の新種は同属の2番目の記録であり、その由来は海底洞窟から深海に進化したことが示唆された。
著者
塩谷 雅人 西 憲敬 小川 利紘 長谷部 文雄 VOMEL Holger OLTMANS Samu
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究費にもとづき,1998,1999年度,東太平洋ガラパゴス諸島のサンクリストバルで3回,中央太平洋キリバスのクリスマス島で2回の観測キャンペーンをおこなった.さらに,1999年9月-10月には,船舶から赤道東太平洋域のオゾン観測をおこなった.これらのキャンペーンによって取得したデータは現在解析中であるが,これまでのところ以下のような知見が得られている.1.サンクリストバルと西太平洋のシンガポールにおけるゾンデデータを比較したところ,対流圏界面が北半球の冬に低圧・高高度・低温になるという特徴が両観測点で見られたが,海面水温と対応していると考えられていた圏界面高度の差は明瞭ではなかった.2.サンクリストバルにおける水蒸気観測データから,東部太平洋域でも3月の圏界面付近で水蒸気は飽和していることがわかった.また,9月の観測では水蒸気が未飽和であるプロファイルも得られたが,これは赤道ケルビン波の下方変位位相部に当たっていて乾燥したオゾンの豊富な成層圏大気が下降してきたのを観測していたことがわかった.3.サンクリストバルにおける対流圏オゾン分布は,3-4月には対流圏内でほぼ一定値(〜30ppb)をとるのに対して,9月には地表付近(20ppb)から6-7km付近まで増加(50ppb)したあと上部対流圏まではほぼ一定の値をとるという特徴が見られた.これは赤道波と関連した成層圏からのオゾンの洩れ出しが,特に9月には顕著に見られるためではないかと考えられる.4.船舶からのGPS/オゾンゾンデ観測より,地表〜高度5kmほどの領域で,しばしばオゾンの少ない湿った薄い大気層が2,3つ存在することが見出された.これはちょうど北風が卓越する高度領域とも対応しており,船の北側に位置するITCZとの関連が示唆される.また,同様の特徴は,サンクリストバルやクリスマス島でのオゾン観測データにも見ることができた.
著者
鈴木 環
出版者
独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究では、バルカン半島からトルコ、カフカス諸国にいたるまでの黒海周辺地域に残された、中世の東方キリスト教教会・修道院遺構を対象に、「建設技術の地域間交流の解明」、「ポスト社会主義時代の歴史遺産の保存と活用に向けた遺産の評価」という2つのテーマを並行して行う。前者は、ビザンツ文化圏の周縁世界として偏った建築史研究上の位置づけを「地域性」と「技術者交流」という観点から再考することを目的とする。後者は、社会主義時代における宗教遺産の興廃と劇的な周辺環境の変化を経て、今後保存と活用にむけた遺産の再評価を行うことを目的とする。本年度はルーマニア・文化省歴史遺産保存局(ブカレスト)、イオンミンク工科大学にて保存修復に関する資料収集を行い、スチャヴァ、イアシ、アルゲシュの周辺に残る中世教会・修道院遺産を対象にフィールドワークを行った。教会・修道院建設における技術者交流のなかで、ドーム架構にみられるカフカス建築の影響に着目し、その分類を行った。各部屋の用途、平面形式、および壁画のプログラムと用いられるドーム架構の形式との間に相互関連があることを確認し、カフカス建築からの影響とみられる「星型ドーム」の導入と発展過程を知ることができた。またイスラームの影響を受けた装飾の付加、および19世紀のフランス人修復家による増改築・保存修復に着目した事例研究を行った。修復記録、図面および古写真から修復前と現在の姿を対照し、修復の理念と技術に関する時代的特徴を把握した。創建当初の正教の遺産としての価値に対する、他宗教の様式との混在、近代のデザインの介入など、異なる遺産価値を併せ持つ遺産としての評価とが課題となる。
著者
戸井田 いづみ
出版者
東京芸術大学
雑誌
東京藝術大学音楽学部紀要 (ISSN:09148787)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.181-210, 1989

Cet expose est un extrait de ma these de doctorat, qui a ete presentee en mars 1989 a l'Universite des Arts de Tokyo. Il a pour but d'eclairer les relations qu'entretient Claude Debussy (1862-1918) avec les poetes decadents de son temps et l'esthetique "Fin de siecle", en les etudiant a travers les textes ou les sources d'inspiration de ses oeuvres inachevees et de ses projets non realises, dans la periode qui precede "Pelleas et Melisande". Ces relations n'apparaissant pas avec la meme evidence dans les oeuvres achevees, leur etude devrait permettre de reconsiderer l'arriere-plan historique et esthetique de la musique de Debussy et de mettre en valeur ce qu'elle comporte d'esprit "decadent". La notion "fin de siecle", sera interpretee dans le sens d'une esthetique "negative", marquee par le gout de la contradiction ou du dedoublement, et par une tendance au pessimisme ou au negativisme. C'est notamment dans 2 oeuvres inachevees et 7 projets non realises que s'exprime l'interet porte par Debussy a la poesie decadente et au mouvement occultiste de son temps. Le musicien a ete charme par la "Femme fatale", notion typiquement "fin de siecle", ainsi que par le fantastique d'Edgar Poe, et de Villiers de L'Isle Adam, representants de la "beaute grotesque" de l'epoque. "Rodrigue et Chimene", opera presque acheve, de peu anterieur a Pelleas, temoigne justement de ce que le langage musical de Debussy contient d'harmonies et de motifs "grotesques", caracterisant le ton "fin de siecle", maintes fois decelable dans la derniere et la plus importante oeuvre inachevee: "La chute de la Maison Usher", d'apres Edgar Poe. Ces elements ne sont pas absents non plus des oeuvres de toute l'epoque, y compris dans "Pelleas et Melisande": ils ont leur place dans ce que nous appelons provisoirement le "langage decadent". Il apparait que l'esthetisme "fin de siecle" s'integre dans le langage debussyste, elabore et developpe non seulement au cours de la jeunesse du compositeur mais aussi au debut du siecle nouveau. La base de notre etude a ete fournie par les collections des manuscrits originaux de Debussy a la Bibliotheque Nationale de Paris et a la Pierpont Morgan Library de New York.
著者
上園 一知 大矢 俊夫 片岡 朋子 片岡 裕 小原 啓義
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. HI,ヒューマンインタフェース研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.55-62, 1997-01-16
被引用文献数
2

コンピュータネットワークは国際的な発展を遂げたにも関わらず、コンピュータで同時に扱える文字種は制限されているのが現状である。真の国際化計算機環境を実現するためには、既存の文字コードを超えて全ての文字・言語を同時に混在使用可能であることが必須条件となる。特に出力に関しては、表示される文字図形と文字・文字コードの写像関係が常に言語に依存すると見なされ、更に横書き・縦書きといった文字列の表記方向が混在するために,全世界の文字・言語を全て網羅することは非常に複雑で、一般に不可能と考えられてきた。しかし、世界中の文字・文字コード・正書法を分析した結果、少数の関数で図形決定が可能であり、更にその配置手法が明らかとなった。この関数をハードコーデッドせずに実装することで、全世界の文字廟言語が混在したテキストを単一システムで表示可能となった。
著者
利行 榧美
出版者
奈良大学史学会
雑誌
奈良史学 (ISSN:02894874)
巻号頁・発行日
vol.24号, pp.119-144, 2006-12

はじめに国忌は前代の天皇の忌日に弔意を表し、忌口に、官で定められた寺院で追善供養の斎会を行うもので、国忌口は養老儀制令太陽麟条によって、廃朝・廃務が規定されていた。①養老儀制令太陽葛条凡太陽葛。有司預奏。皇帝不レ視レ事。百官各守本司・。不レ理レ務。過レ時乃罷。皇帝二等以上親。及外祖父母。右大臣以上。若散一位喪。皇帝不レ視レ事三日。国忌日。謂。先皇崩日。依別式・合廃務・者。三等親。百官三位以上喪。皇帝皆不レ視レ事一日。どの天皇の忌日を国忌として認定するかという点に関しては、国忌指定の記事がすべて残っているわけではない。大宝二年~延暦十年までの間で国忌指定の記事が残っているのは、天武・天智・草壁皇子・藤原宮子・光明子・施基皇子・紀橡姫の七人のみである。それは、中村一郎氏がいうように[国忌の記事がないのは先皇の崩口を国忌とするという令の制度があるので特別に記載しなかった」ためと考えられる。また令には、国忌口は先皇の崩口とあるので天皇以外の人については原則として国忌指定はされなかったと推測される。この国忌の成立に関して先ず重要な史料は二つである。②日本書紀持統二年二月十六日乙巳条詔日、自レ今以後、毎レ取国忌日・、要須レ斎也。③日本書紀持統七年九月十日丙申条為浄御原天皇一、設無遮大會於内裏一。繋囚悉原遣。史料③の日付は天武の忌日に一日遅れてはいるものの、斎が行われていたことと、持統二年の詔が守られていたことを示している。廃務こそまだ行われてはいないが、この時期天武天皇の国忌日は確実に存在していたことが確認できる。滝川政次郎氏は『京制並びに都城制の研究」の中で、国忌を制度化することは持統からはじまり(このことは各氏共通)、養老儀制令にある条文は、その条の集解に古記が引かれているので大宝令に存したことは明らかであるとし、天智の忌日を国忌日としたのは、天智天皇の皇女である持統天皇のお力であったと思う。奈良時代に最も大切にされたのは、天武天皇の国忌日と大内山陵とであって、大内陵に物を献じた記事は、続紀に畳見するが、山科陵に物が献じられたのは、天平勝宝六年三月に只一回あるのみである。と述べている。これまでの国忌研究では、国忌制度の開始時期とともに、国忌の改廃や、国忌の行事内容などが明らかにされ、国忌がその天皇に対する評価として重視されてきた。特に、桓武天皇が国忌を再編(省除)するという延暦十年の政策は、天皇の皇統の問題として注目され、「天武系から天智系へ」という皇統の交替と絡めて論じられることが多かった。しかしながら長い間、廃務それ自体の検討はなされていなかった。こうした中で、初めて廃務を取り扱った藤堂かほる氏の研究が注目される。藤堂説の特徴は、奈良時代の国忌日廃務遵守の検討から、八世紀の先帝意識を探った点にある。その要点を列挙すればa、範とされた唐では国忌廃務が高祖の忌日に際して創出され、初代皇帝高祖が至高の存在として重視されていたことを受けて、日本においての先帝は天智天皇であるとしている点、b、国忌日記事の検討から、八世紀の国忌廃務制度においては天武天皇が唯一至高の権威とされていた形跡はみられず、天智の方が名実共に最高の地位を占めていたとしている点、c、奈良時代は必ずしも天武系の時代とはいえず、光仁・桓武朝における天智系皇統意識の成立は同時に、[皇統意識」そのものの成立でもあったとしている点、である。そして、律令国家における国忌廃務という制度が、国家統治者としての近代先帝を祀る国家祭祀として位置づけられていたとし、律令国家の初代皇帝として遇されたのは天智天皇であると結論づけしている。つまり、藤堂説が成り立つならば、「天武系から天智系へ」という皇統の交替という通説の見直しがせまられるのである。果してそれは妥当なのであろうか。以下、藤堂氏の論点をとりあげ、検討を加えることとする。私は、藤堂氏が検討されたように、国忌日の記事を検討することは、各天皇の個性を明らかにする一つの手がかりになると考えている。そこで本稿においてはまず、奈良時代(称徳朝まで)の国忌の特徴と先帝意識を確認する。その上で桓武朝における国忌日記事の内容と、天武忌日における桓武天皇の姿勢に考察を加えていくことにしたい。それらの検討から、奈良時代は天智・天武の二帝が先帝として位置づけられており、天武天皇の血筋が重視されていたこと、桓武天皇は延暦元年から天武系皇統を否定しており、国忌制度を利用して官人達の「先帝11天武」という意識の変革を行っていたこと、そして、延暦十年はまさに皇統が「天武系から天智系へ」とうつったことを国忌の面から宣言した年であることを明らかにする。
著者
重井 陸夫
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.195-201, 1982

伊豆半島東岸浅海域の海胆相について, 次の諸調査を総合して取りまとめた。(1) 著者とその補助者が1971年4月, 1981年2月, 1981年10月に爪木崎, 須崎, 鍋田湾, 城ケ崎海岸において行なった潜水・磯採集を中心とする調査。 (2) 国立科学博物館が1981年10月に日本列島の自然史科学的総合研究の一環として, 筑波大学下田臨海実験センターの調査船「つくば」によって行なった下田沖ドレッジ調査の一部 (St. 3∿6,St. 9). (3) 生物学御研究所所蔵の標本で1972年6月から1975年6月にかけ, 天皇陛下が下田湾, 田の浦, 西島, 爪木崎など15地点から18回にわたって御採集になったものについての分類・分布学的調査。 得られた種は次の28種で, 5目14科に分類された。 Asthenosoma ijimai, Diadema savignyi, Diadema setosum, Temnopleurus toreumaticus, Temnopleurus reevesii, Mespilia globulus levituberculatus, Temnotrema sculptum, Toxopneustes pileolus, Tripneustes gratilla, Pseudoboletia maculata, Pseudoboletia indiana, Hemicentrotus pulcherrimus, Pseudocentrotus depressus, Echinostrephus aciculatus, Anthocidaris crassispina, Echinometra mathaei, Clypeaster japonicus, Fibularia japonica, Fibularia sp., Fibulariella acuta, Echinocyamus crispus, Peronella japonica, Astriclypeus manni, Schizaster lacunosus, Brissus agassizii, Brissus latecarinatus, Pseudomaretia alta, Lovenia elongata. 上記の内, マメウニの一種 (Fibularia sp.) は未記載種であり, マダラウニ (Pseudoboletia maculata) とミナミオオブンブク (Brissus latecarinatus) は新たな北限分布の記録であり, Pseudoboletia indianaについては日本近海での分布の初記録である。 海胆相は全体として種数の上では熱帯要素が60.7%, 暖温帯要素が35.7%, 冷温帯要素が3.6%で, 熱帯要素が優占しているかに見えるが, 生息数の点では温帯要素の比率が遥かに高く, 温帯系種の内, 特にムラサキウニとバフンウニは極めてふつうに見られ, ヨツアナカシパン, タコノマクラ, アカウニ, オオブンブクなども多数生息していることが分った。熱帯系種の内, ガンガゼ, アオスジガンガゼ, ラッパウニの生息数は多いが, ナガウニ, シラヒゲウニ, マダラウニ, ミナミオオブンブクは少なく, 熱帯海域にふつうのトックリガンガゼモドキ, ガンガゼモドキ, クロウニ, パイプウニ等は調査を通じて1個体も見出されなかった。
著者
鈴木 薫之
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

昨年度までの研究において,把持,切開,切離処理などの手術作業をリアルタイムに可能にする軟組織モデル,sphere-filled modelの開発を行った.また動物実験において,肝表面変位量とその変位量に応じた押付力の関係を得ることが可能になった.本年度では,このsphere-filled modelを用いて,実際の手術時の臓器に対する触感応答を得ながら作業を進めることをシミュレーション内で可能とするために,圧縮変形時の圧縮点表面変位量と圧力との関係を計測し,これをデータペース化してシミュレーションに反映させた.計測手法として,臓器の形状に応じ解剖学的に決定した点を中心に半径20mmの円形状に圧縮点5点を設定し,指先の太さを想定した直径10mmの円柱状のプローブ先端形状を持つ圧力測定装置を用いることにより,個体差が発生しないような工夫を行った.その結果,複数の実験結果を統合して得られた最大表面変位量は約30mm,最大圧力として約30gf/cm^2となった.また,臓器圧縮,圧縮解放時に応じたヒステリシス特性を有する表面変位量-圧力特性曲線を得,データベース化した.このようにして得られたデータベースの表面変位量を用いて,sphere-filled modelにおける充填球移動総和量をキャリブレーションすることにより,手術シミュレーションにおいて臓器に触れた際の感触を再現した.その結果,実際の臓器変形量に応じた定量的な反力応答能を有する軟組織モデルとなった.本モデルを用いることにより,実際の臓器特性を反映することができ,より実際に近い触感を伴った手術シミュレーションを行えるようになったと考える.
著者
酒井 恒
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.8, pp.32-33, 1972-11

ひしがに科(Parthenopidae)に属する7稀種が沖縄を含む日本沿岸から採集され,これらの力二類はいずれも日本における最初の記録である。その中の1種は天皇陛下の御採集品で古く,戦前のもので紀州産と思われる。他の6種は三河一色(田中信一氏採集),紀伊南部(故尾崎光之助氏採集),石垣島(諸喜多茂充氏沖縄水試)からの採集品である。
著者
市川 直樹 細川 和生 前田 龍太郎 三澤 雅樹
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
年次大会講演論文集 : JSME annual meeting
巻号頁・発行日
no.1, pp.183-184, 2001-08-22

In this paper, we describe experimental results of PIV (Particle Imaging Velocimetry) technique applied to visualize flow in microchannels. 100μm width×60μm height channels were fabricated with PDMS transparent silicone rubber, and 1μm diameter fluorescent particles were used for tracers. Flow visualization was successfully carried out, and large disturbance of flow velocities caused by interaction of gas-liquid interface and a trapped liquid droplet at corners were observed. Relatively large focal length and Brownian motion of the tracer particles are found to be serious problems on micro-PIV techniques.
著者
ライス エー エル
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
no.4, pp.62-70, 1971-07

ウィリアムソン(1965)はオーストラリアのニュー・サウス・ウェルスのハッキング港沖で,眼上部や甲殻背面側面に非常に長い棘をそなえたホモラ科のメガロパを採集し,このメガロパについて記述し,一応Paromola petterdi(Grant)のメガロパとした。著者はさらに1967年に,このメガロパがHomola orientalis Hendersonに属するのではないか,そして別の亜種か,または酒井(1965, pl.6, Fig.4)によって図示された非常に短かい側棘を有するメガロパと同じ種の変種であることを提案した。疑いなくウィリアムソンのと同じ種に属する第3番目のメガロパとまたHoloma orientalisの幼蟹は両方とも相模湾産で,天皇陛下の御採集品であるが,最近酒井恒博士の好意により私の手元に入った。オーストラリアの標本と異なり日本のメガロパはその付属肢を全て有し,ウィリアムソンが観察できなかった二三の細かな形態を具えている。しかしながらさらに重要なことはそれが相模湾に産するために同定に便宜を提起していることである。