著者
石口 彰
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究は、視覚系の様々なレベル(初期過程から高次過程まで)における視覚検出課題や視覚識別課題において、最適な決定を下す理想観察者と実際の観察者の知覚能力を比較し、効率という観点から視覚系の決定過程の特性を検討するものである。本研究の成果は次の通りである。(1)ランダムドットステレオグラム(RDS)を用いた、矢状平面に関する対称構造(3次元空間内での観察者中心座標系における対称構造)の検出効率を測定。組み込まれるガウスノイズは、両眼視差に関するノイズである。日本心理学会59会大会(平成7年10月)発表(2)ランダムドットステレオグラム(RDS)を用いた、奥行き方向に重なり合う2枚の平面の識別に関する効率の測定。この結果と、隣り合う2枚の平面の識別実験の結果とを比較した。組み込まれるガウスノイズは、両眼視差に関するノイズである。日本心理学会60回大会(平成8年9月)発表(3)ランダムドットシネマトグラム(RDC)を用いた、運動位相の識別に関する効率の測定。組み込まれるガウスノイズは、運動光点の位相に関するノイズである。日本心理学会60回大会(平成8年9月)(4)RDCを用いた、交差する運動刺激の位相差検出に関する効率の測定。組み込まれるガウスノイズは、運動光点の位相に関するノイズである。日本心理学会61回大会(平成9年9月)発表予定(5)運動光点から剛体構造の復元に関し、2種の剛体、および剛体ト非剛体の識別に関する効率の測定。組み込まれるガウスノイズは、運動光点の位置に関するノイズである。
著者
清水 龍瑩
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.1-20, 1995-06-25

情報化,グローバル化,不況の長期化が進むなかで,中間管理者の余剰感は増大してきた。しかし情報処理,国際業務処理などの中間管理者の能力は,益々重視されるようになり,またその能力発揮プロセスよりも,結果である業績が重視されるようになった。人事評価基準は,外界の状態と企業の状態との関数であって,万古不易のものはない。急成長企業では,自ら企業家精神を発揮し,新しい提案をし,実行する中間管理者が高く評価され,停滞している企業は,沈滞している部下に意識革命をおこさせるネアカな人間が,高く評価される。中間管理者の評価基準としての部下の育成は,日本の企業にのみ通用する基準であって,外国企業では通用しない。評価の公平性,公正性は,評価者,被評価者および,周囲の者によって納得されるとき,はじめて認められる。しかし,人間による人間の評価には,必ず個人的な偏りがあるから,複数上司の評価,敗者復活の制度が必要である。時系列的にみると,従来の成長期には,上司,その上の上司と,横からの人事評価が一般的なシステムであったが,現在は,人事部の評価が少くなってきた。何らかの理由で,会社の主流からはずれた専門能力のある中間管理者を,グループ大企業間を移動させ,その能力を最大限発揮させたり,あるいは,その専門能力の開発教育と同時に,ボラソティア活動を奨励し,人生観を変え,「人生再設計」を実行できるようにすることが,これからの中間管理者の新しい方向である。
著者
藤井 省三
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1949年の人民共和国建国以来、1988年の台湾全面自由化までの四〇年間、香港は台湾海峡を挟む中国・台湾の間にあって国家機構の過酷な統制を免れ得た「公共空間」であり、そこでは経済発展に伴い独自の文化が成熟した。80年代に至り中国返還が問題化するにともない、市民層は香港人アイデンテイテイの確立を強く求め、その際に大きな役割を演じたのが相互に密接な関係を有する文学と映画であった。本研究は香港アイデンテイテイの形成とこれに対して文学・映画が果たした作用を歴史的に解明し、「香港文学」という概念が登場してくる過程を明かにすることにある。主に1950年代以後の香港の文化および社会を対象として、以下の課題について調査・研究を行った。(1)香港文学の成熟と香港アイデンティティの形成:主要な三作家を取り上げ、也斯に関しては論文「香港詩人のFoodscapeというファンタジイ」、李碧華に関しては共著『文学香港与李碧華』等、施叔青に関しては拙訳『ヴィクトリア倶楽部』(国書刊行会)所収の「解説」で考察した。(2)香港映画の成熟と香港アイデンティティの形成:50年代の宝田明・尤敏コンビの『香港三部作』を中心とした日本映画界との影響関係を考察した成果は、宝田明(語り手)・藤井省三(聞き手)、「インタビュー宝田明、『香港三部作』を語る」また香港映画が香港および口頭発表「張愛玲〜上海文壇から香港映画界へ」で報告した。また中国の20世紀史を香港映画がいかに描いているかという問題は、拙著『中国映画 百年を描く、百年を読む』(岩波書店)香港の章収録の7本論文で考察した。(3)(1)(2)に関する国際シンポジウム等の開催およびその他のシンポジウムへの参加:香港大学中文系開催シンポでは「東亜的村上春樹現象」(中国語)を、国際交流基金開催のシンポでは「香港映画の黄金時代I」の報告を行い、前者の内容は論文「村上春樹と東アジア」に記した。
著者
樋田 大二郎 岩木 秀夫 耳塚 寛明 苅谷 剛彦 金子 真理子 大多和 直樹
出版者
聖心女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

われわれが1979年以来行ってきたデータの再分析、および日本、シンガポールの再調査を行っている。シンガポールは、非常に学歴が重視される国であり、研究者の間ではメリトクラシー(能力と努力の結果が支配する)の国であると考えられている。こうした背景には、シンガポールの国際社会やアジアにおける軍事的、経済的位置づけやさらには多民族の融合というこの国独自の事情がある。しかし、それだけでなく、人々を学習に駆り立て、学習の結果を人材の社会的配分の基準にすることを正当化するような考え方や仕組みが存在する。一昨年度以来のわれわれの調査では、シンガポールは、教育政策においてアファーマティブ・アクション(マイノリティへの優遇:大学入学枠の確保、点数の加算など)や救済重視的な社会的敗者対策はとらずに、競争参加への機会均等をすべての国民に対して保証する/競争の結果に基づいて地位配分を行う/競争の結果に基づいて地位配分が行われるプロセスと基準を明確化し納得させる/競争の内容(学習の内容と方法)を明示化し納得させる/競争の内容(学習の内容と方法)を「学問中心」ではなく、生徒の興味、企業からの要請や国際社会からの要請に応じたものにしている/競争の内容(学習の内容と方法)が卒業後の生活と結びついていることを生徒に認知させ、納得させる/競争の結果に基づいて手厚いエリート教育と手厚い大衆教育を行う/敗者復活の機会を用意する、などの教育政策を採っている。しかし、こうしたシステムのあり方に加えて、授業面で、私たちの知見では、シンガポールは、授業内容が卒業後の進路とレリバンスが高く、それを可能にするために、コース設置、教員採用、カリキュラム、教科書などが、現場裁量に任せられる部分が大きく、ガンバが進路先とコミニュケーションを親密にとっている。
著者
古川 宇一 長 和彦 寺尾 孝士 木村 健一郎 大場 公孝
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、自閉症児・知的障害児の生涯ケア体制の整った地域社会の創出をめざして、北海道にTEACCHプログラムを導入する10ヶ年計画の第2次3ヵ年計画のまとめをなすもので、函館・旭川両地区をモデル地区として、幼児期から成人期にいたる各ライフステージにおいてTEACCHプログラムのアイデアの有効性を検証し、関係者・機関への展開を図った。画期的であったことは、函館地区おしまコロニーが独自に、2001年4月、全国に先駆けて自閉症センター「あおいそら」を立ち上げ、活発な相談指導、コーディネート活動を展開し、地域センターとしての活動を展開した。幼児施設、養護学校、特殊学級、施設においてTEACCHプログラムのアイデアを導入するところが増え、幼児期から成人期にいたるTEACCHプログラムを基本においた一貫性のある療育システムが構築されつつあり、全道のセンター的役割を果たそうとしている。旭川地区では、幼児施設でTEACCHのアイデアを引き継ぎ、小学校特殊学級で導入する教室が増え、1成人施設が導入4年目で成果を上げている。両地域とも研究活動は親を含み継続している。本年度の研究16論文は、情緒障害教育研究紀要第21号に、1年次13論文は19号に、2年次12論文は20号に掲載されている。札幌・道央地区、帯広・道東地区では、おのおの1療育施設でTEACCHの手法を用いており、福祉施設においても積極的に導入し研修がすすめられている。札幌、旭川では、家庭教育にTEACCHのアイデアを用いた積極的な取り組みがなされている。おしまの自閉症センターと連携しながら、全道的な展開への準備が整いつつあり、次の第3次3ヵ年計画において道内4圏域でのTEACCHセンター機能の展開が課題である。
著者
清滝 ふみ
出版者
関西学院大学
雑誌
經濟學論究 (ISSN:02868032)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.149-165, 1998-04
著者
今口 忠政 李 新建 李 新建 申 美花
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、事業構造の再構築を「組織能力の再構築」として捉え、そのために必要な組織能力を明確化すると同時に、復活に貢献するコアとなる能力要因を明らかにすることが目的である。そこで、組織能力に関する文献研究、停滞傾向にある企業を組織能力の再構築によって復活する過程のケース研究を行い、日本の上場企業を対象として組織能力に関するアンケート調査を実施した。また、日中韓企業の組織能力比較を試みるために、IT企業群、中国企業、韓国企業を訪問してインタビュー調査を行い、日中韓企業の組織能力特性を定性的、定量的に比較した。
著者
安達 文夫
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.683-690, 2004 (Released:2009-09-03)
参考文献数
14

博物館のディジタルアーカイブは,展示を含めた広範な公開に活用するために行われる.研究向けには,目録にあたる基本情報が網羅的に付されることが求められる.一般向けには利用者層に応じて選ばれた資料が,解説や関連情報とともに提供されることが望ましい.概観を表す画像は基本情報の一部と位置付けることができる.資料の内容を表す情報として,研究に必要な情報量を持つことで,一般向けにもディジタルアーカイブとしての価値が生ずる.   このような例として,国立歴史民俗博物館では,非常に細かく描かれた大型の平面資料やコレクション資料を主な対象とした超精細ディジタル資料を制作している.多くの入館者が利用できるよう,操作性に特段の配慮をしている.展示などに適用した事例から,資料の細部や隠れた箇所を明りょうに見ることができ,原品で必要な細心の注意を払うことなく,自由に閲覧できるといった実物にはない効用を持つことが,ディジタル資料が広く活用されるために必要であることが示された.
著者
林 文代 斉藤 兆史 斎藤 兆史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、新しい文学研究のあり方を、英米文学とテクノロジーやメディアの表象に関する観点から探るものである。狭義な意味での文学研究の枠を越え、社会科学的、自然科学的要素などの視野も含め、テクノロジー(たとえば映画)やネットなどのメディアと文学の多様な関係について論証を試みた。このような研究は、まだ日本では新しい分野であり、さらに今後研究が必要であるが、研究成果欄に記載したように多くの成果をえることができた。
著者
BURTON C. K.
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.65, pp.27-46, 1967-04-10
被引用文献数
1

近年北西マライから多数の筆石とtentaculitesが発見されている。筆石の大部分はLlandovery期のもので一部Wenlock型がある。Tentaculitesは明らかに中下部デボン系のものである。時代が異るにもかかわらず両者は密接に伴っていて, 16産地では同一層理面上に伴って産出している。集められた事実を照合し再検した結果判ったことは, このようなシルル紀筆石とデボン紀tentaculitesの共存という異常な産状は, 北西マライからタイ西部, ビルマ東部をへて雲南西部に続く地向斜地帯ではごく普通にみることができる。このようなフォーナの混合は, 一時的な隔離と, その結果として浮游生物が堆積地帯から消失し, 続いて外的連繋が復旧した時に造山的擾乱が起った結果であると考えられる。この古生代中期の地向斜は, 雲南から北東に中国にのび, それから恐らくはヨーロッパと連絡があったことを示すいくつかの証拠がある。この雲南-マライ地向斜はまた, ヒマラヤ地域とも時々連っていた。南方では, Kalimantan(インドドネシアのボルネオ)からニューギニアのIrian Baratをへて東オーストラリアにのびていた可能性がある。時代の異るシルル紀筆石とデボン紀tentaculitesとが相伴って産出することは, Victoriaでも知られている。
著者
高橋 博彰 立川 任典 湯沢 哲朗 伊藤 紘一 酒井 誠
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

フラビンモノヌクレオチド(FMN)の光化学:FMNのT_1状態、ラジカルアニオンおよびセミキノンラジカルの時間分解吸収と時間分解共鳴ラマンスペクトルを測定し、酸性溶液中でのセミキノンラジカルの生成がT_1状態から1電子還元によりラジカルアニオンを経由して起こることを明らかにした。ソラーレンおよびその誘導体の光化学:ソラーレン(PS)、5-メトキシソラーレン(5-MOP)、8-メトキシソラーレン(8-MOP)についてT_1状態およびラジカルアニオンの共鳴ラマンスペクトルおよび過渡吸収を測定した。8-MOPのT_1生成の収率がPSや5-MOPとて比べて異常に低いことを見つけた。このことは、8-MOPの光アレルギー性・光毒性がPSや5-MOPより小さいことと関係している可能性が高い。ビリルビンの光化学:308mnnの紫外光照射により、450nmと415nmに過渡吸収を観測した。450nmの過渡分子種は260nsの寿命をもち、酸素の影響を受けるから、T-1状態である。415mnの過渡分子種は17μsの寿命をもつことが分かったが、その正体については現在研究を続けている。この過渡種は480nm付近にも吸収をもつことが分かった。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の光化学:光酸化反応は,(i)電子移動によるカチオンラジカルNADH^<+・>の生成,(ii)プロトン移動によるラジカルNAD^・の生成(iii),電子移動によるNAD^+の生成,の3段階の反応であることが明らかとなった.酵素反応においても酸化がこの3段階を経て起こっている可能性を示唆した.5-ジベンゾスベレンおよびその誘導体の光化学:S-1状態において振動冷却が約13psの時間で起こることが分った.S_1状態でのコンフォーメーション変化については明確な情報は得られなかったが,ピコ秒時間領域におけるラマンおよび吸収スペクトルの変化はS_1状態においてもOH基に関してpseudo-equatorialおよびpseudo-axialの2種の異性体が共存することを示唆している.オルトニトロベンジル化合物の光化学:この反応は,S_1状態においてオルトニトロ基がメチレン基のプロトンを引き抜いてアシ・ニトロ酸を生成することでスタートする.極性溶媒中ではアシ・ニトロ酸はアシ・ニトロアニオンとプロトンに解離し,このプロ卜ンが2-ピリジル基,4-ピリジル基,4-ニトロ基と結合して,それぞれ,オルト,パラN-Hキノイドおよびパラ・アシニトロ酸を生成することを明らかにした.
著者
西村 正治 後藤 知伸 松岡 裕和
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
環境工学総合シンポジウム講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2003, no.13, pp.91-94, 2003-06-24

We, human being, hear 'twitter of birds', 'stream sound' etc. as comfortable sound. On the other hand, we hear 'sound scratching window', 'sound scrubbing styrene foam' etc. as uncomfortable noise. What is the difference between them? In this paper, the uncomfortable rates of 16 daily hearing sounds were evaluated at first, using method of paired comparison. Then, those sounds were analyzed by the human auditory model and wavelet analysis in order to find out causes of discomfort. Such characteristics of comfort and discomfort were found out that the former has calm rising up and down and the later has steep rising up and down, and that the former has sinusoidal vibratos in high frequency region and the later has irregular ones. But the auditory indexes which can evaluate the noisiness of machines were proved hardly to have correlation with uncomfortable rate.
著者
小塚 晃透 安井 久一
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

空気中において、超音波の定在波を用いた非接触物体捕捉に関する研究を行った。28kHz の空中超音波音源を試作し、凹面型反射板との間で定在波音場を生成した。実験で物体に作用する力を測定すると共に、数値計算で音圧の分布及び音場中の物体に作用する力を求めたところ、定性的な一致が確認された。良好な条件下では、直径2mm の鉄球を音圧の節に捕捉(浮遊)できることを示した。