著者
大場 美穂 真田 弘美 須釜 淳子 松尾 淳子 飯坂 真司
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

褥瘡保有者および褥瘡非保有者を対象に基礎代謝量を測定し、比較検討した。対象はI度、II度の部分層創傷(浅い褥瘡)保有者7名、III度、IV度の全層創傷(深い褥瘡)保有者9名、褥瘡非保有者23名であった。年齢66-97歳、男性7名、BMI18.5未満19名、日常生活自立度C30名、B9名であった。体重1kg あたりの基礎代謝量は褥瘡の面積や体積が大きいほど大きい傾向が見られた。実測した基礎代謝量はHarris-Benedictの予測式による基礎代謝量と比較して褥瘡保有の有無に関わらず有意に少なかった。
著者
坂元 宗和 高木 幹雄
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

2変数の関数の格子点における値の剰余を取り,その剰余が一定の値である場合には単位格子の形でプロットすることによって,多様な形が得られる.これを剰余パタ-ンと名づけ,模様のデザインに応用するための理論と手法を研究した.1.剰余パタ-ンの性質:剰余パタ-ンの周期,対称性などの幾何学的特徴が剰余関数の代数学的特徴に基づくことを明らかにした.従って,パタ-ンの論理合成は剰余関数の解集合の論理合成に相当するが,人間の知覚はパタ-ンの論理合成に対する分解能力が劣っていて識別できないので,合成パタ-ンも価値がある.2.生成原理のアルゴリズム化とデザイン手法の開発:必要な幾何学的特性に見合う剰余関数を選んで剰余パタ-ンを作り,これをいくつかOR合成して,複雑かつ美的なパタ-ンを作る.モチ-フの自然さを高める平滑化輪郭と部分塗り潰しを工夫し,作品の質が向上した.この模様(単色模様)をビット・プレ-ンと見て,ビット組合せに対して色を割当てると,単なる色違いとは異なる新しいモチ-フが発現する(カラ-模様).以上をプログラムとして纏め,パラメ-タ選択の基準を経験的に求めた.3.模様の制作と評価:約200点を試作し,成果報告書に約80点を載せた.提案した模様デザインの手法は作品の質および多産性についても満足すべきものである.上記の知識を組み込めば無限のペ-ジをもつデザイン・ソ-スブックとして使うことができる.4.ディジタル・システムの特殊性の利用:ディジタル・システムの非線形性,別の観点から言えば類推困難性,は制御するには都合が悪いが,本研究はこの性質に発想の役割を担わせる点に独自性がある.
著者
鈴木 成文 友田 博通 在塚 礼子 初見 学 畑 聡一 小柳津 醇一
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1986

1.本年度中に実施した調査分析は主に下記の2点である.(1).韓国における住宅の近代化の実態を把握することを目的に, 近代化型住宅の典型例として, 都市部における最近の建売住宅と農村部のセマウル住宅を対象に, 住様式の実態を把握.(2).韓国側共同研究者によって実施された都市型韓屋の調査資料を, 近代化による変容という視点から分析.2.これまでの文献調査および実態調査(伝統的都市韓屋・都市独立住宅・集合住宅・農漁村民家・セマウル住宅)を基に, 韓国住宅の近代化過程における住様式の継承と変容について考察・整理した.(1).継承されている点は, 床暖房方式およびユカ坐の起居様式, 主要な二つのオンドル部屋を板の間(マル)でつなぐ室配列構成, 夫婦の居室(アンバン)のもつ家の中心としての性格, 独自の食文化を背景とする充実した炊事作業空間, 等である.(2).変容しつつある点は, 暖房や建設経費および住宅内動線の合理化を目的とする住宅のコンパクト化, 内庭型の構成から外庭型の構成への変化と日常生活空間としての庭の役割の減少, 住宅内部とくに台所と庭との関係の希薄化, 玄関の設置, 暖房・設備方式の改良, 浴室・便所の室内化, 台所の床上化とダイニングキッチン形式の普及および欧米式のリビングルーム(コシル)概念の導入による生活の機能分化, 等である.3.以上の近代化過程を日本と比較して考察すると, 日常生活の機能的合理化や充足に関わる部分は変容し易い反面, 住宅の対社会性に関わる部分では, 共有された社会的慣習や文化を背景に, 住宅の基本的構成(韓国のアンバンーマルの連鎖や日本の続き間)は根強く継承されているといえる.
著者
高田 康成
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

シェイクスピアとその研究は西欧近代の産物であり、「西洋中心主義」批判もまた同じ歴史的運動の産物である。従って、そのような批判言説の動向は、西欧近代文化に内在的な自己反省的な構造を明かす。その構造を分析的に捉えるために、世俗化、自然、差異という主題軸を設定し、それぞれに呼応する学問分野と宗教文化との関係において考察を行い、「近代化」(非西欧文化圏)におけるシェイクスピア受容の構造と特質を示した。
著者
堀内 佐智雄
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

まず,これまで開発した酸一塩基型有機強誘電体について焦電特性を評価するため,焦電流測定法を用いた自発分極の温度変化を計測した。その結果,最大4-6μCcm^<-2>もの大きな自発分極が得られていることを見出した。特に,重水素化ヨーダニル酸(D_2ia)と5,5'-ジメチルー2,2'-ビピリジン(55DMBP)との一価陽子移動塩においては,室温で大きな自発分極をもちかつ,焦電係数について,典型的な焦電実用材であるTGS(硫酸グリシン)に匹敵する性能(400μCm^<-2>K^<-1>)を示すことも見出した。有機強誘電体フェナジン-クロラニル酸/プロマニル酸の中性共晶については,中性子回折による構造解析を完成させ,水素原子核(プロトン)の精密な分布状態の解析を行った。その結果,この物質ではプロトンが酸から塩基に向けて変位するという構造変化に基づき強誘電性が発現していることを明らかにし,論文発表を行った。また,酸-塩基多成分型有機強誘電体の新材料の開発を本年も継続して取り組んだ。室温で強誘電性を示す新たな材料として,テトラピリジルピラジンとブロマニル酸との塩を見出した。この塩では,これまでの酸一塩基系で見られた一次元水素結合鎖ではなく,酸分子の二量体内のプロトン移動と塩基分子の分子内プロトン移動の二種類の動的過程を経て自発分極が誘起されているという新たな強誘電発現機構を明らかにした。本成果については論文投稿準備中である。特に本年度は,課題ゐ最終年度として,これまでの成果について,従来の有機強誘電体と比較総括することに重点を置き,その主な成果として,国内雑誌上の解説としてまとめたほか,Nature Materials誌のReview Articleとして投稿し,近日中の掲載が決定した。
著者
小林 愼太郎 星野 敏 水野 啓 西前 出
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、近年注目されているソーシャル・キャピタルの概念に注目し、高齢化社会に向けた新たな地域づくりモデルについて検討することである。この目的に基づき、ソーシャル・キャピタルの多寡(蓄積状況)とパフォーマンス(中山間地域等直接支払制度の運用、地域への定住、高齢者の健康等)との関連の分析、地域づくり活動によるソーシャル・キャピタルの形成の実証、そして、ソーシャル・キャピタルの蓄積状況を示す尺度の開発を行った。分析におけるデータは、和歌山県、兵庫県、新潟県、京都府におけるアンケート調査ならびにインタビューにより収集し、あわせて、愛知県内の既存データ(日本福祉大学AGESプロジェクトによる)も利用した。中でも、京都府における調査では1万人規模のデータを得た。分析にはマルチレベル分析等の統計的手法のほか、質的調査・分析法の一つであるグラウンデッドセオリーを用いた。調査・分析の結果、ソーシャル・キャピタルの多寡とパフォーマンスには一定の関連があること、ソーシャル・キャピタルは集落などの小地域内でもその多寡に差が有り、これがパフォーマンスに影響すること、地域づくり活動のもたらす外部との交流などがソーシャル・キャピタルの形成を促すことなどが明らかになった。また、本研究において開発したソーシャル・キャピタルの尺度(ISCI:Integrated Social Capital Index)を実際の事例(中山間地域等直接支払制度の集落協定締結状況)に当てはめて検討した結果、高い妥当性を持つことが実証された。以上の結果から、ソーシャル・キャピタルは高齢者の良好な健康状態に関連すると同時に、地域づくりのパフォーマンスにも関連していることが明らかになった。また、地域づくり活動によってソーシャル・キャピタルの形成が促進されることが示された。このことから、ソーシャル・キャピタルを機軸とした地域づくりは一定の有効性を持つと考えられる。
著者
野村 正英 高橋 剛夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EID, 電子ディスプレイ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.162, pp.75-80, 1999-07-02

厚生省が科学特別研究として行った「ポケモン事件」の際発生した光感受性発作についての調査研究報告は、ビデオ映像の視聴によって内容依存型VDT障害が広く生じ得ることを示している。我々は、光感受性者を対象に脳波測定の臨床検査を行い、ビデオ映像に含まれるフリッカーによって引き起こされる光感受性健康障害が、野村によって提案された適応型時間フィルターによって防止できることを見い出した。
著者
石田 則明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.10, pp.1719-1727, 2002-10-01
被引用文献数
5

本論文は,チャネル間隔の狭小化を目的として,方形スペクトルを基本とした新しい波形伝送系を提案する.送信波形として,方形スペクトルを最も良く近似するk乗n段バタワース(以下,BWと略記)とし,受信フィルタとしては通常のm段BW形を用いその3dB帯域幅を選定することにより,受信波形の最適化を図った.C/N及びチャネル間干渉の点からk=2が最も望ましいことを明らかにした.この2乗BWスペクトルについて,アイ開口率,チャネル間干渉等を計算し,2乗BWを用いれば現行のPDCのチャネル間隔を約半分に縮小できる可能性を示した.
出版者
Birkhäuser
巻号頁・発行日
1979
著者
ANTHONY Perry
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

我々は、マウスでの遺伝子導入(tg)によるRNA干渉(RNAi)法の開発を試みた。まず、この導入実験として、短い二重鎖RNAによるRNAi(siRNA)実験を未成熟卵(GV)において行い、そのターゲットに対するRNAi効果(遺伝子発現抑制効果)を示した。我々が選んだターゲットは、その遺伝子欠損に由来する表現系が既知であるものから、今回のRNAi実験により新たな表現系が発見されたものまでを含む。RNAiによるターゲットの転写産物の減少度はGV卵1個レベルでの準定量的RT-PCRを実施し確認した。次に、我々はRNAポリメラーゼIII(Pol III)によりショートヘアピン型RNA(shRNA)を転写しsiRNAを産生するベクターを構築した。このshRNAのターゲットは、我々が初期に提案したeGFP、チロシナーゼおよびレプチンとした。これらのshRNA発現ベクターの有効性は、哺乳類培養細胞の遺伝子導入実験によるスクリーニングシステムによって検討した。我々のシステムでは、ターゲット発現ベクターとしてヽターゲットのオープンリーディングフレームの下流にires(mRNA内部のリボゾーム結合サイト)によってレポーター遺伝子である蛍光タンパク質venusを発現させるフレームを挿入したバイシストロン性発現ベクターを用いた。このベクダーでは、1種類のmRNAから2つのオープンリーディングフレームが翻訳される。したがって、これをshRNA発現ベクターと共に培養細胞に導入した場合、その蛍光タンパク消失の有無を観察することでターゲットに対するRNAi効果を検出することができる。我々は、このスクリーニング法により候補shRNAから効果の高いshRNAを選択し、各トランスジェニックマウス系統の作出に用いた。本スクリーニングシステムはRNAポリメラーゼII (pol II)による次世代RNAiベクターの開発にも使用している。
著者
國本 景亀 山本 信也
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

平成15年度から平成17年度までの3年間の研究の総括は次のとおりである。(1)全体論的数学教育の数学観、子ども観、学習観、教授観などを明らかにしいくつかの教授原理を解明した。「全体性の原理」、「内容や関係豊かな学習の原理」、「活動的・社会的学習の原理」、「漸進的数学化の原理」、「科学論的見方の原理」、「歴史性(数学史)の原理」などである。これからの数学教育はオープンな精神で行われるべきである。特に、子ども達に本質的な数学的現象に出合わせるべきである。(國本)(2)ワークショップを2回行う。熊本大学教育学部において、2回のワークショップを行った。参加者は2004年は58名で、2005年は43名であった。(山本)(3)ビットマン氏らの著書『算数・数学 授業改善から教育改革へ("Jenseits von PISA : Bildungsreform als Unterrichtsreform")』を翻訳した。(國本、山本)(4)現場との連携(小学校での授業を3年間で約20回行った)高知県南国市の2つの小学校と連携し、学生の教師養成と現場教師の再教育に携わった。連携した学校の1つが高知県の学校表彰(算数科)を受けた(平成17年度)。(國本)(6)『数の本』(1〜4学年)を翻訳し、各都道府県の教育長へ謹呈した。そのため平成17年度の予算の内インク代にかなりの経費がかかった。(國本)(7)イギリスの数学教育雑誌"Mathematics Teaching"に「数の石垣」の実践報告が掲載された。(藤田)