著者
鶴崎 展巨 岡田 珠美 有田 立身 井原 庸
出版者
鳥取県生物学会
雑誌
山陰自然史研究 (ISSN:13492539)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.23-48, 2008-12-31

文献記録と新たに採集された標本にもとづき, 鳥取県産として44科438種の真正クモ類(クモガタ綱クモ目)の記録をまとめた。次の26種は鳥取県内初記録となる:イトグモ, テナガマシラグモ, ナルトミダニグモ, コガネヒメグモ, マダラヒメグモ, クロササヒメグモ, クロテナガグモ, シバサラグモ, タイリクコサラグモ, ズブトヌカグモ, チュウガタシロカネグモ, チクニドヨウグモ, キタドヨウグモ, キヌアシナガグモ, オオクマヤミイロオニグモ, シロゴミグモ, クマダギンナガゴミグモ,Lathysdihamata Paik 1979,ムナキワシグモ, ヤマヨリメケムリグモ, モリメキリグモ, アシダカグモ, トライコアシダカグモ, チクニエビスグモ, ヤガタハエトリ, ナカヒラハエトリ。|On the basis of literature records and specimens newly obtained, a total of 438 species belonging to 44 familes of spiders (Arachnida, Araneae) from Tottori Prefecture, western Honshu, Japan are catalogued. Following 26 species are recorded as new to spider fauna of Tottori Prefecture: Loxosceles rufescens (Duf'our, 1820), Masirana longimana Yaginuma, 1970, Ischnothyreus narutomii (Nakatsudi, 1942), Chrysso scintillans (Thorell,1895), Steatoda triangulosa (Walckenaer, 1802) , Thymoites okumae (Yoshida, 1988), Bathyphantes robustus Oi, 1960, Neriene herbosa (Oi, 1960), Parasisis amurensis Eskov, 1984, Saitonia orientalis (Oi, 1960), Leucauge blanda (L. Koch, 1878) , Metleucauge chikunii Tanikawa, 1992, Metleucauge yaginumai Tanikawa, 1992; Tetragnatha lauta Yaginuma, 1959; Araneus acusisetus Zhu & Song, 1994, Cyclosa alba Tanikawa, 1992, Cyclosa kumadai Tanikawa,1992, Lathys dihamata Paik, 1979, Cladothela unciinsignita (Bösenberg & Strand, 1906), Drassyllus sasakawai Kamura, 1987, Gnaphosa potanini Simon, 1895,Heteropoda venatoria (Linnaeus, 1763), Sinopoda koreana (Paik, 1968), Synaema chikunii Ono, 1983, Pseudeuophrys erratica (Walckenaer, 1825), Sibianor kochiensis (Bohdanowicz & Proszynski, 1987).
著者
佐藤 和彦
出版者
東京学芸大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

1987年度から、1989年度にかけて、日本中世の民衆運動に関する史料の蒐集と研究をおこなった。日本中世の民衆生活・思想などに関する研究は、西岡虎之助、林屋長三郎氏らの段階を経て、近年、横井清・三浦圭一、網野善彦らの仕事によって多くの成果を生みだしている。本研究は、これらの成果に学びつつ、日本中世における民衆の生活、生産、思想、芸能、宗教、闘争などを民衆運動として総合的に把握し、その特質を解明しようとした。作業の第一歩は、民衆運動に関する史料を調査し、それを蒐集することからはじめられた。東京大学史料編纂所、京都府立総合資料館などにおいて史料を調査した。ついで、民衆運動の展開した地域におもむき、文献史料の残存状況、伝承などの残存状況を調査した。1987年度は若狭国太良荘(現福井県小浜市)、備中岡上原郷(現岡山県総社市)などの調査をおこない、1988年度は、若狭国太良荘、1989年度には、京都府、および、近紀岡葛川(現滋賀県大津市)などの調査をおこなった。その結果、太良荘地域において3点の新史料を発見した。なお、各年度ともに、中世民衆運動についての関連文献リストを作成し、1989年度において研究報告書を作成した。なお、今後、このような研究を深めるためには、つぎのようなアプロ-チが必要となろう。すなわち、中世民衆の武装の問題、対領主意識の変化、闘争参加のさいの「いでたち」(服装)、当該段階の権力の本質などを追究することである。さらに、アジア諸国やヨ-ロッパ諸国の封建社会における階級闘争と対比させつつ、日本中世の農民闘争のもつ階級闘争としての成果と現限とを明らかにすることが必要である。このことは、日本中世の民衆運動の本質を解明するための基礎作業となるであろう。
著者
金澤 章
出版者
北海道大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

本研究では、二本鎖RNA分子が、植物のゲノムDNAに対して配列特異的なメチル化ならびに転写不活性化を誘導することを利用してエピジェネティックな転写不活性化(TGS)の系を確立すること、ならびに、その不活性化状態の維持機構を解明することを目的として研究を行った。CaMV 35Sプロモーターにより転写制御されるカルコーン合成酵素遺伝子を導入することで花色の変化を誘導した形質転換ペチュニアを用いた研究により、外来遺伝子がTGSを受けるためには、プロモーター近位配列が高い頻度でメチル化を受けることが関連していることを明らかにしていた。本年度は、外来遺伝子が転写不活性化されているペチュニア植物体に対して、DNAメチル化の阻害剤5-アザシチジンによる処理を行うことにより、TGSが解除されるか否か、また、その際にメチル化の程度、および、特定の領域の脱メチル化がTGSに影響を及ぼすか否かを検討した。その結果、TGSは部分的に解除され、その際に、転写開始点の上流約300 bpの領域においてメチル化の程度が低下した。同様な効果は、ヒストン脱アセチル化阻害剤として知られるトリコスタチンAによる処理によっても得られた。この実験と並行して行った、ウイルスベクターを用いてプロモーター領域に対する二本鎖RNAを産生し、その機能によるエピジェネティックな変化を誘導する実験により、このプロモーター領域の全域のメチル化はTGSに必ずしも必要な条件ではないが、部分的にメチル化が誘導されることがTGSと密接に関連することを見出した。以上の研究から得られた知見を総合し、高い効率でTGSを誘導するため、ならびに、それを維持するためには、このプロモーターの転写開始点から約300 bp上流の領域の一部に対して高い頻度でメチル化が誘導されることが必要であり、この領域全体にわたって高いメチル化が存在することは、世代を越えて安定にTGSの状態が伝達されるために十分な条件であるという結論を得た。
著者
橋本 直純 長谷川 好規 今泉 和良
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

肺線維症の線維化病変においてさまざまな細胞起源由来線維芽細胞の存在が証明された。その中で血管内皮間葉系細胞転換による線維化病変は低酸素状態をもたらしうる。遷延化低酸素状態は線維化微小環境として更なる線維化および肺構成細胞間葉系形質転換を介した線維芽細胞誘導をもたらすことを明らかにした。これらの知見は、線維化形成における誘導因子を解明することにつながり新たな治療標的を確立できると考えられた。
著者
福土 審 青木 正志 金澤 素 中尾 光之 鹿野 理子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

脳腸相関とは、中枢神経系と消化管の機能的関連を言う。これは発生学的に古い現象であるが、不明な点が多い。脳腸相関には大きく分けて2つの現象・経路がある。一つはストレスにより、中枢神経系興奮が自律神経内分泌系を介して消化管機能を変容させる現象・経路である。もう一つは、消化管からの信号が求心路から中枢神経系に伝達され、中枢神経機能を変容させる現象・経路である。われわれは、ストレスにより、あるいは、消化管刺激により、脳の特定部位でcorticotropin-releasing hormone(CRH)を中心とする神経伝達物質が放出され、局所脳活動を賦活化する、そして、過敏性腸症候群においてはこの現象が増強されている、と仮説づけた。本研究は、この仮説を動物実験とヒトに対する脳腸検査によって検証することを主目的とし、positron emission tomography(PET)と脳波power spectra、topographyをはじめとする脳機能画像と併せ、脳腸相関におけるCRHならびにその他の物質の役割を明確にした。平成15-18年度の科学研究費により、過敏性腸症候群の動物モデルを作成することができた。この動物モデルの病態はCRH拮抗薬により改善した。また、消化管への物理ストレスにより内臓痛が生じ、視床と辺縁系で脳血流量が増加した。同時に、脳波power spectra、topogramが変化し、腹痛とともに不安が生じた。この時、消化管運動も変化した。過敏性腸症候群ではこれらの現象が顕著であるが、これらもCRH拮抗薬により改善した。過敏性腸症候群あるいはその病態を示す動物では、辺縁系におけるCRH遊離がこれらの結果を招くことが示唆された。これらの知見を平成15-18年度に得たことにより、脳腸相関におけるCRH系の関与を明らかにするという研究目的を達成することができた。
著者
稲垣 芳則 保科 定頼 横田 徳靖 中里 雄一 恩田 啓二
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

我々は特発性細菌性腹膜炎(SBP)において最大の謎である感染経路の解明とSBPの迅速診断方法の開発を目的に以下の研究成果を得た.1.Thioacetamide投与による肝硬変ラットではSBPの発症が認められたが,コントロールラットでは認められなかった.2.SBPは腸内細菌の増殖が大腸より下部小腸に起こるときに発症しやすいと考えられた.3.SBP発症時腸内細菌の増殖した腸管の支配リンパ節には細菌の移送を認めたが門脈血および末梢血には認めなかった.4.SBP発生機序における腸内細菌の腹腔内への侵入経路の一つとして直接腸管壁の経由が強く示唆された.5.培養で菌が検出できない腹水でも,原核生物特有の塩基配列をPrimerとしたPCRでは腹水中の微量大腸菌あるいは死菌が検出できた.仮説では腸管内から腹腔内への細菌の侵入経路は(1)血行性,(2)リンパ行性あるいは(3)腸管壁から腹腔内へ直接,の3つの経路が考えられていた.今回の研究によりSBPでは(1)(2)の経路より,(3)の経路の可能性が最も高いとの結論を得た.またSBPの発症は必ずしも腸内からの生菌の移行だけでなく,むしろ死菌や菌体成分や腹水中で免疫反応を起こすことがSBPの本質であると推測した.一方,臨床例の検討でも腹水培養で細菌が証明されることは少ない.腹水中の細菌のDNAをPCRで検出する方法は感度が高く迅速診断が可能で,SBPの診断に有用であると考える.ただし消化管穿孔に起因する続発性細菌性腹膜炎とSBPとの鑑別が臨床上困難であることは今後の課題である.
著者
長野 正道
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.826-830, 2002-11-05
被引用文献数
6

多数のリミットサイクル振動子について,それらの"振動運動を記述する変数の一部を個々の振動子の変数の線形結合で置き換える"という,振動子間結合による「新しい」リズム同期化法を見出した.この振動子間結合の方法は,粘菌細胞の生体センサーである受容体が持つ機能を数学的に一般化することにより得られた.
著者
森口 裕之
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

第3年度の研究では、「Ink-jet Printing」および「マイクロピペット描画法」を用いた新たな細胞アレイ作成法を開発した。本手法を神経系の細胞群に適用することで、実際に「小規模な神経回路」(構成細胞数が1個から数個の神経回路)のアレイ(小規模神経回路アレイ)が形成され、様々な細胞構成の神経回路が規則的に配列されていることを生かした神経回路活動のハイスループット計測が可能であることを示した。本技術は、「神経回路」という多数の要素が入り組んだ相互作用を行う系における、種々の構成要素(細胞)の性質とシステム全体(神経回路)の挙動の関係をマルチスケールの生体計測に基づいて実験的にアプローチするための実用的な実験系であると位置づけられる。小規模な神経回路は、一枚の培養底面上に数百から数万個形成させることが可能である。これらの神経回路の多くにおいては、リズミックな自発発火と細胞内カルシウムレベルの振動が観察され、単一ニューロンのみからなる(アストロサイトなどのグリア細胞もいない)最小構成のオータプス神経回路においても、周期的な自発発火が生じ得ることが確認された。また、第1年度の研究で開発した可動式の金属微小電極を用いた細胞外の電圧パルス刺激に対しても、周波数と振幅の両面での減衰を伴う振動的な発火が数秒から数十秒間持続することを示す信号が観察された。本結果は、再帰的構造の神経回路ではニューロンの膜電位振動か自発的に生成され得ることを示唆しており、今後は、本実験系を用いた小規模神経回路活動の網羅的計測と解析を通して、機能的神経回路が自律的に形成されるプロセス、さらに、出来上がった神経回路が機能する仕組みを説明し理解していきたいと考えている。
著者
木村 俊一 澤木 勝茂 井上 昭彦 鈴木 輝好 辻村 元男 鈴木 淳生 高嶋 隆太 八木 恭子 後藤 允 中野 張
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

「OR指向ファイナンス」とは,数理ファイナンス理論をオペレーションズ・リサーチ(OR)における意思決定支援という観点からそのモデル作りを見直そうという本研究の基本概念である.この基本概念の下に,5つの研究テーマ(1) オプション価格評価;(2) 仕組債の価格評価;(3) 数理ファイナンス理論 (4) 企業ファイナンスにおける価値評価;(5) リアルオプションに対する数理モデルの開発とそれらの応用に関する研究を行い,数多くの国際的な研究成果を得た.
著者
礒井 俊行
巻号頁・発行日
1989-03-25 (Released:2009-04-16)

本研究は、主要マメ科作物の共生窒素固定の発現様相 を解析するとともに、その機能の増進を図るべく行われ たものである。その結果、下記の知見が得られた。慣行栽培したダイズ、インゲン、ラッカセイの生育に伴う根粒着生、窒素固定能の推移を調査したところ、インゲンでは他の2作物に比べて根粒着生量、窒素固定能ともに顕著に低く推移することを認めた。また、窒素固定能の最大値は3作物とも開花期にみられ、それはラッカセイ>ダイズ>>インゲンの順に高かった。好石灰植物であるマメ科植物の根拉着生や窒素固定能に対するカルシウムの影響をダイズを用いて調べたところ、植物体の生育に必要とする濃度以上の高濃度のカルシウムが根粒着生を促進すること、しかもその根粒着生促進効果が発芽後の幼植物期に限って高濃度のカルシウムを与えても発現することから、根粒菌の植物根感染過程の促進によるものと推察した。しかし、その濃度のカルシウムを与え続けると窒素固定能が抑制されることも明らかとなった。箱の一面に観察用の透明プラスッチク板をはめ込んだ根箱を用いた栽培法か、根粒着生や窒素固定能の発現状況を経時約に、かつ詳細に調査する上で有効な手段となり得ること、およびプラスッチック板面を通して計測される根粒数と植物体の全根粒数との間には高い正の相関のあることを明らかにした。さらに、根箱栽培した植物根系をピンボード上に移すことによって、根粒着生および窒素固定能の根系上の分布を詳細に調査し得ることも明らかとなった。ダイズの根粒書生や窒素固定能に対する施用厩肥の影響を上記の根箱栽培法を用いて調査した。厩肥の施用方法(全層施用、作条施用)を異にした場合、根粒の着生 分布自体には大きな違いはなかったが、その着生量や窒 素固定能は全層施用区に比へて作条施用区において著し く高かった。厩肥とそれを水洗することによって塩類濃度を低下させた水洗厩肥との施用効果を比較した試験では、根粒着生および窒素固定能か厩肥区に比べて水洗厩肥区において著しく高い値を示し、さらに水洗厩肥-全層施用区と水洗厩肥-作条施用区とを比較すると、前者では後者に比べて根粒着生、窒素固定能ともに良好であることが明らかとなった。また、後者では施用した水洗厩肥内にダイズ根が貫入しているにもかかわらず、根粒はほとんど着生しなかった。根粒着生および窒素固定能に対する厩肥の粒径の影響を調査した試験では、大粒厩肥区(粒径10~20mm)>無厩肥区>小粒厩肥区(粒径2.0~4.5mm)の順に根粒着生が良好となり、小粒厩肥区における窒素固定能が顕著に抑制されることを認めた。 これらの一連の根箱栽培法を用いた施用厩肥にかかわ る試験結果より、ダイズの根粒着生および窒素固定能に 対する施用厩肥の影響が、その施用法、化学的性質およ び粒径の違いによって異なることが明らかとなった。 インゲンの窒素固定能かダイズやラッカセイに比べて 顕著に低い原因を解析することを目的としたいくつかの 試験を行った。インゲン根粒菌の土着状況について調べたところ、インゲン根粒菌は農耕地、未耕地の区別なく広く分布するが、それらによる根粒着生あるいは窒素固定能は貧弱であり、農業上有益と考えられるものはごくわずかであった。なお、比較的窒素固定能の高い菌が、インゲン作付歴のある畑地に多く生息していることを見い出した。分離した数系統の有効とみられる根粒菌株の窒素固定能には大きな差異があり、さらに高い窒素固定能を示す菌株であっても宿主とするインゲン品種が異なれば窒素固定能に大きな差異を示すことを見い出した。また、インゲン品種の中には根粒着生の速度の速いものと遅いものが存在し、後者には根粒着生を抑制する物質が存在することを推察した。インゲンとダイズの着生根粒の粒径別分布を調査した試験では、インゲンにはダイズに比べて窒素固定能の低い小さな粒径の根粒が多く着生していることを明らかにした。さらに、ダイズと同程度の窒素を固定したインゲンの固定窒素の植物体各部位への移行を調査した試験では、根粒以外の植物体各部位への固定窒素の移行度合が著しく低いことを明らかにした。 種子殺菌剤として使用されるチウラムのダイズおよび インゲンの根粒着生および窒素固定能に対する影響を根 箱栽培法により調査した。チウラムの種子粉衣は、ダイ ズでは根系上位部における根粒着生の抑制、インゲンで は根粒着生と窒素固定能の増進に働くことを見い出した。ダイズ根粒菌にはチウラム感受性のものが多く、インゲン根粒菌にはチウラム耐性を示すものが多く存在することを認め、そのことが上記の原因の一つとして働いているものと推察した。これらのことから、窒素固定能が高 く、かつチウラム耐性をもつダイス根粒菌とチウラムの 同時種子処理が、ダイズに対する根粒菌接種効果を増進 させる上で有益な手段となり得るものと考えた。また、インゲン、エンドウ、クローバーおよびアルファルファ根粒菌などRhizobium属のものは、チウラム添加培地で増殖可能であり、ダイズ、カウピーおよびアカシアなどに根粒を着生するBradvrhizobium属のものは、チウラム耐性を保有せず、チウラム添加培地での生育が認められないことから、チウラム耐性を基準にして根粒菌を2分し得る可能性を見い出した。ついで、市販の接種用根粒菌(A1017)のカスガマイシン耐性変異株であるダイズ根粒菌(A1017kas^+)の有効利用について検討した。同根粒菌株が土着根粒菌株に比べて高い窒素固定能をもち、かつ強いカスガマイシン耐性を有することを再確認し、ついで、カスガマイシンの種子処理が土着根粒菌によるダイズの根粒着生の制御に利用し得ることを明らかにした。さらに、カスガマイシン種子処理とA1017kas^+ 菌株接種を組み合わせて、A1017kas^+菌株の接種効果を検討したところ、良好な接種効果が得られることを確認した。このように、上記のチウラムを用いた試験より考察した薬剤とそれに耐性を有する有効根粒菌とを組み合わせた根粒菌の種子処理が、マメ科作物に対する有効根粒菌の接種効果の増進に寄与することを見い出した。さらに、上記の根粒菌接種法は、農業薬剤に代えて抗菌物質を産生する微生物とその抗菌物質に耐性をもつ有効根粒菌とを組み合わせた種子接種方法へ発展するものと期待される。
著者
大久保 力廣 小久保 裕司
出版者
鶴見大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

人工舌の開発にあたり,まずCT画像から日本人の平均的な舌の大きさおよび形態を計測した結果,下顎骨体積は平均87,806mm^2,舌体積は平均78,990mm^2,舌の位置・可動範囲を決定する一つの要因となる舌/下顎骨比率は平均91%であった.舌容量の測定後,空気圧とナイロンストリングの張力を利用した2WAY方式の軟性アクチュエータを舌の柔軟性運動を再現する最適モデルと決定した.また,人工舌に適切な形態・位置変化を行わせるためのアクチュエータの配置や相互干渉を検証し,軟組織モデルを構築するのに適した軟性空気圧アクチュエータモデルを試作した.開発したプロトタイプモデルはアクチュエータ同士の干渉もまったくなく,従来までの多関節ロボットでは到達できない舌固有の曲線でリズミカルな柔軟性運動と形態の多様化を再現することが可能であった.さらに,駆動源を必要としない自己駆動機構を有し,リズミカルな嚥下を実現する人工舌を考案した.
著者
小久保 喜弘 中村 敏子 神出 計 宮本 恵宏 渡邊 至
出版者
独立行政法人国立循環器病研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

市部一般住民における代謝性疾患と頚動脈硬化の進展に関する追跡研究と血管内膜中膜肥厚(IMT)の進展との追跡研究について、生活習慣要因から検討した。正常高値血圧以上で最大IMT値が有意に厚かった。女性の最大IMT値は、血圧と高感度CRP高値との間に交互作用が見られた。また、女性の糖尿病型、男性の境界型以上で平均・最大IMTは有意に厚かった。頸動脈狭窄は血糖が高くなるとリスクが高く、さらに血圧上昇と交互作用が見られた。慢性腎障害は頸動脈硬化の危険因子であり、頸動脈硬化は慢性腎障害の正常高値血圧、高血圧群でさらに進展していた。頸動脈硬化症の予防に、慢性腎障害への進展抑止と血圧のコントロールが重要であるごとがわかった。さらに、追跡研究では頸動脈IMT、特に総頸動脈最大IMTは循環器病発症の予測因子であることが分かった。正常高値血圧、糖尿病型、non-HDLコレステロール高値、喫煙、BMIが保健指導において動脈硬化進展の予防に有効な指標であることが分かった。
著者
西岡 徹 中野 潔
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.30, pp.1-8, 2007-03-17

N コードは、10進数のみで実空間の中での位置を指定するための仕組みである。ユビキタスネットワーク社会における位置指定手法として、優れたものであると考える。N コードでは、全世界を 30 の大領域に分け、大領域を 100×100 の中領域(約 50km 四方)に分ける。中領域の中では、6桁で 50m、8桁で 5m の分解能で位置が指定できる。筆者らは、06年1月に、堺市南区登美丘地区で、GPS 機能付き携帯電話を用い、N コードに基づく児童の安全確保システムの実証実験を実施した。児童の安全確保のシステムでは、電子タグ活用型と携帯電話活用型とが、2つの典型例となっているが、筆者(西岡)は、携帯電話活用型の方が、コストが安く優れていると判断している。The N code is the method for specifying the position only with decimal integer values in the inside of real space. The authors think that N-code is excellent as the position specification method in ubiquitous network society. The whole world is divided into the large domain of 30 in N-code system. The large domain is diveded into the middle domain of 100 times 100 (approximately 50km square) in the system. If we use 6 digits, the granularity is approximately 50m. If we use 8 digits, one is 5m. The authors performed a proving experiment of safety assurance system of children based on N-code method using a cellular-phone in Tomioka area in Minami-ku, Sakai-shi, Osaka-fu at January, 2007. There are 2 typical examples in the field of secure assurance system of children : IC tag type and cellular-phone type. One of the author (Mr.Nishioka) evaluates that cellular-phone type is better because of costs and other factors.