著者
原 朗 山崎 志郎 加瀬 和俊 金子 文夫 岡崎 哲二 寺村 泰 西野 肇 池元 有一 伊藤 正直 植田 浩史 柳 沢遊 沼尻 晃伸 山口 由等 渡辺 純子
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本共同研究では、制度設計と市場経済の関係性の観点から、20世紀の日本経済を概観し、高度成長期の特徴を捉えた。このため、世界経済およびアジア経済の枠組み、日本の産業構造、産業組織、経済政策、企業間関係、労働市場、消費動向、消費者意識の変化について分析した。その結果、戦後世界の安定化と日本と対アジア関係の再構築、産業政策と産業調整、企業間取引、消費構造の高度化など1950年代から60年代に現れた制度設計と市場経済の安定的で特徴的な様相を明らかにした。
著者
大門 高明
出版者
独立行政法人農業生物資源研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本課題では、カイコの眠性決定座位であるmod,rt,Mのポジショナルクローニングを行うことで、カイコの眠性決定の分子機構の解明を試みた。カイコの眠性変異体modについては、その原因遺伝子の同定と機能解析が終了し、modの原因が幼若ホルモンの生合成の異常によるものであることを明らかにした。rtについては、約400kbまで絞り込んだが、有力な候補遺伝子の特定には至らなかった。Mについては、M候補遺伝子の詳細な発現解析を行い、M座がエクジソン生合成に関わる可能性を示唆する結果が得られた。このMの候補遺伝子は、生物のボディプランに関わる重要な遺伝子であるが、形態形成以外にも内分泌系への関与を通して生物の成長や発育タイミングを決定するという、これまで全く知られていなかった新規の役割を担う可能性が示唆された。
著者
仲嶋 一範
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

大脳皮質層形成において必須の役割を有することが遺伝子変異マウスの解析等によって明らかであるにも関わらず、その生物学的機能が長年不明であるリーリンの移動神経細胞に対する機能を明らかにすることを目指した。これまでに、発生期大脳皮質に異所的にリーリンを強制発現することによって細胞凝集が誘導されることを見いだしたので、その詳細な解析を引き続き進めた。まず、受容体に結合できないリーリンを点突然変異で作成し、そのin vivoでの異所的強制発現を行ったところ、凝集塊は形成されないことを確認した。すなわち、細胞凝集は確かにリーリンとその受容体の結合を介した現象であることがわかった。次に、異所的凝集塊内において、遅生まれ細胞が早生まれ細胞を乗り越えて凝集塊の中心近くに配置される現象の特異性を検証するため、リーリン及びGFP発現ベクターを胎生14日で導入し、その後胎生16日にRFP発現ベクターとともにDab1のshRNA発現ベクターを導入した。その結果、Dab1がノックダウンされた赤色細胞(遅生まれ細胞)は緑色細胞(早生まれ細胞)による凝集塊の周辺に留まり、中心近くに向かって進入することはできないことがわかった。そこでさらに2種の既知のリーリン受容体(ApoER2及びVLDLR)についても同様の実験を行ったところ、やはり受容体がノックダウンされた遅生まれ細胞は凝集塊の周辺に留まった。以上より、リーリンは特異的なシグナル経路を使って移動神経細胞の凝集及び"inside-out様式"の細胞の配置を引き起こすことがわかった。
著者
濱野 耕一郎
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

フランス第三共和政が経験した、ドレフュス事件以来の内政危機である「2月6日事件」は、作家たちにどのような反応を引き起こしたのか。本研究はまず、事件が文学者全般に「政治回帰」を強いた事実を明らかにし、その後、ジョルジュ・バタイユ、アンドレ・シャンソン、ピエール・ドリュ・ラ・ロシェルらが、それぞれどのように事件を受け止め、いかなる政治的選択を行い、またそれが彼らの作家活動にどのような形で反映されているか考察した。
著者
冨田 隆 田矢 功司 島村 栄員 岡田 喜克 岩崎 誠 五嶋 博道 吉田 洋一
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.17, no.8, pp.1574-1578, 1984-08-01
被引用文献数
20

大腸癌治癒切除例のうち手術時隣接臓器への浸潤が認められ他臓器合併切除を施行したものは 17.2% (10/58) で, 長期生存は3年10ヶ月, 2年6ヶ月の2症例であるが, 局所再発や播種性腹膜炎による死亡は2例のみで, 合併切除の有効性を示すものと思われた. 肉眼的他臓器浸潤例のうち組織学的に癌浸潤は 57.1% にみられ, 他の42.9%は結合織や膿瘍形成による炎症性癒着であった. 特に膿瘍形成例でその内腔に癌細胞が浮遊し, 相手臓器まで膿瘍腔が連続進展していることから癌浸潤が考えられた. したがって炎症性癒着といえども癌直接浸潤を考慮すべきである.
著者
土屋 孝次
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1、本研究期間は、司法制度改革推進法の制定、司法制度改革推進本部の設置及び改革関連法の成立により、わが国に法の支配を根付かせるための改革がはじまった時期にあたる。しかしながら、司法制度改革推進本部の活動において、弾劾制度や懲戒制度、苦情処理制度に関する具体的な改革提案は見られない。本研究では、裁判官に関する苦情申立てが国民に開かれていない点、処分が戒告と科料に限定されており軽微と思える点などの理由により、年間500件以上もの裁判官に対する苦情が弾劾手続へ流れている実体を問題と考える。性質を異にする弾劾手続と懲戒手続の連動が憲法上望ましくないのであれば、停職、事件配点中止などの懲戒処分の追加、懲戒手続への国民の関与を認める制度、もしくは内部規律に関する新たな苦情処理制度の導入などを検討すべきである。もっとも、手続導入に際しては、個々の裁判官が主権者たる国民の信頼を確保しつつ、司法部内外からの不当な圧力に抗する事ができるよう、公開原則を維持する等の配慮が必要と考える。2、アメリカ合衆国においても、司法部の員数拡大により一部にみられる質的低下、終身任期による裁判官の高齢化、そして国民に対するアカウンタビリティの確保を当然とする風潮がみられ、裁判官規律制度の改革が進められている。本研究においては、下級審裁判官の弾劾手続の簡略化は、議会の負担増、司法部の人的拡大という現実の前には、政策的には理解できるとみなす。しかしながら、弾劾権は裁判官の独立が濫用された場合に適応できる例外的な憲法制度である。このため、より一般性のある懲戒手続としての司法協議会改革法に着目する。その行使は司法部の自律的判断に委ねられており、手続き実施のあり方については議会による不断の監視が行われている。手続の大部分が非公開である点、控訴裁長官により苦情却下事例が多い点などの問題は残るものの、同法の基本構造には、裁判官の独立とアカウンタビリティのバランスを確保するという憲法的価値が見いだせると評価する。今後は、同法手続きの具体的事例に対する個別的検討、およびカリフォルニア州憲法に見られる市民代表を構成員とする裁判官規律手続の展開を吟味する必要がある。
著者
佐藤 毅 佐藤 卓巳 川浦 康至 市川 孝一 津金沢 聡広
出版者
一橋大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1991

本研究は情報化が大衆文化のありかたにどのような変容をもたらしつつあるかを明らかにしようとしたものである。この研究の初年度にあたる本年度は、先行研究の収集とその分析を試みつつ、研究の粋組づくりと、若干の個別研究にふみこんだ。研究に大別して二つに分れて行なわれた。その第1は、関東グル-プによって行われた「ヴィデオゲ-ム」を事例にとった研究である。ここではまず研究の粋組づくりが行われ、“人ーメディア相互行為"の位置づけを試みた。すなわち、メディア内世界での人々のメディア依存の深化と高度化が、同時に、そこでの経験の自在感や自律性を高めることを指摘した。次に先行研究を国内と国外に分けてレビュ-し、また新聞と雑誌の記事の分析を通じて、ヴィデオゲ-ムをとりまく、論調の分析を行った。そこでは新しいソフトの開発がきっかけで論調の量と内容に変化が生まれていることがわかった。さらに、来年度の継続研究として、事例調査とアンケ-ト調査に着手している。第2は、関西グル-プによる、「カラオケ」を事例とする研究である。ここではまず家庭における情報・メディア機器の利用実態調査をふまえて、カラオケ歌唱行動やカラオケ文化の変容と類型化の試み、そのメディア社会史の分析などを行った。ここでは、カラオケ文化が高度情報化時代の産業的=技術的基盤の上に成立した現象であること、テ-プ・カラオケからLDカラオケへの移行のなかで、ナイト文化、ボックス文化、ワゴン文化、ホ-ム文化と四つの類型に分けられるに至っていること、そしてそれぞれに人々の仮想の「生きがい」が発散されていることが見出された。なお、本研究の詳細は別冊「情報化と大衆文化ー実績報告書」を参照されたい。
著者
鈴木 利治 楊 治 胡 乃武 周 才裕 かく 燕書 児玉 光弘 上山 邦雄 三浦 東 HAU Yanshu 二瓶 敏
出版者
名古屋経済大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

1 調査研究の目的と方法1970年後半以降中国では、社会主義市場経済の構築という方向での経済運営が劇的に展開されてきている。それは、現実的には、企業改革と開放政策という、2つの政策を軸に進められてきた。企業改革については、国有制度を残しつつ、企業経営において、競争原理を積極的に導入し、計画経済的な集中計画/管理の持つ経済阻害要因の排除を試みてきた。そして、計画経済への回帰が不可能なところにまで進展してきている。このような経済運営を進めるに当たり、競争力の基礎を形成する機械設備と技術水準の面で、老朽化・数量不足と水準の低さが足枷となっている。また急激な経済成長を支えるためには、原材料と設備が必要であるが、それを確保するための資本蓄積が無いという状況で、外資導入と技術移転のためにはが開放政策は不可欠であった。しかし、中国経済は、潜在的経済発展の大きな可能性を秘めているにもかかわらず、現実の経済運営において、必ずしも、それを顕在化する能力を発揮しているとはいえない。産業の発展は、経済発展の原動力となるものであるので、産業の自律的発展なしには、経済成長も立ち枯れ状態となる危険がある。中国における産業の現状とその自律的発展の条件を整理し、その課題を乗り越えるための施策を検討することは不可欠といえよう。かかる視点に立ち、基礎的な産業構造の解明を通して、生産力拡大・国際競争力強化の可能性と条件を考察することに本研究の目的がある。本研究は、(1)日中の研究者で共同研究をする、(2)テレビ、自動車、工作機械、鉄鋼、電力の5産業を「鍵の産業」として中心に据える、(3)企業、工場それに施設でのヒヤリングと見学による実態調査を主要な研究手段とするという方法を重視して進めた。2 中国リーディング産業の現状2.1 テレビ組立産業90年代に入り、急激な市場経済化が進み、テレビ産業における企業間競争が激化し、企業の分化・合併・淘汰が進んだ。1996年春からは、「価格競争」が始まり、テレビ産業の再編成と両極化がいっそう進むこととなった。(1)長虹電子集団公司のような内部蓄積型企業拡大、(2)熊猫電子集団公司のような政治救済型吸収合併になる企業拡大(3)牡丹電子集団公司のような地域統合型吸収合併による企業拡大(4)康佳電子集団股分有限公司のような多省籍企業型吸収合併による企業拡大(5)「熊猫」-フィリ
著者
近藤 洋史 森下 正人 蘆田 佳世 大塚 結喜 苧阪 直行
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
心理學研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.480-487, 2002
被引用文献数
1 9

We examined the relationship among intelligence, working memory, and reading comprehension using structural equation modeling (SEMI). Ninety-six participants were instructed to perform two reading comprehension tests and six cognitive tasks: two verbal intelligence subtests, two spatial intelligence subtests, and two reading span tasks. Three latent variables that were called verbal ability, spatial ability, and working memory were derived from the six cognitive tasks. SEMI demonstrated that the latent variables of working memory and verbal ability contribute to reading comprehension, suggesting that central executive functioning related to attention control was mediated among these cognitive abilities.
著者
今村 哲也
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

近隣民事紛争への仲裁的介入から、家庭内暴力・虐待の排除および迷惑防止条例の執行そしてテロ対策のための警察活動まで、警察活動を授権する作用法の行政警察化は避けられない。法治主義原則からは、可能な限りの事前介入要件の厳格化・明確化が人権侵害抑止のために必要であることはいうまでもないが、くわえて組織法的観点からの、第三者機関(審議会)の警察力育成(警察官教育)の充実と、警察の制度と作用・活動にかかる審議会制度の設置・活動が重要である。
著者
杉森 裕樹
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

平成15年〜17年に小児を対象として,経年的に反復測定された踵骨乾式超音波法(AOS100)による骨量指標をもとに,マルチレベルモデル等を応用した成長期骨発育曲線の検討を行った。成長期における骨量増加・蓄積とpeak height velocity (PHV)等の身体発育指標との動き(ピーク)に乖離があることが示された。さらに,千葉県下18市町村の小児(小1〜中3,当該登録学童・生徒数55,464名,男児27,811名,女児27,653名)を対象に,平成13年1月〜平成13年12月に発生した学校管理下の骨折について検討した。平成13年における小児骨折の年間発生数773件(1.4%)で,うち男児(527件:1.9%),女児(246件:0.9%)であった。発生頻度は,学年とともに徐々に増加傾向を認め,男児では中1〜中2で,女児では小5〜小6で発生率のピークを認めた。また,発生月では5月,6月,9,月,10月,11月で多く,発生場所は,男児では屋外の運動場が,女児では屋内の体育館が比較的多かった。発生時間帯は,部活動,体育,休憩時間,昼休み,放課後の順であった。発生理由は,転倒,落下,受け損ない,衝突,捻転の順であった。発生原因は,床・地面が最も多く,人やボールが続いた。発生部位は男女児とも上肢が目立ち(男児62.2%,女児70.4%),手指,前腕の橈骨,上腕の肩関節の順で多かった。その他に,下肢では足指,足,腓骨,脛骨が多く,また男児では鎖骨が6%強であった。また,小児の親を対象に成長期骨量についての意識をテキストマイニングにより評価した。さらに,海外の成長期骨発育への取り組みである米国骨粗鬆症財団(NOF)等の『Powerful Bones. Powerful Girls.』の動向も調査した。今後,わが国の小児における骨折の疫学調査を一層すすめて,小児における骨折の積極的な予防対策が講じられることが望まれる。
著者
丸野 俊一 藤田 敦 藤田 豊 安永 悟 南 博文 加藤 和生
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

3ヶ年間の成果の概要をまとめる以下のようになる。1. 新たなMK式議論尺度の開発: これまでディスカション状況に積極的に参加し、創造的な問題解決行動を遂行していく上で不可欠なスキルや態度やモニタリング能力などを測定すす客観的な尺度がなかたので、新たに3つのコンポーネント(議論スキルの側面,モニタリングの側面,態度・価値の側面)から成り立つMK式議論尺度を開発した。また外部基準尺度を用いてその信頼性や妥当性を検証した結果、信頼性、妥当性は極めて高く、尺度の標準化へ向けての確信が得られた。2. 議論過程のモデル化: ディスカッション過程がどのように展開していくかについて、特にモニタリングに焦点を定め、モニタリングについて3位相モデル(pre-monitoring,monitoring in action,post-monitoring)を提案し、各位相ではどのような側面や内容が思考吟味の対象になるか、またそこで必要とされる思考特性とはどのようなものかについてのモデル構成を行った。3. モニタリング訓練効果: 自己反省的思考、前提の問い直し、常識への疑いなどを吟味することが創造的思考を育む上で不可欠であるという仮説の基に、複眼的思考を育成するようなモニタリング訓練を行い、議論スキルた議論に取り組む姿勢や態度の変容過程を検証した。4.「話し合い」活動に対する素朴認識: 大学生や小学生を対象に、「話し合い」活動に対する取り組みの姿勢や、話し合い活動の意義や価値に対する素朴認識を検討した。特に、教育現場では「話し合い活動」がどのように行われているのか、また子供たちはどのようにその意義や問題点を認識しているかについて体系的な調査研究を行い、対話型授業を効果的に展開していくための教授プログラムや教授環境設計の指針を示した。5. LTD学習法の実践: LTD学習法の手続き的知識やスクリプトを精緻化し、教育現場でその実践を繰り返し、LTD学習法が対人関係技法の開発や創造的・批判的思考の促進や他者への共感的理解の促進などに効果的であることを実証した。
著者
Nakatani Noriyuki Hara Naoyuki
出版者
社団法人応用物理学会
雑誌
Jpn J Appl Phys (ISSN:00214922)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.3204-3208, 1993-07-20
被引用文献数
12

Single crystals of ferroelectric triglycine sulfate (TGS) have been grown from aqueous solution containing 10 mol% of sarcosine. The crystal, referred to as SarTGS, shows a quite different habit from undoped TGS. The concentration of sarcosine incorporated in the crystal is, at most, 1/500 of the solution concentration. Although sarcosine is not chiral, an internal bias field $E_{\text{b}}$ of 40–140 kV/m is produced. The direction and intensity of $E_{\text{b}}$, as well as the domain structure, vary according to the crystal growth sector. The directions of $E_{\text{b}}$ in matching sectors in both $b$ sides of the seed crystal are opposite to each other. In the sectors where the growing surface is parallel to the $b$-axis, no bias field is produced. The cause of such a feature of $E_{\text{b}}$ in the SarTGS crystal is discussed in terms of symmetry considerations.