著者
両角 亜希子
出版者
筑波大学大学研究センター
雑誌
大学研究 (ISSN:09160264)
巻号頁・発行日
no.22, pp.275-293, 2001-03

高等教育をとりまく環境の大きな変化を背景として大学の「経営」のあり方が重要な問題となりつつある。しかしこれについての分析的な研究は我が国においてはまだ必ずしも十分になされておらず、むしろ研究の基礎的な概念や枠組みの設定 ...
著者
ウィボヲ アリフ サルヲ 篠野 志郎 齋藤 敦
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.71, no.605, pp.189-197, 2006

インドネシアのジャワ島は、17世紀から20世紀初頭にかけオランダの植民支配下におかれた。その影響の下、一地方都市であるクドゥスでは、20世紀初頭になり、オランダ人が建てたコロニアルハウスを模した住宅が現地の富裕層によって建設されるようになる。これまでにもジャワ島のコロニアルハウスについては部分的に研究されてきたが、それらは大都市に建つものを対象としている。一方、オランダ人の建てたコロニアルハウスとは対照的に、こうした地元住民が建てた住宅は、インドネシアにおける都市の近代化を考察する上で重要な主題であるにもかかわらず、十全な研究がなされていない。こうしたことから、本稿では2004年から2005年にかけて行った、計3回の現地調査で得られたデータを基に、まずはクドゥスに現存する地元住民が建てたコロニアルハウスの現状を報告するとともに、その特徴をクドゥスでオランダ人が建てたコロニアルハウスとの関係において考察するものである。なお、現在のクドゥスには77棟のコロニアルハウスが現存し、うち実測の許可が得られたのは51棟である。19世紀初頭、クドゥスはオランダ東インド政府の統治下に置かれ、オランダ人が設立した砂糖会社や鉄道会社を基盤とした都市の急速な産業化が興った。この産業化は、時間の経過とともにオランダ人から地元住民の手によるタバコ産業や中国人の企業家へとその主導者を変えながら推し進められた。そうした政治・経済状況を背景に出現したコロニアルハウスは3系統に分類できる。初期のコロニアルハウスであるオランダ人建設のダッチ・コロニアルハウスは、その建設年代や職種に関係なく、(デザイン)様式はほぼ一貫しており、基本的に他の地域に既に普及していたコロニアルハウスの住宅様式を踏襲したものであると推察される。その様式は、多少の修正を加えつつ、タバコ会社以外の地元住民が建てたネイティブ・コロニアルハウスに引き継がれていった。一方、タバコ会社のコロニアルハウスに見られた特徴からは、ダッチ・コロニアルハウスの様式の踏襲とは異なり、住宅様式の独自の展開が窺える。換言すると、この住宅様式の差異は、地元住民がコロニアルハウスを建設する際に、自身の生活様式に適用する過程において1930年代という限られた時間の中で発生した現象であると推察できる。
著者
北原 多作
出版者
社団法人日本動物学会
雑誌
動物学雑誌 (ISSN:00445118)
巻号頁・発行日
vol.6, no.74, pp.435-437, 1894-12-15
著者
福本 義憲 園田 みどり 中居 実 古屋 裕一 黒子 康弘
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ドイツ語圏における第一次大戦期から第二次大戦後にいたる社会文化的なディスクルスの形成と再生産のプロセスを解明するために、研究実施計画に示された枠組みにしたがって、福本、古屋、黒子は社会文化的ディスクルスの形成における「認知的・道具的合理性」および「道徳的・実践的合理性」レベルについての理論的・個別的研究に従事し、中居、園田は「美的・実践的合理性」レベルでの諸現象の研究を行った。研究素材は、1910年から1960年までのほぼ50年間の、ドイツ語圏の各種メディア(新聞・雑誌・文学を含む文字メディア、さらに演劇・歌謡・美術などの芸術メディア、映画・ラジオ・TVなどの技術メディア)に広く渉猟し、その中で上記の理論的枠組みに照らして重要でありかつ時代と地域的特徴をよく表していると思われるものを取り上げて、各人が詳しく分析を試みた。福本は、社会文化的事象のディスクルス分析の理論的考察(「テクスト・ディスクルス・ディスクルス分析」)を行うとともに、第一次大戦前後の権力(Macht)をめぐるディスクルスの形成と再生産の過程を解明するため、特にチューリッヒ・ダダの反市民的ディスクルスの特徴を体現しているヴァルター・ゼルナーを取り上げ具体的かつ詳しく論じた。中居はウィーンのリートの特徴分析を行い、民衆歌謡における社会文化的ディスクルスの形成とその再生産の事情を明らかにした。園田は劇作家カール・ツックマイアーの『ケーペニクの大尉』を取り上げ、「制服」のディスクルス装置を第二帝政期ヴィルヘルム二世統治下のベルリンの時代と地域性と照らし合わせて詳しく論じた。黒子は、メディア現象のエコノミー、自然科学の文化主義的理解、技術的装置と言語の関係などについて、ハーバーマス=スローターダイク論争に即して論じた。その際、黒子は、20世紀の科学技術およびそれをめぐるディスクルスを、ローマ時代に淵源を持つフマニスムスにつながる問題として問い直すとともに、このフマニスムスの問いを発展させ、ゲーテに始まる「世界文学」ディスクルスのもつ社会・経済・文化史的な射程を、マルクス、ブレヒトにおける再編成を通して究明した。古屋は、ベンヤミンのメディア概念の現代的射程をめぐって考察するとともに、マルクス・バウアー『伝達のただ中-ヴァルター・ベンヤミンのメディア概念-』翻訳と注解を行うことで、ベンヤミン研究に貢献を果たした
著者
星 和彦 星合 昊 斉藤 晃 桃野 耕太郎 京野 広一 対木 章 鈴木 雅洲
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.12, pp.2300-2304, 1983-12-01
被引用文献数
2

体外受精・胚移植時に採取されたヒト卵子を成熱度の高いと思われる順に卵子の外観と付着している卵丘細胞の状態から5型に分類した(GradeI〜V)。この卵子のGradeと体外受精における受精蜆初期発生状態との関連性を検討して以下のような成績を得た.胚移植時2〜8細胞期と正常に発育した卵子の割合は,GradeI〜IIの卵子では76%で,III〜Vの場合の22%に比べ明らかに高率であり,われわれの作成した分類法は成熟度をよく反映していた.GradeI〜II卵子の採取率は自然LHサージ後約26時間で64%,HCG注射後約36時間では88%であり,採卵時期として上記の設定時問は適切と思われた。また得られた卵子のGradeと卵胞直径・卵胞液量との間に相関はなかった。
著者
泰松 齊
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

WCに2.5 vol%以上SiCを添加することでWCの焼結性が改善された。WC-4.85 mol% SiCセラミックスは1900℃の無加圧焼結で十分緻密化するが, WC粒径が7μm以上となり, 硬さが低下した。VC 添加は粒成長の抑制には効果的であるが, 焼結を阻害し, 常圧焼結には適さなかった。Cr_3C_2の添加は粒成長を抑制するとともに, 少量添加で, 焼結性を向上させ, 緻密な焼結体の1800℃での作製を可能とした。
著者
中田 彩 沖田 実 中居 和代 中野 治郎 田崎 洋光 大久 保篤史 友利 幸之介 吉村 俊朗
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1-5, 2002-02-20
被引用文献数
10

本研究では, 臥床によって起こる拘縮を動物実験でシミュレーションし, その進行過程で持続的伸張運動を行い, 拘縮の予防に効果的な実施時間を検討した。8週齢のIcR系雄マウス34匹を対照群7匹と実験群27匹に振り分け, 実験群は後肢懸垂法に加え, 両側足関節を最大底屈位で固定し, 2週間飼育した。そして, 実験群の内6匹は固定のみとし, 21匹は週5回の頻度で足関節屈筋群に持続的伸張運動を実施した。なお, 実施時間は10分(n=8), 20分(n=7), 30分(n=6)とした。結果, 持続的伸張運動による拘縮の進行抑制効果は実施時間10分では認められないものの, 20分, 30分では認められ, 実施時間が長いほど効果的であった。しかし, 30分間の持続的伸張運動でも拘縮の発生を完全に予防することはできず, 今後は実施時間を延長することや他の手段の影響を検討する必要がある。
著者
高山 洋一郎 藤田 孝之 前中 一介
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

ワイヤレス通信システムの普及・高度化に伴い,広ダイナミックレンジの高効率,低ひずみ特性の可能性を持つ送信用マイクロ波電力増幅器としてドハティ増幅器が注目されている.ドハティ増幅器は,B級動作のキャリア増幅器およびC級動作のピーク増幅器を直接結合して,低RF電力レベルでキャリア増幅器(CA)の特性を,高RF電力レベルでピーク増幅器(PA)の特性を取り出して,低RFレベルから高RFレベルにわたって優れた特性を実現しようとする増幅器である,しかしながら,2台の増幅器の一般的な直接合成特性の解析・設計理論は確立していなかった.本研究者らは,マイクロ波域での電力増幅器の解析・設計に適応できる理論を提案し,Si MOSFET電力増幅器を設計製作してその有効性を示した.まず,ドハティ増幅器を構成するCAおよびPAへのRF入力信号が等分配の場合について詳細な検討を行った後,本研究者らが提案したより一般的な出力合成回路構成法およびその設計法を拡張して,CAおよびPAへのRF入力信号の配分が等分配でない場合の一般的なマイクロ波ドハティ増幅器回路の設計法を検討提示した.この設計法によりRF入力電力分配比率を変えた場合のドハティ増幅特性を検討し,より高性能のドハティ増幅器構成法の可能性を示した.入力不等分配回路は直接分配型およびウイルキンソン型を試作検討した.アイソレーションがない直接分配型は安定性に課題があるため,ウィルキンソン分配回路により1GHz帯2WクラスのSiMOSFET電力増幅器を製作評価して詳細な検討を行った.その結果,不等分配によりさらに低レベルでの効率の向上を期待できる広ダイナミック特性入出力を確認した.
著者
山尾 泰 斉藤 茂樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.76, no.11, pp.453-461, 1993-11-25
被引用文献数
17

ディジタル移動通信用の低消費電力モノリシック直交変調器を800MHz帯および140MHz帯で実現した.超小形携帯電話機への適用を考慮し,消費電力を著しく低減すると共に,調整箇所を無くしかつ外付部品の不要な完全1チップ構成として設計を行った.このため,回路構成においていくつかの提案を行った.まず定位相差形90度合成器による全体構成を提案し,回路規模およびチップ面積を大幅に削減すると共に,位相調整を無調整化した.次に変調特性の鍵を握るダブルバランスミキサ(DBM)には,アナログスイッチ形DBMを800MHz帯用に採用し,半導体製造プロセスにおける素子バラツキの影響を受けずに高精度の変調波を得ている.更に電流利用効率の高いブートストラップ形バッファ増幅器を出力段用に考案した.試作した800MHz(GzAS)および140MHz帯(Si)直交変調ICは,π/4シフトQPSK変調器として優れた性能を有することが確認された.その消費電流はそれぞれ65mWおよび32.5mWであり,従来に比べ大幅な低消費電力化を達成した.
著者
郭 伸
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)脊髄運動ニューロンに見出された疾患特異的分子異常を再現する動物モデルであるコンディショナルADAR2ノックアウトマウスを用いて、運動ニューロンの脳神経核におけるADAR2ノックアウトによるCa^<2+>透過性AMPA受容体の発現と神経細胞死との関連を調べた。コリン作動性ニューロンが局在する脳神経核では、対照群では100%に保たれていたGluR2 Q/R部位のRNA編集率が90%以下に低下していた。細胞数算定により統計的に有意な神経細胞脱落が明らかになったが、外眼筋神経核では細胞脱落、グリオーシスが見られなかったことから、運動ニューロンはADAR2鉄損により細胞死に陥るが、外眼筋神経核の運動ニューロンはこのメカニズムによる細胞死に抵抗性であることが明らかになった。ADAR2のノックアウトによる運動ニューロン死は、未編集型GluR2をサブユニットに含むCa^<2+>透過性AMPA受容体の増加による細胞内Ca^<2+>濃度の上昇によると考えられる。外眼筋運動ニューロンではCa^<2+>結合蛋白であるParvalbuminの発現量が多く、Ca^<2+>流入によるCa^<2+>濃度の上昇が抑制されることが細胞死に抵抗性である一因であると考えられた。ADAR2ノックアウトマウスの脊髄のWestern blotting解析により、運動ニューロン死には、アポトーシス、それもミトコンドリア障害を介するintrinsic apoptosis経路よりextrinsic apoptosis経路の活性化、オートファジー経路の活性化の関与もあると考えられる。ADAR2ノックアウトマウスは、孤発性ALS様の神経細胞死を呈するので、細胞死カスケードを更に詳しく調べることでALSの病因解析のためのツールになると考えられる。
著者
松永 昭一 山内 勝也 小栗 清
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では統計的手法に基づき正常肺音と異常肺音を識別する手法の研究を行った.本手法の特徴は異常肺音を正確に検出するために,音響特徴を扱うための統計モデルと,呼気/吸気に含まれる音響的特徴セグメントの生起順序に関する統計モデルを用いる.また,韻律情報を用いて乳児の情動クラスを推定する手法の研究を行った.本手法の特徴は泣き声のセグメントと無音セグメントの継続時間の割合を韻律情報として用いることであり,従来のスペクトル情報を用いた手法より識別性能が大きく向上した.
著者
中嶋 康文 上野 博司 溝部 俊樹 橋本 悟
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

血液単球系細胞からのTissue Factor(組織因子)の放出にRaf-MEK-ERK1/2pathway 及びその下流の転写因子Egr-1の関与がRNA 干渉法による遺伝子ノックダウン手技を用いて示唆された。クロドロネート前処理することで、血液中の単球系細胞を抑制したマウスにこれらの遺伝子ノックダウン単球系細胞を注入後、肺梗塞モデルマウスを用いて、肺梗塞の重症度及び生存率を検討したところ、Tissue Factorの発現、炎症系が抑制されることで重症度と生存率が改善した。
著者
石井 勝
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.夏季に下向きリーダが先行する複数の落雷が期待できる鉄塔の近傍での電磁界観測を、栃木県鹿沼市において平成16年度、17年度の夏季に実施した。電磁界観測装置は、電流測定・カメラ観測のため計装されている100m級UHV送電鉄塔から100m程度の場所に設営し、無人で24時間運転された。しかしこの鉄塔での雷電流観測記録は得られず、至近距離の雷撃の電磁界データの取得も叶わなかった。この観測は世界のどこでも試みられておらず、きわめて意義深く重要なので、科学研究費による研究期間終了後も、鉄塔での電流観測が続けられる限り継続する計画である。2.大地に直接落雷した場合と高構造物に落雷した場合の、放電路の等価性において矛盾がないと考えられる帰還雷撃の電磁界モデルを新たに提案し、それを用いて高鉄塔に落雷があった際の近傍の電磁界の発生様相を解析した。鉄塔近傍の数百mの範囲では、鉄塔の影響は電界、磁界で全く異なった様相を示すことが計算上予測される。電流、近傍の電界、磁界の同時計測が1度でも実現すれば、このモデルの妥当性が明らかになり、応用面で重要な、高構造物の遠方電磁界への影響についての議論にも終止符が打たれる。3.公表されたロケット誘雷近傍の電磁界の観測結果を用いて、観測結果をかなりよく再現できる工学モデルを得た。後続雷撃の帰還雷撃電流波は、地上数mの上向き・下向きリーダの結合点から大地と上方に向けて進行を開始し、その速度は光速の数分の1で、大地面で電流波の反射が生じていることが推測される。4.新たに提案した帰還雷撃の工学モデルと、第1帰還雷撃の特徴の、やや長い電流波頭長を組み合わせると、遠方の電磁界波高値と電流波高値の関係が、電流波頭長の短い後続雷撃とは異なってくることを見出した。これが電磁界観測により確認されれば、第1帰還雷撃電流の直接測定と電磁界による推定の相違点が解消される。