著者
金 利昭 本田 慎弥
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_585-I_594, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
10

自転車の車道左側通行を徹底しようとすれば,必然的に自転車利用者には車道上での迂回や歩道上での押し歩きを選択してもらうことになる.しかし現状では自転車利用者が迂回や押し歩きを選択することは少なく,歩道上を違法に通行することが黙認されている.本研究の目的は,自転車の車道左側通行に伴う迂回・歩道押し歩き・歩道通行の発生構造を,主要因である発着地点間の位置関係に着目して解明するこ とである.そのため消費者行動分析で用いられるPSM分析を応用した意識調査分析手法を開発し,幹線道路をケーススタディとしたアンケート調査を実施することにより歩道通行の発生構造を分析した.結果, 交差点間隔が200mと500mの場合,迂回・歩道押し歩きを無理なく選択する発着地点間の位置関係は,出発地から50m以内であることが判明した.
著者
石川 栄一 及川 武夫 萩原 俊男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.673-676, 1959-05-02 (Released:2011-09-02)
参考文献数
6

アルミニウム電解浴に使用する氷晶石は熱分解を受け難いものであると共に,不純分の少ないものが要求される。天然氷晶石は熱分解が少なく不純分の少ない点で好まれている。しかし合成方法も種々研究され良品がえられるようになった。合成氷晶石の不純分のうちケイ素分がとくに問題になるが,ケイ素分の少ない氷晶石を合成するための方法は種々の特許として提案されている。しかしその形態についての詳細な研究は見当らない。著者らはケイ素分の少ない氷晶石を合成するために,まず酸性フッ化アルミニウム法によって合成した氷晶石中に,ケイ素分がどんな化合物として存在するか,どういう混入経過をとるかを化学分析,X線回折によって追求した。その結果,酸性フッ化アルミニウム法によって合成した氷晶石中のケイ素化合物は,ケイフッ化ナトリウム,および非晶質ケイ酸であることを確かめた。また,酸性フッ化アルミニウム溶液に,必要量の60%以上アルカリを添加したときにケイ素分が急増すること,また,非晶質ケイ酸はケイフッ化ナトリウムがアルカリによって解離されて生成することを明らかにした。
著者
北川 隆司
出版者
The Clay Science Society of Japan
雑誌
粘土科学 (ISSN:04706455)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.37-44, 1999-06-30 (Released:2011-09-20)
参考文献数
56
被引用文献数
3
著者
柘植 秀樹
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.4-10, 2010 (Released:2011-07-05)
参考文献数
29
著者
Naoki MORITA Kazuo YONEKURA Ichiro YASUZUMI Mitsuyoshi TSUNORI Gaku HASHIMOTO Hiroshi OKUDA
出版者
The Japan Society of Mechanical Engineers
雑誌
Mechanical Engineering Letters (ISSN:21895236)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.16-00082, 2016 (Released:2016-03-03)
参考文献数
9

Structural elements which have 6 degrees of freedom (DOFs) at each node, such as shell and beam elements, are widely used in structural analysis. A matrix originating from finite element method (FEM) is stored in some sparse matrix storage format with a suitable block size for the number of DOFs at each node. When both 6 DOF structural elements and general 3 DOF solid elements are employed, the sparse matrix storage format becomes complicated due to combination of different block sizes. High computational efficiency of finite element analysis has become more important in large-scale structural problems. The complicated storage format leads to deterioration of computing performance in solving linear equations by an iterative procedure, conjugate gradient (CG) iterations for example. A computational technique is required that allows us to use existing parallel linear solvers without deteriorating the performance for solving linear equation systems originating from combination of solid and structural elements. This research aims to develop 3×3 DOF blocking structural elements to enhance the computational intensity of iterative linear solver, such as the CG method. As numerical results, the proposed 3×3 DOF blocking elements have shown better performance for each CG iteration than the conventional structural elements. The computational efficiencies are 95.0% with single thread execution and 76.6% with 8-thread execution of a theoretical peak performance based on the STREAM benchmark.
著者
見供 翔 市川 和奈 宇佐 英幸 小川 大輔 古谷 英孝 竹井 仁
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.869-874, 2017 (Released:2017-12-20)
参考文献数
29
被引用文献数
2

〔目的〕中殿筋各線維間の異なる作用を明らかにすることとした.〔対象と方法〕健常男性(平均年齢22~34歳)とした.運動課題は30%最大随意収縮の強度での異なる方向への静止性股関節外転運動(1:外転,2:外転+屈曲,3:外転+伸展)とした.運動課題前後の中殿筋各線維の筋厚と筋腱移行部距離は超音波画像から計測し,ぞれぞれの変化率を算出した.〔結果〕筋厚に関して中殿筋前部線維は課題2で,中殿筋後部線維は課題3で有意に高い変化率を示した.筋腱移行部距離変化率は筋厚変化率と同様の結果を示した.〔結語〕中殿筋前部線維は股関節外転作用に加えて屈曲作用を,中殿筋後部線維は伸展作用を有していることが示唆された.
著者
赤星 亮一 大熊 広一
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.135-141, 1985 (Released:2008-11-21)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

市販の熟成ブランデーおよび熟成ウィスキーの蒸気圧,その平衡蒸気成分を測定し,熟成現象とこれらの関係について明らかにした. (1) 長年月貯蔵熟成した蒸留酒のエタノール蒸気分圧および気相エタノール濃度は,同濃度のエタノール水溶液より低く,貯蔵期間に比例して低下してゆく. (2) 蒸留酒のエタノール蒸気分圧,気相エタノール濃度に影響を与える微量成分として考えられる酢酸エチル,アセトアルデヒド,イソブタノール,イソアミルアルコール,酢酸,メタノール,樽材浸出物について,その影響を明らかにした. (3) 熟成蒸留酒では,上記微量成分の影響以上にエタノール蒸気分圧および気相エタノール濃度が低下していることが判明した. (4) 熟成蒸留酒におけるエタノール蒸気分圧,気相エタノール濃度の低下は,液相中でエタノール分子が強く束縛されていることを示している.熟成した蒸留酒では,エタノール分子と水分子が水素結合により会合し,安定なクラスターが生成していると考えられる. (5) 長期間貯蔵した蒸留酒のエタノール蒸気分圧,気相エタノール濃度の減少は,熟成によってエタノール特有の刺激が減少する香味の円熟をよく説明している.
著者
赤星 亮一 大熊 広一
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1-9, 1985 (Released:2008-11-21)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

DSCを用いてエタノール水溶液および長年月熟成のウィスキー,ブランデー,エタノール水溶液の熱分析を行い,蒸留酒の熱的挙動と熟成の関係について研究を行った. (1) 熟成蒸留酒,エタノール水溶液いずれも,その融解サーモグラム上に2つの吸熱ピーク1, 2と1つの発熱ピーク3が観測された. (2) 熟成蒸留酒の各ピークの出現温度は,同エタノール濃度のエタノール水溶液と同じで貯蔵期間による差異は認められなかった.一方,各ピークの面積から算出した融解熱については,ピーク2およびピーク3に大きな差異が認められ,熟成蒸留酒では著しく減少していることが認められた.熟成蒸留酒におけるピーク2の減少は貯蔵期間に比例していた. (3) 蒸留酒中の主要微量成分である酸,エステル,アルデヒド,フーゼル油,樽材浸出物等が融解サーモグラムに与える影響について検討を行った.エステル,アルデヒド,フーゼル油の場合,いずれも含有される濃度範囲においては,その影響はほとんど認められなかった.酸および樽材浸出物はピーク2の融解熱を減少させるが,熟成に伴う熱量値の減少は,これらの影響よりもはるかに大きいものであった. (4) これらの実験結果は,熟成蒸留酒中ではエタノール分子が強く束縛されていることを示しており,熟成した蒸留酒やエタノール水溶液が固体に近い凝集状態に移行し,安定な液体構造が形成されていると考えられる.熟成によってエタノール特有の刺激が減少する蒸留酒の香味の円熟をよく説明しているものといえる.
著者
古賀 邦正
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.29, no.9, pp.695, 1980-09-01 (Released:2011-09-21)
被引用文献数
1 1
著者
福井 治弘
出版者
JAPAN ASSOCIATION OF INTERNATIONAL RELATIONS
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.1975, no.52, pp.97-124,L3, 1975-05-10 (Released:2010-09-01)
参考文献数
51

The article attempts to analyze and explain the decision process of Okinawa reversion in the Japanese government as a case of what the writer calls a model of “critical” decision making. The model and its general paradigmatic perspective are outlined in the first section, while the middle section discusses in terms of the model five selected events in the evolution of the reversion issue in the years 1964-69. The last section summarizes the major points of the discussion and suggests that the model used in the study deserves further elaboration and refinement as a potential additional tool of empirical research and theory building in foreign policy decision making, in the Japanese government and in general.
著者
堀井 徳光 井上 直子 大嶋 繁 冲田 光良 秋元 勇人 根岸 彰生 大島 新司 沼尻 幸彦 小林 大介
出版者
一般社団法人 日本老年薬学会
雑誌
日本老年薬学会雑誌 (ISSN:24334065)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.28-33, 2018-09-30 (Released:2019-10-07)
参考文献数
19

In the Integrated Community Care System, pharmacists are expected to play a central role in addressing patients’ drug problems. Therefore, it is necessary to know the patients’ drug problems as well as the occupations of professionals in solving these problems, and to clarify the problems to be preferentially resolved. Thus, we surveyed care managers working in a district near the Josai University pharmacy about their drug problem recognition and the professionals who solved these problems. Many of the care managers identified “the patient has leftover drugs” and “the patient has declining cognitive abilities” as drug problems. Many of the care managers expected pharmacists to solve the problems of “the patient has leftover drugs” and “the patient does not understand the dosage regimen.” “The patient has leftover drugs,” “the patient needs allotting of drugs to ensure adherence,” “the patient does not understand the significance of the meditation,” and “the patient does not understand the dosage regimen” are drug problems in which pharmacists should preferentially intervene and play a role in the Integrated Community Care System.
著者
松田 真悟
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.57-59, 2018 (Released:2019-07-30)
参考文献数
16

恐怖記憶と関連のある精神疾患の多くは有病率に性差が認められ,女性のほうが高い。この性差の生物学的背景を解明するために,恐怖記憶を忘れる過程(恐怖消去)に着目した研究が進められている。恐怖関連疾患の一つである外傷後ストレス障害の患者は恐怖消去の安定性が低いことから,恐怖消去の性差を担う分子機構を解明することで恐怖関連疾患の有病率の性差に対する生物学的背景の解明やそれを利用した新規治療法の開発へ発展することが期待される。
著者
辻 謙次
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.7, pp.481-486, 1991-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
17

洋酒の代表であるウィスキーは蒸留酒であるが, あのすばらしい香味の発現は熟成過程を経過することにより得られる。特に樫樽との関係は切っても切れない関係にあり, 品質を左右する大きな鍵を握っていると言っても過言ではない。そこで, ウィスキーの熟成等の研究を通じて, 最高級のウィスキー造りに情熱を燃やしておられる筆者に, 樫樽貯蔵中における熟成のメカニズムについて解説していただいた。
著者
加藤 隆雄
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.5-24, 2014-05-31 (Released:2015-06-03)
参考文献数
49

「ポストモダン」論によって影響を受けた1980年代後半の日本の教育社会学を「ポストモダン教育社会学」と呼ぶことにする。それは,「モダン」としての教育・学校制度の異化に向かったが,アリエス,ブルデューと並んでインスピレーションの供給源となったのが,『監獄の誕生』におけるフーコーの「規律訓練」の視点であった。しかし,1990年代以降の教育システムの変動によって,異化の手法で捉えられた教育・学校制度の理解は不十分なものとなり,ポストモダン教育社会学の訴求力も低下していく。他方,フーコー研究においては,2000年代以降,規律訓練の概念が「生政治」論の一部であることが明らかになるのだが,1990年代以降の教育システムは,まさにこの生政治論的視点からよりよく捉えうることをフーコー理論を概略しながら論じた。
著者
大熊 孝
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.259-266, 1987-06-20 (Released:2010-06-15)
参考文献数
32
被引用文献数
2

霞堤の機能は、従来の河川工学関係書では、堤防の重複部分における遊水による下流に対する洪水調節効果が、第一番に挙げられてきた。しかし、霞堤は一般的には河床勾配が600ないし500分の1より急な河川において造られており、その場合、遊水面積が限定されており遊水効果はほとんど無く、むしろ、万一破堤した場合の “氾濫水のすみやかなる河道還元” に主限があった。本論文は、まず、このことを明らかにする。しかし、愛知県の豊川と三重県の雲出川では、河床勾配が数千分の1から千分の1. という緩いところに、霞堤と呼ばれる不連続堤がある。この場合の霞堤は、洪水遊水効果に第一の目的があると言わねばならない。ところで、急流河川における霞堤は現在でも各所で見かけることができるが、緩流河川における霞堤は管見にして豊川と雲出川だけである。豊川や雲出川の洪水遊水方式は、江戸時代では一般的に採用されていた治水方式でもある。しかし、これらは江戸時代に霞堤とは呼ばれていない。一方、急流河川の霞堤も、江戸時代には「雁行二差次シテ重複セル堤」と表現されてはいるが、霞堤という呼称は与えられていない。急流河川の霞堤と緩流河川の霞堤とでは、形態上は似ていても機能上はまったく異なるわけであり、何故同じ名称で、何時からそう呼ばれるようになったかが問題である。そこで、本論文の第二の目的として、霞堤の語源について探索してみる。結論として、“霞堤” なる言葉は江戸時代の文献には現われず、明治時代以降に定着したものであり、その際、急流河川と緩流河川の不連続堤の機能上の違いを明確に認識しないまま、両者とも霞堤と呼ぶようになったことを明らかにする。そして、今後は少なくとも、“急流河川型霞堤” とか “緩流河川型霞堤” とか、区別して呼びならわす必要があることを提言する。