著者
宇野 究人 浅野 倫子
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.136-143, 2023-03-31 (Released:2023-06-16)
参考文献数
28

Synesthesia is a phenomenon in which sensory inputs trigger additional percepts or cognitive processes. This article outlines a method to conduct psychological experiments with synesthetes. However, synesthesia is a subjective conscious experience possessed by only a small percentage of people, therefore, various difficulties arise when treating synesthesia as a subject of empirical psychological research. Consequently, we introduce definitions of synesthesia and the methods of objective measurement of synesthesia in psychological research proposed in previous studies. We further discuss various individual differences among synesthetes.
著者
佐藤 優紀
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.196-197, 2013-03-01 (Released:2014-03-01)
被引用文献数
1

本研究は,2012(平成24)年度日本農芸化学会大会(開催地・京都)での「ジュニア農芸化学会」において金賞に選ばれた.植物が音楽の影響を受けて生育を変化させる可能性については昔から幾度となく話題にされ,クラシック音楽は良い効果を及ぼすというようなことが伝えられてきたが,科学的根拠を欠く事象として疑問視する声も多かった.本研究は,マカラスムギを材料に,発芽や初期生長に及ぼす音楽の影響を再検証するところからスタートしたものであるが,音楽を周波数の異なる音に分けて詳細に解析した点,糖代謝や呼吸といった植物体内の生理変化にまで踏み込んで解析した点,さらには実験結果に基づき独自の分子モデルを提唱した点,が高く評価された.
著者
國仲 寛人 小林 奈央樹 松下 貢
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.658-665, 2011-09-05 (Released:2019-10-22)
参考文献数
44
被引用文献数
1

正規分布は,数学や物理学において最も基本的で,重要な分布関数と考えられている.例えば,実験観測の測定誤差が正規分布に従うというのは,よく知られた事実である.だが実際には,自然界や人間社会に見られる「複雑系」とも称される系においては,べき分布や対数正規分布などの裾の長い分布関数が観測されることが多い.本稿では,対数正規分布が出現する数理的なメカニズムを紹介し,対数正規分布を基本としてべき分布や正規分布が出現し得るということを紹介する.また,自然現象や社会現象に見られる対数正規分布と,その出現メカニズムについて考察する.
著者
中西 大輔 御堂岡 春奈
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2-3, pp.48-57, 2022-12-15 (Released:2023-02-08)
参考文献数
15

This paper presents the results of replications of Asch’s (1946) experiments 1 and 3. According to Asch, people’s formation of their impressions of others is greatly influenced by their central trait with warmth considered to be the important factor. The results of this experiment have been quoted in many social psychology textbooks: that the overall impression of a person is determined by the description of the person as “warm” (or “cold”) regardless of other peripheral traits. In fact, however, it seems that “warm” and “cold” are not the only traits that influence people’s impression formation. In the present study, we replicated Asch’s experiments 1 and 3 (experiment 1, N=71) and extracted the trait that seemed to influence interpersonal impressions through a preliminary survey (N=69) in experiment 2. We examined whether these traits had a strong influence on forming interpersonal impressions as well as “warm” and “cold” (experiment 3, N=73). The results showed that “warm” and “cold”; “polite” and “blunt,” which were considered peripheral characteristics in Asch; and “expressive” and “expressionless,” which were newly examined, all had a significant effect on impressions.
著者
Kenya Kusunose Shuichiro Kashima Masataka Sata
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
pp.CJ-23-0308, (Released:2023-06-07)
参考文献数
12
被引用文献数
18

Background: To assist healthcare providers in interpreting guidelines, clinical questions (CQ) are often included, but not always, which can make interpretation difficult for non-expert clinicians. We evaluated the ability of ChatGPT to accurately answer CQs on the Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Hypertension (JSH 2019).Methods and Results: We conducted an observational study using data from JSH 2019. The accuracy rate for CQs and limited evidence-based questions of the guidelines (Qs) were evaluated. ChatGPT demonstrated a higher accuracy rate for CQs than for Qs (80% vs. 36%, P value: 0.005).Conclusions: ChatGPT has the potential to be a valuable tool for clinicians in the management of hypertension.
著者
橋本 晃生
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.230-239, 2018-12-25 (Released:2019-12-25)
参考文献数
40

カンタリジンは一部の甲虫類が有する有毒な防御物質である.一方,カンタリジンを生産する昆虫やカンタリジンそのものには,様々な分類群の節足動物が誘引され,それらはカンタリジンあるいはその類似物質を利用する.その利用の仕方は,(1)自身の防御物質として利用(またはメスがオスから交尾時に受け取る婚姻贈呈物に含まれるカンタリジンを用いて自身の卵を防御する),(2)食物/寄主探索に利用,(3)集合フェロモンとして利用の3つに分類できる.このようなカンタリジンを介した種内/種間相互作用を伴う特異な生物群集をカンタリジン・ワールドと呼び,本稿では,カンタリジン・ワールドの研究小史について概説し,その内部における種間相互作用の時空間的変化,さらに種内相互作用として雌雄間でのカンタリジンの授受に関する最新の研究を紹介した.
著者
Susumu Yoshizawa Tomonori Azuma Keiichi Kojima Keisuke Inomura Masumi Hasegawa Yosuke Nishimura Masuzu Kikuchi Gabrielle Armin Yuya Tsukamoto Hideaki Miyashita Kentaro Ifuku Takashi Yamano Adrian Marchetti Hideya Fukuzawa Yuki Sudo Ryoma Kamikawa
出版者
Japanese Society of Microbial Ecology / Japanese Society of Soil Microbiology / Taiwan Society of Microbial Ecology / Japanese Society of Plant Microbe Interactions / Japanese Society for Extremophiles
雑誌
Microbes and Environments (ISSN:13426311)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.ME23015, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
46
被引用文献数
4

Diatoms are a major phytoplankton group responsible for approximately 20% of carbon fixation on Earth. They perform photosynthesis using light-harvesting chlo­rophylls located in plastids, an organelle obtained through eukaryote-eukaryote endosymbiosis. Microbial rhodopsin, a photoreceptor distinct from chlo­rophyll-based photosystems, was recently identified in some diatoms. However, the physiological function of diatom rhodopsin remains unclear. Heterologous expression techniques were herein used to investigate the protein function and subcellular localization of diatom rhodopsin. We demonstrated that diatom rhodopsin acts as a light-driven proton pump and localizes primarily to the outermost membrane of four membrane-bound complex plastids. Using model simulations, we also examined the effects of pH changes inside the plastid due to rhodopsin-mediated proton transport on photosynthesis. The results obtained suggested the involvement of rhodopsin-mediated local pH changes in a photosynthetic CO2-concentrating mechanism in rhodopsin-possessing diatoms.
著者
藤川 和男
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.685-692, 1986-09-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
46

無限個の自由度を扱う場の理論においては, 古典的な対称性が必ずしも量子化した理論では保たれず, いわゆる量子異常 (アノマリー) 現象が生ずる. この現象は一方では場の理論が持つ新しい可能性とか物理的内容を意味しており, 他方では基本的な対称性 (例えばアインシュタインの一般座標変換) が量子論では破れるといった結果にも導く.
著者
浦辺 研一 池本 孝哉 武井 伸一 会田 忠次郎
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.129-135, 1986-05-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
8
被引用文献数
4 5

1978年と1980年の6月から7月にかけて,埼玉県大宮市郊外の水田に生息するアキアカネ幼虫とシナハマダラカ幼虫について,捕食者-被捕食者関係の野外調査を行った。アキアカネ幼虫は,6月上旬には5∼9齢幼虫になり,7月上旬までに10齢(終齢)を経てすべて羽化した。6月上旬における生息密度は高く,調査したA水田(920m2)では約5万匹,B水田(1,000m2)では約3万匹と推定された。シナハマダラカ幼虫密度は,アキアカネ幼虫密度が減少した6月下旬頃から増加した。またA水田内における両者の場所的な分布には重なり合わない傾向が認められた。水田より捕獲したアキアカネ幼虫の腸管内容物について,血清学的方法によりシナハマダラカ幼虫体成分の検出を試みたところ,陽性反応を示し,実際の水田における捕食関係が確認された。その割合(捕食率)は6月上旬には低く(0∼2.7%),6月20日前後に最も高まる(33.3∼56.5%)傾向がみられた。アキアカネ幼虫によって捕食されたシナハマダラカ幼虫の割合(被捕食率)は,6月上旬から中旬にかけて90∼100%の値も推定され,シナハマダラカの発生初期におけるアキアカネ幼虫の捕食者としての役割は大きいと思われた。
著者
鈴木 尚
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.1-32, 1985 (Released:2008-02-26)
参考文献数
26
被引用文献数
3 4

本編は徳川将軍5体と夫人9体,および大名30体と夫人14体,計58体の頭骨形質についての研究結果である。徳川将軍の顔は彼らの個人差を超越して,江戸時代の庶民と次の点で区別される。それは超狭顔型で,狭くて隆起の強い鼻,高くて大形の眼窩,退化した上•下顎骨などである。これらの形質は世代を重ねるとともに強化されるので,14代将軍,徳川家茂(1846~66)では,この点に関して最も高度である。上の形質はまた仁孝天皇の皇女,和宮(静寛院宮)でも全く同じである。また江戸時代の大名では,将軍ほど高度ではないにしても,同じ形質をもっていたので,上の形質は江戸時代の貴族形質と見なされる。これら江戸時代貴族は,天皇家は別として,中世日本の庶民または,それに近い階層から由来したと信じられているので,これら貴族形質もまた当時の庶民形質の中から,たぶん下に述べる遺伝と環境の2因子の相乗作用にもとずいて顕現したものに相違ない。1.遺伝 将軍夫人と大名夫人の間に認められる顔型の類似性は,250年以上にもわたって,江戸時代貴族と同類の顔面形質をもった女性が夫人に選ばれていたことを物語っている。もし幾世代にもわたって上記の形質をもつ女性が夫人として選ばれるならば,当然,これらの形質は将軍や大名となるべき子孫に高度に伝えられるはずである。2.環境 各将軍に見られた発育不全の上•下顎骨と老年者ですら咬耗のない歯をもっているという非庶民的な特殊性は,彼らの食生活を含む総ての生活様式が,伝統的に特殊なものであることを示す。これと同じ環境的因子は大名やその夫人にもそのまま適用されるであろう。結局,将軍と大名とは形質人類学的にみて,江戸時代において特殊に文化された人たちと見なすことができる。
著者
大原 浩樹 伊藤 恭子 飯田 博之 松本 均
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.137-145, 2009-03-15 (Released:2009-04-30)
参考文献数
16
被引用文献数
24 27

魚鱗コラーゲンペプチド(2.5g, 5g, 10g)の3用量の用量設定と豚皮コラーゲンペプチド(10g)の有効性確認を目的に,プラセボ群を設定して各々を4週間摂取して摂取前後の皮膚状態の変化を二重盲検法で比較した.その結果,魚鱗コラーゲンペプチド摂取によりその用量に応じて角層水分量の増加傾向が見られ,特に,30歳以上を対象とした層別解析で魚鱗コラーゲンペプチド5g以上の摂取により角層水分量の有意な増加が認められた.一方,豚皮コラーゲンペプチド摂取では有意な変化は得られなかった.この結果から,魚鱗コラーゲンペプチドの摂取は角層水分量の増加に有効であると考えられた.また,その他の評価項目(経表皮水分蒸散量,皮膚粘弾性,皮膚所見)に関しては,コラーゲンペプチド摂取に起因すると推定される変化は認められなかった.
著者
松本 敏治 崎原 秀樹 菊地 一文 佐藤 和之
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.263-274, 2014 (Released:2015-11-19)
参考文献数
20

本研究では、自閉症スペクトラム児(ASD)・知的障害児(ID)・定型発達児(TD)の方言使用について、国立特別支援総合研究所の研修受講者、および近畿・四国・九州の特別支援教育関係教員を対象にアンケート調査を実施した。さらに、高知市内の特別支援学校(知的障害)の教員に、担当する個別の児童生徒の土佐弁語彙と、対応する共通語語彙の使用程度の評定を求めた。また、調査1の回答者に対してASD・ID・TDへの自身の方言使用程度についてアンケート調査を行った。結果は、1)すべての調査地域でASDの方言使用はID・TDにくらべ少ないと評定された。2)高知においてASDの方言語彙使用は非ASDに比べ顕著に少なかった。3)教師による方言は私的な場面でのTDへの話しかけで多用され、学校場面でのASDおよびIDへの話しかけにおいては減少していた。これらの結果について、方言の社会的機能の側面から考察を加えた。
著者
石川 敬史
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1_96-1_116, 2019 (Released:2020-06-21)
参考文献数
21

一七七六年にイギリス領北アメリカ植民地がヨーロッパ諸国に公表した 「独立宣言」 は、イギリス本国において一六八八年の名誉革命を経て形成された議会主権が植民地にも及ぶという主張に対する異議申し立てであった。 一七八三年のパリ条約で独立が承認されたアメリカ合衆国は、条約義務の履行のために統一的な国家を創設する必要に迫られたが、「独立宣言」 に記された革命の原則が、主権を有する国家の設立の足枷となったのである。 アメリカにおいて主権的国家の設立の最大の障害となったのは、アメリカ入植以来約一六〇年にわたって主権を行使してきた一三諸邦の存在であり、それらを超えて存在する国家主権とは彼らの経験にないものであった。 本稿では、ジョン・アダムズ、アレクザンダー・ハミルトン、ジェイムズ・マディソンら、「建国の父たち」 の議論を中心に、初期共和政体における主権国家の創設の試みを検討し、特にアメリカにおいては、司法権力がアメリカ合衆国における主権的機能の担い手となった経緯を明らかにするものである。