著者
山村 ひろみ 渡邊 淳也 GIBO LUCILA 鈴木 信五 藤田 健 黒沢 直俊 岸 彩子 小熊 和郎 大森 洋子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は現代ロマンス諸語のうち代表的な、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガルポルトガル語、ブラジルポルトガル語、ルーマニア語のテンス・アスペクト体系の対照研究である。これら6つの言語のテンス・アスペクト体系を記述的に考察するために、本研究はまずAgatha ChristieのThe Thirteen Problemsの各言語訳と原本のパラレルコーパスを作成した。次に、同コーパスを用いて、①各言語における「大過去」の記述および分析し、従来指摘されることのなかったロマンス諸語間のテンス・アスペクト体系の異同を具体的に示すと同時に、②各言語に特有のテンス・アスペクト現象の再検討を行った。
著者
星 裕一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

(1)劣p進体上の多重双曲的曲線、p進局所体、Kummer忠実体上の双曲的曲線、という3つの数論幾何学的対象に対するGrothendieck予想型の成果を得た。(2)望月新一氏との共同研究により、組み合わせ論的遠アーベル幾何学を発展させた。(3)双曲的曲線に付随する外Galois表現の核や像の研究を行い、数体上の一点抜き楕円曲線の上の穏やかな有理点の有限性を証明した。(4)合同部分群問題の副p版に関する共同研究を飯島優氏と行った。(5)p進Teichmuller理論における重要な対象である冪零許容固有束、冪零通常固有束の標数が3の場合の研究を行った。(6)数体の単遠アーベル幾何学を発展させた。
著者
林崎 健一
出版者
北里大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

シロザケの鱗の輪紋パターンから、年齢の判別を自動化するための基礎的ソフトウェアの開発とその評価を行った。鱗の顕微鏡画像をCCDカメラを用いて取り込み、ぼかし法により画像変換して年輪である休止帯を強調した後、最長軸方向に鱗の焦点から縁辺部までの濃淡の値を計測し、さらに0から1の間の値に変換したものをニューロシステムへの入力とした。ニューロコンピューティングにはSUN SparcSattionl上でニューラルネットシミュレータPlaNet5.7を用い、学習方法には逆誤差伝搬学習法(バックプロパゲーション)を用いた。多数標本に基づく学習では、200から300回程度の学習で収束し、学習済みのデータに対して100%の認識率を得たものの、未学習のデータに対しては正確な判別ができなかった。さらに、学習後のシステムの中間層の隠れニューロンとニューロン間の結合荷重の観察を行ったところ、中間層の隠れニューロンの値は、各年齢内でよく似た反応パターンを示した。また、結合荷重の観察から、鱗の縁辺部分から外の空白領域に比較的強い反応が認められた。このことから、学習後のニューラルネットは、年齢に対してある程度の認識を行っているものの、その情報は鱗のサイズの寄与が大きかったものと推察された。さらにこの例では、入力ニューロンの数が450と大きいのに対してデータの数が少なかったため、局所的な最適解(local minimum)に落ち込んでいるのかもしれない。大標本に基づく学習は現在解析中であるが、今後は、年齢の位置情報を認識可能であるかを検討する必要があるものと考えられる。そのためにはノイズの少ない人工のデータを用いた実験を行い、学習方法の改良も検討する必要がある。
著者
松宮 政弘
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

カニ・エビなどの甲羅を構成するキチン質は地球上に豊富に存在するが、その多くが利用されずに廃棄されている。一方、このキチン質をキチン分解酵素(キチナーゼ)で分解すると、機能性食品素材として有効活用できることがわかりだした。本研究ではカニ・エビのキチンの分解に適したキチナーゼを海洋生物から探し出す基礎研究、それを活用するための応用技術開発を実施した。2魚種の胃より各2種、2種のタコより各1種、計6種のキチナーゼを分離し、機能を解析した。さらに魚類、軟体動物、カニより計11種のキチナーゼ全長遺伝子を取得した。機能解析から活用できるキチナーゼの遺伝子を選び、微生物によるキチナーゼ生産を実施した。
著者
脇坂 聡 乾 千珠子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

一般的な「味覚」は味刺激の伝導のみならず、「歯ごたえ」「舌ざわり」などの一般体性感覚などを統合した感覚である。近年味覚障害が増加傾向にあるが、その場合は味覚と一般体性感覚が統合した感覚障害である。味覚障害は女性に多い疾患だが、性差の原因は未だ不明である。本研究では、女性ホルモンが味覚障害に及ぼす影響について女性ホルモンの分泌量の異なる幼若期、思春期、成熟期、更年期の4ステージにおける亜鉛欠乏性味覚障害モデル動物を作製し、基本味に対する嗜好性の変化を行動学的に調べ、味刺激に対する神経活動の変化を免疫組織学的手法を用いて調べる。さらに一般体性感覚の変化も検討する。
著者
中島 利博 川原 幸一 西 順一郎 三浦 直樹
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016

キルギスではRheumatic fever : (以下、RF)が未だに猛威を奮っている。さらに、顕在化しないRFの後遺症も含めたRheumatic heart diseases(以下、RHD)が食生活(肉食、ウオッカ)、環境因子(低酸素)と併せて当該地域での死因の過半数を占める60歳までの心不全の潜在的リスクファクターであることを報告していた。10年を超える継続的な医療支援によりキルギスのほぼ全土を網羅する詳細なフィールド調査を行い、RF/RHDの有無、心エコーなど理学的所見、溶連菌など細菌感染症の頻度、家族歴など2000人を超える住民から100を超える項目に関する調査を完遂していた。その結果より、溶連菌以外の細菌感染の陽性率も高く、その一因に未だに主流であるバイオマス燃料による粘膜免疫の低下が考えられることを見出した。呼吸器分野の専門家を加え、感染の遷延化・慢性化に対する宿主因子の探索を行った。さらに細菌感染に対する啓蒙活動を行いその効果を検討した。キルギスの食生活について循環器疾患や免疫に対する影響を検討するため生理活性を測定した。その結果キルギスの特産として知られるある食物が本国のものと比較して血管内皮細胞に対して高い抗酸化作用を有していることが示唆された。上記の成分を分析しRF/RHDの予防として活用できるのではないかと期待できる。啓蒙活動についてはロシア語に加えてもう一つの公用語であるキルギス語の母子手帳を作成し、現地JICAを通して国民に配布を開始した。また名誉領事会議において本活動の重要性をキルギス政府に対しても働きかけを行った。既に配布済みであるロシア語が広く使われている都市部においてはRF/RHDの減少が認められることからその効果が期待される。
著者
太田 真祈
出版者
武庫川女子大学短期大学部
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

藍の生葉染めでは、条件によっては青く染色できない場合がある。藍の色素であるインジゴの生成過程で、その構造異性体である赤色色素のインジルビンが生成することも一因であるが、どのような条件でインジルビンが生成するのか、詳しく検討されていない。またこの赤色のインジルビンを積極的に染色に利用すれば、インジゴの青と混ざって、赤紫色の染色物を生葉染めで得ることが可能であると考えられる。インジルビンは、藍の葉に含まれるインジゴの前駆体であるインジカンの加水分解物であるインドキシルと、その酸化生成物であるイサチンとの反応で生成することがわかっている。インジカンは試薬として入手可能であるが、高価である上、酵素でしか加水分解できないので、インジカンの代わりに安価な試薬である酢酸インドキシルを用いて、どのような加水分解条件でインジルビンが多く生成するかを調べたところ、pHや温度等に依存することがわかった。また、酢酸インドキシルからアルカリ加水分解でインドキシルを生成させ、pHを中性付近に下げ絹布を染色したところ、長時間放置しておいたものが赤紫色に染色された。酢酸インドキシルのメタノール溶液を絹にしみこませて長時間放置することによっても赤紫色に染色されることがわかり、加水分解されずに残っていた酢酸インドキシルが絹布内でインジルビンに変化することがわかった。さらに、生葉染めを様々な条件で検討したところ、インドキシルが酸化される時にアルカリ性になる条件、また水への溶解性の小さいイサチンを可溶化できるような条件で赤紫色に染色することができた。
著者
佐藤 環
出版者
常磐大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

近世諸藩における弓術師範の養成・登用において,業績主義的要素がいかに投影されたかを実態として明らかにすることが本研究の目的である。弘前藩ではまず藩外から高名な射手を登用し弓術師範となした段階,次にその移入師範の教導により弘前藩士による弓術師範の再生産が可能となった段階,そして全国規模の競射会である「通矢」参加によりそこでの成績が弓術師範任用基準として重視される段階へと進んでいった。水戸藩学弘道館では弓の腕前の試験である「見分」が実施され,業績主義的な教育の制度化が試みられている。
著者
大西 志保 馬 寧 平工 雄介 川西 正祐
出版者
鈴鹿医療科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

大気中浮遊微粒子はヒトに発がん性があり、粘膜付着や肺への進入により炎症を起こす。本研究では、黄砂を曝露したマウスの肺に炎症が認められた。また、酸化DNA損傷マーカーの8-oxodGの増加や、ニトロ化DNA損傷マーカーの8-ニトログアニンの増加が示された。プロテオーム解析では、黄砂曝露により発現量の増減がみられるタンパク質が見つかった。抗酸化および抗腫瘍に関わるタンパク質のひとつが増加傾向、癌抑制に関わる可能性とヒト肺腫瘍での減少が報告されているタンパク質のひとつが減少傾向にあることが分かった。以上、黄砂曝露によって炎症と酸化ニトロ化DNA損傷が起こる可能性が示された。
著者
花田 智
出版者
首都大学東京
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2017-06-30

今までアンモニアから亜硝酸・硝酸への酸化は硝化細菌によって酸素存在下で進行するプロセスと考えられてきた。しかし、酸素非発生型光合成細菌は亜硝酸だけではなくアンモニアも光合成電子伝達の電子供与体に成り得ると考えられるが、アンモニアを嫌気的に酸化できる酸素非発生型光合成細菌は未だ発見されていない。本研究において海洋や温泉といった環境から無酸素条件下でのアンモニア酸化能を有する海洋性または好熱性の酸素非発生型光合成細菌の培養に成功した。これら細菌のアンモニア酸化に伴う中間産物が何であるかは明らかとなってはいないが,世界で初めての培養例であると言える。
著者
縫田 光司 山下 剛
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

現代の暗号分野では、数値を秘匿しつつ任意の演算を可能とする「完全準同型暗号」の研究が進み、プライバシー保護やビッグデータ解析など応用面での期待も高まっている。本研究代表者は、同技術の効率的な構成を可能とする新原理を既に提案しているものの、その実現に必要な諸条件を満たす代数構造の具体的構成にまだ成功していない。本研究ではこの問題に対して、群論、代数学、組合せ論など数学の観点および暗号理論的な安全性解析という両面から解決に取り組む。
著者
宇田川 妙子
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

近年グローバル化の一方で、ローカルなものへの注目が高まっている。本研究は、そのなかで改めてローカル、ローカリティが何かを考えるため、元来ローカルな文化が強いとされるイタリアにおいてローカルコミュニティの事例調査を行い、理論的な再考も行った。その結果ローカルとは、それ自体でグローバルと二項対立的に存在するものではなく、グローバル、ナショナル等の関連の中で再編されること、ゆえに近年のローカルブームには批判的視点も必要であること、また近年はローカルな場にこそグローバル等の他の空間が重なるようになり、時間観とともに空間観の再編が起きていること等を明らかにし、新たなローカリティ論への足掛かりを得た。
著者
倉沢 愛子 内藤 耕
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

都市化のプロセスと住民のあいだの組織原理の変遷と過去における機能を探求することを目的とした。基本的には、南部ジャカルタ市レンテンアグン町内を主たる対象地域としてフィールド調査を行ってきた。主に、上からの住民動員システムの代表例である、PKKの活動の観察を通して、住民組織がどのように編成されているのか解明することを試みた。他方、行商や露天商を営んでいる住民に対して個人史を中心とした聞き取り調査を行ってきた。その結果、同郷の親族や知人を頼って農村から出てきて、当初はその知人と同一の業種の仕事をすることが多いことが確認され、都市=農村間のネットワークについて素描することができた。彼らの多くは定住性が高くなく、町内居住者が定住性の高い集団とそうでない集団とに分離していく傾向があることが確認された。また、都市生成を商品流通と人の移動の点から解明するために、レンテンアグン町内にある伝統的市場に焦点をあてて、その歴史、規模、運営方法、出店している商人や買い物客の属性等の調査を行った。商人の多様性、階層性を明らかにする一方で、市場が地域社会の核となっていることを明らかにした。買い物客の分析を通しては、再販売のための仕入れ目的の者が約三分の一ほどいることがわかり、市場が地域のインフォーマルセクターを支える役割をしていることが明らかとなった。調査ではほかに、都市の日常を住民自身の感覚に近いところで表象する大衆紙を中心とした新聞資料の収集、整理に相当時間を費やした。全体として、ジャカルタ南部の都市化においてはフォーマルで強固な組織化の力とインフォーマルでルースなネットワークというふたつの組織原理がせめぎあっており、開発の時代を通して地域社会の二重化が進行してきたと考えられる。
著者
倉沢 愛子 内藤 耕
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

3年間に亘りジャカルタ市南郊の低所得者の集住地区であるレンテンアグン町において、露天商・行商人たち、ならびに同地区内にある伝統的市場で商いをする商人たち(商店主並びに行商人)からその個人史(パーソナルヒストリー)の聞き取りを行なった。また、北部の中国系住民が多く住む商業地区コタにおいて、中国系の商人たちからも同様なききとりを行なった。それを通じて、開発政策の中で烈しく変容する庶民の生活を描き出し、それが大きな歴史をどのように投影しているのかを考察した。
著者
木村 裕介
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

超弦理論に関する研究を進めました。数学の分野である代数幾何学の手法を用いて超弦理論のモデルを調べました。超弦理論は素粒子が点ではなくひも状の物体であるとする理論です。ひも状の粒子は9次元の空間にしか存在できないことが分かっています。私たちの普段目にする空間は3次元ですので、残りの6次元は小さくなり観測を逃れていると考えられています。この6次元空間は数学的に複雑な構造をしており、その上での物理を調べるには高度な数学の手法が必要と考えられます。このような理由から、超弦理論では高次元空間の物理を調べる必要があります。私は代数幾何学の手法を用いて、高次元空間上の物理を調べました。また、超弦理論に関する研究会に参加し、超弦理論への知見を広めることが出来ました。超弦理論の一分野であるF理論で最近、セクションのないモデルに興味が持たれています。セクションのないF理論のモデルは低エネルギー有効理論のゲージ群にU(1)部分を持ちません。私は、K3曲面と呼ばれる複素曲面の直積上の、セクションを持たないF理論のモデルを研究しました。代数幾何学の手法を用いて、調べたセクションを持たないF理論のモデルに現れるゲージ群や物質場を決定しました。これらのモデルを研究をするに当たり、代数幾何学の手法は有効でした。研究結果は論文として発表しました。査読の終了した論文は雑誌 Journal of High Energy Physicsに掲載されました。
著者
加藤 裕基
出版者
宇部工業高等専門学校
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

一般の左固有組み合わせ的かつ単体的なモデル圏についてモティヴィック導来代数幾何学の理論を定式化した. それらを応用して無限圏を用いてモティヴィック・スキームおよびスタックを構成する理論を与えた. 例えばモティヴィックスキームのベクトル束やThom空間を表現するモティヴィック・スタックを無限圏を用いて構成することができる. これらはモティヴィック導来代数幾何学がモジュライ問題に応用できる可能性があることを示している. 研究は論文「Motivic model categories and motivic derived algebraic geometry」にまとめた.
著者
藤川 玲満
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、読本への史学(史書)や地誌からの影響の観点から、近世中後期の学術研究の発達と戯作の形成の関係を明らかにしようとするものである。具体的には、上方の読本作者を研究対象の中心とし、その著述態度と研究史の情勢の関係、書物の受容の様相、史書と地誌の関係等に着目した検討を行う。読本の形成について、創作の技巧の点のみでなく、文壇・学芸の潮流との連繋の観点を加えて総体的に理解することは不可欠と考えられる。時代環境に即した読本史の解釈と、より広い領域からの再評価を推進することを目指す。
著者
小野 太雅
出版者
九州大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

現在、インプラント治療で用いられる歯根膜を持たないインプラント体は、歯根膜由来のバリア機構や固有感覚が存在しないため、細菌感染を生じやすく、過度な咬合圧の原因となることもある。これらの欠点を補うため、歯根膜とインプラント体との複合体である「バイオハイブリッドインプラント(BioHI)」の開発が進められている。申請者は既に、バイオ3Dプリンタを応用し、未分化なヒト歯根膜由来細胞の細胞塊を三次元的に積層した歯根膜様のチューブ型構造体と、インプラント体との複合体の作製に成功している。そこで本研究では、この複合体をラットの顎骨内に移植することで、BioHIとして機能するかを検証することを目的とした。