著者
松好斎半兵衛
出版者
河内屋太助

劇書。正編2巻2冊。刊記は「寛政十二庚申年」、跋文に「とりの初春」とあるので翌13年(1801)発売とみられる。河内屋太助版。奥付には八文字屋八左衛門の墨印があり、売り捌き店の証かとされる。世代交代期を迎えつつある寛政期の大阪歌舞伎を中心に、絵入りの劇界百科全書をめざしたもの。江戸で刊行された同趣の『羽勘三台図絵』(寛政3年[1791]刊、当館請求記号:245-193)『戯場訓蒙図彙』(享和3年[1803]刊、当館請求記号:W99-21)が知られるが、上方の諸習慣や知識を開陳している点で資料的価値が高い。上巻は道頓堀の芝居行事から稽古の様子を描き、下巻では楽屋や舞台裏の光景をみせる。著者の松好斎半兵衛が絵も担当し、当時の生写し流行を背景に、役者は似顔で描かれている。下巻末に人気役者13名を似顔で描き、自筆短冊の模刻が添えられている。(児玉竜一)(2016.2)
著者
高木 徹
出版者
中部大学現代教育学部
雑誌
現代教育学部紀要 (ISSN:18833802)
巻号頁・発行日
no.11, pp.29-34, 2019-03

現行の中学校国語教科書(5 社)に掲載されている教材に関する調査報告である。主に文学教材を対象とし、小説、詩、近代短歌、近代俳句、説明・評論、随筆・随想、古文、漢文の各分野で、どのような教材が採用されているかを調査し、頻出する教材が何であるかを明らかにしたものである。
著者
大橋 春香 星野 義延 大野 啓一
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.123-151, 2007
被引用文献数
12

&nbsp;&nbsp;1. 1990年代以降ニホンジカの生息密度が急激に増加した東京都奥多摩地域において,ニホンジカが増加する前の1980-1985年に植生調査が行われた77スタンドにおいて,1999-2OO4年に追跡調査を行い,植物群落の階層構造,種組成,植物体サイズ型の変化を比較した.<BR>&nbsp;&nbsp;2. 調査地域の冷温帯上部から亜高山帯に成立するシラビソ-オオシラビソ群集,コメツガ-ウラジロモミ群落,ブナ-ツクバネウツギ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集,ススキ-ヤマトラノオ群集,ミヤコザサ-シモツケ群集の計7タイプの植物群落を調査対象とした.<BR>&nbsp;&nbsp;3. 1980-1985年と1999-2004年における植物群落の各階層の高さおよび植被率を比較した結果,全ての植物群落で草本層の高さまたは植被率が減少していた.さらに,森林群落では低木層の植被率が減少する傾向がみられた.<BR>&nbsp;&nbsp;4. 1980-1985年と1999-2004年における総出現種数は471種から397種に減少し,奥多摩地域全体での植物種の多様性が低下していることが示唆された.<BR>&nbsp;&nbsp;5. 1980-1985年から1999-2004年の間に,調査を行った全ての植物群落で種組成の変化が認められた.種組成の入れ替わりはミヤコザサ-シモツケ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集,ススキ-ヤマトラノオ群集の順に高く,シラビソ-オオシラビソ群集,コメツガ-ウラジロモミ群落,ブナ-ツクバネウツギ群集では低かった.<BR>&nbsp;&nbsp;6. 各植物群落の構成種を植物体サイズによって類型化し,その増減傾向を比較した結果,中型・大型の草本種に減少種が多く,小型の草本種と大型の高木種には増減のない種が多い傾向が全ての植物群落に共通してみられた.<BR>&nbsp;&nbsp;7. スタンドあたりの出現種数はシラビソ-オオシラビソ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集,ススキ-ヤマトラノオ群集,ミヤコザサ-シモツケ群集の計5群落で減少していた.これらの群落では特に中型草本および大型草本のスタンドあたりの出現種数の減少が著しかった.また,森林群落のシラビソ-オオシラビソ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集ではスタンドあたりの低木の出現種数も減少していた.<BR>&nbsp;&nbsp;8. コメツガ-ウラジロモミ群落,ブナ-ツクバネウツギ群集ではスタンドあたりの出現種数に変化がみられなかった.これらの植物群落ではスズタケの優占度の減少量と調査スタンドに新たに加入した種数の間に相関がみられることから,摂食によって種数が減少する一方,スズタケの優占度の低下に伴って新たな種が加入することにより,種数の変化がなかったものと考えられた.
著者
本間 清一
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.85-98, 2005-04-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
51
被引用文献数
2 4

食品の褐変により生じた色素 (褐色色素) であるメラノイジンの性質と主な前駆物質を食品ごとに明らかにした。褐変の原因として一般性が高いグルコースとアミノ酸から調製したモデルメラノイジンを材料に, 焦点電気泳動パターン, 金属キレート能, レクチン親和性, 酸化・還元, 調製時のpH条件, ラットにおける出納試験を調べた。Streptomyces werraensis TT14, Paecilomyces canadensis NC-1, Coriolus versicolor IFO30340の3種類の菌で褐色色素を含む食品や各種モデル褐色色素と培養したときの脱色率の差異が, 食品メラノイジンの特徴解析に有効であることをみとめた。さらに, 3-デオキシオソン類, 糖その他の成分分析, 金属キレートアフィニティーを併用した。その結果, 魚醤とタマネギのソテーの褐色は糖質系メラノイジンが主体であり, 凍り豆腐の褐変は多価不飽和脂肪酸の酸化で生じたカルボニル化合物がタンパク質と反応して生じるエーテル可溶性の褐色色素であった。コーヒーの褐変はショ糖とアミノ酸・タンパク質とのメイラード反応にクロロゲン酸などのフェノール系酸化重合物を多量に巻き込んだ高分子である。
著者
早野 香代 Hayano Kayo
出版者
三重大学人文学部文化学科
雑誌
人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 = Jinbun Ronso: Bulletin of the Faculty of Humanities, Law and Economics (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.67-81, 2019-03-31

近年、大学教育でも行われているアクティブラーニングにおいて、「活動に焦点を合わせた指導」が問題視されるようになった。本稿では、その対策となる内容重視のディープ・アクティブラーニングの実践を報告し、能動性や学習の深化の観点から考察する。実施した科目は、「日本語コミュニケーションA(前期)/B(後期)」という留学生と日本人学生の協働学習である。2016年前期は学習の深化に繋がる可能性を期待し、グループ・インベスティゲイション(学生の興味関心に応じてグループを作り、自分たちで選んだテーマについて深く掘り下げる研究)を、2017年前期にはジグソー法(学生一人一人が責任感を持ち、グループのメンバーと教え会う学習)を試み、2017年後期は両者の利点を生かした折衷法を試みた。2016年前期のインベスティゲイションは、学生らの興味・関心のある内容を重視できたが、教室環境などで課題が残った。2017年前期のジグソー法は、資料を選択できるようにし、全員が教える立場に立つことで学習の深化は見られたが、日本語習得が進んでいない学生には負担となった。2017年後期のジグソー法とグループ・インベスティゲイションの折衷法では、独自の発展的な研究・調査を追加したために、高次の思考に関わる学習の深化が見られた。これは、内容を重視した他に、知識(内容)の獲得のために個々の学生の責任が曖昧にならないAL活動を選び、内化と外化が形を変えながら繰り返し行われるよう、複数の活動を組み合わせ実施していった効果や、仲間との信頼関係を構築しやすい教室環境に改善した効果もある。ディープ・アクティブラーニングには、重視した内容、内化と外化を繰り返せる複数の組み合わせによるAL活動、仲間と構築する信頼関係の3点が重要であることが分かった。今後は、内的活動における能動性の観察・分析方法や授業時間外のグループ学習の方法が課題である。
著者
数井 みゆき 遠藤 利彦 田中 亜希子 坂上 裕子 菅沼 真樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.323-332, 2000-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
31
被引用文献数
5 20

本研究では現在の親の愛着とそれが子の愛着にどのように影響を及ぼしているのかという愛着の世代間伝達を日本人母子において検討することが目的である。50組の母親と幼児に対して, 母親には成人愛着面接 (AAI) から愛着表象を, 子どもには愛着Qセット法 (AQS) により愛着行動を測定した。その結果, 自律・安定型の母親の子どもは, その他の不安定型の母親の子どもよりも, 愛着安定性が高いことと, 相互作用や情動制御において, ポジティブな傾向が高いことがわかった。また特に, 未解決型の母親の子は, 他のどのタイプの母親の子よりも安定性得点が低いだけでなく, 相互作用上でも情動制御上でも, 行動の整合性や組織化の程度が低く混乱した様子が, 家庭における日常的状況において観察された。ただし, 愛着軽視型ととらわれ型の母親の子どもは, 安定型と未解決型の母親の子どもらの中間に位置する以外, この両者間での差異は認められなかった。愛着の世代間伝達が非欧米圏において, 実証的に検証されたことは初めてであり本研究の意義は大きいだろう。しかし, さらなる問題点として, AAIやAQSの測定法としての課題と母子関係以外における社会文化的文脈の愛着形成への影響という課題の検討も今後必要であろう。
著者
神山 智美
出版者
富山大学経済学部
雑誌
富山大学紀要.富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.183-208, 2015-12

原告Xは,愛知県田原市内α町(以下「本件地区」という。)において,被告Y(東京に本社を置く風力発電事業等を目的とする会社)が設置,運転する風力発電施設(以下「本件風力発電施設」という。)から350メートル離れたところに居住する住民である。本件は,Xが,同施設の風車(以下「本件風車」という。)から発生する騒音により受忍限度を超える精神的苦痛ないし生活妨害を被っているとして,Yに対し,人格権に基づき,同施設の運転差止めを求めるとともに,不法行為に基づき,上記精神的苦痛に対する慰謝料500万円の損害賠償等の支払いを求めた事案である。
著者
シール フィリップ 大野 隆造 小林 美紀
出版者
人間・環境学会
雑誌
MERA Journal=人間・環境学会誌 (ISSN:1341500X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.19-28, 2000-05-01

フィリップ・シールのノーテイションと聞いて随分懐かしく思われる読者も多いかと思う。日本でそれが紹介されてから既に四半世紀が経っている。その間,短いモノグラフや雑誌での断片的な論説といった形で公表されてはきたが,その全貌が本の形で「人間,経路そして目的:人々の体験するエンバイロテクチャー(環建)の表記」(People, Paths, and Purposes: Notations for a participatory envirotecture)と題してUniversity of Washington Pressからようやく出版された。この本の推薦文でエイモス・ラポポートが「シール氏は1951年以来このようなシステムについて研究してきた。本書はしたがって,彼の生涯の研究生活の集大成といえる」と述べているように,そこに含まれる内容は膨大である。しかしワシントン大学での長年の教育を通してリファインされただけあって,興味深い図版や豊富な事例の引用を交えて大変わかりやすくまとめられている。この本で示されているフィリップ・シールの基本的な考え方は,「環境デザインと環境研究は環境を動き回るユーザーの視点による経験に基づいて考えるべきである」とする点であり,また「デザインはユーザーがどのような特定の要求や好みをもつかといったことを基本に考えるべきだ」とする点である。そして環境デザインと行動研究のこういったアプローチを実現するために必要な新たなツールと手順を発展させてきたのである。本稿は,東京工業大学の客員教授として来日中のフィリップ・シール(ワシントン大学名誉教授)が1999年6月21日に建築会館会議室で行った講演の記録である。なお,英文のアブストラクトは公演後にあらためて寄稿されたものである。
著者
大江 篤
出版者
園田学園女子大学
雑誌
史園 (ISSN:13458396)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-28, 2000-03