著者
富永 真琴
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設)
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

マウス腹腔の肥満細胞の温度感受性TRPM2チャネルが消化管の機能を調節していることが分かった。また、過酸化水素によってTRPM2の熱活性化温度閾値が低下(感作)して機能増強につながることが明らかになり、酸化されるTRPM2のメチオニン残基を同定した。この増強機構はマウス腹腔マクロファージのサイトカインの産生や微少な温度上昇による貪食能の増強に関与することが分かった。さらに、このTRPM2の感作機構がマウス膵臓β細胞からのグルコース依存性のインスリン分泌にも関わることが判明した。
著者
藤原 保明
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

young や week などの語頭の「入りわたり」は一般に子音であり、day, cow, go などの二重母音の第二要素 [i, u] は母音の「出わたり」とみなされている。しかし、これらの「出わたり」を英語の正書法、音韻上の機能、語源、および語彙借用の時期などの情報を統合して分析した結果、いずれも子音であり、「出わたり」は語中や語間での「母音連続」の回避のみならず、中英語期の「母音の割れ」、「語末のあいまい母音の消失」、中英語末期から近代英語期にかけての「大母音推移」などに深く関わっていることが明らかとなった。それゆえ、これらの成果は英語の主要な通時的音韻研究の見直しを迫ることになる。
著者
宮崎 薫
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ラットiPS細胞を購入し,レンチウィルスベクターにてGFP遺伝子およびluciferase遺伝子を導入した.FACSにてGFP陽性細胞を分取し,GFP陽性ラットiPS細胞のクローニングに成功した.GFP陽性ラットiPS細胞を免疫不全マウスに皮下移植し,in vivo imaging systemを用いた細胞発光の追跡が可能であることを確認した.さらに,6週間後の奇形腫形成を確認した.ラットiPS細胞を,各分化段階に応じて培養液中の各種増殖因子の組成を変えながら培養した.リアルタイムPCRにて,ラットiPS細胞が中胚葉を経てミュラー管系統に分化していることが示唆された.
著者
木須 伊織
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

MHC(主要組織適合遺伝子複合体)統御カニクイザルを用いて子宮同種移植モデルを作製し、血液型一致のMHCミスマッチ間および半ハプロ一致間における移植子宮の生着を比較した。カニクイザルにおける子宮においては拒絶反応をきたしやすく、抗原性が高いことが示された。また、半ハプロ一致間におけるカニクイザルペア間における子宮移植後に妊娠出産に世界で初めて成功した。日本産科婦人科学会、日本移植学会に子宮移植に関する見解を求める要望書を提出し、日本医学会で子宮移植に関する検討委員会が設立され、国内での臨床応用の可能性について議論が行われている。
著者
藤代 節 庄垣内 正弘
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究課題はヤクート(サハ)語の英雄叙事詩オロンホの調査研究である。2年間に集中的に英雄叙事詩およびヤクート語について帝政ロシア、旧ソ連邦、現ロシア共和国の各時代を通じて著された関連文献の調査、整理、テキスト等の基礎的データの入力作業を行った。初年度にはロシア科学アカデミー東方学研究所にて帝政ロシア時代のサハ語資料の閲覧、検索などをおこなった。また機会を得て、サハ共和国内の共和国立図書館などにおいてもオロンホ資料に関連する文献調査を行い、ヤクート語話者あるいはヤクート語周辺の言語の話者等に研究協力を依頼し、オロンホに関連しての調査研究を行った。本研究課題の成果としては研究代表者の藤代、研究分担者の庄垣内がともに各自学術論文、出版物、また研究発表等を通じて随時、発表してきた。本研究課題の実施期間を通じて、サハ(ヤクート)共和国内で出版されたヤクート語学や文学に関連する文献も多く収集することが出来た。これらは特にここ2、3年に飛躍的に入手が容易になった出版物である。本研究課題を遂行して、研究成果全体、特にオロンホのデータを蓄積じたものを刊行すべき必要性を強く感じている。これらの学術文献におけるオロンホの扱い方及び未だ数量的には大量とは言えないがオロンホテキスト資料を今後も有効に活用して、オロンホのデータ蓄積を大きくしていきたい。研究代表者等は近い将来にオロンホデータに言語学的分析を加えたものを出版することを目指している。
著者
井上 昌次郎
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究者らが睡眠促進物質(SPS)の一成分として同定した酸化型グルタチオン(GSSG)は、還元型グルタチオン(GSH)とともに生体内に広く分布し、活性酸素の中和などによって解毒をおこない、生体防御にかかわることが知られている。また、中枢神経系では両物質がグルタミン酸作動性神経伝達を阻害することが知られている。一方、グルタミン酸は興奮性アミノ酸として重要な神経伝達物質であるが、その過剰は酸化窒素の生成を促進し、これが神経毒として作用すると理解されている。これらの事実から論理的に推論すると、睡眠促進物質としてのグルタチオンはグルタミン酸作動性神経伝達を阻害することによって睡眠を増強するが、このさいの睡眠には覚醒時の神経興奮によって生じたグルタミン酸過剰ないしは神経毒産生を解消する能動的な生理機能が賦与されているのではないか、という仮説に到達する。本研究は睡眠促進物質グルタチオンを通して生体防御に果たす睡眠機能について、このような革新的な発想を実験的に解析しようとするものである。実験動物に若い成体の雄ラットを用い、無拘束・無麻酔状態で、自発行動・脳波・筋電図・脳温を連続的にモニターした。第3脳室には微小量の睡眠物質溶波を連続注入するためのカニューレを慢性的に挿入した。これらの実験動物にGSSGまたはGSHを夜間の活動期に投与すると睡眠が有意に増加することがわかった。また、GSSGを明期に投与したのちに部分断眠または強制運動を負荷すると、体温上昇や睡眠潜時が有意に軽減されることがわかった。これらの結果は上の仮説に符合するものであり、さらなる解析により確証できるものと考えられる。
著者
長尾 寛子 長尾 伸一 隠岐 さや香
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は主に①遠近法に基づく近代絵画に美学的基礎を与えたシャフツベリ伯、ハリス、レッシングなどの絵画論を分析しつつ、②近代西洋絵画の代表作における複合的な世界の表現の技法的分析③ルネサンスから19世紀にいたる複数世界論および幾何学・数学の思想史的・科学史的解明、④「近代的視覚」の思想史的再考を通じ、外から観察される世界とその中で生きる世界、瞬間と過去と未来、夢と現実が同一の画面に統合された西洋近代の視覚体験を再構成して、「モダニティ」の観念によって一面化されてきた近代西洋の多彩で豊かな知的枠組みを明らかにする。
著者
松永 裕
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-08-30

分岐鎖アミノ酸(BCAA)の摂取によってミトコンドリアの生合成が高まることが報告される一方で、分解機構に与える影響について詳細は明らかではない。この分解機構はミトコンドリアの品質管理を行う上で重要な働きを担う。そこで本研究では、BCAAの摂取がミトコンドリアの分解機構に与える影響を明らかにする。本研究により、BCAAの摂取がミトコンドリアの制御にどのような影響を与えるのかについて合成および分解の両視点から明らかにすることが可能となる。さらに、BCAAの新たな生理機能の発見につながることや、スポーツ現場に対して科学的根拠に基づいた栄養摂取方法を提供する一助となることが期待される。
著者
中田 北斗
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

鉛はその廉価性や利便性から人類の生活に欠かせない金属である一方、採掘活動に伴う鉛汚染により、途上国を中心に年間23万人が鉛中毒で死亡している。鉛の毒性評価や環境モニタリングは広く行われているが、有効な鉛中毒の治療法や汚染環境の修復法は皆無である。本研究では、世界各地に自生し栽培が容易な植物モリンガを用いて、鉛中毒の治療法および汚染環境の修復手法の開発を目指す。
著者
伊谷 行
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

海洋底における多様な生物の生息場所利用という観点、また、巣穴利用の進化という観点から、巣穴共生性のベントスは魅力的な研究対象である。しかし、砂泥底の巣穴の中という生息場所の特殊性から研究が難しく、生態研究はほとんど行われていない。本研究の結果、テッポウエビ科の2種とモクズガニ科の3種において、無脊椎動物宿主の巣穴利用に関する共生生態について新しい知見を得た。さらに、巣穴共生性ハゼ類や宿主となる甲殻類、その巣穴構造についても、新知見が得られた。
著者
都馬 バイカル 小長谷 有紀 二木 博史 長谷川・間瀬 恵美
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2021年度、新型コロナウイルス感染症により、国際シンポジウムは開催できず、さらに延期したが、研究代表者と分担者及び海外協力者たちは、常に連携しながら、資料収集と翻訳を行い、分析を進め、その成果の一部を論文と口頭発表で公開した。代表者都馬バイカルの研究成果は、監修・共著1部、論文1篇、研究発表3件がある。監修・共編著『ハンギン・ゴンブジャブ』は、アメリカ合衆国インディアン大学教授で、スウェーデン宣教師と深い交流があったハンギン・ゴンブジャブ博士の伝記と彼に関する研究論文及び回想文をまとめた研究書である。また、国立民族博物館が主催した日本・モンゴル外交関係樹立50周年記念特別展「邂逅する写真たちーモンゴルの100年前と今」(2022.3.17-5.31)にスウェーデンモンゴルミッションの印刷物を提供し、宣教師エリクソンがモンゴルで撮った写真の解説に協力した。分担者小長谷有紀は、論文Street Dogs in Mongolia Captured by the Pictures in Travelogues from the Late 19th and Early 20th Centuries: A Case Study of Finding Logic in the Photographsと「木へのまなざし」で、宣教師と探検家たちの写真コレクションを横断的に活用し、20世紀初頭のウルガの都市事情を解明した。分担者二木博史は、宣教師ラルソンについて資料収集し、研究を進めてきた。分担者長谷川(間瀬)恵美は、宣教師フランソンについて研究を続けてきた。また、宗教学について論文が「心あたたかな医療によせて―終末期における<魂>への配慮、音楽死生学と緩和ケア―」を『宗教研究』(第34号pp.173-179)に掲載された。
著者
堀内 隆彦 田中 緑
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では,将来の豊かな社会発展に寄与するために,産業応用を目指した独創的・先駆的な研究に取り組む.具体的には,これまで管理された実験室環境において実施されてきた視知覚実験を実生活空間へと展開し,一般の照明環境下に設置された種々のディスプレイを用いた視覚実験を丁寧に実施する.これらの実験結果を解析することによって,新しい視物質であるipRGCの影響を考慮した色再現モデルを構築する.さらに,標準化されているデバイス間のカラーマネージメントシステムとの互換目指したプロトタイプシステムの構築を通じて,カラー画像再現における産業界の次世代デファクトスタンダードとなる基盤を確立する.
著者
他田 真理 池内 健 竹林 浩秀 加藤 隆弘 柿田 明美
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

白質の恒常性維持機構のキープレイヤーはミクログリアとアストロサイトである。私たちはミクログリアの分化や機能に必須であるCSF1Rの変異によるAdult-onset leukoencephalopathy with axonal spheroids and pigmented gliaの患者脳に、ミクログリアの異常に加え、アストロサイトの過剰な反応と変性を見出し、ミクログリアの機能不全によるアストロサイトへの制御機構の破綻が白質変性を引き起こすという仮説を得た。本研究では、ミクログリオパチーをモデルとして、ミクログリアによるアストロサイトの制御機構の存在とその白質変性への関与を証明する。
著者
鵜飼 康東 渡邊 真治 村田 忠彦 榎原 博之 千田 亮吉 竹村 敏彦 溜川 健一
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究の目的はクラウドコンピューティングの経済的影響を動学的確率的一般均衡モデルによって計測することである。最初にモデルの各パラメータに実証的基礎を与える作業を実施した。具体的には東京証券取引所上場企業を対象に郵送調査を実施して上場企業のうち10%が純粋な意味のクラウドコンピューティングを実施している事実を発見した。この発見を基礎に日本経済の動学的シミュレーションを実行した。この結果日本経済の全要素生産性は10%上昇することが判明した。またインパルス反応関数により、国民総生産は一旦上昇した後減少するが、総投資、資本ストック、労働供給は増加することが判明した。社会的厚生については不明確であった。
著者
杉本 俊介
出版者
大阪経済大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

ビジネス倫理の諸問題に対して「徳」と呼ばれる個人の性格特性に基づいた徳倫理学的アプローチを採る研究が登場している。功利主義や義務論など従来の倫理学理論では取りこぼされてしまいがちな経営者や従業員個人の動機や感情をすくい取れる点に注目が集まっている。しかし近年では、会計不正や検査不正など組織構造や企業文化に起因する企業不祥事が目立ってきている。この種の不祥事に対して、個人の性格特性に注目した従来の徳倫理学的アプローチをそのまま適用することは困難である。そこで本研究は、個人でなく企業組織の性格特性として徳を捉え直し、企業不祥事に関する組織的徳に基づいた評価枠組みの提案を目指す。
著者
白藤 法道 濱野 忠則
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究で、高Hcy血症がタウの重合を促進し、アルツハイマー病の原因となる神経原線維変化形成に傾くことを明らかにした。GSK3β、cdk5活性化またはPP2A不活性化を介してタウのリン酸化レベルを増加させ、カスパーゼ3の活性化によりC末端が切断されるタウを増加させた。Hcyが20Sプロテアソーム活性を低下させ、タウの分解を阻害し、総タウ量が増加させた。リン酸化・C末端切断型タウの増加は、タウの立体構造変化をきたし、神経細胞死、および神経原線維変化を促進した。このことから、ホモシステインを低下させることが、アルツハイマー病におけるタウオパチーの異常な神経細胞障害作用を緩和させることが示唆された。
著者
村松 慶一 重冨 充則 田口 敏彦
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

四肢移植は、移植片が抗原性の強い骨髄や皮膚を含んだ複合体であり内臓器移植よりも生着が困難である。加えて、非生命維持器官であるため免疫抑制剤の長期投与はその重篤な副作用の発現を考えると許されるものではない。本実験の目的は、他人からの手、足(四肢)同種移植に対する免疫学的寛容を獲得することである。実験動物はドナーとしてGFPラット(outbred Wistar)とLacZラット(inbred DA)を用い、レシピエントとしてLewisラット(MHC expression, RT1^1)を用いた。実験モデルは、四肢移植はこれまで私達が用いてきた右後肢同所性移植モデルを(1997,1999)を用いた。四肢移植モデルについて、皮膚は下腿中央部で円周上に切開、その他の構成部は大腿骨中央部で切断する。recipientに作成した同様の右後肢欠損部に移植片を挿入、大腿骨はキルシュナー鋼線で固定、坐骨神経、大腿動静脈を手術用顕微鏡で神経血管吻合、筋肉、皮膚を縫合する。免疫抑制剤はFK506(Prograf)を使用し、その投与量は1mg/kg/dayとした。移植四肢の評価法は、1)拒絶判定;移植肢の拒絶判定は、四肢移植では皮膚拒絶が肉眼的に判断された腫脹を伴う発赤が24時間継続した時点、その他の移植は組織学的に判断する。2)軟x線撮影;移植肢は1週間おきに軟x線撮影を行い、新生骨の形成、骨癒合を観察する。4)組織所見;HE染色を各構成体に行い、拒絶の評価を行う。評価の段階には我々が報告したrejection grading scaleを用い(1998,2000)、統計学的処理を行い各群間の有意差を判定した。キメリズムの評価は、移植後、1,6,12,24,48週に屠殺し胸腺、骨髄、肝臓、脾臓、リンパ節、血液など各リンパ器官を採取し、ドナーであるGreen Fluorescent Protein-Transgenic Rat細胞またはLacZRat細胞の遊走について観察した。