著者
田中 廣壽 吉川 賢忠 山崎 広貴 上原 昌晃 小田 彩
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.1373-1384, 2018-07-10 (Released:2019-07-10)
参考文献数
24
被引用文献数
1

骨格筋は,運動や姿勢保持のみならず,全身のエネルギー代謝調節においても基幹的役割を担っている.近年,骨格筋によるエネルギー代謝調節は,栄養状態のみならず,筋が受ける機械的刺激(張力等),酸素濃度,性ホルモン,時計遺伝子産物等の多彩な因子によって精緻な調節を受けることが明らかになってきた.また,骨格筋由来の代謝産物やサイトカイン様物質が他臓器機能を異所性に制御することも注目されている.今回,筆者らは,ステロイドによって誘発される筋萎縮(ステロイド筋症)の克服に向けて,骨格筋量制御におけるステロイドとその受容体の役割とともに,骨格筋―肝臓―脂肪シグナル軸を発見し,骨格筋による遠隔臓器の代謝,特に脂肪組織制御の分子機構の一端を解明した.本研究は,骨格筋と個体レベルのエネルギー代謝との連関―メカノ―メタボ カップリング―を医療に応用・展開する新しいパラダイムの構築に貢献するのみならず,多数の臓器システムの連関から生体を理解することの重要性を示している.
著者
水嶋 丈雄
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.691-694, 2011 (Released:2012-03-21)
参考文献数
8
被引用文献数
2 4

パーキンソン病は神経難病である。我々はこの疾患を薬物治療群と薬物治療と鍼灸治療併用群に無作為に群別し,その進行度をホーンヤール度と UPDRS II・III について治療開始から5年間にわたり追跡調査をおこなった。薬物治療群は95例平均年齢64.7才,薬物治療と鍼灸治療併用群は103例平均年齢63.9才,両群において L-dopa 内服量や合併症において差はなかった。結果は,薬物治療群5年経過時にホーンヤール度平均2.1±0.8,薬物治療と鍼灸治療併用群はホーンヤール度平均1.3±0.4となった。また同様に UPDRS II は薬物治療群平均12.2±7.2に対し鍼灸治療併用群平均は7.6±5.0となった。次いで UPDRS III は薬物治療群は平均18.2±9.8に対し鍼灸治療併用群は平均11.9±6.8となり,いずれも反復測定分散分析で有意差を認めた。我々はパーキンソン治療において鍼灸治療を併用することは,その進行抑制に寄与できるものと考える。
著者
村上 京子
出版者
日本語教育方法研究会
雑誌
日本語教育方法研究会誌
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.104-105, 2013-03-09

In this study, we utilized portfolio evaluations in a Japanese language class in order to facilitate students' autonomous learning habits. Students determined their target levels of proficiency based on their own self-evaluation, and they were able to reflect on their learning activities through preparing their portfolio. Some learners, however, evaluated their proficiency after class as being lower, which we interpreted as the result of the students raising their target proficiency. Students were made aware of the areas where they need to improve, and were able to find new goals of their learning by drawing up their portfolio.
著者
周 玉慧 深田 博己
出版者
対人コミュニケーション研究会
雑誌
対人コミュニケーション研究 = The Japanese journal of interpersonal communication (ISSN:21874433)
巻号頁・発行日
no.3, pp.1-18, 2015-03

本研究では、欺瞞的コミュニケーションに着眼して、夫婦間に発生する欺瞞動機と欺瞞方略を測定する尺度を作成し、結婚生活の質に及ぼす欺瞞動機と欺瞞方略の影響を検討した。229組の台湾人夫婦を対象とし、5因子の欺瞞動機(関係促進、関係維持、面子保護、利己的目的、雰囲気操作)、4因子の欺瞞方略(脚色、はぐらかし、偽装、隠蔽)、および充実度と後悔度の2側面の結婚生活の質の評価を求めた。確証的因子分析の結果により、仮定された欺瞞動機と欺瞞方略の因子が実証された。結婚生活の質は欺瞞動機や欺瞞方略によって異なり、結婚生活の質に対して、関係促進動機、関係維持動機あるいは脚色方略は好影響、利己的目的動機あるいははぐらかし方略、隠蔽方略は悪影響を及ぼすことが見出された。また、充実度に及ぼす欺瞞動機と欺瞞方略の交互作用が見られ、限定効果と緩和効果に類似したパターンが示された。
著者
梶田 孝道
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.70-87, 1981-12-31 (Released:2009-10-19)
参考文献数
15
被引用文献数
3 1

多くの近代化論者たちは、業績主義が現実化してゆくにつれて属性主義は次第に消滅するか、たかだか例外的な形で残存するにすぎないと考えた。しかし、業績主義が社会の主要な配分原理となりほとんどのメンバーが業績主義者と化した現在、純粋な意味での業績主義はむしろ例外的な存在であり、かえって属性主義に起因する社会問題群が新たに生み出されてきたという事実に気づく。一方ではアチーヴド・アスクリプション (業績主義の属性化) が、他方ではアスクライブド・アチーヴメント (属性に支えられた業績主義) が発生している。本稿では、業績主義・属性主義についてのリントンの定義およびパーソンズの定義の問に存在する微妙なズレに固執することによって、上記の二つの問題領域を社会学的にクローズアップさせ、あわせて両領域に属する問題群の整理とそれへの対策の検討を試みる。
著者
富田 英典
出版者
佛教大学
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.49-64, 1997-03-01
被引用文献数
1

近年,通信メディアの発達には目を見張るものがある。本稿では,移動体通信メディアの発達が,都市空間においてどのような人間関係を生みだそうとしているかについて考察する。まず,携帯電話やPHS,ポケットベルも含めた移動体通信メディアが,現代人の中にどのような欲望を生み出そうとしているのかについて,非同期コミュニケーションメディア(電子メール・ボイスメール・ファックス)に関するマーカスらの調査研究を紹介しながら研究する。「いつでも,どこでも」自由に会話ができるはずのこれらの通信メディアの特質は,受信する側にとっては,逆に自由を奪うメディアにもなりうる。マーカスらが明らかにした「自分の好みに合わせて送受信したい」という願望は,在宅中でも留守番電話機能を利用したり,携帯電話やPHSでの留守番電話機能の利用に現れている。本稿では,このような電話コミュニケーションを「居留守番電話型コミュニケーション」と呼ぶ。他方で,都市空間を舞台に利用される携帯電話やPHSやポケットベルは,外出中でも友人と連絡が取れ,都市空間をより自由に楽しむことを可能にしてくれる。同時に,これらのメディアは,匿名牲のメディア・コミュニケーションを可能にする。NTTのダイヤルQ2を利用した「ツーショット」番組やポケットベルの「ベル友」などは,匿名のストレンジャーとの間に親密な関係を成立させ始めている。本稿では,このような他者をIntimate Strangerと呼び\匿名性の中に新しい親密性が成立する可能性を示す。
著者
澤田 英三 Hidemi Sawada
出版者
安田女子大学大学院
雑誌
安田女子大学大学院紀要 = The journal of the Graduate School, Yasuda Women's University (ISSN:24323772)
巻号頁・発行日
no.24, pp.29-43, 2019-03-31

The present study considered the following aspects of young people’s relationships: vertical dyadic ‘Tate’ relationships between the young person and his/her parents or homeroom teacher, diagonal dyadic ‘Naname’ relationships between the young person and other adults, and horizontal dyadic ‘Yoko’ relationships among his/her peers. Recently, diagonal dyadic relationships between the young people and other adults have undergone a reduction in intimacy. Firstly, for young people, the roles of the diagonal dyadic partners were defined as follows: (1) a conversation partner or a playmate, (2) a mentor, (3) a translator, (4) a mediator, (5) a purveyor of other views, lifestyles, or values, and (6) a role model. Secondly, we note that various teachers other than the homeroom teacher were able to develop a diagonal dyadic relationship with the student at school, and that these relationships were worked out during student guidance and career guidance. Finally, we find a need to develop systems in which busy teachers can exchange various kinds of information about their students with each other.
著者
窪田 瞬 平田 順一 小島 麻里 國井 美紗子 冨田 敦子 釘本 千春 土井 宏 上田 直久 田中 章景
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.370-373, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
10

要旨:症例は79 歳男性.糖尿病で内服加療を行っていたが,突然発症の右不全片麻痺を来し当院に救急搬送された.頭部MRI 拡散強調画像で左内包後脚に高信号を認めた.血糖が30 mg/dl と著明に低下しており50%グルコースを静注したところ症状は速やかに消失し,片麻痺の原因は低血糖によるものと考えられた.患者は過去にも低血糖による内包後脚のMRI 異常信号を呈し,右不全片麻痺を発症していた.低血糖発作による脳卒中様の片麻痺は過去にも報告がみられるが,同一部位に繰り返しMRI 異常信号を認めた例はこれまでにない.内包後脚が低血糖への脆弱性が高い脳組織の一つであることが示された.

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1905年10月16日, 1905-10-16
著者
佐藤 卓
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

着床前遺伝子診断の実際では, 稀少なDNA量の遺伝子増幅の際に, 例えば対立アリルの一方のみが増幅されないアレルドロップアウト現象の出現が知られ, 誤診断の原因となる. 現在までに利用可能な各種全ゲノム増幅技術 (WGA) を比較した. その結果, WGAの違いによって, 検出されやすい遺伝子変異が異なる事象が観察された. また, WGA毎に増幅されやすい遺伝子領域が異なり, それは, 同一の遺伝子領域においてさえも, 増幅のバイアスは観察された. いずれのWGAを採用しても, あらゆる遺伝子においてADOは観察される結果を得た. 現時点では, MDA法が最も汎用性が高い.