著者
Ryota Kawanishi Shinpei Ohashi
出版者
The Japanese Society of Systematic Zoology
雑誌
Species Diversity (ISSN:13421670)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.343-348, 2020-11-16 (Released:2020-11-17)
参考文献数
16
被引用文献数
1 2

An ovigerous female of the rare cymothoid isopod, Elthusa splendida (Sadowsky and Moreira, 1981) was discovered in a museum specimen of Japanese spurdog Squalus japonicus Ishikawa, 1908 collected from the East China Sea. This cymothoid species was previously known only from the type locality, off southern Brazil, the western South Atlantic. Therefore, the new record in the East China Sea represents the almost maximum distribution range extension on the earth (i.e., the antipodes). In addition, the present female is the largest specimen of this species on record (57.9 mm in total length). We described the East China Sea specimen along with verification of the presence of four pits on pereonite 1, an important diagnostic character of the species, using a 3D measurement system.
著者
小谷 俊一 甲斐 司光 成島 雅博 伊藤 裕一 大村 政治
出版者
医学書院
雑誌
臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.943-948, 1993-11-20

射精障害例に対し1)硫酸ネオスチグミンのクモ膜下注入法:33名(脊髄損傷30名,その他3名),2)試作電極(双極電極)による電気射精:25名(脊髄損傷21名,その他4名),3) Seager型手持ち式直腸プローベによる電気射精:10名(脊髄損傷9名,その他1名)の人工射精法を施行した。 この結果,順行性射精による射出精液量や精子運動率の面からは硫酸ネオスチグミンのクモ膜下注入法が最も優れていたが,副作用(頭痛,嘔気,嘔吐,血圧上昇など)の強い例が多かった(45%)。これに対し電気射精法は副作用が軽度で安全性の面で優れていた。なお電気射精法の中では,短時間で効率的に精液が得られる点から,Seager型手持ち式直腸プローベが有用と考えられた。
著者
鳥居 ゆか
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

HHV-6感染が証明された症例をAESD(Acute encephalopathy with biphasic seizures and late reduced diffusion)タイプの脳症と診断された症例と、痙攣重積を起こしたが、その後意識回復良好で脳症に至らなかった症例の2群にわけ、それぞれ脳脊髄液エクソソーム中のマイクロRNAの発現プロファイルの比較解析を行った。髄液よりmiRCURY exosome isolatiom kitを用いてエクソソームを分離後、miRCURY RNA Isolation Kit Cell and Plantを用いてRNA抽出を行った。抽出したRNAからNEB Next Multiplex Small RNA Library Prep Set for Illuminaを用いてマイクロRNAのライブラリを作成した。作成したライブラリをMiseqでシーケンスを行った。脳症5例、対症5例の計10サンプルの解析を行い、出力したデータからマイクロRNA発現量を標準化して(RPAM: reads per annotated reads per million)比較解析をした。結果、10症例においてのべ292種のマイクロRNAが検出された。比較解析の結果、FDR(False Discovery Rate)<0.05を満たすのはmiR-381-3pのみであった。mir-381-3pは脳症群で有意に検出された。ターゲット遺伝子予測サイト(miRanda, Target Scan, mirDB)を用いて検索したところ、mir-381-3pの標的となると予測された遺伝子にはGRM8など神経伝達に関わる遺伝子もあり、病態との関連が考えられた。今回は10症例の検討のみであったが、PCRでの解析システムを確立して、より多くの症例を解析する必要があると思われた。
著者
宮越 俊一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.292-295, 2016-06-20 (Released:2016-12-27)
参考文献数
7
被引用文献数
1

群馬県には農産物でも工業製品でも全国上位に位置づけられるものが少なくないが,なかでもこんにゃくは,そのほとんどが群馬県で生産されているといっても過言でない。その主成分であるグルコマンナンは,主にグルコースとそのジアステレオマー*1であるマンノースからなっている。両者がβ-(1→4)結合して主鎖を形成し,一部β-(1→3)結合やβ-(1→6)結合による枝分かれ構造を有する。そこへ水酸化カルシウムなどを添加することで,本文に述べるようなメカニズムで凝固する。カロリーの観点からは栄養価はなく,弱酸性~中性の食品が多い中で珍しく塩基性で,食感を楽しむ食品であることなど,世界的に見てもユニークな食品といえる。製造方法としては,コンニャク芋(生芋)からの工程と,精粉からの製造工程とがあり,学校や一般家庭でも同様の方法で作ることができる。こんにゃくはその試作やpHによる影響などを通じて,身近な教材としても多くの可能性を秘めている。
著者
塚原 東吾
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.27-39, 2018-11-20 (Released:2019-12-02)
参考文献数
21

日本のSTSは,公害問題についての宇井純や原田正純,もしくは反原発運動の高木仁三郎らの系譜を受け継ぐという想定があるが,これはある種の思い込みに終わっているのかもしれない.実際,日本のSTS は今や体制や制度への批判ではなく,科学技術と社会の界面をスムースに接合させる機能を自ら担っている.そのため本稿では,日本のSTSで“科学批判”と呼ばれる潮流の衰退が進んでいる現状について,まずはおおまかな図式を示してみる. またこの変容を考えるため金森修の所論を,戦後日本の科学批判の歴史にそって検討する.さらに日本でSTSの出現に至った2 つの重要な潮流,すなわち一つ目は廣重徹に濫觴を持ち中山茂が本格展開した思潮(この流れは80 年代に吉岡斉を生み出す)と同時に,村上陽一郎のパラダイムがある種の転換(「村上ターン」)を迎えたことが,戦後科学論の分岐点として,STSを制度化の背景になっていたことを論じる.
著者
本山 美彦
出版者
日本国際経済学会
雑誌
国際経済 (ISSN:03873943)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.61, pp.60-79, 2010 (Released:2012-03-26)
参考文献数
8

The American president, Barack Obama, seems to believe that the Pacific Ocean will be the growth center of this new century. In the opening adress of the “Strategic and Economic Dialogue” designed to reinforce cooperation between the two countries (U.S. & China) , Obama declared, “the relationship between the United States and China will shape the 21st century”. At first glance, the prediction is not particularly audacious. The rise to power of the most populous country is inevitable. China will soon be the second largest world economy. The United States may remain one of the global superpower for many years to come, but this country has been hit strongly by the economic crisis.  Some in the United States want to believe in the necessity of G2 that would drive the world, harmoniously, rather than agonizing G8. Chinese media are calling for an era of Pax Americhina or Chinamerica that would dominate the geopolitics of the 21st century. The year of 2009 marks the thirtieth anniversary of a normalization of relations of the two countries that resulted in global relief despite a few remnants in the cold war era.  Still, suspicion is alive. Capitalism’s current failure should be explained by a crisis of over-consumption for which the Sino-American couple is in large part responsible. After the end of the illusion of the American “hyperpower”of the Bush years, the time has come for multilateralism and for G20 including the ensemble of major world actors.
著者
西成 典久
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.40.3, pp.241-246, 2005-10-25 (Released:2017-07-01)
参考文献数
14

本論文では、都市計画思想としての“広場”に着目する。 1969年新宿西口広場は人々が集まり互いに交歓し、社会にむけて情報発信する場となった。これは、計画側にとって予期しえない出来事であった。警察が西口広場を西口通路と名称変更することで、結果的に人々の行為を規制した。これら一連の出来事が当時の新聞紙面を賑わした。これら西口広場での人々の行為や議論を分析することで、当時の都市における“広場”について以下3つの側面が浮き彫りとなった。 1)「西口広場」という名称を「西口通路」と変更することは、西口駅前は通行のための空間である、という単一機能を明示し管理することであった。名称変更がかえって、機能を明確に捉えきれないという“広場”の側面を照射したことになる。 2)公園との対比において、“広場”は不特定多数の人々が離合集散する(交通の結節点)という側面が照射された。当時はそれが駅前にあって公園にはない性質であることが浮き彫りとなった。 3)日比谷公園での集会の失敗を通じて、“広場”が施設化され管理された既成の空間ではなく、集まった人々の自発的な行為によってはじめて意味を持つという側面が浮き彫りとなった。
著者
後藤 郁夏人
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.161-166, 2022-03-04 (Released:2022-04-05)
参考文献数
7

物が地上に落下する現象や地球が太陽の周りを回る現象,これらの背後にはいずれも重力が作用している.今から100年前,アインシュタイン(A. Einstein)によって重力とは時間と空間の歪み(時空の幾何の性質)に他ならないことが明らかにされ,それに基づき一般相対性理論が構築された.一般相対性理論が天体などのマクロな重力現象を記述する一方,ミクロな振る舞いは量子論の法則に支配される.この二つの理論を柱として現代物理学は発展してきた.現代物理学が挑む最大の問題の一つに,これら二つの理論を如何に“量子重力”として統一的に理解できるかという問題がある.量子重力を理解するうえで大きな鍵を握る,ブラックホールの情報問題という長年未解決の大問題が知られている.この問題はホーキング(S. Hawking)によって発見された,ブラックホールの熱放射現象(ホーキング放射)に起因する.この放射によりブラックホールはエネルギーを失い,小さくなっていき,最終的に消滅してしまう.この現象はブラックホールの蒸発と呼ばれる.ここで蒸発前にブラックホール内部に何か情報を隠し込んだとしよう.ブラックホールが蒸発し,消滅すると,この情報は宇宙から完全に消えてしまうように思われる.これは量子論のユニタリ性と矛盾する.これがブラックホールの情報問題である.以上の議論はホーキング放射が完全な熱放射である(ブラックホールの温度の情報しかもっていない)ことを仮定していた.蒸発後に時空に残されたホーキング放射にブラックホール内部の情報がすべて含まれていれば,このパラドクスは回避される.ホーキング放射の中にブラックホール内部の情報が含まれているかどうかを知るにはホーキング放射のエントロピーの振る舞いを調べればよい.もし,蒸発に伴ってホーキング放射のエントロピーが増大していく一方であるならば,ホーキング放射にはブラックホール内部の情報が全く含まれていない.一方,ホーキング放射がある時刻を境に減少し,最終的にゼロになればブラックホール内部の情報はすべてホーキング放射の中に含まれていることになる.最近,筆者を含む研究グループは重力の経路積分という方法を用いて,蒸発するブラックホールにおけるホーキング放射のエントロピーを計算した.重力の経路積分は量子重力の計算を時空の幾何を用いて近似的に行う手法である.エントロピーの計算は元の時空をn個に複製したレプリカ時空を用いて行われる(レプリカ法).単に元のブラックホール時空をn個に複製したものを用いてホーキング放射のエントロピーを計算すると,時間とともに増大していく振る舞いが得られる.これは元々ホーキングが得た情報の損失を示唆する結果である.一方,重力の経路積分では,その他様々な時空の幾何からの寄与を考え合わせ,重力の量子揺らぎの効果を取り入れることができる.今回の重要な発見は,n個に複製された各時空を繋げるワームホールと呼ばれる時空構造が重力の量子効果によって形成され,このワームホール時空がレプリカ法で計算されたホーキング放射のエントロピーの振る舞いを大きく変えるということである.実際,このワームホール時空を考慮しホーキング放射のエントロピーを計算すると,従来の計算と異なりエントロピーはある時刻を境に減少に転じ,最終的にゼロになることが確かめられる.今回の発見は,ホーキング放射にブラックホール内部の情報が含まれていることを示唆し,ブラックホール情報問題の解決に向けた重要な知見になると考えられる.一方,ブラックホールの情報回復をもたらす蒸発過程のメカニズムはいまだ理解が不十分であり,量子重力の基礎的なメカニズムの理解に密接に関わるものと考えられる.
著者
二瓶 直子 桐木 雅史 高圓 博文 露口 利夫 斉藤 康秀 平 健介 米島 万有子 望月 貫一郎 千種 雄一
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.19-29, 2018-03-25 (Released:2018-04-30)
参考文献数
30
被引用文献数
1

Oncomelania hupensis nosophora (Ohn) is the intermediate snail host of Schistosoma japonicum (Trematoda; Schistosomatidae) (Sj) in Japan. The last domestic schistosomiasis infection in Japan has been thought to occur in Yamanashi Prefecture in 1977. In 1985, the intermediate host snail was isolated from paddy fields along the Obitsu River basin in Chiba Prefecture, Japan. At that time, schistosomiasis was assumed to become a past disease in this area. Thus, activities to exterminate Ohn or annual screening programs of residents in this area had not been conducted. Indeed, this disease represents a neglected endemic disease in Japan. This report describes the epidemiological history of the disease from various approaches including clinical information, philological study, interview surveys, snail collection surveys, and changes in land use and environments using geographic information systems. The assumption of disease elimination was based on the lack of reports of new infection for more than 30 years, environmental modifications, and almost no snail infestation from 2012 onward in known habitats. We concluded that continuous monitoring of the snails is not necessary in the studied area, while a certain level of attention to redistribution of the snail from hidden habitats may be required.
著者
岡崎 貴世
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.80, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 マスクには感染症対策、アレルギー対策、ホコリや粉塵などから喉や気管支を保護する効果がある。また、給食施設においては調理従事者の衛生管理対策として使用される。しかし長時間の着用によって内部が蒸れてきて不快感を生じたり臭いを発してくることもある。さらにマスクが微生物の汚染源となり、マスクを介して細菌が食品に伝播されることも考えられる。そこで、マスクの使用状況の調査と使用済みマスクの微生物汚染度を測定した。方法 大学生148人を対象にマスクの使用状況に関するアンケートを実施した。マスクの汚染状況は微生物検査とATP検査で評価した。微生物検査は、生理食塩水中で使用済みマスクを一定時間揉み洗いして検査液を調製し、一般細菌(標準寒天培地)、ブドウ球菌(卵黄加マンニット食塩培地)、真菌(PDA培地)の測定を行なった。また検査液のATP検査を行なった。結果 学生のマスクの使用頻度は高く、中には一度使用したマスクを翌日に再使用する人がいた。また着用時にマスクを手で触れる人が多いことがわかった。使用済みマスクの細菌汚染状況には個人差があり、汚染度の高いマスクで105cfuを超える一般細菌が検出された。またその大部分はブドウ球菌だった。マスクの一般細菌数とATP発光量に関連は認められず、マスクには今回の測定で検出されない口腔細菌等が多数付着しているため、ATP発光量に影響したと考えられた。
著者
髙嶋 博
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.3-6, 2022 (Released:2022-06-15)
参考文献数
13

Medical scientists are asked to make various judgments when new diseases emerge, such as COVID–19, but even for these experts, their judgments are often incorrect. Experts always attempt to convince the public using a term “science–based evidence” but, in many cases, without real solid evidence. There are massive of unexplained diseases and pathogenicity in neurology. In order to discover and elucidate new diseases and their pathophysiological conditions, it is important to carefully examine and investigate each patient, followed by a persistent tracing sincerely and deeply. Medicine is still developing, and to make the neurology more practical and useful for the world, I would like to expect flexibility, innovation, and conscience from doctors with neurological expertise.
著者
Benjamin W. Frable Duane E. Stevenson
出版者
The Japanese Society of Systematic Zoology
雑誌
Species Diversity (ISSN:13421670)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.377-380, 2020-11-16 (Released:2020-11-17)
参考文献数
14

While examining specimens identified as Paracaristius maderensis (Maul, 1949) at the Scripps Institution of Oceanography Marine Vertebrate Collection, we encountered an individual of the genus Platyberyx Zugmayer, 1911. This specimen was collected in the Central Pacific Ocean, 900 km east of Wake Atoll during the Naga Expedition 1959–1961. We identified the specimen as Platyberyx rhyton Stevenson and Kenaley, 2013, and it represents the first record of this species outside of Japanese waters. This is a range extension of around 3400 km east for this species, as well as the first record of a juvenile individual and the fourth record of the species overall. We provide a morphological description and comparisons to the three previously known adult specimens.
著者
金子 真紀子 三宅 正起
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.255-259, 2013 (Released:2013-10-21)
参考文献数
15

キュウリに含まれるギ酸の分布および味覚特性を明らかにするため, まず, HPLC法による分析法とキュウリ試料調製法について検討を行った。設定したHPLC分析法のギ酸定量限界は0.5 mg/Lであり, 再現性も良好であった。キュウリは, 果皮, 維管束, 果肉および種子, それぞれの部位に分け, HPLC分析試料を調製した。HPLC分析の結果, ギ酸は果肉と種子では検出されず, 果皮と維管束に局在することが示された。ギ酸標準水溶液の味覚特性を調べた結果, 低濃度 (<10 mg/L) では渋味を感じ, 濃度が高くなるに伴って渋味とともに苦味と酸味も強くなった。キュウリの渋味とギ酸濃度との関係については, 特に果皮を食したときに感じられる渋味は, ギ酸によるものと推察された。さらに, ギ酸を各種濃度に調整したキュウリの官能結果からも, ギ酸がキュウリの渋味の主な要因であることが示唆された。