著者
草野 由貴子 鈴木 浩一 徳永 朋祥
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.2-14, 2016-04-10 (Released:2016-06-04)
参考文献数
30

大陸棚上の島嶼である隠岐島前・中ノ島における地下の塩水・淡水分布の解明を目的とし,CSAMT法電磁探査により比抵抗2次元断面を得るとともに,現地で採取した岩石試料の比抵抗を計測した.中ノ島では陥没構造を形成した推定断層の存在が既往研究により示唆されており,比抵抗2次元断面にみられた構造は,断層による地質構造の相違を示していると解釈された.陥没構造内部では,地表~標高約-100m前後で高比抵抗,標高-100~-200m前後で低比抵抗,その下部で高比抵抗,さらに深部で低比抵抗を示した.現地の岩石試料の比抵抗計測結果に地下水の化学組成を併せて考察すると,地表~標高約-100m前後の高比抵抗領域は現在の気候下で涵養された淡水地下水の存在領域,標高-100~-200m前後の低比抵抗領域は塩濃度の高い地下水の存在領域,その下位の高比抵抗領域は現在よりも寒冷な気候下で涵養された塩濃度の低い地下水の存在領域,さらに深部の低比抵抗領域は塩濃度の高い地下水の存在領域であると考えられた.また,陥没構造外部では,地表~標高-50m前後に高比抵抗領域,その下位に低比抵抗領域がみられ,その境界は表層の火山岩とその基盤の堆積岩との岩相の相違であると解釈された.
著者
安藤 直子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.344-365, 2001-12-30

本論文においては、岩手県盛岡市の2つの祭礼「チャグチャグ馬コ」と「さんさ踊り」を題材に、祭りが「伝統性」保持と観光化という対立する文脈において変化していく複雑なプロセスと、そのプロセスの中での祭りに携わる人々の「伝統」保持及び観光化への関わり方を分析した。その結果、担い手による多様な「オーセンティシティ(真正性、本物性)」追求の様相が確認された。従来の観光人類学においては「ゲスト(観光地を訪れる人々)」「ホスト(観光を担う人々)」といった二項対立の枠組み上で、ゲストとホストとの関わりが議論され、オーセンティシティ概念も同様の枠組み上で論じられてきた。ゲストが「オーセンティシティ」を追求し、一方ホストは「疑似イベント」を創出しゲストに提供すると論じられ、主にゲストに主体性をおいた「オーセンティシティ」論が展開されてきた。しかしながら、2つの祭りにおいてはホストが訪問者を制して主体性を獲得し、多様な方法でオーセンティシティを主張する様相が確認された。担い手によるオーセンティシティの追求は、ゲストによるそれとは比較できないほど重要かつ切実な問題であると言える。なぜなら、担い手にとってオーセンティシティの追求は、地域社会における中心的な地位の追求と重なっているためである。2つの祭りにおいては、オーセンティシティにより近いと主張し、担い手内部でそのように評価されるほど、祭りの中で中心的な位置を占めることができる。祭り運営組織の役職に就き、運営上の主導権を獲得することは、結果的に担い手の地元内部における社会的プレステージ(威信)を上昇させる。観光化が進むほどにこの傾向は強まり、ホストによるオーセンティシティの主張は活発化し、主張の方法も複雑化している。本論文においては、観光の現場でホストがオーセンティシティを追求する理由を議論し、その概念を深めることを目的とする。
著者
長縄 秀俊
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.585-606, 1999-12-01 (Released:2009-06-12)
参考文献数
82
被引用文献数
1 3

バイカル湖オリホン島の小水域から得られた大型鰓脚甲殻類(カイエビ目)の1種をBaikalolkhonia tatianae gen. et sp. nov.(バイカロルホニア・タチヤニ新属・新種)として記載した。本属は,前額部に付属器官および全鰓脚に上肢三角板をそれぞれ欠き,尾節に1対の顕著な前棘が存在する点に基づき,科Cyzicidae STEBBING,1910(カイエビ科)に属すると判断された。本属固有の主な分類学的特徴は,第1脚対を含む前寄りの鰓脚上肢上角の多数が「円筒器官」へと変形していることである。この一連の上肢付属器官の特異な体制は,カイエビ科としては全く未知のものであり,かつ異例の形質でもあるため,カイエビ科の標徴を再評価し,同科において新たに定義された2亜科(バイカルカイエビ亜科Baikalolkhoniinaeおよびカイエビ亜科Cyzicinae)を提示した。本種以外のカイエビ目として,今日までに東アジア(極東ロシア,モンゴル,中国,韓国および日本)の隣接地域からは,4科(マルカイエビ科Cyclestheriidae,カイエビ科Cyzicidae,トゲカイエビ科Leptestheriidaeおよびヒメカイエビ科Limnadiidae)に分類される7属11種が知られている。これらの分布は,4つの動物地理学的な要素によってほぼ説明され,種の多様性については,ヨーロッパのカイエビ相と同様な,緯度に伴う明確な勾配が認められた。東アジアのカイエビ類について,種レベル・タクサまでのリストと検索表を付した。
著者
坪井 秀人
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.22-33, 1990-04-10

前回にひき続き伊藤比呂美『テリトリー論1』('87)について以下の二点を中心に考察した。第一は詩集中ほどに配された「コヨーテ」「悪いおっぱい」他に見られる母系世界とプレ農耕的な始原のイメージについて。「娘」に仮託されたそのカオスへの志向を、制度が刷り込んだ<起源>を相対化するものと捉えた。第二は引用の導入を契機に獲得したミニマリズムの方法について。そこでの言葉の意味のずらし・変容による論理の自由さがモラルからの自由と一体のものになっていることを示した。
著者
濱路 政嗣 河野 智 北野 満 松田 光彦
出版者
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.358-362, 2006-11-15
被引用文献数
3

感染性腹部大動脈瘤は腹部大動脈瘤全体の0.06〜3.4%,感染性動脈瘤の18%を占める.われわれは,合併症を伴う腎動脈下の感染性腹部大動脈瘤を2例経験し,診断および治療上の問題点を検討した.症例1:75歳,男性.糖尿病,高血圧あり.全身倦怠感,発熱,腹膜刺激症状があり急性虫垂炎と診断されたが,虫垂に異常なく閉腹され,CTで腎動脈下の仮性大動脈瘤と診断された.後腹膜に多量の血腫があり,瘤の内部に悪臭のある膿様の液体が貯留していた.症例2:50歳,男性.高血圧,糖尿病,肝硬変,HCV抗体陽性で食道静脈瘤を合併していた.全身倦怠感,熱発,水様性下痢,血小板減少のため入院し,CTで腎動脈下の感染性動脈瘤と診断された.大動脈分岐部右側の黒色の仮性瘤の内部は,多量の血栓と黒色の液体が貯留していた.術前血液培養はそれぞれKlebsiella pneumoniae,Methicillin-susceptible Staphylococcus aureus(MSSA)が陽性であったが,瘤壁や周囲組織の培養は陰性であった.2例とも準緊急手術であったが,局所のデブリドマンと解剖学的血行再建で幸い良好な経過を示した.しかし,感染性腹部大動脈瘤に対して,局所感染状況を把握しつつ適切な手術時期を決定することは容易ではないと考えられた.
著者
河井 大介 天野 美穂子 小笠原 盛浩 橋元 良明 小室 広佐子 大野 志郎 堀川 裕介
出版者
日本社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会全国大会研究発表論文集
巻号頁・発行日
vol.26, pp.265-270, 2011

This paper shows actual use of Social Networking Service(SNS) and its effects with SNS addiction. SNS user is over 70 million, and we can see a topic about internet or SNS addiction on mass media and internet homepage. However there are few paper about SNS addiction. Thus we present this paper about how long, how often, what kind of service, and what kind of scene SNS addicted user use SNS, and what kind of burden and sacrifice SNS addicted felt by using SNS, and change and effects by SNS use.
著者
向井 幸則 小林 博
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.1339-1346, 1991 (Released:2008-02-29)
参考文献数
23
被引用文献数
7 10

The free neuromasts were morphologically investigated in the larvae of two cyprinid fish, Zacco platypus and Gnathopogon elongatus caerulescens. In Z. platypus that mainly inhabits rivers, cupulae increased in length and became flat in shape (the so-called nail type) along with growth in the larval stage. Afterwards, the cupulae became shorter during the juvenile stage. The short and nail type cupulae of Z. platypus seem to be adaptive to rheotactic swimming. On the other hand, in G. elongatus caerulescens that lives in lakes, the cupulae were long and did not change in length until the 72nd day after hatching in the juvenile stage, but it changed in shape from a stick to a flat type like marine algae (laminaria). The surface area of these cupulae is larger than that of Z. platypus, and therefore the cupulae of G. elongatus caerulescens will be more receptive to mechanical stimulus by water flow. The photographs (SEM) of neuromast showed that the direction of the best physiological sensitivity of sensory hair cells coincided with the minor axis of the outline of the neuromast area, namely the bending direction of cupulae. From these results, it was considered that the neuro-masts of G. elongates caerulescens have a high sensitivity not only regarding their swimming behavior but also for perceiving weak water movements caused by prey and predators.
著者
長谷川 元洋
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.29-32, 2013-01

2011年3月の福島第一原発の事故により,約900PBq(国際原子力指標尺度評価によって換算)の放射性物質が大気中に放出されたと推定されている(東京電力株式会社2012)。この放射性物質は,人体へ直接的に影響するのに加え,農業,畜産業,漁業を通した食品にまでその影響が拡大している。事故の起きた福島県は約70%が森林に覆われており,林産物をはじめ,森林生態系に住む各種の野生生物への放射性物質の影響が懸念されている。森林生態系では,落葉層及び土壌には高濃度の放射性物質が蓄積している事が明らかになり(農林水産省平成23年12月27日プレスリリース),落葉属及び土壌中にすむ菌食,デトリタス食(落葉落枝,腐植などを摂食する),土壌食の生物やそれを捕食するほ乳動物などへの影響が重要視される。本稿では,チェルノブイリ原発事故時における放射性物質の土壌動物への影響の知見を概観し,2011年8月よりはじめた,福島原発事故の森林に生息するミミズへの影響に関しての調査内容について報告する。

3 0 0 0 OA 明治一七年

出版者
北海道大学
雑誌
北大百年史
巻号頁・発行日
vol.史料(一), pp.669-736, 1981-04-10
著者
少年音楽会 編
出版者
岡村盛花堂
巻号頁・発行日
1910

3 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1904年09月13日, 1904-09-13
著者
片瀬 拓弥
出版者
清泉女学院短期大学
雑誌
清泉女学院短期大学研究紀要 = Bulletin of Seisen Jogakuin College (ISSN:02896761)
巻号頁・発行日
no.34, pp.1-10, 2015

本研究は、インターンシップ実習生の自己評価表をもとにテキストマイニング分析を行い、次の2点を明らかにした。(1) 実習生が体験した業務内容について、実習先の産業分類ごと統計的に差異があることを明らかにした。さらに分析結果を活用して、インターンシップ用Realistic Job Preview (RJP)指標を試作した。(2) インターンシップ実施時期による実習生の意識の差異を分析した結果、1年春休みの実習生は、1年夏休みの実習生よりも、より「就職」を意識していることを明らかにした。
著者
横井 創磨 佐藤 一誠 中川 裕志
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:21888833)
巻号頁・発行日
vol.2015-MPS-103, no.5, pp.1-5, 2015-06-16

大規模な文書データに対して頻度分布のロングテールに位置する単語は情報量が少ないため,トピックモデルと呼ばれる単語の統計モデルを分布の背後に仮定することで,検索エンジンやオンライン広告などの性能が向上することが知られている.しかし,このような場面において用いられるトピックモデルは,予め仮定する潜在トピック数を高次元に設定する必要があり,計算速度や必要メモリ量が問題になる.トピックモデルの最も基本的なモデルである LDA に対して,大量の文書を扱える SGRLD LDA や高次元のトピックを扱える AliasLDA などの手法が存在するが,大量の文書・高次元のトピックを同時に達成するためには非効率的なアルゴリズムを巨大な計算機リソースを用いて実行しなくてはならない.そこで本研究では,これらの手法をうまく組み合わせることで効率的な計算を可能にする.また,勾配計算において更新の方法を工夫することにより,余分な空間を使わずに期待値計算を行うことができる.実験により,提案手法は大規模データかつ高次元トピックでも実行可能であり,さらに既存手法と比較して速く,特に高次元トピックでは 10 倍以上高速であることを示す.