著者
浜口 功
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
NEUROINFECTION (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.92, 2020 (Released:2020-05-13)
参考文献数
5

【要旨】国内の HTLV-1 感染者の推定を行ったところ、感染者総数が最大 82 万人にまで減少していることが明らかになった。一方で、年間 4,000 人以上の HTLV-1 水平感染が国内で起こっていることが判明した。特に男性、しかも若年者(20〜30 代)の新規感染が有意に増加傾向にある。社会活動性の高い世代での感染者の増加は二次的水平感染拡大につながると考えられ、水平感染対策が必要である。対策の一つとして、HTLV-1 核酸検査法およびラインイムノアッセイ法(LIA 法)を検査手順に取り入れた「HTLV-1 感染の診断指針」を作成し、HTLV-1 検査法の充実を図っている。
著者
猪野 毅
出版者
北海道大学大学院文学研究科
雑誌
研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.161-185, 2010-12-24

小論は、山川九一郎著の『奇門遁甲千金書』という書を解読するために、まずその前提として「奇門遁甲」の基本的な概念や考え方について、まとめようと試みるものである。 『四庫全書総目』子部・術数類の中に収められている奇門遁甲に関係する文献には、『遁甲演義』二巻、『奇門遁甲賦』一巻、『黄帝奇門遁甲図』一巻、『奇門要略』一巻、『太乙遁甲専征賦』一巻、『遁甲吉方直指』一巻、『奇門説要』一巻、『太乙金鏡式経』十巻、『六壬大全』十二巻。また、『古今図書集成』や『隋書』経籍志にも遁甲の書が見える。 「遁甲」なる言葉は、史書においては『後漢書』方術伝・高獲伝・趙彦伝に初めて見え、また『陳書』『魏書』『北斉書』『南史』などにも「遁甲」の名称が見える。日本でも『日本書紀』推古天皇十年(602)条に「遁甲」が伝来したことが見える。『遁甲演義』・『奇門遁甲秘笈大全』などにより奇門遁甲の基本概念を考えると、甲を除いた乙・丙・丁を「三奇」とし、戊・己・庚・辰・壬・癸を「六儀」として、八卦の入った洛書九宮の枠に組み合わせ、その他、休、生、傷、杜、景、死、驚、開の「八門」、直符、螣蛇、太陰、六合、勾陳、朱雀、九地、九天の「八神」(あるいは太常を入れて「九神」)、また天蓬星・天任星・天冲星・天輔星・天英星・天芮星・天柱星・天心星・天禽星の「九星」を並べて「遁甲盤」を作り上げ、占う年月日時を六十干支で表し、「天の時」「地の利」「人の和」に基づいて占いを行う。その占い方には、洛書九宮の八枠を円盤に見立てて回転移動させる排宮法と、洛書九宮の数の順序通りに移動させる飛宮法があり、山川九一郎『奇門遁甲千金書』の占い方は排宮法を用いている。 遁甲盤を並べ終えたら、それぞれ九星・八門・八神(または九神)などの表す意味や、相互の影響を考えて、吉凶を判断する。 奇門遁甲は方位学(空間の学、洛書学)であり、干支学(時間の学、暦学)でもあるあるので、奇門遁甲は時間と空間を統合した学問と言える。さらに、空間を洛書に従って九つに分け、時間を六十干支に従って六十に分割し、独自の世界観を構築している。また、九神・九星が天、九宮が地、八門が人という、「天・地・人」をイメージした世界を構成している占術なのである。

19 0 0 0 OA 一瓢雑話

著者
今泉秀太郎 述
出版者
誠之堂
巻号頁・発行日
1901
著者
海野 桃子 安藤 秀俊
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.99-102, 2007 (Released:2018-04-07)
参考文献数
17

現在,理科の自由研究は,学校における理科教育の一端として広く行われている。しかし,学習指導要領においては,明確に記されてはおらず,自由研究の歴史的背景や今日までの経緯についてはあまり知られていない。そこで本研究では,理科の自由研究の明治時代から現在までの流れと教師の役割などについてまとめた。更に附属小学校の児童に自由研究についての好き嫌い,楽しさ,頑張り,やる気などのアンケート調査を行った。
著者
服部 倫卓
出版者
ロシア・東欧学会
雑誌
ロシア・東欧研究 (ISSN:13486497)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.43, pp.2-20, 2014 (Released:2016-09-09)
参考文献数
17

In this study I will try to survey how Ukrainian oligarchs acted in the course of 2014 upheaval. Viktor Yanukovich’s Party of Regions, whose rule collapsed as a result of the Euromaidan Revolution in 2014, had been a party of interests, not of ideology. For the first couple of years (2010–2011) it was rather a coalition of several factions, with their interests more or less respected. The balance of power and interests of early years came to be disrupted by greedy expansion of the Yanukovich Family. It began to grow rapidly assumedly around the end of 2011 or the beginning of 2012. The President’s son Oleksandr Yanukovich coordinated building of the Family empire, with help from intimate oligarchs like Serhiy Kurchenko and Yuliy Ivanyushchenko. Even some Ministers of national government contributed to money making schemes for the Family. Its spheres expanded sometimes even to the detriment of oligarchs who had been loyal to the regime. By the time mass demonstrations began at the end of 2013, the regime was no longer monolithic, losing full loyalty from Rinat Akhmetov and Dmitro Firtash, the 2 giant oligarchs of the Yanukovich era. Petro Poroshenko supported the Maidan movement most actively among famous oligarchs. Akhmetov, who used to be the biggest sponsor of the Yanukovich Regime, is also believed to have financed Maidan. Key persons of the Yanukovich Family and Andriy Klyuyev, on the other hand, insisted on ruthless suppression of Maidan. Vitaly Klichko, one of the most popular potential candidates of upcoming presidential elections, announced withdrawal from the race in March 2014. This even more ensured victory of Petro Poroshenko in elections on 25 May. Some experts believe that Firtash arranged Poroshenko=Klichko alliance, fearing that his rival Yuliya Tymoshenko might become president and get revenge on him. In Ukraine’s elections, most candidates traditionally appeal to anti-oligarch propaganda. Paradoxically it was Poroshenko, one of the most famous oligarchs in Ukraine, who won the 2014 presidential elections. There are no clear evidence that the oligarchs, who have business interests on the Crimean Peninsula, either supported actively Russia’s incorporation of Crimea or, oppositely, resisted it. It is well known, however, that Sergei Aksenov, who became Premier of Crimean AR and led its incorporation into Russian Federation, had been fostered by Firtash as a politician. Some experts hence believe that Firtash at least tacitly approved incorporation of Crimea. But in reality Firtash’s business on the Peninsula, for example titanium business, is threatened by changes of jurisdiction. In April–May 2014 some suspected that Rinat Akhmetov, a longtime lord of the region, stood behind pro-Russian separatist movements in Donbass. It is true that Akhmetov contacted separatists and attempted to use them. But he only needed a bargaining chip in relations with Kiev. It is very doubtful wheather Akhmetov really committed to separatism of Donbass. If Donbass will be independent from Ukraine or incorporated into Russian Federation, his ferrous metallurgy will inevitably collapse. At present Akhmetov is in distress because of warfare in Donbass and other unpleasant realities.
著者
芳野 純 臼田 滋
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.651-655, 2012 (Released:2013-01-30)
参考文献数
18
被引用文献数
9 4

〔目的〕理学療法における臨床能力評価尺度(Clinical Competence Evaluation Scale in Physical Therapy: CEPT)の開発と信頼性を検証すること.〔方法〕CEPTは先に実施した質的研究を参考に53項目とした.対象はすべて理学療法士で,経験年数3年未満の被指導者,その主指導者と副指導者各30名で計90名であった.被指導者と主指導者の検者内信頼性と,主指導者と副指導者間の検者間信頼性を検証した.〔結果〕CEPTの得点は,自己評価である被指導者の点数が,主指導者と副指導者評価より低値であった.項目毎および合計点について,被指導者と主指導者ともに中等度から高い検者内信頼性を認めたが,検者間信頼性は低い結果となった.〔結論〕53項目からなるCEPTを開発し,中等度から高い検者内信頼性が認められた.
著者
横田 祐季
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.247, 2020 (Released:2020-03-30)

Ⅰ はじめに近年アニメ聖地巡礼が盛んであり,その中で,コラボ終了後の持続可能性は重要な課題とされる(風呂本,2012).作品愛着を超えて地域愛着を持ち地域を何度も訪れるようなファンを獲得することが重要と言えるが,アニメファンの地域愛着については研究が不足している.また近年では聖地に移住するファンの存在も指摘されているが(喜馬ほか,2018),聖地移住についての研究は為されていない.Ⅱ 研究目的と調査概要 本研究では,前述の研究背景を踏まえ,①聖地巡礼を通じたアニメファンの地域愛着の存在とその形成に影響を与える要因,また②そうしたアニメファンが聖地巡礼を契機に聖地への移住へと至るプロセスの二点を明らかにすることを目的とする. 対象地域は『ラブライブ!サンシャイン!!』聖地静岡県沼津市とした.近年アニメツーリズムの成功事例として注目を集めており,関係者への取材によると,アニメ放送が開始された2016年以降少なくとも50人以上はアニメ聖地巡礼を契機とした移住者がいるという. まず上記①を明らかにすることを目的に,聖地巡礼者にアンケート調査を実施した(Ⅲ).その結果アニメファン166名の有効回答を得た. また②を明らかにすることを目的に聖地移住者にヒアリング調査とアンケート調査を実施した(Ⅳ).ヒアリング調査は10名の移住者に対して行われ,アンケート調査はさらに10名を加えた20名に対して行われた.Ⅲ アニメファンの聖地への地域愛着 地域愛着の分析には,単純な嗜好の程度を表す地域愛着(選好),「そこに住みたい」という地域との結び付きを感じる程度を表す地域愛着(感情),「このような地域であって欲しい」という願いの程度を表す地域愛着(持続願望)の3指標を用いた.また地域愛着の形成に影響を与えると思われる要因として聖地巡礼の内容や地域への意識など様々な質問項目を設定した.分析では相関分析とt検定を用いた. 調査の結果,以下の知見が得られた.まず,アニメファンは聖地に対して一定の地域愛着を持つ(平均:選好4.6,感情3.69,持続願望:3.78/5点満点).また地域愛着(選好)→(感情)→(持続願望)と,より深い次元の地域愛着へと段階的に醸成されること,そして地域愛着の醸成が次回,さらにはコラボ終了後の来訪意欲にも繋がることが示唆された. 地域愛着(選好)は来訪回数や来訪満足度,地域交流度,SNS利用と関連があり,単純に訪問を重ねることでも醸成されると考えられる.また地域住民との交流機会の創出やSNSの活用を意識したイベント展開で醸成を促せると考えられ,来訪意欲との相関も最も高いことから観光振興を図る上で有効な指標といえる. 地域愛着(感情)は滞在日数や来訪満足度,地域交流度,SNS利用と一定の関連があり,地域愛着(選好)と同様の施策展開を行うことである程度醸成を促せると考えられる.また「景色が美しいまち」「人のあたたかいまち」「自然豊かなまち」といったイメージを持つ人は高い値を示す傾向にあり,アニメ作中で描かれるイメージを実際に聖地巡礼でも抱けたことで「居場所がある」といった感情が生まれると考えられる.移住者はこの値が高く,そのために移住に至ったと推察される. 地域愛着(持続願望)は地域愛着(選好・感情)と比べると様々な要素と関連が薄く,来訪意欲との関連も薄い.アニメツーリズムの展開を促す上では有効な指標とはいえないと思われる.Ⅳ 聖地移住のプロセス 聖地巡礼を通じた認知や体験によって地域愛着(選好)→(感情)というように深い次元の地域愛着の醸成に繋がり,これがプル要因となっていた.その際,自然的環境や都市的環境に加え,アニメ聖地巡礼に特有なものとして「地域の人のあたたかさ」「ファンの集う場所」といった社会的環境や「地域に根付いたアニメの存在」が認知され,アニメが媒介となって自らと地域の結び付きを感じる状態になっていた.前環境への不満がプッシュ要因となった場合もあったが,必ずしも移住の決断に際して必要な条件ではなかった.また移住者・移住希望者交流会の定期開催が近年の移住者数の増加に寄与しており,そこでもアニメを通じたコミュニティの形成が参加への障壁を下げ情報交換を促し移住の決断を後押ししていたと考えられる.謝辞:調査にご協力頂いたアニメファンの皆様,沼津市の方々に心より感謝いたします.参考文献風呂本武典 2012. 過疎地域におけるアニメ系コンテンツツーリズムの構造と課題—アニメ「たまゆら」と竹原市を事例に.広島商船高等専門学校紀要 34:101-119.喜馬佳也乃・坂本優紀・川添 航・佐藤壮太・松井圭介 2018. リピーターの観光行動からみたアニメツーリズムの持続性—茨城県大洗町「ガールズ&パンツァー」を事例として.筑波大学人文地理学研究 38:13-43.
著者
新田 孝行
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.61-85, 2022-09-30

あるインタヴューでジャン=クロード・ビエットは,批評家としては一義的な関心の対象である演出が自ら映画を監督する際は二次的な問題になったと述べている。ヌーヴェル・ヴァーグ以後の批評における特権的な価値基準だった演出よりも重要になったのは俳優と人物(役柄)の関係だった。俳優が役を演じることを嫌ったロッセリーニやブレッソン,ゴダールらに対し,ビエットは,パゾリーニとともに,誰もが日常生活でつねにすでに演じているという前提から出発し,その「ドラマ性」を映画に取り込んだ。彼は親しい仲間でもある俳優を観察し,私的な会話での発言を台詞として採用して役を当て書きした。こうした撮影以前の段階が擬似的な演技指導の役割を果たすことで,ビエットの映画では俳優本人の過去の生が人物に反映され,映画内の物語に先行する時間が表現される。
著者
丸山 隆一
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.4-11, 2020-03-05 (Released:2020-05-07)
参考文献数
14

脳のなかにある860億個のニューロンは,いったいどのように私たちの感情,思考,そして「脳を理解したい」という気持ちを生み出しているのだろうか.そもそも脳を理解するとはどういうことなのだろうか.脳の理解を目指す研究者たちは,「脳の理解」をどのように捉え,いかなるアプローチを試みているのだろうか.筆者は非研究者であり,脳研究の「勉強」と「支援」という側面から,「脳の理解」に関心を寄せてきた一人である.そんな外野の立場から,「脳の理解」をめぐる現況の簡易な見取り図を描いてみたい.
著者
伊藤 亮輔 Itoh Ryosuke
出版者
早稲田大学
巻号頁・発行日
pp.1-76, 2019

早大学位記番号:新8336