著者
桐村 喬
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.176-186, 2021 (Released:2021-05-15)
参考文献数
6
被引用文献数
2

地域メッシュ単位で集計されたメッシュデータをGISソフトで地図に示すには,メッシュのポリゴンデータを用意したうえで結合する必要があり,場合によっては事前の加工が必要なこともある.そこで,これらの手間を省き,メッシュデータから簡易的にメッシュマップを描画する,ウェブブラウザベースの「MeshDataView3D」を開発した.本ツールでは,e-Statのデータも含めたメッシュデータを読み込むことができ,ポイントやポリゴン,3Dポリゴンでメッシュマップを描画できる.本ツールを使用することで,メッシュマップの描画に要する時間を大幅に削減でき,授業であれば,さまざまなメッシュマップから情報を読み取り,地理的思考を働かせることに十分な時間を割くことができる.また,インターネット接続と最新のウェブブラウザさえあれば動作することから,自宅学習などでも活用でき,GIS教育や地理教育に役立てることができる.
著者
古山 英二
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
日本橋学館大学紀要 (ISSN:13480154)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.67-80, 2008-03-01 (Released:2018-02-07)

新古典派経済学理論の三大前提条件、即ち完全競争、情報の対称性、行為者の合理性のうち、最後の前提条件は、経済学以外の分野からの批判はあっても、経済学自身の側からの批判はなかった。2002年のアルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン銀行賞受賞者の一人、ダニエル・カーネマンは一貫して経済行為者の非合理性に関する理論を提唱し、彼の理論を裏付ける実験を行ってきた。カーネマンによれば経済行為は合理性よりも直感に依拠する場合が多いという。本論文はカーネマンの理論と実験の内容を短くレヴィユーした後、カーネマンの見解を直近の脳科学(neuroscience)、特にジェラルド・エーデルマンによって提唱されている神経細胞群選択説を参考にしつつ、吟味するものである。
著者
新田 雅之 村垣 善浩
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
pp.jslsm-41_0036, (Released:2020-12-05)
参考文献数
63

正確かつ安全に悪性神経膠腫を最大限に摘出することは容易ではなく,(5-aminolevulinic acid: 5-ALA)を用いた光線力学的診断(Photodynamic diagnosis: PDD)を始め多くのモダリティが応用される.5-ALAは腫瘍内に選択的に集積し,その代謝産物である(Protoporphyrin IX: PpIX)の蛍光によって,腫瘍の存在を非常に簡便かつリアルタイムに示すことができ,本手術の遂行に有用である.最近ではPpIXの集積メカニズムの解明も進み,その集積効率を高めることで,PDDのみならず光線力学的療法(Photodynamic therapy: PDT)の効果増強に関する研究も期待されている.一方,本方法論には低悪性度神経膠腫での有用性が低い点,偽陽性や偽陰性の問題などがあり,その遂行には十分な知識と経験を要する.これら諸問題の克服のため,スペクトル解析を用いたPpIX蛍光の定量化技術の開発が進んでいる.また最近,本邦において悪性脳腫瘍のPDT治療剤として承認されているtalaporfin sodiumが,PDDにも応用可能であることが示され,今後は本薬剤を用いたPDDとPDTの併用が実現することが期待される.
著者
松尾 康弘 吉田 秀樹
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.61-68, 2013-06-28 (Released:2017-09-04)
参考文献数
25

近年、脳の認知機能研究が進み、リハビリテーションへの応用が多くみられるようになってきた。その認知機能の基盤である注意機能改善に対するModified attention process training(以下M-APT)が紹介され、その効果として、注意機能のみならず、社会的外向性等の改善までみられた報告がなされている。本研究はそのような背景から、注意機能が言語機能、コミュニケーション能力および知的機能に与える影響について検討した。方法は脳血管障害患者8名にM-APTを実施し、その前後において、注意機能検査、言語機能検査、コミュニケーション能力検査、知能検査を行った。その結果、知的機能検査以外の各検査結果が有意に向上した。以上から、注意機能向上は、言語課題の遂行・処理を促進させ、コミュニケーション能力の向上へ良い影響を与える可能性が示唆された。
著者
千葉 庫三
出版者
日本科学史学会
雑誌
科学史研究 (ISSN:21887535)
巻号頁・発行日
vol.59, no.294, pp.113-130, 2020 (Released:2021-01-24)

In the 1960s, radio astronomy research in Japan was at a developing stage in comparison with that of leading countries. However, in the following decades the situation improved dramatically, and Japan gained a competitive position in this research field. This was achieved largely through the construction of the Nobeyama Radio Observatory (NRO). This paper describes the NROʼs construction history by focusing on the setting of scientific goals and development of the equipment to achieve them. Although there have been a few preceding studies on the Japanese history of modern astronomy including radio astronomy, it is characterized that this study utilized mainly the minutes of the Science Council of Japan and documents of research groups as primary sources. This paper clarifies the following processes. In the 1960s, with a series of major worldwide discoveries in radio astronomy, the importance of radio astronomy was recognized in Japan as well, which led to the planning of the Science Council of Japan. Responding to the global trend of radio astronomy, Japan set as the scientific goal exploring millimeter-wave astronomy. In order to meet the requirements, the 45m radio telescope and an acousto-optic radio spectrometer for spectral observations were designed and their specifications were actually realized, which far exceeded world standards at that time. Consequently, Japanese radio astronomy could obtain its global position.
著者
酒見 悠介 森野 佳生
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.159-167, 2019-03-01 (Released:2019-03-30)
参考文献数
18

スパイキングニューラルネットワーク(SNN) は脳に倣ったモデルであり,活動電位(スパイク) による情報処理が可能である.近年,より高い情報処理能力を目指して,SNN を用いた深層学習が注目されている.既存の深層学習のアルゴリズムをSNN に直接導入することは数理的に困難であり,様々な新規手法が提案されつつある.本稿はSNN における深層学習アルゴリズムを主に数理的な観点から整理することを目的にしており,特に,教師あり学習,教師なし学習の点から解説する.教師あり学習では主に誤差逆伝搬アルゴリズムについて,教師なし学習ではSpike-Timing-Dependent Plasticity に基づくアルゴリズムについて解説する.
著者
矢守 克也 李 旉昕
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1712, (Released:2017-12-02)
参考文献数
19
被引用文献数
1

高知県黒潮町が掲げる「私たちの町には美術館がありません,美しい砂浜が美術館です」というフレーズは,「Xがない,YがXです」の形式をもつ。本論文では,この形式が,「限界集落」,「地方消滅」といった言葉によって形容されるきびしい状況下にある地方の地域社会の活性化を支える根幹的なロジックになりうることを,「Xからの疎外/Xへの疎外」の重層関係を基盤とした見田宗介の疎外論の観点から明らかにした。この疎外論の根幹は,「Xからの疎外」(Xがないことによる不幸)は,その前提に「Xへの疎外」(Xだけが幸福の基準となっていること)を必ず伴っているとの洞察である。よって,Xの欠落に対してXを外部から支援することは,「Xからの疎外」の擬似的な解消にはなっても,かえって「Xへの疎外」を維持・強化してしまう副作用をもっている。これに対して,YがXの機能的等価物であることを当事者自身が見いだし宣言したと解釈しうる黒潮町のフレーズには,「Xからの疎外」を「Xへの疎外」の基底層にまで分け入って根本から克服するための道筋が示されていると言える。
著者
Hisanori Horiuchi Eriko Morishita Tetsumei Urano Kenji Yokoyama the Questionnaire-survey Joint Team on The COVID-19-related thrombosis
出版者
Japan Atherosclerosis Society
雑誌
Journal of Atherosclerosis and Thrombosis (ISSN:13403478)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.406-416, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)
参考文献数
15
被引用文献数
45

A questionnaire on COVID-19-related thrombosis in patients hospitalized before Aug 31, 2020, was sent to 399 hospitals throughout Japan. Responses were received from 111 (27.8%) with information on 6,202 COVID-19 patients. Of these, 333 and 56 required ventilation or extracorporeal membrane oxygenation (ECMO), respectively, and 212 died (3.4%). D-dimer levels were measured in 75.0% of the patients, revealing that 9.2% and 7.6% exhibited D-dimer increases of 3-8-fold and ≥8-fold the reference value, respectively. Thrombotic events occurred in 108 patients (1.86% of the 5,807 patients with available data) including symptomatic cerebral infarction in 24, myocardial infarction in 7, deep vein thrombosis in 41, pulmonary thromboembolism in 30, and other thrombotic events in 22. Some patients developed multiple thrombotic events. Thrombosis occurred in 32 patients with mild or moderate COVID-19 severity (0.59% of those with data available) and in 52 patients on ventilation or ECMO (13.5% of severe patients for whom data were available). Thrombosis occurred in 67 patients during worsening clinical condition and in 26 during recovery. Anticoagulant therapy was provided to 893 patients (14.6% of the 6,119 patients with available data), the main reasons being provided as elevated D-dimer levels and worsening clinical condition.
著者
綿森 淑子
出版者
日本コミュニケーション障害学会
雑誌
聴能言語学研究 (ISSN:09128204)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.29-34, 2002-04-25 (Released:2009-11-18)
参考文献数
9

介護保険の導入後,STが人員基準に含まれるようになったこともあり,介護老人保健施設(老健)に勤務するSTが急増している.2001年4月,我々は全国94の高齢者施設(主に老健)を対象にアンケート調査を実施し,54施設から回答を得た.老健で働くSTの悩みの背景ば、(1)制度面の立ち遅れ,(2)STとしての技法・方法論の不足,(3)STの役割の不明確さ,(4)他職種からの理解の得られにくさの4つに集約された.STとしての立場を確立していった人達のアプローチの分析から,老健におけるSTの役割は大きく3つに分けることができると考えられた.(1)生活モデルに沿った,利用者全体に関わる働きかけ,(2)狭義のコミュニケーション障害をもつ利用者への援助,(3)他職員への教育的役割.今後は老健STについてのガイドラインの作成,対象者に適した評価法の開発,STとしての技法・技術の開発,ニーズに合わせた講習会の実施など職能団体,学術団体からの支援が求められる.
著者
川本 裕輔
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.4_67-4_83, 2016-10-25 (Released:2017-01-14)

本論文では,暗号系の安全性を検証する方法について,暗号理論の初歩からコンピュータ上で安全性証明を書く最先端の研究までを解説する.暗号系の安全性は攻撃の確率や計算量を用いて定式化されるため,その数学的証明は煩雑であり,しばしば間違いも生じる.そこで,安全性証明を形式手法で記述し,証明の正しさをコンピュータ上で機械的に確かめる研究が盛んになっており,様々な検証ツールが開発されている.その中でも,検証ツールEasyCryptは,従来のツールよりも簡単に,厳密な安全性証明が得られる.本論文では,まず,確率的多項式時間チューリング機械の間のゲームとして暗号系の安全性を定式化し,ゲームの書き換えによって安全性を証明する手法を説明する.次に,確率関係ホーア論理を用いた安全性証明の形式化について述べ,検証ツールEasyCryptを用いて安全性証明を書く方法を紹介する.なお,本論文は暗号理論や定理証明支援系についての知識を仮定していない.
著者
千々和 泰明
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1_332-1_351, 2014 (Released:2017-07-01)

This study points out that the limitation of the analytical framework of “Autonomous Defense (or jishu bōei) vs. the Japan-U.S. Alliance” that scholars on Japan's postwar national security policy often use. On previous researches, this framework is applied arbitrarily and “Autonomous Defense” is compatible with “Alliance” in some cases. Then this research adopts analysis by “Defense Force Building vs. Operation” as another angle of vision. And it explains that the concept of “Repelling Limited and Small-Scale Aggression without External Assistance (or gentei shōkibo shinryaku dokuryoku taisho)” which appeared in the “National Defense Program Outline (or bōei taikō) 1976” and the “Guidelines for Japan-U.S. Defense Cooperation 1978.” This concept played the role as a measure for “Defense Force Building” in the two and then abandoned in the NDPO 1995 and the Guidelines 1997 by “Operational” request.
著者
仁志田 昇司
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.207-208, 2016 (Released:2017-02-02)
被引用文献数
1
著者
石原 米彦
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
燃料協会誌 (ISSN:03693775)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.12-19, 1960-01-20 (Released:2010-06-28)

鉄道の動力, が蒸気機関から電力, ディーゼル機関へとうつりつつあるのは世界的傾向であるが, わが国においても国鉄動力近代化委員会により, 15年間に主要幹線の完全電化と他の線のディーゼル化を行なう計画がなされた。この計画によると所要燃料を著しく節減できるようになる。しかし石炭価格が引下げられれば支線ではディーゼルと蒸気機関車の併用も考えられる。また電気機関車と電車の比較では高速化が容易でかつ, 種々便利であるため電車が多く用いられるようになるであろう。一方自動車と比較して将来鉄道の不振を予想する向きもあるが, わが国のように人工密度の高い所では場所をとらずに大きな輸送力を有し動力消費の少い鉄道が将来とも重要であると考えられる。
著者
大谷 武史 木村 大輔 平松 佑一 海部 祐史
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11871, (Released:2021-03-15)
参考文献数
38

【目的】脳出血後に希に生じる人格変化と依存的行動を呈した症例に対し,目標設定ツールを用いた理学療法を実施し良好な結果が得られたので報告する。【症例】症例は背内側核を中心とした右視床出血を呈した60 歳台の女性である。ADL 自立の阻害因子であった依存的行動の背景には人格変化と高次脳機能障害の影響が考えられ,加えて不安と自己効力感の低下を認めた。【方法】行動変容を促すためGoal Attainment Scale を用いて段階的に目標設定し,結果を2 週間毎に共有した。行動変容の背景要因を明確にするために目標達成度,自己効力感,神経心理学的検査,運動機能を評価した。【結果】自己効力感,神経心理学的検査,運動機能が改善し退院時目標を達成した。一方で,一部の改善を認めたものの人格変化は残存した。【結論】行動の計画や実行に目標設定ツールを用いて達成経験を共有したことが自己効力感を高め依存的行動の変容につながったと考えられた。