著者
谷辺 哲史 唐沢 かおり
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.10-21, 2021 (Released:2021-10-16)
参考文献数
28

本研究は自動運転車による交通事故を題材として,人工知能が人間に危害を与えたときの原因と責任の帰属を検討した。自動運転車が歩行者を轢いて死亡させるというシナリオを提示し,自動車のメーカーとユーザーに対する原因帰属と責任帰属の判断を求めた。人工知能への原因帰属はメーカー,ユーザーへの原因帰属と正の関連を示し,さらに,自律的な機械に意図などの心の機能があると知覚する傾向が高い人ほど,メーカーに事故の原因を帰属した。これらの結果から,人工知能が高い自律性を備えたとしても,人間から独立した行為主体として認知されるわけではないことが示された。また,問題責任(問題を発生させたことへの責任)の帰属はメーカー,ユーザーそれぞれへの原因帰属によって規定されたが,メーカーの解決責任(生じた問題を解決する義務)の帰属は人工知能への原因帰属とも関連しており,原因の所在とは別に開発者という立場ゆえに問題に対処する義務があると判断されることが明らかになった。最後に,人工知能の開発・利用に関する制度設計を議論するために,一般の人々の態度について実証的な知見を得ることの意義を議論した。
著者
北田 沙也加
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.212-220, 2016 (Released:2018-09-20)
参考文献数
28

年少児(4歳児)・年長児(6歳児)に物の永続性課題(あり得る現象とあり得ない現象)を見せ,不思議に思ったかの評定と驚きの表情を基に,各現象を不思議に思うかどうかを調べた。その際,あり得ない現象の前に「魔法の国」の話をする魔法群を設定し,統制群と比較した。あり得る現象に対する評定や表情変化に有意な年齢差は見られなかったが,あり得ない現象に対しては評定に有意な年齢差が見られ,年少児より年長児の方があり得ない現象を見てより不思議だと思っていた。魔法群と統制群に有意な差は見られず,物理概念に及ぼす魔法の影響は見られなかった。また,物理概念と空想/現実を区別する能力との相関を調べたところ,空想的な絵の判断とあり得ない現象の評定に関連が見られたが,年齢を統制すると関連は見られなかった。つまり,現実世界と空想の世界の認識がまだ曖昧である年少児は,魔法の概念にかかわらずあり得ない現象もあり得ると思う傾向が強いが,年長児になると魔法の概念にかかわらず,あり得ない現象を現実世界のこととして認識し,不思議に思うようになることが示唆された。
著者
Jong-Ho Koh Jin-Man Kim Un-Jae Chang Hyung-Joo Suh
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
Biological and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.84-87, 2003 (Released:2003-01-01)
参考文献数
22
被引用文献数
50 77

This study was conducted to investigate the hypocholesterolemic effect of the hot-water fraction (HW) from cultured mycelia of Cordyceps sinensis in a 5 l fermenter. The composition of HW was mainly carbohydrate (83.9%) and protein (11.8%) on a dry basis, and the carbohydrate of HW consisted of glucose, mannose, galactose, and arabinose in the molecular ratio of 1.0 : 0.8 : 0.5 : 0.1, respectively. In mice fed a cholesterol-free diet and those fed a cholesterol-enriched diet, body and liver weights were not significantly different from those of the controls. The serum total cholesterol (TC) of all mice groups administered HW (150 and 300 mg/kg/d, respectively) with the cholesterol-enriched diet decreased more than in the control group. Among the mice fed the cholesterol-enriched diet, HW also increased the high-density lipoprotein (HDL) cholesterol level, but decreased the very low-density lipoprotein plus low-density lipoprotein (VLDL+LDL) cholesterol level. The changes in HDL- and VLDL+LDL-cholesterol levels consequently decreased the atherogenic value. The results indicate that HW in rats administered a cholesterol-enriched diet decreased the plasma cholesterol level. The 300 mg/kg dose had a significant effect on the serum TC level.
著者
高田 俊二
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.378-384, 2013 (Released:2014-10-22)
参考文献数
11

日本写真学会の名誉賞を授与されたのを機に,富士フイルムにて進めたカラーフィルムおよびデジタル撮像素子での写真感度の向上に関する研究開発40年間の歩みをまとめた.
著者
中原 貴 望月 真衣 小林 朋子 相良 洋 中島 慎太郎
出版者
日本歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、現代の歯科インプラント治療で使用されるチタン製人工歯根に代わり、歯周組織を備えたバイオ再生歯根の創製を目的とする。すなわち、我々が開発した“歯根・歯周組織ユニット”の体外再生を可能とする新規培養システム「器官再生法」を駆使し、同ユニットの再生能を有する歯性細胞群「Regenerative(Reg)細胞群」の同定、および同定したReg細胞群が担う再生誘導因子の特定をめざす。本研究は、普遍的な器官再生法の確立と再生誘導医薬の創出により、真に臨床応用できる歯の再生である『再生歯インプラント』の実現を最終目標とした基盤研究である。
著者
笠原 麻里
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.712-717, 2016 (Released:2016-07-01)
参考文献数
2

生殖補助医療に伴う育児における母体のさまざまな負担について, 実際の症例を通して述べた. 問題は多岐にわたり, 身体的問題, 生殖医療ゆえの挙児をめぐる葛藤, 母体の精神的問題などを示した. 生殖医療においても, 産後の育児を見通した支援の必要性があり, 特に男性不妊をめぐる女性の気持ちや, 周囲に話しにくい事情など特有の心理的配慮の必要性を論じた.
著者
杉山 晃子 岸川 禮子 西江 温子 竹内 聡 下田 照文 岩永 知秋 西間 三馨 古江 増隆
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.1532-1542, 2011-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
14

【背景と目的】最近,加水分解コムギを含有するお茶石鹸の使用により小麦アレルギーあるいは小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)を発症することが社会問題となっている.当院を受診した症例から臨床的な特徴を考察した.【方法】2010年1月から10月にかけて当院を受診した加水分解コムギ含有石鹸の使用によって誘発されたと考えられる小麦アレルギーあるいはWDEIAの12例について検討した.【結果】平均年齢は36.0±9.9歳で,全て女性であった.全例,それまで小麦アレルギー症状の既往はなく,当該の石鹸を使用開始してから平均2年弱でWDEIAもしくは小麦アレルギーを発症していた.多くの症例が洗顔時に蕁麻疹や眼瞼腫脹,鼻汁などの症状を呈していた.従来のWDEIAに特異的なω-5グリアジンは12例中10例で陰性であった.【結語】石鹸の使用により加水分解コムギに経皮的に感作され,WDEIAもしくは小麦アレルギーを発症したと考えられた.当該の石鹸以外にも,香粧品により重篤なアナフィラキシーをきたす可能性があることを医療従事者が認識し,広く周知することが重要である.

2 0 0 0 月刊民放

著者
日本民間放送連盟 編
出版者
コーケン出版
巻号頁・発行日
vol.11(12), no.126, 1981-12
著者
立入 哉 中村 麻弥 八田 徳高
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.230-238, 2022-08-30 (Released:2022-09-17)
参考文献数
34

要旨: 聴覚情報処理課題について評価できるタブレット上で動作するアプリケーションを作成し, 成人16名と小学3年生以上の児童33名を対象として実施した。 この内, 成人群15名と児童群29名の結果を用いて, 正答率, 標準偏差, 基準値限界を示した。 この結果, 両耳分離聴課題, 雑音下聴取課題が困難である児童1名を検出することができた。 一方, 成人群のデパートノイズ下で-15dBSN 比条件での単音節課題は困難度が高く, GAP 数え課題と持続音の長短判別課題については, 回答方法や検査手法を修正または削除を検討すべきと考えた。
著者
須長 正治 城戸 今日子 桂 重仁
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.209, 2018-09-01 (Released:2018-09-24)
参考文献数
16
被引用文献数
3

色覚異常の混同色でない色で配色し,その後,色覚異常が混同する色の間で色を変更するというカラーユニバーサルデザインとなる新しい配色手法が提案されている.しかし,この方法には,いくつかの問題点があるため,実用化されるまでには至っていない.そこで,本研究では,このカラーユニバーサルデザイン配色手法における問題点を明確し,その解決方法を提案した.さらに,市販の配色カードを用い,色見本セットを試作し,実用化に至るひとつの道筋を示した.
著者
宮崎 由樹 伊藤 資浩 神山 龍一 柴田 彰 若杉 慶 河原 純一郎
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.222-230, 2020-12-15 (Released:2021-12-11)
参考文献数
17

顔を細く・小さく見せることに対する日本人の関心は高いが,どのような要因が顔の見かけの大きさを左右するかについては未検討な点が多い.本研究は,顔全体のサイズ知覚に,どの顔部位のサイズ情報が関与するか検証することを目的とした.そのためにまず,女性・男性顔132画像において,20箇所の顔部位の縦幅や横幅を計測した.また,その計測サイズとそれらの画像毎に評定された見かけの顔サイズ評定値との相関を算出した(研究1).その結果,顔全体のサイズ知覚には,顔画像の性別に関係なく,顔面上部(額の長さ等)にくらべて顔面下部のサイズ(頬の広さや顎の長さ等)が強く正相関していた.この結果に基づき,顔面下部を衛生マスクで遮蔽し,顔面下部のサイズ情報を観察できなくすることで,顔のサイズ知覚が変わることも実証した(研究2).これらの結果は,顔全体のサイズを判断する際,顔面下部のサイズ情報が重要な手がかりとして用いられていることを示している.