著者
飛田 良文
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

明治・大正・昭和の文学作品101(初版本49冊)を熟読し、外来語25,899例を採集し、その用例文に所在を示し、作品別出現順用例集を作成した。その外来語見出しに、原語・固有名詞(人名・地名・作品名など)・語構成(単純外来語・複合外来語・和製外来語など)の情報を加え、「外来語語別年代順用例集」1~5を作成し印刷した。参考にした外来語辞典や国語辞典に判断の異なるものがあり、正確な移入時期と原語を判断するために、今後も用例採集の必要性を痛感した。
著者
高橋 秀樹
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、古代世界における政治文化について、古代キリシアと古代エジプトの事例をそれぞれ分析しつつ、比較しながら、それぞれの独自性と共通性を明らかにしようとするものである。具体的には、古代ギリシアの叙事詩と古代エジプトの教訓文学を比較し、弁論術(話術)がエリート層の政治的教養とされている点は共通しているが、過去の出来事をどのように利用して演説を行うかという点で異なっていることが明らかになった。
著者
石井 陽子
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

レイヤー構造を持つ液晶相には大きく分けて2種類存在し、一つは水と界面活性剤の混合系から成るラメラ相で、もう一つは棒状低分子単成分系からなるスメクチック相である。この様なレイヤー構造を持つ液晶では層法線方向と層面内の方向において拡散係数が大きく異なることが知られているが、その異方性はラメラ相とスメクチック相において一桁以上の異なることが知られている。本研究では、液晶層間の異種分子の存在が層法線方向の拡散係数に及ぼす影響を調べる事を目的に、低分子単成分系にアルカンを混合した膨潤スメクチック相の自己拡散係数の測定を行った。結果、層間のアルカン分子の存在は層法線方向の拡散を疎外することがわかった。
著者
大村 嘉人 保坂 健太郎
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

博物館などに保管されているタイプ標本は生物の学名の基礎となっており重要な価値を持つ。一方、近年ではDNA情報が分類学的研究に重要な要素となっており、古いタイプ標本からのDNA情報の収集が困難であることが研究の足かせになっている。本研究では、①標本庫に収蔵されているタイプ標本のDNAが経年変化で断片化することを示し(きのこ類は約50年で230bp以下、地衣類は約15年で200bp以下)、②そのような古いタイプ標本のDNA情報を補完するために、新たな標本をタイプロカリティーから採集し、エピタイプ候補として選定した。標本庫の古いタイプ標本に参考となるDNA情報が得られ、標本の価値向上に貢献できた。
著者
柳 敏晴 西田 順一 橋本 公雄 藤永 博 堤 俊彦 松本 裕史 榮樂 洋光 手島 史子 中島 俊介
出版者
名桜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

平成 22 年度は、効果測定尺度作成を、対象者別項目収集及び整理検討と予備調査、プログラム別仮プログラム作成・実施と要因探索から、プログラム開発・モデル構築を試みた。平成 23 年度は、効果測定尺度作成を、対象者別本調査実施と尺度の信頼性・妥当性の検討から進め、プログラム別修正プログラムの実施し、因果モデル作成を試み、プログラム開発とモデル構築を進めた。平成 24 年度は、対象者別プログラム評価への使用と妥当性検討から、効果測定尺度作成を試み、プログラム開発とモデル構築に挑戦した。
著者
岡山 正人 岡村 修司
出版者
広島商船高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、大崎上島の高齢者の外出時に役に立つ様々な情報を提供するためのシステム“しまナビ”を開発した。本システムは、島内で運行されているコミュニティバスにGPSおよび電子掲示板を設置し、停車するバス停付近の施設情報や島内のイベントや身近な情報を提示することで、バスそのものを高齢者のための移動サロンにするとともに、島内のスーパー、病院、役場、フェリー乗り場など主要なバス停にはタッチパネル端末を置くことで、バスに設置した電子掲示板と同様の情報を見ることができ、必要な情報をタッチパネルの操作により取り出すことができるようにするものである。
著者
吉本 忍 金谷 美和
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、現在アジア、アフリカにおいて民族衣装の素材として広く使用されているプリント更紗が、インドネシアやインドの伝統的染織技法とデザインをもとにして、ヨーロッパの植民地支配を背景にしたグローバルな交易と産業革命による技術革新によって創出され、広く展開してきた歴史的経緯を、サンプル帳を始めとする資料の検討によって実証的に明らかにしたものである。本研究を通して、私たちが経験する伝統工芸の変革と文化の創出の場面におけるグローバル化の功罪などの本質的意義について批判的視座を提示した。
著者
武田 尚子
出版者
武蔵大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

「中間層」概念の形成・変容をめぐる国際比較を行い、イギリスにおけるベンジャミン・シーボーム・ロウントリーの社会調査と社会実践の関連について解明を試みた。また、日本の地域社会における「中間層」の形成・変容過程を調査し、都市空間、都市中間層の形成過程が密接に関連していることなどを明らかにした。
著者
清水 肇 村松 憲仁 石川 貴嗣 宮部 学 山崎 寛仁
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

粒子の質量はヒッグス粒子によって創成されると考えられているが、その質量は非常に小さく、実質的に物質の質量を創る機構が他に必要である。南部陽一郎は、強い相互作用における自発的対称性の破れによって物質はその質量を獲得すると説明した。しかし、そのことを証明した実験はまだない。本研究はこの壮大なテーマに挑み、そのために必要な実験手段を開拓した。世界最高エネルギーのレーザー電子光ビームLEPS2を新たに開設し、1GeV領域の光子に対して世界最高エネルギー分解能を持つ電磁カロリメータBGOeggを完成した。この2つを組合わせることによって、計画通りのクォーク核物理研究環境を構築し、データ収集を行っている。
著者
松井 徳光 田畑 麻里子
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ヤマブシタケは小さめの粒度、シイタケは大きめの粒度で、生理活性やイソフラボン濃度、核酸濃度が高くなることが判明した。また、マウスを用い発酵黒大豆が安全であることを明らかにした。発酵することで新たな機能性が付加され、また、スエヒロタケにおいて抗酸化活性が著しく高値を示す味噌を作成することができた。さらに、アレルゲンタンパク質の低下も観察され、機能性を有する黒大豆味噌の試作に成功した。スエヒロタケで発酵させた発酵黒大豆中に、エクオールを検出することができた。つまり、腸内の乳酸菌でなければ作ることができないと考えられてきたエクオールを、担子菌発酵で製造することの可能性を示唆した。
著者
千葉 百子 篠原 厚子
出版者
順天堂大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

[目的]タリウムは毒性が強いので、以前には殺鼠剤、殺虫剤として使われた。最近タリウムは超電導素材、半導体産業の素材として注目されている。そこでタリウムが生体内に摂取された場合の体内分布、また生体内からの消失を観察することを主目的としてマウスを使って実験した。[方法]1.マウス(6週齢、♂)に0.2ppm Tl含飲料水を1週間自由に摂取させ、1、3、7日後にTlの臓器内分布と排泄量を観察した。2.20ppm Tl含飲料水を3週間自由に摂取させる。(1)翌日および3週間後解剖、(2)翌日50μmol Tl/kgの強制経口投与し、その翌日および3週間後に解剖、(3)50μmol Tl/kg 1回強制経口投与し、その翌日および3週間後に解剖。各マウスから骨、肺、腎臓、骨髄細胞、顎下腺、消化管内容物、精巣、筋肉、膵臓、膀胱、消化管、脾臓、心臓、脳、肝臓、RBC、Plasma、Hair、尿、糞の20検体についてTlを分析した。[結果および考察]次のことが明らかとなった。1.経口摂取したTlは測定した全ての臓器に分布していた。2.摂取を中止すると各臓器からのTlの消失は比較的早く低濃度摂取の場合、3日後に約1/2、7日後に約1/10となる。3.連続的に摂取したTlは尿中に10〜30%、糞中に35〜60%排泄された。4.臓器中Tl濃度は骨に最も高く、摂取中止後も濃度は下るが長く存在している。5.消化管、精巣、顎下腺は比較的Tlとの親和性の高い臓器である。6.体毛中Tlは摂取総量との相関が高い。7.血値GOT、Al-P、血中ALADには著明な影響はなかった。[結論]経口的に侵入したTlは殆ど全ての臓器に分布するが、消失は速やかである。Tlの生物学的モニタリングには体毛が有効である。
著者
西岡 龍彦 ATRANASTADIS Basil Vasileios ATHANASIADIS BasilVasileios
出版者
東京芸術大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

・5曲の新作を作曲。いずれも日本の笙または20弦箏を中心に据えて作曲。・東京芸術大学千住校地スタジオAにおいて新作を全て録音。録音は亀川徹教授の監督のもと、9人の日本人音楽家の演奏にて実施。・日本をテーマにした4つのコンサートをカンタベリーフェスティバル、ナカス音楽院、Vafoupouleioコンサートホールなど英国とギリシャで開催。・英国で活動する中国人作曲家May Kay Yauに日本の笙を取り上げた新曲を委嘱。作品は英国とギリシャにて演奏。・スタジオでの録音とライブ演奏の様子を高品質のビデオで撮影し記録映像をウェブ上で無料アクセス可能にして公開。・2013年11月にアテネで開催したコンサートに列席していた日本大使と参事官と会い、アテネの日本大使館は、来年開催予定のギリシャでのコンサートの資金援助を約束してくれた。・今回芸大で録音した作品を、英国のレコード会社が1枚もしくは2枚のCDにし来年のリリースすることを約束している。・わびさびと音楽に関するドキュメンタリー映画製作を目指し、英国で活動する映画監督Karolina Malinowskaと共同で資金援助の申請を予定している。
著者
石黒 真木夫 三分一 史和 越久 仁敬 岡田 泰昌
出版者
統計数理研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

イメージングデータの事前処理として,画像強度の不均性やモーションアーチファクトなどの実用的な補正方法の開発を行った。そして,イメージングデータの分散や時間依存相互相関などの統計量マップを用いて脳幹内の呼吸活動生成部位におけるニューロンとアストロサイトを効率的に識別する方法を確立した。生理学的には遅い周期で活動し,ニューロンネットワークと弱く結合するアストロサイトネットワークの存在を示唆する結果や,呼吸バースト毎に活性化するニューロンの組み合わせが異なるという知見を得ることが出来,今後のニューロンネットワークの数理モデリング研究に新たなパラダイムをもたらす可能性のある成果を得ることが出来た。
著者
原田 周作 山本 恭史
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,液体中に不均一に分散した固体微粒子の重力沈降挙動について,その集団性を理解するとともに,沈降速度や分散挙動を能動的に制御するための技術を確立した.純粋な液体との間に濃度界面を有するような微粒子分散系の沈降挙動に関して,濃度界面における流体との相対運動を微視的に観察することにより,集団性の形成メカニズムについて明らかにした.さらに分岐や断面積変化を有するような複雑流路中での集団的な粒子沈降挙動について調べ,流路の幾何学的特性量から沈降速度を予測・制御可能な物理モデルを構築した.
著者
橋本 順光
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

1920 年代の日本ではアジア主義の高まりとともに仏跡巡礼が流行する。そしてその先駆者鹿子木員信は、インド独立運動扇動の咎で強制送還された。日英の外交文書の調査により、事件以降、日本人のインド旅行者への監視が常態化し、旅行記もその記述を多く含むことがわかった。一方、インドから来日し、神智学東京支部を設立したアイルランド出身のジェイムズ・カズンズに注目することで、柳宗悦の友人グルチャラン・シンなど、アジア主義者の人脈が従来以上に複雑な広報活動と密接であることを明らかにできた。
著者
加藤 智崇
出版者
福岡歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、歯科治療の中断を防ぐため、中断患者の背景を解析することを目的とした。協力歯科医院の中断患者に電話インタビューを行い、93名中5名から回答を得て質的に解析した。この結果を用いて患者背景を調査するアンケート項目を作成した。アンケート調査はweb上で中断患者と歯科を定期受診する患者にアンケート調査を実施した。結果、中断患者は、健康意識が低く、歯科に対してネガティブな感情を持つ者が多い可能性が示唆された。
著者
丹羽 哲也
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本語視点・基準点に関わる問題の中で、主として次の二つの問題について成果を得た。(1)名詞を中心とする構文、すなわち連体修飾表現において、助詞「の」の意味用法、連体節と「名詞+の」との関係、被修飾名詞の意味的な分類、現代語と中古語との構造上の相違といった問題について新たな知見を得た。(2)近世の浄瑠璃詞章において、敬語表現などがどのような基準・視点から選択されるかという問題を考察し、文法だけでなく文体的側面の重要性を示した。
著者
小池 晃彦 押田 芳治 葛谷 雅文 成 憲武
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

加齢による骨格筋減少のメカニズムとエイコサペンタエン酸(EPA)の筋減少抑制効果を検討するために、老化促進マウス(SAMP1)と対照マウス(SAMR1)を用いた。EPAによる骨格筋量の増加は、SAMR1でのみ見られた。しかし、SAMP1で筋力増加の傾向がみられた。また、EPA投与で、SAMR1のみ骨格筋蛋白合成シグナルの活性化がみられた。SAMP1では内在的なシグナル異常があった。代償性の筋肥大は、SAMP1でもSAMR1と同様にみられ、SAMP1の筋量減少は、筋肥大能とは関係なくおこると考えられた。以上よりEPAの投与は加齢時の筋量保持や筋力改善に有効な可能性が示された。
著者
田口 由香
出版者
大島商船高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、日英史料を用いて多角的な視点から幕末期の国際関係を解明した。幕末期のフランスによる幕府支持とイギリスによる長州藩支持という通説的な見方は一面的であるため、イギリス政府の文書や新聞などから全体像を分析した。その結果、イギリス政府は幕府と長州藩の対立に中立方針をとっており、駐日公使も幕府と長州藩に和解を勧めていたこと、一方でイギリス新聞の記事には貿易利益を優先して有利な方を支持する傾向がみられることを明らかにした。また、下関開港問題をもとにイギリスと長州藩の貿易志向を日英両史料から分析した結果、イギリス駐日公使らが大名との直接貿易を実現しようとしていたことを明らかにした。
著者
谷口 洋 西川 ゆみ 横山 きのみ
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

前漢までの文学は、作者とされる人物の伝説とともに伝承された。司馬相如の場合、戦国の伝説の枠組みをとどめつつ、庶民の欲望を体現したキッチュなヒーローとして語られてゆき、その人物像が「長門賦」にまつわる伝承につながってゆく。宋玉ともなると、伝承と「作品」との境界すら曖昧であり、その「作品」は、むしろ後世における文学概念の定立に伴って析出されたものである。前漢の賦は現存数は少ないとはいえ、史書の伝記に収められ、比較的完全な形で伝わるが、それも作者の伝説と結びついているためである。以上の研究に加え、これまでの国内の辞賦研究の全体を見渡すことのできる文献目録を作成した。