著者
板谷 裕美 廣瀬 潤子
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、分娩時大量出血に伴う産後貧血を合併した褥婦と、正常な経過をたどる褥婦との間で、母乳中の鉄含有量および乳汁分泌量に差があるのかどうか、縦断的に比較検討を行うことであった。分娩時800ml以上の大量出血を起こし、産褥早期のヘモグロビン10.0/dl未満・ヘマトクリット33.0%未満の貧血を合併した褥婦5組を症例群、分娩時大量出血および産褥期貧血のない褥婦15組を対象群とし、産褥入院中、産後1カ月、3カ月、6か月の各時期における母乳中鉄含有量、1日乳汁分泌量、BDHQを用いた褥婦の鉄摂取量を調査した。その結果、母乳中の鉄含有量と乳汁分泌量にはいずれも有意な差を認めなかった。
著者
後藤 克己
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.521-524, 1968-05-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
21

醸造用水中の鉄が有害であることは誰でもが認識することころであり, その除去法に関しては既に多くの研究や総説が発表されている。水中の鉄分といってもいろいろな形態のものがあリ, その形態によっては他の水には極めて有効な除鉄法も全く効をなさないということも生じてくる. そこでいままで余り取りあげられなかった鉄イオンの性質についてその面の権威である筆者に解説して頂いた。曝気法による第一鉄イオンの酸化にしても水中のOH-イオンの濃度が重要な影響を与え, pHが7, できれば7.5以上あることが望ましく, 曝気は単に溶存酸素の補給だけでなくCO2を追出してpHを高める意味もあるなどわれわれに示唆を与えるところが多いど
著者
東 賢一
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.203-208, 2019 (Released:2019-08-01)
参考文献数
22

化学物質過敏症において, どのような宿主要因, 外部環境要因, 行動に関わる要因が発症や症状の増悪に関与しているかを把握することは, 化学物質過敏症の予防において重要であり, 筆者は脳機能イメージングを用いた臨床研究やアンケートによる疫学研究を行ってこれらの要因を調査してきた。脳機能イメージング研究からは, 臭い負荷時の前頭前皮質領域における活性化状況から, 外的ストレスに対する刺激の認識や記憶と大脳辺縁系を介した作用機序が関与している可能性が考えられた。 また, 5年にわたる追跡研究からは, イライラ感, 疲労感, 不安感, 抑うつ感などの悪化した心身の状態が, 化学物質に対する感受性を増悪させる強い要因になること, 適度な運動や規則正しい生活が化学物質高感受性の改善に寄与することなどを示唆してきた。外的環境要因については, 化学物質過敏症の発症のきっかけとなった曝露イベントが化学物質過敏症患者によって異なり, 特に曝露イベント時の曝露濃度に関する知見が乏しいことなどから, 対応策の検討が困難となっている。 しかしながら, 化学物質の有害性に関する既存の科学的知見をもとに, 大多数の人たちが健康への有害な影響を受けないであろうと判断される健康リスクレベルを評価し, 私たちを取り巻く外的環境に対する指針値や基準値を策定していくことは, 化学物質過敏症の発症に対する1つの重要な予防策になると考えられる。
著者
島地 岩根 阿部 勲 武田 明正 吉村 貢 シマジ イワネ アベ イサオ タケダ アキマサ ヨシムラ ミツグ Shimaji Iwane Abe Isao Takeda Akimasa Yoshimura Mitsugu
出版者
三重大學農學部附属演習林
雑誌
三重大学農学部演習林報告 (ISSN:05441005)
巻号頁・発行日
no.16, pp.p61-79, 1988-03

森林未利用資源の一つである樹皮を成型燃料として活用するために、三重大学農学部附属演習林における低質広葉樹林の林分構造と現存量および広葉樹樹皮の諸性質に関する一連の基礎研究を実施した。 1 低質広葉樹林の林分構造と現存量 (1)林分構造 かつて薪炭林として利用されていた低質広葉樹林には、ほぼ30~40種の木本類が生育しており、これらの樹種が、高さ14mから20mに達する高木層、7~13mの亜高木層、6m以下の低木層の三層を形成していた。高木層の構成種としては、コハウチワカエデ、イタヤカエデ、ヤマモミジ、ケヤキ、ミズキ、クマシデ、ヤマザクラなどが優占種であった。亜高木層ならびに低木層においては、エゴノキ、カマツカ、クロモジ、アブラチャン、ヤブムラサキなどが優占種であった。(2)現存量 層別刈取法により調査した部分別の乾重は、上・下層では、幹30.0~34.3kg、樹皮5.2~5.4kg、枝12.8~17.3kg、葉2.0~2.3kgで、各層合計乾重は、上層54.7kg、下層54.6kgであった。林床層では、幹0.075kg、樹皮0.008kg、落枝10.050kg、葉0.140kgで、下層合計乾重は10.3kgであった。各層におけるha当りの合計現存量は、上・下層がそれぞれ11t、林床層が2tで、ha当りの総現存量は24tと算定された。このうち樹皮現存量は、上層1.1t、下層1.0t、林床層0.002tであったが、成型燃料化にあたっては、上・下層に現存するha当り約2tの樹皮を利用対象とし、林床層は植生保続のうえから残存させることが得策であると考えられた。(3)樹皮率 広葉樹の樹皮率は2.4~55.6%にわたり、樹種により、同じ樹種でも異なった。そのため、各層における全樹種込みの樹皮率を求めた。その結果、上層10.1%、下層13.1%、林床層9.6%、平均10.9%となった。したがって、平倉演習林の低質広葉林における樹皮現存量は、皮付き幹現存量の約10%であることが推察された。 2 樹幹樹皮の物理化学的性質と成型性 (1)樹皮の粉砕性 材料の靭性に影響する内樹皮率は樹種によって異なるが、大部分の広葉樹樹幹樹皮の内樹皮率は針葉樹樹皮より大きく、80~90%であった。広葉樹樹皮の粉砕性は、針葉樹の場合と同様、原料の靭性、剛性および粉砕機の種類によって異なる。ウイレーミル試験によると、針葉樹樹皮は広葉樹樹皮より粉砕され易いが、他機種では異なった結果がえられ、特にヒノキ、ケヤキ、ミズナラ樹皮など靭性組織の多い試料は粉砕が困難であった。以上の試験によって、物性の大きく変化する木質系試料ではカッター型粉砕機の方が適当しているものと結論づけられる。(2)樹皮の抽出成分含有量とpH 気幹樹皮の熱水および1%NaOH抽出成分含有率は、それぞれ4.3~28.8%、および21.3~61.0%であり、特にカラマツ、キブシ、ムラサキシキブ、サルナシには多くの抽出物が含有している。また、熱水抽出液はpH3.8~5.7の弱酸性を示し、針葉樹樹皮や一般木材のそれと類似していた。なお、加圧成型試験に供した試料のうち、カラマツ、ミズキ、リョウブ、エゴノキ樹皮には多量のメタノール抽出物を含有していた。(3)樹皮の発熱量 一般的に、木材質の発熱量は4,500kcal/kgであるが、樹皮は灰分および抽出物含有量が大きく異なるため、発熱量の樹種による変動も大であると推定される。しかし、大部分の広葉樹樹皮の発熱量は4,000~5,000kcal/kgであり、針葉樹樹皮より約400kcal/kg小さな値を示した。また、樹皮の灰分含有率は木質部より大であり、灰分含有率と発熱量との間には負の相関関係が認められた。(4) 樹皮の加圧成型性 木質系バイオマスには、非結晶性成分を含んでいるが、これら非結晶性物質は熱可塑性を有しているため、加圧加熱によって自着性を示し、高密度物質とすることができる。ペレット状固形燃料化の難易を判定する指標をえるため、ウイレーミルと粉砕試料から5mm厚のボードを作製し、その平面引張り強さを測定した。試験の結果、スギ樹皮は最も成型性に劣り、カラマツ、エゴノキは易成型性樹皮であり、また一般的に抽出成分量の多い試料は、成型性にすぐれていた。なお、難成型性樹皮は、適当な材料の混入によって改善することが可能である。
著者
中川 洋吉 清家 彰敏
出版者
富山大学
雑誌
富山大学紀要. 富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.319-344, 2000-11

20世紀は映像の世紀といわれた。また映像は政府によってマスコミュニケーションの道具として管理創造されてきた。さて,21世紀はこの映像がインターネットの場において個人,大衆に開放される世紀と考えられる。この開放される映像が創りあげる映像ビジネスは巨大な産業を形成する可能性がある。本研究は,この21世紀に創造される映像ビジネスの中核となる人材とその教育システムを問題とする。特に先進的モデルとしてフランスの映像教育をとりあげ,分析を行う。フランスには,映画学校として,我が国でも良く知られたイデック(IDHEC)があり,世界各国の映画学校の中でも,多くの著名監督を輩出したことで,その知名度は高い。第1期の卒業生に,アラン・レネ,他に,クロード・ソテ(4期),ロベール・アンリコ(7期)がおり,そして,ルイ・マルもイデック出身である。イデック同様にフランスには,国立の演劇,音楽,美術の高等専門学校が存在する。音楽,演劇はコンセルヴァトワール,美術はボ・ザールであり,映画は,映像一般専修校としてフェミス,撮影専門学校としてルイ・ルミエールがある。我が国で,国立の美術,音楽専門校として東京芸大がある。しかし,国立の映画学校は存在しない。更に,国立大学の中で,映画学部を有しているところは皆無である。フランスのフェミスは,1986年に創設された。フェミス「FEMIS」は,"Formation et Enseignement aux Metiers de I'Image et le Son "の略である。正式名称は,「視聴覚教育と人材育成」の意である。このフェミスに,1995, 99, 2000年と三回に渉り訪れ,聞き取り調査を行なった。その調査結果をベースに,フランスの映画学校(本質的には映画・映像学校)と,映像人材育成のモデルについて,考察する。
著者
神澤 輝実 来間 佐和子 千葉 和朗
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.113, no.12, pp.1991-1997, 2016-12-05 (Released:2016-12-05)
参考文献数
37

先天性胆道拡張症は,戸谷分類では5型に分類されてきた.最近作成された先天性胆道拡張症の診断基準と診療ガイドラインでは,いわゆる狭義の先天性胆道拡張症は,総胆管を含む肝外胆管が限局性に拡張し,全例に膵・胆管合流異常を合併する戸谷Ia型,Ic型およびIV-A型と定義された.膵・胆管合流異常は,長い共通管を有して膵管と胆管が十二指腸壁外で合流し,乳頭部括約筋の作用が膵胆管合流部に及ばないことより,膵液が胆道系に容易に逆流する(膵液胆道逆流現象).先天性胆道拡張症では,しばしば急性膵炎をおこし,さらに膵液と胆汁の混和液がうっ滞する胆囊や拡張胆管に高率に発癌するので,診断されれば肝外胆管切除が行われる.
著者
鼓 みどり
出版者
富山大学
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.261-271, 2006-12-14

Where can we find …Where can we find exoticism in this age of globalization? Can you stand for a wired ethnic stereotype of yourself? Actually there are plenty of ethnic stereotypes in films,video clips,TV programs,CM and so on. This paper discusses on different cultural images in recent films and video clips. Firstly we look on exotic images in video clips from 80's(Duran Duran,Clash,Men at Work,Petshop Boys) to 90's (Madonna,U2) and recent (Beck). Secondly we analyze absurdity,daydream and nightmare in video clips (Massive Attack,Tricky,Sonic Youth,Chemical Brothers,Petshop Boys,Square Pusher,Bjork and Madonna). Thirdly we observe Japanese images in Sofia Coppola's film <<Lost in Translation>> (2003) and Peter Greenaway's film <<8 1/2 Women>> (1999). We find a kind of Japonisme images in these clips and films. However they can convey a new view on ourselves.20世紀は「映像の世紀」と呼ばれ、映画やテレビ、ビデオそして最近ではインターネット上で世界のさまざまな地域の風土や、そこで生活する人々の姿を見ることが出来ると信じられている。モニタは珍しい風景、耳慣れない音声、或いは人々の胸中をも再生する。異文化の中に身を置かずに異文化を体験することは、娯楽として消費されている。しかしながら私たちはステレオタイプに依存しながら、異文化を受容している。日々眺めるイメージがその地域を想起させる細部を示すと、またかと思いつつも落ち着いた気分になる。機会があれば現地を訪れ、ステレオタイプを実体験して満足する。また自身の文化をとらえるときも、その姿に伝統的な型をあてはめがちである。伝統的類型はしばしば実生活とはかけ離れているが、私たちはそのことをあまり問題とは思わないだろう。しかし私たちはどのような類型として表象されているのであろうか。メディアに登場する類型は、たとえ諷刺を意図していなくても共感しがたいものであることが多い。時代錯誤であったり、アジア諸国の文化を適当に混ぜていたり、その理由はさまざまであろう。ただし報道ネットワークが発達した現在、たとえば海外テレビCMにごく普通の日本人家族が登場するなど、奇をてらったイメージばかりが作られているわけではない。また視点を変えれば、私たちが何も疑問に思わずに受け入れている外国のイメージも、同じように当該地域の人々にとって違和感があるかもしれない。異文化をあらわす類型は、報道やドキュメンタリーよりも、娯楽性の強い映像、すなわち映画やビデオクリップ、CMに登場する頻度が高い。本稿ではビデオクリップを中心に、異文化表象が担っている役割を検討する。
著者
鈴木 公啓 代田 剛嗣
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.91-101, 2004 (Released:2004-11-25)
参考文献数
18

本研究は,Thought-Shape Fusion Scale(TSFS)の邦訳版を作成することを目的とした.はじめに,TSFS邦訳版の妥当性確認に使用するために,TSFの概念の元となったThought-Action Fusionを測定するThought-Action Fusion Scale(TAFS)の邦訳版を作成し,高い信頼性と妥当性を確認した.次に,大学生女子,短期大学生女子,そして看護学校生女子あわせて342名に対し,邦訳したTSFS,TAFS邦訳版,EAT邦訳版の下位尺度のうち「摂食制限」「食事支配」,およびEDI邦訳版の下位尺度のうち「痩せ願望」「体型不満」,そして日本語版SDSを施行した.TSFS邦訳版の33項目版と15項目版の両者について高い信頼性と妥当性が確認された.使用目的によって使い分けることも可能であることから,TSFS邦訳版は,利用に際し十分に有用に活用できると考えられる.今後は,TSFS邦訳版を使用することにより,痩せ願望やダイエット,そして摂食障害のメカニズムの解明がおこなわれることが期待される.
著者
千葉 直樹
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.98_1, 2016

<p> 本研究では、2012年の「体罰」事件以降の時期に焦点を絞り、高校のバスケットボール指導者の暴力行為の実態を明らかにすることを目的にする。2015年の高等学校総合選手権大会でベスト32以上に進出した19都道府県の指導者を対象に、2016年3月に郵送調査を行った。回答者の40.1%は、選手時代に指導者からの暴力行為を受けていた。22.1%の指導者が「体罰」事件以前に暴力行為を選手に行ったことがあると回答した。一方で、2013年1月以降の時期では、5.8%の指導者が暴力行為を行っていた。この結果から、「体罰」事件以降に、暴力行為を行うバスケットボール指導者の数が少なくなったと考えられる。しかし、暴力行為の範囲を「ボールを投げつける」、罰走、暴言という項目まで拡大すると、28.8%まで暴力行為を行った指導者の比率は高くなった。以上の結果から、「拳で殴る」や「平手打ち」等の暴力行為は少なくなった一方で、暴言や身体的な苦痛を伴う懲戒などは依然として一部の高校バスケ部で行われていることが示唆された。さらに、先行研究の指摘通りに、暴力指導を受けた指導者ほど、選手に暴力行為を行う傾向が確認された。</p>