著者
松本 耿郎 岩見 隆
出版者
英知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究は平成5年1月に78歳の生涯を終えた井筒俊彦博士の学問の方法と思想を分析解明することを目的としたものであった。井筒俊彦博士はコーラン研究、イスラーム思想研究、ギリシア思想研究、ロシア文学研究、東洋思想研究などの諸分野にわたって多くの業績を残している。また晩年には独自の言語哲学と存在認識論の総合を目指して、広い意味での東洋哲学に基礎をおいた独自の哲学の確立を構想していた。当初、この研究計画ではその思想と方法の全貌を明らかにすることを目指していたが、井筒博士の該博極まりない知識に基づく学問的営為を見るにつけ、その全貌を解明することは時期尚早であるとの結論に到達した。そこで、この研究においては井筒俊彦博士のこうした学問と思想的営為の基礎となる部分をまず明らかにすることが急務であると考え、同博士が所蔵し、同博士の学的営為の源泉となった1万5千冊の中近東諸語の蔵書の整理を研究の中心的作業とすることにした。中近東語の蔵書の多くはアラビア語、ペルシア語、トルコ語のもので、内容的には主としてイスラーム思想に関係するものである。このため蔵書の整理についてはアラビア語、ペルシア語、トルコ語の文献学に精通している慶応義塾大学非常勤講師岩見隆氏の全面的協力を得ておこなった。この結果、井筒博士の蔵書のなかには極めて資料的価値の高いイランの石版図書が含まれていることが明らかになった。石版図書はその性質上、分析に時間と労力を要するものであるが、本研究計画の最終年度にこれら石版図書のなかから特に資料的価値の高い図書90点をえらび「故井筒俊彦博士旧蔵イラン石版本目録」を作成し、研究課題報告書の一部として印刷した。
著者
近藤 健一郎 梶村 光郎 藤澤 健一 梶村 光郎 藤澤 健一 三島 わかな
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は以下の諸点において従来の近代沖縄教育史研究を発展させた。第一に標準語教育実践に関して、方言札の出現時期とその歴史的意義、また発音矯正が全県的な教育課題となる契機と過程を明らかにした。第二に宮良長包に関して、沖縄の音楽教師の系譜の中に位置づけ、また彼の作詞作曲した「発音唱歌」(1919年)の教育実践上の特質を明らかにした。第三に沖縄県初等教育研究会の討議内容を通史的に明らかにした。さらに、沖縄県教育会機関誌『沖縄教育』(1906~1944年)の悉皆的な収集においても成果を収めた。
著者
熊谷 元 林 義明 廣岡 博之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

タイでは、キャッサバパルプと液状ビール酵母を組み合わせた発酵混合飼料と、核酸系およびアミノ酸系調味料副生液を用いた新規飼料のin vitro第一胃発酵は良好で、ウシに対する嗜好性は高く、核酸系発酵副生液(脱塩母液)の給与が繊維成分の消化率を向上させた。フィリピンとネパールで地場産の牧草と野草を網羅して化学成分とin vitro第一胃消化率を測定した結果、粗タンパク質含量や乾物消化の季節変化が少ない上に高値を示す草種があり、それらのウシ、スイギュウ、ヤギに対する有効性が示された。ネパールではヤクのエネルギー不足とリン、カルシウムおよび銅栄養状態の低下が冬季に認められ、補助飼料の給与が推奨された。
著者
Tha KhinKhin 寺坂 俊介 工藤 與亮 山本 徹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

電流の流れやすさを示す指標である導電率は、体内臓器や組織系によって値が異なる。導電率を非侵襲的に測定できれば異なる組織の区別が可能となり、病的状態での組織系の予測診断の補助が期待できる。本研究は、脳MRIによる非侵襲的導電率イメージングを開発し、この方法による頭蓋内構造の導電率測定の正確性を明らかにすることを目的とした。脳MRIによる非侵襲的導電率測定法の正確性、非侵襲的導電率測定の有用性等について検討した。脳MRIによる非侵襲的導電率測定の再現性の高さ、電極を用いての組織の導電率測定結果との一致率の良さ、神経芽腫をより悪性度の低い神経膠腫から区別できること、等が示された。
著者
亀山 充隆 張山 昌論
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

知能自動車の知能処理は将来のシステムLSIの応用として期待されている.知能自動車への応用が実現可能となれば,ありとあらゆるリアルワールド応用が可能になる。このようなシステムの実現には,システムLSIのハイレベル階層の開発技術要素を研究する上での好例となる.本研究ではこのような観点から,主に以下の要素技術に関する研究を行った。1.高安全知能自動車用VLSIプロセッサチップファミリの形成高安全知能自動車のための世界最高性能VLSIプロセッサチップファミリの開発を行った。これらは,ステレオビジョンVLSIプロセッサ,オプティカルフロー処理VLSIプロセッサ,軌道計画VLSIプロセッサ,確率推論に基づく軌道予測などであった。これらのVLSIコンピユーティングの計算量減少を目的とした,VLSI向きアルゴリズムレベルも考察した。また,システムLSIの実用化を推進する1つの方策として,現在のFPGAの性能をはるかに超えるフィールドプログラマブルVLSIの開発も行った。2.システムインテグレーションと知能アルゴリズムリアルワールドの環境情報をセンシングし,将来起こるであろう環境の変化を予測することが必要である。計測値にも予測値にも誤差が含まれることを十分考慮したシステムインテグレーションが重要であり,一定サンプル周期毎に同一処理を繰返すリアルワールド信号処理をモデルを構築し,サンプル周期の満たすべき要件を考察した。3.VLSIプロセッサの構成理論メモリと演算部との間の配線による性能ボトルネックを解決するため,記憶と演算を一体化させたロジックインメモリアーキテクチャに基づくVLSIプロセッサの構成法を提案し,その有用性を実証した。リニアアレーやバス構造などの簡単な相互結合回路網を有するロジックインメモリアーキテクチャモデルにおいて,ハードウェア量制約下での処理時間電力最小化問題の解法を考察した。これらも含めた一般化されたVLSIプロセッサのハイレベルシンセシス問題への拡張も行い,高安全知能自動車用VLSIプロセッサの具体例を通して,以下のような最適化問題に対し実用的な段階により近づけることができた。・「チップ面積制約下での,演算遅れ時間最小化」・「演算遅れ時間制約下での,チップ面積最小化」・「チップ面積と処理時間制約下で消費エネルギーの最小化」
著者
越後 拓也
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

生物圏起源の有機物が岩石圏に固定されるプロセスとメカニズムを明らかにすることを目的として、代表的有機鉱物である芳香族炭化水素鉱物の生成原理に焦点を絞って研究を行った。炭化水素鉱物は、そのほとんどを多環芳香族炭化水素(PAH)を主成分とする鉱物が占める。その中でも今回はイドリアライト(米国カリフォルニア州産)の生成機構を考察するため、結晶構造解析と炭素同位体組成分析を行った。結晶構造解析の結果、イドリアライトはピセン分子(C_<24>H_<12>)がファンデルワールス力によって結合した有機分子結晶であることが判明した。ピセンは高い芳香族性をもつ有機分子であり、高い安定性をもつ。イドリアライト結晶がオパールや黒辰砂と共生して産出していることから、シリカ成分を含むような熱水活動によって生成されたことは明らかである。また、δ^<13>C=-24.429±0.090‰という値は海洋生物起源であることを示唆している。すなわち、海洋有機堆積物が熱水変質を受けてピセンとなったものが、その高い安定性のため、ほかの有機分子は分解・揮発し、最終的にカーパタイトとして結晶化したと結論づけた。カリフォルニア州沿岸部にみられるような、堆積物中の有機物が熱水活動によって有機鉱物へと変化するような状況は、日本列島においても見出せる可能性は高い。この観点から、カーパタイトが多産する水銀鉱床区に類似した、北海道イトムカ鉱山の水銀鉱石を詳細に観察、分析した。その結果、石英脈の表面にフィルム上に析出した固体状有機物を発見することができた。有機物の正確な同定および生成機構については目下検討中である。イトムカ鉱山の水銀鉱物は自然水銀の割合が高いことが特徴であるが、有機物による還元作用が寄与していることが示唆された。
著者
山口 幸生
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では地域集団戦略の発想から,地域住民のまちなか移動における歩行や自転車利用促進に関係する心理社会的要因を明らかにし,効果的な身体活動促進プログラムを開発することを目的とした.結果として,かしこい車利用を促す情報冊子の効果は,自宅と最寄り駅との距離の違いによって異なっていた.また,自転車の利用に関する行動意図と,自転車利用に関する態度,社会的支援,自宅周辺の主観的環境要因、自己効力感、阻害要因が関係していた.
著者
楫 靖 杉村 和朗 藤井 正彦 守殿 貞夫 黒田 輝
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

平成15年度は未治療前立腺癌患者5名で協力の同意が得られた.超高磁場MR装置(Signa VH/I3.0T)を用いて,前立腺MRI撮像とMR spectroscopy(MRS)測定を行った.4名で前立腺生検後血腫が残存しており,ヘモジデリンによる磁場不均一化で,MRSでは雑音の多いスペクトルとなった.MRIでも血腫の影響が強かったが,血腫の無い前立腺健常部については導管構造が詳細に描出されており,通常の1.5テスラMR装置の画像よりも細かい構造評価が可能と考えられた.平成16年度は血腫の影響を避けるため生検前患者51名にMR検査を行った.血腫は同定できなかったが,腸管ガス貯留により磁場が乱れ,良質のスペクトルを得られないことがあった.これには検査前夜に下剤を投与することで対応した.スペクトルを解析すると非常に高品質なスペクトルと雑音の多いものが混在していた.対象となった患者の前立腺の体積は大きく全領域を均一に励起できないことが理由と考えられ,現装置の限界であった.質の高いスペクトルが得られたのは,25症例の辺縁域40領域,移行域40領域であった.生検結果と対比させると,MRSで得られた(コリン+クレアチン)/クエン酸比(CC/C)は,辺縁域癌(5領域)で1.94,移行域癌(3領域)で1.84を呈し,健常な辺縁域(0.46)や移行域(1.03)と比べて有意に高かった.CC/Cと病理学的悪性度を表すGleason scoreを対比させると,関連性が示唆されたが有意ではなかった.期間内の研究では,MRSの情報を加味した新たな侵襲性を予測する指標を作成することはできなかった.しかし,均一に励起されている領域のスペクトルの質は,一般の1.5テスラMR装置を使用した場合よりも格段に信号雑音比,スペクトル分解能に優れており,MR装置の改善により前立腺癌の診療に有用な情報をもたらす可能性があると考えられた.
著者
舘村 卓 野原 幹司
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

パラタルリフトpalatal lift prosthesis(PLP) は, 軟口蓋を挙上して鼻咽腔閉鎖機能を改善する装置であるが, PLPによって音声言語障害が改善できても, 嚥下時の鼻咽腔閉鎖不全症による嚥下障害が改善されていないことにより, 「食べて, 話す」日常生活機能の改善ができていない例も認められる. このようなPLPによる機能改善効果の乖離は, 嚥下時と音声言語活動時での鼻咽腔閉鎖機能の調節様相の相違が考えられる. 本研究では, PLPによる治療法の開発の先行研究として, 嚥下時の鼻咽腔閉鎖機能の調節に, どのような因子が関与するかについて, とくに摂取食物の量, 物性に焦点を当てて検討した.その結果、嚥下時の軟口蓋運動の調節様相は、嚥下された食物の摂取量と物性(とくに粘性) の影響を受け、その影響の発現の様相はニュートン性の有無によって大きく異なることが示された。このことから、PLP 装置による嚥下機能の補完治療を行なうためには, まず食品の持つ種々の因子による口蓋帆咽頭閉鎖機能への影響を明らかにすることが必要であることが明らかとなり, 今回の研究結果は嚥下補助食やトロミ食品の開発に大きく貢献することが示された.
著者
市野 素英 田村 智彦 西山 晃 堀田 千絵
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

寄生虫感染症のマラリアでは、免疫応答で重要な役割を果たす樹状細胞(DC)の成熟阻害が起こり、宿主が免疫抑制状態に置かれることが知られている。しかし、その分子メカニズムはよく判っていない。本研究では、マラリア原虫感染赤血球が宿主の骨髄細胞に作用し、DCの分化に必須の転写因子IRF4/IRF8の発現を転写レベルで抑制してDCの分化異常を起こすことを、マウスマラリアモデルを用いた解析により明らかにした。
著者
田中 源吾
出版者
群馬県立自然史博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

カンブリア紀の地層は日本に露出しておらず、海外調査に重点をおいて研究を行った。スウェーデン南部のカンブリア紀の地層が露出する地域を調査し、そこから眼の細部まで3次元的に保存された、三葉虫をはじめとした微小(1mm未満)な節足動物化石を発見した。電子顕微鏡を用いた調査の結果、複眼やノープリウス眼様の眼、1つの単眼様の眼など、様々な眼をもった節足動物が古生代の初めのカンブリア紀にはすでに地球上に現れていたことが初めて明らかになった。
著者
山内 慎子 MENG Xin
出版者
政策研究大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

この研究では、中国において農村出身の労働者が都市へ移住することによりその子供たちの学力や健康にどのような影響が生じるかを分析した。都市へ移住する安価な労働力は中国の急速な経済成長を支えてきたが、その裏で農村に残った子供は親と離れることから生じる問題を抱え、学力低下や健康状態の悪化が懸念されていた。我々の独自のパネルデータを基にした実証分析を行い、親の出稼ぎ期間が長いほど子供の身長・体重や学業成績が低まる傾向があることを示した。またこうした家庭では、子供が家で勉強時間がとれていなかったり同じ学年を複数回履修していることも見て取れた。これらの結果は数々の学会で報告され国際的に広く発信された。
著者
小沢 喜仁 渋谷 嗣 菊地 時雄
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

酢酸菌が生産するバクテリアセルロース(BC)を取り上げ,ナノ・オーダーの天然繊維の優れた機械的特性に注目して,独自に工夫した材料開発を行った。BC繊維は従来の炭素繊維強化炭素材料に使用される炭素繊維と比較して1000分の1の細かな構造を実現するとともに,その機械的特性に及ぼす成形条件の影響を明らかにし,第3成分添加による性能向上と,摩擦摩耗特性におけるBC繊維や第3成分添加の効果について考察を行った。従来の軸受けやボールベアリングなどが使用できないマイクロマシンや資材な部品における可動部分の摩擦特性を大きく向上させ,新たな用途を生み出す可能性を示した。
著者
山口 祐人
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

26年度は(1)ソーシャルメディアにおけるユーザの属性推定、及び(2)ソーシャルメディアにおけるユーザ行動の分析という研究に取り組み、主要査読付き国際会議での発表などの成果を得た。研究(1)では、ネットワーク上のノードの分類という広く研究されている手法の拡張を行った。ネットワーク上でのノードの分類を用いると、ソーシャルメディアユーザの属性推定のみではなく、他の様々なネットワークにおけるノードの属性推定が可能である。既存研究では接続ノード間の属性の相関をあらかじめパラメータとして指定する必要があった。例えば、あるソーシャルメディアでは同性同士が友人になるという相関が強いのに対し、別のソーシャルメディアでは異性同士が友人になる相関が強いことがある。提案手法では属性の相関に対するパラメータを指定することなく、どのような相関にも適用することが可能である。研究(2)では、Twitterにおいて、ユーザが他のユーザをフォローするという行動を分析した。また、Twitterにおいてユーザが他のユーザを”タグ付け”するという行動を、タグ付けを主とする他のソーシャルメディアと比較した。その結果、”フォロー”、”タグ付け”という行動に関する様々なパターンが発見された。例えば、相互にフォローしているユーザ同士は”friends”といったタグ付けをすることが多いのに対し、単方向でのみフォローしているユーザ同士は”sports"などのトピックを表すようなタグ付けをすることが多いことが分かった。これら2つの研究は、異種ソーシャルメディアの統合に繋がると期待される。ユーザの属性をキーとして様々なソーシャルメディアを統合していくことが可能であると考えられるし、またユーザの行動の根底に潜むパターンの解明により、異種ソーシャルメディアに共通するパターンをキーとしての統合が可能であると考えられる。
著者
青木 成美 中野 泰志 永井 伸幸 猪平 真理
出版者
宮城教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

成人弱視者の視覚補助具の活用経験について、質問紙調査と面接調査を行った。その結果、弱視レンズを活用してきた者が最も多く、拡大読書器を活用してきた者が次に多いことがわかった。また、必要に応じて活用する補助具を変更した弱視者もおり、その際に専門家だけでなく弱視当事者の意見を参考にしていた。3 年間の調査研究の結果、 弱視者が自らの視覚補助具活用経験を生かし、他の弱視者を支援するためのプログラム作成の基礎データが収集できた。
著者
宇高 順子 阿萬 裕久
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

小・中・高等学校家庭科では、「何をどれだけ食べたらよいか」の量の把握が困難とされてきた。そこで、調理後の食品容積から調理前の食品重量を把握できる「料理容積法」を開発した。この方法を応用して、小学校で、量を扱わないでバランスの良い1食分の献立作成学習方法として、野菜の量で主菜と副菜を2グループ化して、少ないものと多いものを組み合わせることによりバランスがとれる、料理の実物大写真教材を開発した。また、中学校の1日分のバランス献立作成web教材を開発した。
著者
伊藤 敏彦
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は音声インターフェイスにおいて、対話のリズムが、ユーザの快適性や安全性にどれほどの影響を与えるか明らかにし、これらの要素を音声インターフェイスに導入するための新たな枠組みを提案することである。そこで、これらに関する対話リズムを生成するためのモデル化のさらなる改良と、音声対話システムへの実装、システム処理速度向上などを行った。結果、これまでの音声対話システムに比べ、人間らしさ、安心感などの評価を上げることができたが、制作システムの処理速度、タイミング認識精度、音声認識・言語理解精度などの不完全さにより、人間と同等の評価まで上げることはできなかった。
著者
安田 寛 DR. JANE Freeman Moulin KUKI MOTUMOTU Tuiasosopo BRIAN EDWARD Diettrich
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

19世紀の日韓の讃美歌曲はミクロネシアとポリネシアの中ではミクロネシアとハワイとに共通するものが多く、これに比べるとハワイを除くポリネシアの讃美歌曲との関係が比較的薄い。讃美歌から近代歌謡が形成される筋道に関しては、タヒチに見られるように、讃美歌と土着の歌謡とが融合する場合があり、サモアに見られるように讃美歌曲を独自に作曲する場合がある。日本を含めた太平洋全域における讃美歌の普及と捕鯨活動との密接な関係がある。
著者
山田 俊治
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

新聞と文化が接続する問題系を問うことを目的として、「東京日日新聞」の創刊から悉皆調査した結果を年表化することによって、文明開化期と内国勧業博覧会以後との間で絵画評価に落差があることが判明した。それは、「美術」概念を適用することで、文明開化期の写実的な西洋油画一辺倒の評価が、日本画の精神性が評価されるようになる変化であった。そればかりではなく、古典講習科の設置や漢籍の出版など古典回帰と見られる現象も観察できた。
著者
岡安 隆 柳田 伸顕 古田 高士
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

〈研究分担者柳田伸顕〉研究代表者の岡安隆氏はある種の微分方程式を巧みに使うことにより、最近、Euclid空間内の完備な正定曲率超曲面を具体的に構成し日本数学会のジャーナルに出版している。そのアイデアを使いWeingarten超曲面を具体的に構成しようとしていた。研究はうまく進んでいると聞いていたが、昨年の12月に突然その岡安隆氏が亡くなったので、その内容は永久に分からなくなってしまった。なお研究分担者の柳田伸顕は、Weingarten超曲面を具体的に構成とは直接関係はないが、ある種の群のChow環を岡安隆氏の影響を受け、幾何学見地から調べてやはり今年度、日本数学会のジャーナルに出版している。〈研究分担者古田高士〉ユークリッド空間内に、直交群の部分群の作用の下で不変であるという高い対称性をもった、完備極小超曲面を構成することができ、それらは13種類の多様体のいずれかに微分同型で、各種類において合同でないものが無限個構成することができることを示した。EBombieri, EDeGiorgiとEGiustiによる構成をその他の余等質=2の表現に拡張したものであるとともに、Bombieri達の証明法とは全く違う手法をとることにより、非常に簡単に大域的な解の存在を示すことができた。このタイプの極小超曲面は岡安自身の1999年度~2000年度の基盤研究(C)で得られたものしか知られていず、まったく新しい発見である。この手法は双曲空間に自然に作用する直交群の部分群で余等質=2の表現について、完備極小超曲面の構成について理論が発展できる。