著者
塩満 卓
出版者
佛教大学福祉教育開発センター
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.73-89, 2017-03-31

本稿の目的は、精神障害者対策を図るうえで、家族がどのように位置づけられてきたのか。保護者制度の源泉も辿りつつ、今日までの歴史的経緯を明らかにし、精神障害者家族に対する制度上の課題を言及していくことである。研究の結果、江戸時代後期には、「精神病者監護法」の私宅監置や家族の個別責任化という処遇や思想の原形が明文化・制度化されていた。そして、明治後期以降の精神障害者家族は、治安対策上、無償で機能する法の執行者として、さらには疾病管理から日常生活支援に至るまでのケアラーとして位置づけられ続けた。2013年の精神保健福祉法改正で「保護者制度」は廃止されたものの、医療保護入院の契約者は「保護者」が「家族」に変更されたに過ぎず、実態はこれまでと変わっていない。今後の精神障害者対策は、家族介護を前提としない「脱家族」の制度設計を目指し、家族介護に代わる公共的支援を量的にも質的にも拡充していく必要があることを指摘した。保護(義務)者制度精神障害者家族残余的福祉モデル脱家族家族介護
著者
山田 耕生
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.107-121, 2009-03-31

本稿では、浦和レッズとその本拠地であるさいたま市浦和地域(旧浦和市)を事例に、プロサッカークラブの発足に伴う「サッカーのまち」の変遷を明らかにした。浦和地域では1960年代から70年代にかけての約20年間の地元高校サッカー部による数々の全国優勝によって「サッカーのまち」としての認識が形成された。1993年に開幕したJリーグ以降は、行政、商店街などにより、サッカーのまちづくりが進められた。2000年代に入ると、浦和レッズも本格的に地域貢献活動に取り組むようになった。このように、Jリーグ開幕時からサッカーのまちづくりが着々と進展した要因は、地域住民の「サッカーのまち」としての認識やアイデンティティがあるためである。さらに、浦和レッズの地域貢献活動は本業のサッカーの強化には繋がらないが、結果として浦和レッズがさらに地域へ受け入れられるものになり、さらには浦和地域の「サッカーのまち」づくりが一層進んでいくものと考えられる。
著者
ケイン 樹里安
出版者
カルチュラル・スタディーズ学会
雑誌
年報カルチュラル・スタディーズ (ISSN:21879222)
巻号頁・発行日
vol.5, 2017

近年、着実に多文化社会へと移行しつつある日本社会において、「ハーフ」と呼ばれる人々への社会的関心が増大している。呼応するように、特定のルーツおよびルートをもつ「ハーフ」が直面する諸問題や支配的なメディア表象の変遷に着目した研究が登場しつつある。だが、いずれも端緒についたばかりであり、より経験的な水準で、「ハーフ」が直面する問題状況やメディア表象と関係を切り結ぶ日常的な実践に照準した研究が求められている。そこで、本稿では、すぐれて現代的な現象であるSNS を介した「ハーフ」たちの「出会い」の場に着目し、多様なルーツ/ルートをもつ「ハーフ」たちが織り上げる相互行為秩序の様態に迫ることで、上述の課題に部分的に応えることを目的とする。具体的には、SNS を介した「出会い」の場において、しばしば見受けられる「生きづらさ」を「笑い飛ばす」実践とその実践をめぐって生起する成員の序列化と排除という出来事を中心的に取り上げ、M. セルトーの「技芸をなすことArt de Faire」概念を手がかりとして考察を行う。一見すると、相互行為秩序の規範をめぐる普遍的な出来事であり、いかにも現代的な若者文化らしい特徴を備えた振る舞いだとして素朴に解釈され、見過ごされかねないほどきわめて「平凡」な振る舞いが、実際にはマイノリティの社会的身体に密接に関連した緊張をはらんだ技芸にほかならないことを示す。現代日本社会において生起する多文化状況における、コンヴィヴィアリティのありようを批判的に探索するためには、マイノリティの技芸とそれがもたらす序列化と排除の機制に照準した経験的研究の蓄積が必要であることを、本稿を通して示唆したい。
著者
柳澤 伸一
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.31-39, 2006-02-28

通説は、スイス誓約同盟が、1499年のシュヴァーベン・スイス戦争に勝利することで、神聖ローマ帝国から事実上独立できた、とする。皆川の近著も、この通説を踏襲している。すなわち、誓約同盟のベルン市の一市民、レープリンがシュヴァーベン同盟のウルム市に対して行ったフェーデを例証として、帝国から独立した誓約同盟と帝国内のシュヴァーベン同盟との間には、帝国の司法の場を含めて、いかなる共通の裁判権威も存在せず、紛争を解決するには、政治交渉か暴力の道しか残されていなかったと断じ、両者の関係を国際関係と結論付けるのである。しかし、誓約同盟とシュヴァーベン同盟の間にいかなる共通の裁判権威もなかったと決め付けることは早計である。というのは、皆川が論拠としているレーブリン家のフェーデ自体、仲裁裁判によって解決の道筋を付けられたこと、1495年以降に誓約同盟に加盟した諸邦とその市民の場合、長く帝国最高法院を免れなかったこと、属邦の場合、自己の存立を確保する上で帝国最高法院に依拠し、その維持費の支払いにも進んで応じたことを確認できるからである。また、両者の問では、対立性よりも共通性の方が目立った。というのは、1499年の戦争を除けば、平和共存が常態だったし、帝国都市が本質的な構成部分であり、その寡頭化とオーブリッヒカイト化が進行するという特徴が共通するからである。
著者
中山 真 橋本 剛 吉田 俊和
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.61-75, 2017

<p>本研究の目的は,恋愛関係崩壊後のストレス関連成長に影響を及ぼす個人差・状況要因として,愛着スタイルと崩壊形態の影響を検討することであった。参加者である大学生・短大生184名(男性86名,女性98名)は,過去5年以内の恋愛関係崩壊経験について想起し,成長感尺度,愛着スタイルの各尺度へ回答した。まず,崩壊形態については,片思いよりも交際していた関係の破局(離愛)で,拒絶者の立場については,拒絶者があいまいな場合よりも,相手に拒絶された場合に,それぞれ高い成長が見られた。愛着スタイルについては,関係性不安が低いほど高い成長が見られた。</p>
著者
谷一 尚
出版者
The Society for Near Eastern Studies in Japan
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.124-137, 1997

During the years 1995-1996, the Yuangzhou Archaeological Excavations in China, funded by Japan Ministry of Education Grant-in-Aid for International Scientific Research, was a Joint Project by Japan and China.<br>During 1995, we discovered the Tomb of Shi Daoluo who lived during Tang dynasty, and was buried in 658 A. D. A Byzantine gold coin (Justin II, 565-578 A. D.) was discovered.<br>During 1996, the tomb of the Northern Zhou dynasty prime minister Tian Hong was discovered, who died and was buried in 575 A. D.<br>Five Byzantine gold coins: one Leo I, the Thracian (457-474 A. D.) coin, one Justin I (518-527 A. D.) coin, two Justinian I, co-regent (527 A. D.) coins, and one Justinian I, the Great (527-565 A. D.) coin were found.<br>This thesis 1) describes in detail and lists Byzantine gold coins excavated in China from 1914 to the present, including the coins from the Tomb of Shi Daoluo and from the Tomb of Tian Hong, 2) considers the background of cultural and economic relations between China and the West.
著者
大竹 政和
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
防災科学技術 (ISSN:04541871)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.1-7, 1980-11-25
被引用文献数
1

関東・東海地域はアジア・太平洋・フィリピン海の各プレートが会合する場所に当たり,3つのプレートの入り組んだ相互作用によって,そのテクトニクスはきわめて複雑な状況を呈している.そのために,地震の発生メカニズムについても不明の点があまりにも多い.しかし,わが国の心臓部を擁しかつ常に大地震の危険にさらされている地域であるだけに,この複雑な場の基本的な構造を解明することば,地震予知研究の立場から見ても第一級の研究課題と言わねばならない.幸い,深層地殻活動観測施設をはじめとする地震観測網の整備が進むに従って,この地域の震源決定精度が格段に向上し,小さな地震の発震機構も精度よく決めることができるようになってきた.こうした良質の地震データを基礎こ,関東・東海地域のテクトニクスを統一的に説明するモデルが生み出された.この統一モデルの概要を紹介し,あわせて,モデルから予測される関東直下の地震の発生メカニズムについて論ずることにしたい.
著者
中沢 志保
出版者
文化女子大学
雑誌
文化女子大学紀要 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.29-45, 2011-01

本稿は, 20世紀前半期のアメリカにおいて主要な対外政策の立案と決定に関与したヘンリー・スティムソン(Henry L. Stimson)を引き続き考察するものである。本稿では特に, 柳条湖事件に始まる日本の中国への侵略に対してアメリカがどう対応しようとしたかを検討する。具体的には, 第一次世界大戦後の国際秩序が崩壊していく1930年代初頭において, 日本の軍事行動に対し, 「スティムソン・ドクトリン」という形で「倫理的制裁」を課そうとしたスティムソンの外交を分析する。
著者
萩原 詩子
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.864, pp.78-81, 2007-12-24

漫画家・水木しげる氏の名を冠した商店街「水木しげるロード」の成功で、観光ブームに沸く鳥取県境港市。「一反もめんハウス」は中心地からそう遠くない田園地帯に建つ。「一反木綿」とは漫画「ゲゲゲの鬼太郎」に登場する妖怪だ。 建て主の木村光哉氏は、鬼太郎のキャラクターグッズの企画販売を手がけている。