著者
永井 秀利 中村 貞吾 野村 浩郷
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.690, pp.25-32, 2003-02-28
参考文献数
16

我々は,マイクで拾えない程度の微発声または無発声で発声された発話の内容を認識し,これを計算機への自然言語入力として用いることを研究している.人が発声を行う場合,実際には声に出さなかったとしても,声を出した場合に類似した筋肉の活動が生じると思われる.そこで我々は,それを表面筋電位から捉えることにより,発話内容を認識することを目指している.本稿では,日本語の5母音の認識に活用するために,表面筋電測定位置として口裂周辺の4個所を選定した.その表面筋電波形を計測して分析を行った結果,この4個所でも母音認識の手がかりがかなり得られることや,声の強弱などの発声時の特徴も波形に反映されていることが確認できた.
著者
岡村 寿
出版者
THE SOCIETY OF PHOTOGRAPHY AND IMAGING OF JAPAN
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.211-217, 1992

Acyl-hydrazides nucleating agents promotes high contrast and high photographic speed in the black and white negative films. Such nucleating agents have been used in graphic arts films since 1984. Now, we are interested in these acyl-hycdrazides as a new class of imagewise releaser of a photographically useful group or a new redox compound.<BR>This article describes some kinetic studies concerning with the oxidation reaction followed by hydrolysis of acyl-hydrazide derivatives and also some properties of the key reaction intermediate. New application of acyl-hydrazide compounds to the developer inhibitor releaser (DIR) in the micro-area inhibition technology (MAI-Technology) of Fuji Super Grandex graphic arts materials, is also reviewed.
著者
大浦 明美 オオウラ アケミ OURA Akemi
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.26, pp.83-95, 2013-03

本稿は、一人暮らしの女性後期高齢者の日常生活の意識について明らかにした。研究方法は、女性後期高齢者5人にインタビュー調査を実施し、分析を行った。その結果、1に依存・自己否定・依存対象の移行・社会的孤立への変容プロセス、2に自立・承認・幸福体験・信頼の基盤への変容プロセス、そして、3に教訓・規範意識・パートナーの喪失・自然信仰への変容プロセスが示された。この3つのプロセスは融合し、1つの巡回するプロセスをなしていた。これらのことから、現代の単身女性後期高齢者における日常生活意識は、おもに家族との絆、友人等のつながり、そして自然信仰に存在する主観的幸福感と通底していることが示された。
著者
山本 裕司 吉村 枝里子 土屋 誠司 渡部 広一
雑誌
研究報告知能と複雑系(ICS)
巻号頁・発行日
vol.2010-ICS-158, no.2, pp.1-8, 2010-02-22

柔軟な会話を行う応答システムの実現には,人間が生活で身に付ける常識とそれに基づく語の連想機能が必要不可欠である.本稿では常識知識と連想メカニズムを用い,会話文から発話者の意図・感情を推測する手法を提案する.文の客観的な意味内容を表す 『命題 (主語・述語など)』 と話者の心的態度を表す 『モダリティ (終助詞・助動詞など)』 に着目し,日常会話で使用される口語表現からユーザの意図,ならびに感情を推測する手法について報告する.
著者
森 みゆき
出版者
尚絅大学
雑誌
尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
no.47, pp.149-170, 2015-03-31

明治期の日本において,一般大衆がどのように西洋音楽を受容したのか。可能な限り,その全体像を把握し実態に迫るために,地方都市の新聞における西洋音楽関連記事を網羅的に調査した。明治21年(1888年)創刊の九州日日新聞における記事,楽器や楽譜の公告,さらに楽器や演奏者のイラストが描かれた公告(薬や時計など)を調査し,時代順に一覧化した。
著者
城島 貴弘 子林 秀明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.117, pp.23-28, 2008-11-20
被引用文献数
1

近年インターネットの普及と Web サービスの発達により、ネットバンキングやイーコマース (EC) などのオンライン上での商取引や物販、金融サービスが既に一般化している。しかし、銀行の窓口業務における口座開設やローン相談など、対面による接客によって契約が成立するサービスについてはオンライン化がまだまだ困難である。本稿では、リモートに離れたユーザ同士が共通の Web ページを同時に共有操作可能な Web ページ共有方式を提案し、これを用いた対面業務のオンライン化手法及びその課題について検討する。As the spread of the Internet and the advances in Web services, such as trading services, net-banking services, e-commerce services and so on, online services based on World Wide Web has been a commonplace. But it is still hard to make an online service of meeting sales such that the window services on a bank: an account opening application, a consultation of loan, and so on. So we propose the web page sharing method that makes it possible for each remote user to operate a web page simultaneously, and discuss some troubles on filling out an application of web form.
著者
吉田 和幸 池部 実 吉崎 弘一
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2018-IOT-42, no.5, pp.1-6, 2018-06-21

インターネットの普及に伴い,電子メールは通信手段の基盤となっている.一方,電子メールは不正侵入のきっかけとなりやすいため,spam 対策は不可欠である.従来から用いられてきた spam 対策は,送信メールサーバの FQDN が,メールサーバらしいか,利用者端末らしいかを判断する S25R,一時エラー後のメールサーバの動作を確認するグレイリスティング,spam を送信したメールサーバの一覧表 (ブラックリスト) など,メールサーバを検査するものが多かった.しかしながら,ID / パスワードの流出により,プロバイダのメールサーバ等の正規のサーバから送られる spam も増えてきている.そのため,2017 年 5 月より送信元メールアドレスの検査を強化した.本稿では,spam 検出方法とその運用結果について述べる.
著者
中西 尋子 Hiroko Nakanishi
巻号頁・発行日
(Released:2018-06-23)

元来日本はキリスト教が根づきにくい国である。そうした状況にありながら、韓国出自のキリスト教会が日本で宣教を展開し、日本在住の韓国人のみならず、日本人信者も一定程度獲得している事例が見られる。在日大韓基督教会(1908年創立)、統一教会(1954年創立)および「韓国系キリスト教会」(1990年代以降来日)である。本論文の課題は、これらがどのように日本宣教を行い、信者を獲得しているかを問うことにある。 従来の宗教社会学は、これら3教会を別個に性格づけてきた。在日大韓基督教会は「在日の宗教」、韓国系キリスト教会は「ニューカマーの宗教」、統一教会は「反社会的宗教」として。確かにそうなのだが、3者を同じ俎上に乗せることによって新たに見えてくるものがある。申請者の狙いはここにある。 本論文は、以上の問題設定に加えて調査概要、概念枠組みなどを提示する序章に続き、全3部12章および結章で構成されている。 第Ⅰ部「在日大韓基督教会―民族の教会として」では、第1章「民族の教会としての教会形成―在日大韓基督教会を事例として」で、教団機関紙『福音新聞』(1951年創刊)の内容分析を行い、在日大韓基督教会の民族主義的性格を明らかにする。植民地支配下の朝鮮半島から日本に来た人々が受けた差別に向き合う教会の姿勢が鮮明である。 第2章「一世にとっての教会、二世にとっての教会」では、在日一世にとっては教会が日本での厳しい暮らしに耐えるための民族共同体であったのに対して、二世にとってはエスニック・アイデンティティの獲得の場であることを、信者の生活史から明らかにする。 第3章「在日大韓基督教会と韓国系キリスト教の日本宣教のあり方を比較して」は、在日大韓基督教会と韓国系キリスト教会の間に日本人信者の獲得で差があることを、教会での使用言語や民族主義的色合いの有無から説明する。 第4章「韓国系キリスト教会の在日大韓基督教会への加入」では、在日同胞の教団として日本に定着した在日大韓基督教会だったが、現在は牧師の3分の2が韓国の教団から派遣されていること、および、1980年代以降、韓国系キリスト教会が在日大韓基督教会に加入するケースが増えてきたことから、両者がボーダーレスの関係になりつつある現状を報告する。 第Ⅱ部「韓国系キリスト教会群―普遍主義のもとに」は、日本の植民地支配という日韓関係の「負の歴史」を乗り越えて、日本人宣教を精力的に行う韓国系キリスト教会がテーマである。まず、第5章「日本における韓国系キリスト教会の概要」で、これまであまり知られていなかった韓国系キリスト教会の全体像を明らかにする。データソースに『クリスチャン情報ブック』(2010年版)を用いて、当該教会が大都市圏だけでなく38都道府県に分布し、推計300近くもあることをつきとめた。また、1990年前後から2000年代前半にかけての設立が全体の81%にのぼることがわかった。 続く第6章「韓国人宣教師にとっての日本宣教―『汝の敵』『隣り人』としての日本」は、韓国系キリスト教会が活発な日本宣教を行う要因の考察である。キリスト教人口が25%の韓国では牧師が供給過剰であり、それが海外宣教の構造的要因となっている。だが、それだけでは盛んな日本宣教を十分に説明することはできない。韓国では儒教道徳がエートスとして国民の間に深く浸透している。ここで「儒教道徳」とは、ものごとを道徳的な上下関係に位置づける思考様式のことを言うが、これを韓国系キリスト教会も共有していた。韓国人宣教師にとって日本は韓国を侵略した道徳的に劣った国である。しかし、そうした恩讐を越えて日本人に福音を伝える崇高な使命として日本宣教が意味づけられていることを、牧師の語りから明らかにする。 第7章「なぜ日本人が韓国系キリスト教会の信者になるのか」は、日本人が信者になる教化過程の考察である。教会には「7週の学び」、「小グループ(筍)」、「Quiet Time」、など、学びのプログラムが用意されている。新来者はこのプログラムに沿って信仰を強化していくが、この点で日本の教会に物足りなさを感じる人が韓国系キリスト教会にアプローチしている場合が少なくないことを、本章は明らかにする。 第Ⅲ部「統一教会―建前の普遍主義、本音の民族主義」、第8章「韓国社会と統一教会」では次の諸点が明らかになる。第1に、統一教会の性格が韓国と日本では大きく異なっている。韓国の統一教会は宗教団体を越えて巨大な事業体である。第2に、合同結婚式で韓国人と結婚し、韓国に暮らす日本人女性が現在、7千人いることが韓国と日本の統計データから明らかになる。第3に、統一教会による韓国人男性と日本人女性のカップリングが韓国で許容される背後には、韓国農村における男性の結婚難や、男性の非正規雇用率の異常な高さといった社会構造の歪みがある。 第9章「日韓両国における統一教会のあり方の差異―新聞報道の比較から見えること」では、『朝日新聞』と『朝鮮日報』の統一教会関連記事を分析し、両国における統一教会のあり方を比較する。日本では霊感商法が1980年代後半から社会問題化した。『朝日新聞』にはその提訴、判決などの記事が多数見られる一方、『朝鮮日報』にはそのような記事は一切なく、統一教会や教祖の動向、および傘下の関連企業などの記事が多く見られた。統一教会の活動内容が日本と韓国では大きく異なっている。 続く第10章と第11章のデータソースは、合同結婚式を経て韓国で暮らす日本人女性信者38人の語りである。まず第10章「在韓日本人信者の信仰生活」では、彼女たちが韓国で暮らすことの意味づけを明らかにする。教団が決めた韓国人男性と愛情のない結婚をし子供を産むのは、日本の植民地支配を贖罪し、国境と民族を超えた「地上天国」を建設するためだと、彼女たちは語るのだった。 次いで、第11章「統一教会への入信―『女性性』の回復」は、日本人女性信者たちが統一教会に入信し、結婚に至る背後経験の考察である。日本で彼女たちは、結婚と家庭に関して深刻な絶望体験を持ち、職業経験からも「女は損」という感情を抱いていた。女性であることに積極的な意味を見出せない状況で、統一教会に救済を求めていた。そして統一教会で結婚し、子どもを産み育てることに宗教的な意義を見出すことによって女性性を回復できたと、彼女たちは信じている。 第12章「『本郷人』に見る祝福家庭の理想と現実」は、統一教会が発行する在韓日本人信者向けの機関紙『本郷人』の内容分析である。分析の目的は、1つに申請者の調査対象者を相対化すること、2つに教団が在韓日本人信者に伝えようとしているメッセージの解読である。調査対象者たちは現地で比較的平穏無事に暮らしていた。しかし『本郷人』の記事からは夫や子どもの問題、病気、生活苦などで問題を抱える信者が少なくないことがわかる。また、『本郷人』には教団の行事と、そこで語られる教祖や幹部の言葉がつねに掲載されている。それは、日々の生活で精一杯な信者に対し、初心忘れることなく、統一教会の信者として使命を遂行せよというメッセージであった。機関誌『本郷人』は、統一教会の思考の枠組みを維持・強化させる機能を果たしていた。 結章「日韓関係を背景にした三者三様の宣教」では、第1章から第12章までの知見をまとめ、3教会の日本宣教が日韓関係の「負の歴史」を背景に展開されてきたことを確認する。在日大韓基督教会の場合は、戦前の植民地から日本に渡った同胞を対象に宣教を始めた。そして戦後は、同胞の人権問題に積極的に関与することによって民族主義的な性格を強めていった。韓国系キリスト教会の場合は、負の日韓関係を倫理的な上下関係に置き直して宣教を展開する。宣教師にとって日本は「傷ついた隣人」であり、彼らはその隣人を助ける「よきサマリヤ人」の使命感をもって行動している。そして統一教会によれば、日本は朝鮮半島を植民地支配した罪深い国である。日本は贖罪のために韓国にできる限りの人的・財的協力をする事は当然である。こうした信仰を内面化した日本人女性がすすんで韓国人と結婚し、韓国で家庭を営んでいる。 以上のように、韓国出自の3教会は近代日韓関係史をそれぞれの仕方で定義づけることによって日本宣教を可能にしたと言うことができるのである。 平成29年度(2017年度)
著者
Jae-Moo Lee Ji-Hang Lee
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
Journal of Physical Therapy Science (ISSN:09155287)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.733-736, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
13
被引用文献数
4

[Purpose] While primary motor cortex activation has been implicated as a key factor in the arthrogenic muscle inhibition after knee joint injury, no viable rehabilitation protocol has been developed to accommodate this factor. In this study, transcranial magnetic stimulation was applied as a means of dissipating arthrogenic muscle inhibition by introducing temporary motor cortex excitation prior to the rehabilitation. [Subjects and Methods] Twenty-four subjects who have underwent the surgery due to knee injury were recruited, and randomly assigned to the control or the simulation groups. The levels of electromyography signals during the maximum voluntary contraction of the quadriceps muscle before, during, and after training designed for the quadriceps strength rehabilitation were measured. [Results] When compared to controls, subjects who received the transcranial magnetic stimulations showed significantly increased levels of voluntary muscle contraction after the training. Moreover, the beneficial effect of the stimulation increased as the rehabilitation progressed. [Conclusion] Transcranial magnetic stimulation itself does not directly improve the symptoms related to knee injuries. However, the use of this technique can provide a time window for effective intervention by dissipating the unwanted effect of the arthrogenic muscle inhibition during rehabilitation.
著者
磯部 哲
出版者
良書普及会
雑誌
自治研究 (ISSN:02875209)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.71-96, 1999-03
著者
金川 千尋 原田 亮介
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1276, pp.50-53, 2005-01-24

問 2005年3月期は上場企業の4社に1社が最高益を更新すると見込まれています。貯まったキャッシュをどう有効に活用するかが、これまで以上に重要な経営課題になりそうです。 景気の先行きを懸念する声もある中、信越化学工業は産業素材の塩化ビニール樹脂と半導体材料のシリコンウエハーで、それぞれ1000億円以上の大型投資を決めました。
著者
尹 祐根
出版者
東北大学
巻号頁・発行日
2003

博士論文
著者
杉ノ原 伸夫 深澤 理郎
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.315-336, 1988
被引用文献数
23

底層水の生成域を内部に持ち, 南北両半球にひろがる海洋の冷却過程を数値的に研究した. モデル海洋は初期に一様な水温の海水で占められている. 計算の過程では, 表面を一様に加熱する一方, 南半球の最高緯度帯で底層水を生成させた.<BR>計算初期においては, 生成された底層水は, ケルビン波的な密度流の形態を呈しつつ南半球海洋の西端に沿って北上した後, 赤道に沿って東進する. 海洋の東端に達した底層水は, ケルビン波的な密度流の形態で極向きに移動すると同時に, ロスビー波的な密度流を形成することによって西方へも広がり, 内部領域に極向きの流れを引き起こす. 底層水が西端に達すると, そこに西端境界流が形成される. この時から, 南半球海洋の西岸を北上する底層水が, 赤道を越えた北半球海洋の西岸境界流に直接補給されるようになる. 中深層においては, 内部領域および沿岸での湧昇によって下層から順に冷やされて行くが, その過程で, 底層水と周囲の暖かい海水とが混合し, 温度躍層は, 加熱層 (最上層) の下端に留まらず, より深層にまで広がる傾向が見られる. その結果, 湧昇速度は温度躍層の下部で最大となり, ストムメル・アーロンズが示したような内部領域での流れの形態は底層付近にのみ再現される. また, 赤道に沿っては鉛直高次モードの運動が卓越し, 流速場は, 東向流と西向流が互い違いに重なった構造 (ziggy structure) になる.
著者
藤原 聖子 奥山 史亮 江川 純一 久保田 浩 木村 敏明 宮嶋 俊一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、(a)1990年代までの宗教現象学の成果とその突然の消滅の原因、さらに(b)日本を含む各国で宗教現象学がどのように受容されたかを解明することを全体の目的とする。初年度である28年度は、国内の宗教現象学世代に対して聞き取り調査を行うとともに、関連文献を収集、整理した。また、海外の研究者と現地で行う調査計画を具体的に詰めることができた。聞き取りを行うことができたのは、華園聰麿氏(東北大学)、澤井義次氏(東北大学・天理大学)、土屋博氏(北海道大学)、小田淑子氏(京都大学・東京大学・シカゴ大学)、金井新二氏(東京大学)、永見勇氏(シカゴ大学・立教大学)、棚次正和氏(京都大学・筑波大学)、長谷正當氏(京都大学)、氣多雅子氏(京都大学)に対してである。宗教現象学の国内での受容の状況、自身の宗教現象学観が聞き取りの内容の中心となった。また、2017年に刊行100年を迎える『聖なるもの』の著者、ルドルフ・オットー(宗教現象学者の草分けとされる)の研究が国内でどう受容されたかについても聞くことができた。後者の情報は、日本でのオットー受容に関する英文論文を執筆する際に用いた。聞き取り調査と同時に、どのようなデータベースが役立つかについて検討を重ねた上で、博士課程の院生の協力を得て、国内の関連文献のデータベースを作成し、必要なものを収集した。海外に関しては、宗教現象学者の詳細な一覧を作成した。海外については、ヨーロッパ宗教学会のヘルシンキ大会に合わせて、フィンランド宗教学者による宗教現象学の受容について、Veikko Anttonen氏とTeuvo Laitila氏から聞き取りを行った。さらに、スウェーデン宗教学会会長のDavid Thurfjell氏と現地調査方法、論文集の刊行について計画を進めた。