著者
伊藤 直人 杉山 誠
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.191-198, 2007 (Released:2008-06-05)
参考文献数
42

狂犬病ウイルスは,人および動物に致死的な神経症状を主徴とする狂犬病を引き起こす.ワクチンによって効果的に予防できるにもかかわらず,本病の世界的な流行状況は好転していない.安価で安全な弱毒生ワクチンの開発ならびに治療法の確立が本病の制圧の鍵である.この目標を達成するためには,狂犬病ウイルスの病原性発現機序を解明することが重要となる.本稿では,狂犬病ウイルスの病原性に関する現在までの研究について紹介し,これをどのように狂犬病の制御に応用するのかについて考察する.
著者
和田 英夫 長谷川 圭 渡邊 真希
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.849-856, 2017 (Released:2017-08-05)
参考文献数
34

血栓性微小血管症(TMA)は,血栓性血小板減少性紫斑病(TTP),溶血性尿毒症症候群(HUS)ならびに非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)などを含み,血小板減少(<15×104/µl),微小血管障害性溶血性貧血(MHA,ヘモグロビン<10.0 g/dl),腎障害や神経症状などの臓器障害を呈する病態である。TTP,HUSならびにaHUSに対して,それぞれ診療ガイドラインが公表されているので,本稿ではこれらの診療ガイドラインに基づき,それぞれの病態,診断,ならびに治療について概説する。TTPはADAMTS 13活性<10%,HUSは志賀毒素産生病原性大腸菌(STEC)や志賀毒素の同定,ならびにaHUSは補体制御系の遺伝子解析などにより診断される。TMAの治療では,新鮮凍結血漿(FFP)はADAMTS13の補充を目的に先天性TTPに使用される。血漿交換(PE)はインヒビターの排除とADAMTS13の補充を目的に,後天性TTPに使用される。抗体産生を抑制するステロイドの併用は後天性TTPに行われ,リツキシマブはPEに反応しないTTPや高力価のインヒビター例に用いられる。補体の活性化を制御するエクリツマブはaHUSに用いられる。支持療法は急性期TMA,特にSTEC-HUSに必要であり,血小板輸注はTTPなどのTMAに原則禁忌である。TMAの診療は,その生命予後を改善するためにも,3つのガイドラインに従って行われるべきである。
著者
横田 誠 武子 政信 斉藤 浩徳
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.129-130, 1995-09-20

人間に近似した,情報的感性対応の人工的システムの構築にあたって,今回は,視覚的,特に抽象画的系に対応する系を考える。その対応システムの内部構造と機能は,外部に接続される,パタン系の構造と機能に依存する。パタン系の基礎系として,電流回路系の構造パタンと,その特性パタンの関連から画家モンドリアンに由来する,モンドリアンパタン系について,特に,平面的2次元系について,数理伝送工学の立場から研究を進めている。今回は,絵画パタン系の原系としての3次元像系の基礎系として,3次元モンドリアンパタン系を考えている。今回は,その外表面の部分的欠落系について,その表情的特性に結びつく事柄を考える。
著者
田上 恵子 内田 滋夫
出版者
日本アイソトープ協会
雑誌
Radioisotopes
巻号頁・発行日
vol.66, pp.277-287, 2017-08 (Released:2017-08-15)
被引用文献数
6

キノコは放射性セシウム(Cs)を濃縮しやすいが,すべてのキノコが同じようにCsを吸収するわけではない。生態の違いにより濃度が低くなる種類があると考えられる。しかし,東電福島第一原発事故後,放射性Cs濃度の汚染レベルが著しく異なるため,キノコ中の濃度だけで比較的濃度が低い種類を同定することができない。そこで,グローバル・フォールアウトに起因する137Cs濃度に着目して、自然環境下において43種類の野生キノコについてランク付けを行い,濃度が低い種類を推定した。
著者
鏑木 路易
出版者
同志社大学
雑誌
新島研究 (ISSN:02875020)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.128-172, 1997-02
著者
出口 雄也 高柳 あずさ 豊増 展子 岸 智裕 長岡(浜野) 恵 長岡 寛明
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第41回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-227, 2014 (Released:2014-08-26)

【目的】近年、禁煙補助剤としてニコチン含有のパッチやガム、トローチの利用者が増加している。タバコの場合、ニコチンは肺から吸収されるが、ガム、トローチの場合、消化器系から吸収される。タバコの主流煙には発がん物質であるタバコ特異的ニトロソアミンの4-(methylnitrosamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanone (NNK)やN-nitrosonornicotine(NNN)などが含まれていることが知られている。禁煙補助剤はタバコ特異的ニトロソアミンを含有していないが、これらを経口摂取した場合に、胃内で亜硝酸との反応によりタバコ特異的ニトロソアミンを生成し、変異原性を示すことが考えられる。そこで、本研究では亜硝酸塩濃度、反応液のpHを変化させることにより、ニコチンガムの亜硝酸処理生成物の変異原性をAmes試験により検討した。【方法】ニコチンガム(2個分:ニコチン約25 µmol)に25 µmolあるいは250 µmol(10倍量)の亜硝酸ナトリウムを添加した緩衝液中(pH 3.0、4.0、5.0)に溶解し、37℃で60分間反応させた。反応物を酢酸エチルで抽出し、減圧濃縮したものをDMSOに溶解し、Ames試験の試料とした。Ames試験はプレインキュベーション法で実施し、ラット肝臓S9mixによる代謝活性化法を併せて実施した。菌株にはTA98株、TA100株を用いた。【結果】ニコチン及びニコチンガムの変異原性はTA98株、TA100株ともに各緩衝液(pH 3.0~5.0)において陰性であった。しかし亜硝酸処理したニコチン及びニコチンガムの変異原性は、pH 3.0の緩衝液で10倍量の亜硝酸ナトリウムと反応させた場合に陽性であった。このことから、ニコチンガムで禁煙が成功しない場合には、長期間の服用は避けるべきであることが示唆された。

2 0 0 0 OA QT短縮症候群

著者
清水 渉 小山 卓 山田 優子 岡村 英夫 野田 崇 里見 和浩 須山 和弘 相原 直彦 鎌倉 史郎
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.392-396, 2009 (Released:2010-05-21)
参考文献数
11

QT短縮症候群(SQTS)は,器質的心疾患をもたないにもかかわらずQT時間が修正QT(QTc)時間で300~320msec未満と短く,心室細動(VF)から突然死を発症する症候群である.当院で有症候性のSQTS症例を4例経験した.全例男性で,3例でVFが確認され,1例では失神発作を認めた.12誘導心電図上,安静時QTc時間は平均327msecと短縮しており,全例で後壁および/または下壁誘導でスラー型またはノッチ型のJ波(早期再分極)を認めた.加算平均心電図では全例で遅延電位は認めず,電気生理学的検査を施行した2例では,いずれも右室の有効不応期は短縮していたが,VFは誘発されなかった.薬物負荷試験では,クラスIII群のニフェカラントとクラスIa群のジソピラミドの静注,およびキニジンの内服でQTc時間の延長を認めた.先天性QT延長症候群の原因遺伝子(LQT1,2,3,5,6,7)上に変異は認めなかった.全例で植込み型除細動器(ICD)が植込まれ,1例で3ヵ月後にVFの再発を認めた.
著者
井上 博
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.191-201, 1995-03-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
56

QT時間の延長は特発性QT延長症候群や抗不整脈薬によるtorsade de pointes発生との関係で重要視されている.III群薬を使用する機会が増加しつつある今日,QT時間調節の生理的,病理的要因について理解しておくことは大切である.QT時間は心拍数によって変動するが,心拍数を変化させる要因によっても修飾を受ける.このため日常使用されるBazettの式によるQTc時間は,実際の心拍数によるQT時間の変化と一致しないことがしばしば見られる.健常例では自律神経によって心拍数に応じた変化をするとともに,夜間に長いという日内変動を示す.糖尿病,心室頻拍,心筋症,特発性QT延長症候群や抗不整脈薬投与などでは,健常例とは異なったQT時間の変動が観察される.QT時間調節の異常の機序の解明により,このような病態での心室性不整脈の治療が進歩することが期待される.
著者
三井 宏隆
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.84, pp.243-266, 1987-05

譲る,譲らない,譲れないシルバーシートここは私の席 : 着席権とは何か少し待て,早過ぎるのでは : 電話口での礼儀,作法割り勘,おごる,おごられる : レジの前の社会心理学要約In this paper, some kinds of behavior occurring in the daily life are taken up as examples of the rule-following behavior. If we take a casual glance at them, they seem to be unsystematic and confused. But a close investigation of them will reveal the rules which people follow implicitly to smooth the human relations and to reduce the conflict among them. If it were not for such rules, the strain of human relations would tire people out, because the difficult decision-making is required at any moment in the social situation. People are unaware of them in many cases, but if they are broken, people feel insulted and get angry. For that reason, they are called the implicit rule of social behavior.
著者
矢野 興紀 和田 八三久
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.30, no.9, pp.705-710, 1981-09-01 (Released:2011-09-21)
参考文献数
35
著者
関谷 隆司 川嵜 健次
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.454-457, 1991-07-01 (Released:2011-10-14)
参考文献数
30
被引用文献数
1
著者
伊東 平八郎
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.242-245, 1954-04-20 (Released:2011-03-18)
参考文献数
33
著者
古川 猛夫
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.868-871, 1987-12-01 (Released:2011-10-14)
参考文献数
22
被引用文献数
2
著者
根岸 道治 伊東 平八郎
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.9, no.92, pp.426-433, 1952-12-25 (Released:2010-10-14)
参考文献数
19

振子型衝撃試験器を用いて酢酸繊維素繊維の衝撃破壊挙動に及ぼす衝撃速度 (20~130cm/sec) 及び温度 (15℃~160℃) の影響について実験し次の諸結果を得た。(1) 破壊エネルギーは比較的低速範囲では速度増加にほぼ比例して増加し, ある速度において極大に達し, より高速側では減少する。(2) 低速域における破壊エネルギー~速度関係の傾斜は15℃~70℃範囲では温度増加と共に衣第に緩やかになり, 90℃で逆に急となり, 以後昇温に伴って再び緩やかになる。(3) 極大破壊エネルギーの速度位置は昇温に伴って次第に高速側に移行する傾向を示す。(4) 90℃では測定範囲に2つの極大があらわれる。破壊エネルギー~速度間の直線的な関係域に対し既報のごとく, Maxwell要素 (ヤング率E0, 内部粘性係数η) と彈性バネ (ヤング率E∽) の並列系からなる粘彈性模型を考え, かつそのE0>>E∽なる場合への近似 (Voigt要素模型) として得られる次式からηを算出し, その温度依存性について次の結果を得た。破壊エネルギー W=ηv0x1+1/2E∽x12(v0は衝撃初速度, x1は破壊伸長)15℃~160℃において, η~1/T関係は傾きのやや異る不連続な2つの直線で示され, これにAndrade式η=AeE/RTを適用し, A及び流動の活性化ェネルギーEとして, A1=3.04×104, E1=3.6 Kcal/mol (15℃~70℃) 及びA2=1.74×104, E2=5.0 Kcal/mol (90℃~160℃) を得, これは80℃附近に流動単位の変化するある種の転移点が存在するものであり, 流動単位の温度依存性を示すものと考察した。さらに極大破壊エネルギーに対応する速度位置を脆弱破壊の限界速度と考え, これからその見掛けの破壊所要時間x1/v0を算出し, それとηとの関係は15℃~160℃の全範囲に亘って温度に殆んど無関係に次式であらわされることを認めた。η=k (t-α)(t=x1/v0, k及びαは恒数)上式をMaxwell関係式η=Gλに対応せしめて, 剛性率Gに対応するk値として0.34×1010 dyne/cm2, 緩和時間λに対応する (t-α) として10-3 sec程度の値を得た。また90℃にあらわれる脆弱破壊の2つの限界速度はλあるいはη分布の1部を示すものであり, 流動単位の速度依存性を示すものと考察した。
著者
植松 市太郎
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.9, no.7, pp.485-488, 1960-06-20 (Released:2011-09-21)
参考文献数
6
被引用文献数
2
著者
古川 猛夫
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.752-760, 1984-09-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
30

ポリフッ化ビニリデンおよびその共重合体は,50MV/m以上の電界により強誘電的スイッチング現象を示す.スイッチング時間は電界にきわめて強く依存し,高電界ではμ8になる.反転分極量は100~160mC/m2で,結晶域の自発分極はほぼ完全に反転することを示唆する.高分子強誘電体はラメラ状結晶の集合体で,個々のラメラ内で1本の分子鎖の回転を素過程として核生成と成長機構により分極が反転すると考えられる.このような毛デルによる計算機シミュレーションは,案灘のスイッチング曲線をよく再現する.